キラキラと ずっとずっと番外編
大きく3人が手を振っている
「未來、ルゥちゃん、嶺さん」
僕も幼子のように3人に向けて手を振る。
僕は人より頭がいい
__所謂天才少年って奴だ。加えて家が裕福だ。所謂財閥の御曹司って奴だ。もう一つオマケに容姿端麗だ。 多分……パーフェクトな存在だ。
そんな僕を初めて普通に扱ってくれたのは、家族以外では嶺さんが初めてだった。ただ単に宝珠光として扱ってくれた。間違いを正してくれる兄貴みたいな存在だった。
嶺さんも__パーフェクトな青年だったからね。僕はすぐに嶺さんに懐いたし、嶺さんも僕を可愛がってくれた。
嶺さんの誕生日を聞いた時……そうかぁーってもう一つ僕は、納得をした。
なんでかって?ルゥちゃんと僕の前に母さんのお腹にいた兄が亡くなった日と嶺さんが生まれた日が一緒だったから。
ルゥちゃんは、何にも気が付いてなかったみたいだけどね。
嶺さんは、僕の兄さんになる人なんだって、その時確信したもの。
だから ルゥちゃんと嶺さんの恋を応援するのは当たり前のことだった。ニューヘイブンに居る間に、二人の仲がバレなかったのは何を隠そう僕のお陰だ。僕はそう自負している。
本来なら二人とも僕に頭が上がらない筈なのに……僕は、未だにこの二人に頭が上がらない。
なんでかって、掛け値無しの愛情をこの二人が僕に与えてくれるから。
そして__父さんと母さんの狂った関係を二人が修復してくれたから。僕は、一生この二人に頭が上がらない。
両親の狂った関係を僕が気が付いたのは、いつの頃だったのだろう? 小ちゃな小ちゃな時から何となく気が付いていた気もするし、そうでない気もする。
ルゥちゃんの誕生日前になると僕の家は、いや、父さんはかな……とてもピリピリとした。ルゥちゃんの誕生日パーティーの準備で屋敷中が慌ただしくなるからそのせいかな?なんて思ってた。
ルゥちゃんの誕生日前日、母さんが必ずどこかに出掛けるって気が付いたのはいつだったっけかな?
いつも朗らかな父さんがその日だけは、少し無口になってギュッと僕等を抱き締めていたのに気が付いたのと同時だった。
ルゥちゃんの誕生日の朝……まるで儀式のように
「ルゥ生まれてくれてありがとう」
父さんがルゥちゃんに向けて言葉を放つ。
横で微笑む母さんの顔に、一瞬、哀しみが浮かぶ。
誰も気が付かないほどの短い時間。でも__僕は気が付いてしまった。
そして再び始まる穏やかな時間……
注意をして見てみれば
時折、母さんは遠い世界に旅をする事に気が付く。窓辺に腰掛け何かもの思いに耽るのだ。どこか寂し気で儚気でいつもの母さんと違った__なのにそんな母さんは、とても美しくって僕は、母さんに釘付けになった。
どこか遠くに行ってしまわないように__そんな日は必ず無邪気な振りして母さんにまとわりついた。
宝珠のデーターにハッキングして僕は、ルゥちゃんの誕生日前日の母さんの行動を調べ上げた。
もしもの時用に、母さんの乗る筈の車に発信器を付けた。乗る車がなんで解ったかって?母さんの専用車で......買い換えする予定の車だったから。
そう、母さんの専用車は毎年6月2日に新車が納車されていた。母さんが帰宅すると同時に引き取られる車だったからすぐにわかったんだ。
先回りして僕は、神戸の別邸に忍び込んだ__
道明寺さんと母さんを見た。
美しい二人だった。
恋を知らない僕が感じられる程、ただただ美しい二人だった。キラキラした光に包まれた二人だった。
母さんの過去、道明寺さんの過去と現状__全てを調べた。頭がいい自分をちょっぴり恨めしく思いながら。
母さんを偏愛する父さんの狂気を理解した。同時に母さんの哀しみも理解した。
いや、理性で理解したつもりになっただけだ。12の僕の心は、到底理解など出来なかった。
翌年、僕はニューヘイブンに旅立った__いや、逃げた。
僕では、二人の狂気を止められないから。
ルゥちゃんがイエールに進学してきたのは、2年後だった
三つ違いの姉は、僕と同級生になった。
「光、私ね諦められない恋をしているの」
ルゥちゃんが真っ直ぐに僕を見てそう言ったのは、ニューヘイブンに来た日の晩の事だった。
あの時、僕はなんと返事をしたんだろう?
翌日、嶺さんを紹介された。
2人はキラキラと輝いていた。道明寺さんと母さんのように……
詮無い事__ルゥちゃんが時折口にした言葉だ。
「お父様やお母様を裏切って嶺に恋をした私は、人非人よね?」
その後美しく妖艶に微笑みながら
「でも__詮無い事……私は嶺に出会ってしまったのだから」
四年間、二人は葛藤の中で恋を育んだ。
他の人を愛せたなら__二人とも周りに祝福された恋が出来るのに。
二人は茨の道を進んで愛し合った。強く強く愛し合った。
そして、時折傷つけ合った__傷つけ合う度に二人の仲は、より確かな物になっていった。
「光、お前の大事な姉さんを奪っていくよ。エゴイストでごめんな」
嶺さんが真剣な眼差しで僕に言った。男の僕が見惚れる程の美しい顔で__
二人が愛を貫くと決心した時__父さんと母さんの狂気な関係に終止符が打たれた。
止まないと思っていた嵐が止み美しい青空が広がったのだ。
年に一度、誰にも内緒で僕は3人に会いにこの地にやって来る。
キラキラと光る幸せに会いに来る。
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