No.021 jalousie by 凪子さま
嫉妬は恋を彩るスパイスのよう__
いいえ___二人を蕩かす媚薬のよう
※ jalousie...嫉妬、やきもち
ドスドスドスドス...ダン!
『もうっ///!』
突然現れたのは
今にも弾けそうにパンパンに膨らんだ
まるで真っ赤な風船...
― おい、どうしたんだ?
― 知らねぇよ…まぁ、穏やかじゃねぇなぁ...
少しの刺激でも
すぐにでも割れてしまいそうな
真っ赤な『彼女』を
男達は 愛しげに眺める
針を刺すでもなく つつくでもなく
ただ触れてみたくて...
だからいつものように
側でそっと 受け止めてやるだけ...
「どうした、牧野?」
「随分とご機嫌斜めじゃん?」
『煩い!ほっといてよっ///!』
真っ赤な風船は、もっと真っ赤になって
艶々の柔らかそうな頬を 膨らます
が
その瞳に 少しの充血を見たとき
ドキリ、と
僅かに覚える 胸騒ぎ
― これは、アレだな...
― あぁ...多分、原因は...
「喧嘩でもしたか?」
聞けば
『べ、別にっ///!』
明らかに挙動不審にふわふわと揺れて
全く、なんてわかりやすい奴...
これだから、いつまでも
眺めてるのを止められないんだ
だから
こんな時はそっと
背中を押してやるに限る
パンパンに膨らんだ空気を抜いてやるのは...
俺でもこいつでもなく
それはあいつの役目だから
「類なら、いつもの場所に居るぞ?」
悔しいついでに、
その可愛い頭をくしゃっと触ると
『...////!』
ククッ、止めろよ
いくら睨んだって
そんなの煽るだけなのに...
『…別にっ//類と喧嘩した訳じゃ、ないもん//…』
はいはい、そうかよ…
やっぱりな…お前をそんな顔にさせるのは...
あいつだけ
そんで、一番の笑顔にさせるのも...
チクショー、しゃーねぇなぁ...
「何があったか知らねぇが...
本人に直接話せば、すっきりするだろ?」
…って、大抵のマダムは、
ここで堕ちるんだけどねぇ...
まぁいいさ、お前の行きたいとこに
俺達は背中を押してやる
やがて
俺らの想いが染み込んだのか
『…かもしれない///...ありがとう、二人とも///…』
赤い風船が、ゆっくりと
はにかんで笑った
で、やっぱり幸せそうな顔で
一番行きたいとこに
フワッと飛んでくんだな...
― 行っちまったな…
― ったく、相変わらず世話のやける…
そう言いながら、
あいつの笑顔が目に焼き付いて...
今もニヤついてるのは、
お互い様だろ?
*
♪~
『今からそっちに風船が飛んでくから、
しっかり捕まえとけ』
『捕獲したら、ちゃんと空気抜いとけよ』
― 何これ?
あきらと総二郎から同時に届いた
不可解なメッセージ
その時
カチャリと開いたドアの向こうに...
― プッ、あんた、何その顔?
そのしかめっ面、絶対なんかあったよね...
『類...//起きてたんだ...』
「ん...どうした?」
っていつも通り、聞いてみただけなのに...
『…何でも…ないっ///』
嘘だろ...
何でそんな、真っ赤な風船みたいに...
...て、そっか、さっきのLINEって...
「...成る程ね...」
『何がっ//!?』
ハァ、だからそんな風に睨んだって
ちっとも怖くないんだって...
その上目遣い
男を煽るだけだって、あんたわかってる//?
ま、とりあえず...
『な、何っ///!?』
「ここ、座ろ?」
こうなったら、無理にでも座らせて
頑固なあんたが口を割るまで
俺諦めないよ...
って、あんた何見てるの?...あぁ、
「忘れてた、はい」
そう言えば、これを預かってたんだっけ...
...って、何固まってるのさ?
『…これって...///桜子、から///...』
「あぁ、そう。何だ、知ってたんだ?」
牧野の手を取って、
預かってたピンク色の袋をのせる
「なんか、なかなかタイミング悪くて会えないから、牧野に渡しといてくれ…って...」
俺の言葉に、何故かみるみる赤くなる牧野
『...えっ!?これ、あたしに///?
...類に///じゃ、無くて?...///』
あんたは ひとつひとつ
言葉を噛み締めるように、フワフワと揺れる
「何で俺が、三条から?」
『...だって//...今日って///...』
ん...?
あぁ、そういう事...
もしかして、俺が受け取ってるとこ見てた?
それであんた...
みるみる
ばつの悪そうなカオに変わるあんたを見て
確信する
ねぇ、それって、
― jalousie?
『…え?今、なんて...//』
「クスッ、フランス語」
『もうっ//…そんなの解ってるけど!
…類の意地悪///!』
あぁ、ちゃんと勉強してるから、単語くらいは聞き取れたのかな?
でもさ
「そんな事より...」
その細い頤に手をかければ
漆黒の瞳を潤ませて
益々赤くなる、俺の可愛い風船
「その顔、あきらにも見せたの?」
『…え//...その顔って、何言って///...』
「ねぇ、それでこの可愛い頭も、
総二郎に触らせた訳?」
『え//...っと///...』
ほらね?
ビンゴじゃん...
― アンタヲダレニモ サワラセタクナイ
「お仕置きだね...」
『えっ//...んっ///...』
今度は「しまった」って顔で、
みるみる色を無くす可愛い『彼女』に
そっと唇を重ねる
何度も何度も、
愛を込めて
啄むように口づけを贈れば
― …ん///...ハァ//...
ほら、甘い声で、空気が少しずつ抜けてきて...
あんたは堪らなくなって
俺の胸に顔を埋める...
「…ねぇ、解ってくれた?
俺、牧野以外はみんなおんなじなんだけど...」
『...///!...知らないっ///
...だって類は、モテるんだもん////...』
さっきのパンパンに膨らんだほっぺは何処へやら...
すっかりしおらしく萎んじゃって...
なにそれ
そんなの、可愛すぎるでしょ//...
― あ、そうだ
俺は胸の中に彼女を抱きながら、
片手でスマホを開いた
不思議そうな彼女の前で...
「…『任務完了』、っと」
それだけ打って、すぐに電源を落とす
あいつら後々煩いから、
とりあえず報告だけね?
「...さて」
『...///?』
まだ足りない想いを込めて、じっと見つめれば
また赤くなる可愛い風船
「そんな可愛い事言うなら、覚悟して?」
『...///え?...ちょっ////...ん///...』
返事を待たずに、また唇を塞ぐ
今度はもっと深く
優しく
あんたを味わう
まだまだだよ
あんたには、もっと
俺の愛と
蕩けるような極上の口づけを...
そう
― Qui aime bien châtie bien...
(人は愛する程、意地悪をする...)
全てが愛おしくて君を困らせる


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