baroque 16
shine
全てのものが
shine
キラキラと
shine
光り輝いていた
夜空から光のシャワーが降ってくる。キラキラキラキラ暗い夜空にイルミネーションが点滅する。
「うわっ、見て見て 綺麗っちゃ」
天高くそびえ立つツリーのイルミネーションを見てはしゃぐつくしを眺めながら総二郎は大きく笑って返事する。
「なっ、すげぇ綺麗だよな」
「うんっ、綺麗だっちゃ。総ありがとうね」
「いえいえ、どういたしまして。つくしお嬢様」
総二郎の言い方が可笑しいとつくしが笑えば、それにつられ総二郎も笑う。出店で
「なぁ、冬休みはどうすんだ?」
「集中講義が終わったら__京都に戻る……かな」
「萩じゃなくてか?」
「萩には、戻らんよ。戻るんは京都っちゃ」
「両親が京都に来るのか?」
「うーん どうかなぁ」
総二郎と会話を交わしながら誕生日会に思いを馳せていた。筒井の邸で例年執り行われるつくしの誕生日会は、あらん限りの贅をつくして催される。両親は最初の年に来たきり__どんなに誘っても年末で忙しいからと顔を見せなくなった。正月に筒井の邸に訪れ挨拶をしてトンボ帰りをするのだ。それが一層__つくしの心の中に見捨てられた感を積もらせる。
つくしが萩に帰るのは年に三度ほどだ。五月の萩焼き祭り、八月の夏祭り、十月の祖父の命日。帰ると言っても居場所が見つからずに逃げる様に京都に戻って来ていたのだ。
トントンッ
総二郎が寂し気に微笑むつくしの肩を二回叩いた。つくしが振り向いた瞬間、
プスッ
総二郎の人差し指がつくしの頬にささる。
「ククッ 引っかかったな」
「もぉ、総は意地悪っちゃ」
憂いは影を潜ませつくしの顔に笑顔の花が咲く。
「そういやぁ、集中講義の日程はどうなってんの?」
「なんと、それが無粋な事にイブの日が最終日だよ」
「マジか__それって斉藤教授のじゃねぇ?」
「うん。そう」
「ははっ、じゃぁ一緒に受けれんな」
「えっ総も受けるの?」
「あぁ、去年受けれなかったから今年受けとけって。そうだ、終わったら出掛けるか?」
「うーーん でも……」
「じゃぁ、お忍びでどうだ?」
「ははっ お忍び大作戦? いいねぇ、って、総は年末年始はどうするっちゃ?」
「俺か、家の手伝いって奴でまぁそこそこ忙しい」
「家業のお手伝い?うーん偉いっちゃ」
つくしが背伸びして__総二郎の頭を撫でる真似をする。
「ったく、ガキにガキ扱いってやつか?」
照れ臭そうに総二郎が微笑みを浮かべる。
沢山の会話を交わすのに__自分達の【いま】を二人は語らない。
つくしは総二郎の家業を知らないし__
総二郎はつくしの置かれた状況を知らない。
*/*/*/*/*/*/*
「今日はありがとうね。すごい楽しかった__また連れて行ってくれる?」
「あぁ、勿論。また行こうな」
総二郎の言葉にコクンと頷き嬉しそうに笑い手を小さく振って部屋を出た。
秘密は、どの時点で裏切りになり罪になるのだろう?
トキメキは、どの時点で本当の恋になるのだろう?
この時のつくしは、ただただ【いま】を楽しんでいた。
牧野つくしで居られる【いま】を。
総二郎と笑い合える【いま】を。
ただ楽しんでいただけだった。


ありがとうございます
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