ずっとずっと 57
「しぃちゃん、儂はお前さんが可愛くてたまらん。しぃちゃんを多神楽で見かけた時から愛おしゅうて愛おしゅうてたまらん。最初はな、儂の娘、由那によく似た娘だと驚いた。話せば話す程、由那といるようで、儂の手元に由那が帰って来てくれた様で、嬉しゅうてな‥… だがなその内、由那の事とは関係なくしぃちゃんが愛おしゅうなった。しぃちゃんの才覚にも惚れた。しぃちゃんの将来が見とうなった。あははっ これは儂だけじゃなく、つぅ爺ずのメンバーも雪乃も棗も亜矢さんも同じじゃがな。」
薫があたしの横に腰掛けながら
「あはっ、ねっ、だからいったでしょ? つくしは僕等に色々なものをくれてるって‥…だから遠慮しないでもっと甘えていいんだよ」
あたしの大好きな笑顔で囁く‥…
「あっ、つくし‥… また見惚れてるよ」
軽く、おでこをデコピンされる。
「えっ” だってーー 仕方ないよ~条件反射だもん」
みんなが笑っている。
宙ぶらりんだったあたしは、あたしの居場所を見つける。
***
「さて、そろそろ寝ようか。」
ごく自然にあたしは、薫の部屋に通された。
薫の部屋は、あたし達の住むペントハウスとどこか似てて、でも何となく違っていて
「薫、このお部屋間違い探しみたいだよ‥…」
「っん?どう言う事?」
あたしが説明すると、薫は肩を震わせクスクス笑う。
「つくしは、やっぱりつくしだね」
「えぇ~ 薫だって...」
なんだか、あたしも可笑しくなって2人で笑いあう。
薫の笑い声が突然止み、あたしを抱きしめてキスをする。
強く深くキスをする。項に耳にキスをされ服を脱がされていく。
あたしは黙ってそれを受け入れる。躰は薫を熱く求め始めている。
***
「つくし つくし」
薫の声で起こされる...外はまだ暗い。
「ゴメン朝早く‥…これからお爺様達とNYに行ってくるから、今日はお婆様達と3人で過ごしていてね。」
「うん。お仕事頑張ってね。」
「あぁー。ありがとう。」
「お姫様は、まだ早いから、もうちょっと寝ていてね。じゃぁいってくるよ」
「うん。いってらっしゃい。」
おでこにキスされ、薫が出かけていく。
あたしは、もう一度眠りについた。深い深い眠りに‥…
カオちゃんと悠斗の婚約パーティーが当初1月の終わりを予定していたからか、
肉体的にも精神的にもハードだったからか、日付の感覚が麻痺していて
その朝が1月31日だったなんて、ちっとも気づいてなかった。
いや、気づいてたところで‥… あたしには、どうする事も出来なかったけど。
***
NYに着く。
今回の目的はただ一つ。
ボズウェル財閥と道明寺財閥の婚約発表パーティに出る事だ。
その前に、このパーティにも呼ばれているであろう
花沢物産の花沢親子と、ここNYで会う事になっている。
つくしの初恋の相手 花沢類。
***
メープルNY。
今日のパーティ会場にも使われるホテルだ。
つくしはここのホテルに来た事があるんだろうか?
そんな事をぼんやりと考え、頭をふる。
いま、彼女は僕のものだ。過去など気にするなと
最上階のスウィートを今日の商談の部屋としてリザーブしてある。
宝珠のお爺様と共に、花沢親子を迎え入れる。
ノックの音と共に
「失礼致します」と、言いながら花沢親子が入ってくる。
「お目にかかれて光栄です」
花沢社長と花沢専務が挨拶をしてくる。
LUCYにとっては、失敗したからと言って痛くも痒くもない案件だが
花沢にとっては、社運を左右するであろう案件だ。
今までは部下に任せて進ませてきた案件に対し、突然のLUCYの代表からの挨拶にきっと驚いている事だろう。
「いやいや、楽になさって下さい。LUCYの代表をしています宝珠棗です。」
「先日から貴社にお願いしている案件、とても面白い形になってきたと部下から報告がありまして、聞けば息子さんが指揮にあたられているとか? うちの孫と年の近いのもありまして、とても興味が出て来た折に、今日の婚約発表パーティにお出でになられると聞きましたので、是非パーティが始まる前にお会いしたと思いまして‥…」
「大変ありがとうございます。」
美しい男が微笑みながら礼を言ってくる。
「類君とお呼びして宜しいかな?こちらがいま話した孫でしてね」
「今日はお目にかかれて大変光栄です。宝珠薫と申します。」
右手を出し、握手をする。
つくしの話しによく出てきていた花沢類‥…
柔和な雰囲気をしているが、かなりのやり手なんだろう。
報告書を読むと、彼もまたつくしに会って人生が変わった男の一人のようだ。
彼のつくしへの想いはもう断ち切れたのか? どうやって断ち切ったのだろうか?
それとも、つくしへの想いをまだ秘めたままなのか?
一瞬、聞いてみたい衝動に駆られる。
目の前の男に挨拶をされる。
司と同じくらいの背丈なのだろうか?
俺よりも若干高い身長。日本人離れしたすらりとした手足。彫刻のように整った顔。
驚く程、美しい男だ。
なによりも驚くのが、彼のもつ独特な空気感。
物穏やかな雰囲気だが、とんでもなく威圧感がある。
これが世界のLUCYの時期跡取りと噂されている 宝珠薫 なのかと改めて思う。
敵にはまわしたくない男だ。
「それでは、今後ともどうぞ宜しく頼みます。類君が指揮にあたってくれるのであれば、安心だね」
「こちらこそどうぞ末永く宜しくお願い致します。」
「類さん、日本に来た際には、どうぞ大阪のジュエルの方にお寄り下さい。」
「ジュエル?ジュエルというとジュエルグループでいらっしゃいますか?」
「そうです。私のもう一人の祖父がジュエルの代表でして。年内はジュエルで仕事をしていますので、ぜひお立ち寄りください。お待ちしてます。」
事も無げにいう美しい男。
ジュエルと、LUCY 2社とも他の追随を許さない世界的企業だ。
その2つの御曹司だったとは‥…
彼を敵に回すという事は、世界を敵に回すのと一緒なのだと知る。
敵に回したくないと思うよりも、絶対に敵に回してはいけない相手だ。
ブルッ
久しぶりに恐怖を感じる。
***
一方‥…美作あきらは、時を同じくして エバンズグループ、リックマンHD
2社の御曹司2人と会食をしていた。
エバンズグループ、リックマンHD、美作商事 3社合同で行うプロジェクトが進んでいる。
現在は、日本にいる彼等も、 戻り次第、プロジェクトチームに加わる予定だ。
「ジョアン・リックマン です。」
「ノア・エバンズ です。」
「美作あきらです。」
3人の未来ある若者が集う。
「今はお二人とも日本におられてると聞いておりましたが‥…」
「えぇ、僕等はボズウェルとは懇意にしてますので‥…」
「そうでしたか。」
「美作氏はドウミョウジの招待ですか?」
「えぇ、学生の頃からの友人でして。」
「ほぉーっ そうでしたか。」
和やかに会食は進む。
2人とも切れ者だと噂される御曹司。
「そう言えば、美作さんに僕らの友人を後でご紹介しますよ。お知り合いになっていて損は無い筈ですよ。」
「ありがとうございます。どうぞ宜しくお願い致します。」
「ノア、しぃちゃんも休むって言ってたけど、薫はしぃちゃんは連れて来てるのかい?」
「連れては来てるみたいだけど、今日のパーティーには参加しないみたいだよ。」
「そうか。」
「あっ、失礼。後で紹介させて頂くのが薫。 LUCYの宝珠薫氏ですよ。」
「LUCY‥… 宜しいんですか?」
「えぇ、彼と美作さんは年も近いんじゃないかな?」
「全然面識がないものでして、お会いできるなんて光栄です。ありがとうございます。」
「いえいえ、薫は実に魅力的な男ですよ。楽しみになさっていて下さい。それでは後ほど」
パチリッ
駒は揃った。
後は前に突き進むだけだ。
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