No.064 かわいくって...... 総つく
「かわいくて ごめんなしゃい」
思わず笑っちまった__菫の謝罪。
菫が立ち上がって
「ととさま だーいしゅき」
そう言いながらボスンッと抱きついて来る。
こうなったらもう俺の負け。
ははっ、全くもって親父の威厳なんてありゃしない。
でもなぁーー 菫は可愛いんだ。マジ可愛いんだ。
可愛い菫が 〝可愛くてごめんなしゃい〟なんて言ってみろ__もうなんでも許しちゃうだろ?
なっ、仕方ないよな?と櫂を見れば__エスパー櫂は、うんうんと頷きながら俺を見る。
櫂の頷きに力を借りて、反対側を見れば__角を出した女が一人。ゲッ__すげぇ怒ってる。
「すぅちゃーん、かか様のお小言まだ終わってないんだけどな」
菫が助けを求めて俺を見る。大きな瞳をウルウルと潤ませて上目遣いで俺を見る。やばっ、マジ可愛い。
俺によく似てる筈なのに、こんな時はつくしソックリになりやがる。
「うん、まぁ、なんだ菫も反省してるみたいだし。なっ」
「へぇーー 可愛くてごめんなさいが、とと様大好きが反省の言葉なんだ。へぇーーー」
俺の腕の中に居た菫がくるりと向き直って__
「かかさま。ごめんなしゃい。もうしましぇん」
ポタンッと涙を一粒零した。
「本当に反省?」
「あい。ごめんなしゃい」
「ふぅっーー あのね、すぅちゃんがやった事で皆にいっぱいいっぱい迷惑がかかるのよ。そこ本当に解った?」
「あい。ごめんなしゃい」
「じゃあ、志摩さん達にちゃんと謝ってらっしゃい」
「あいっ」
ニコッと笑って
「にぃにぃ、すぅちゃんといっしょにきて」
「うん。いいよ」
二人で仲良く手を繋ぎ部屋を出て行った。
さて、さて__俺もお暇しようかなぁーと、ソロリソロリと部屋を出て行こうとすれば
パッシーン 目の前で勢いよく襖が閉められて……
ジロリッ つくしが俺を睨んでる。
「つ、つ、つくし、次期家元夫人の立場として、その所作はど、ど、どうかなぁ?」
「はぁっーー?なにか?」
「いやっ、だ、だ、だからだな__乱暴な所作はどうかと思うぞ」
「へぇーーー、きちんと叱る前に目尻が
ヤバい__コイツの口から〝西門さん〟が出てきた時は、真面目にヤバい。かなり怒ってるぞ。
「大体ね、西門さんは、すぅちゃんに甘過ぎるの!櫂が同じことやったら滅茶苦茶怒るでしょ?」
「__櫂は、あんな事やんねぇよ。あんな事やるの菫ぐらいだ」
「まぁ、それはそうだけど__って、そう言う事じゃなくて……皆に迷惑が掛かる事ってことを言ってるの」
「だから、櫂はみんなに迷惑を掛ける事なんてしねぇよって言ってるんだ」
「まぁ、そうだけど……って、だから、そう言う事じゃないって。すぅちゃんをしっかり叱ってって事。いくらすぅちゃんが可愛いからって曖昧にしちゃいけないことがあるって言ってるの」
「__だってよぉ、すげぇ可愛いだろうよ。可愛くってごめんなさいだぞ」
「……まぁ、確かにね」
「だろ?それにあのウルウル目。あれは……反則だ。つくしお前にそっくりだ」
「えっ」
怒りで出てた角が引っ込んで、替わりに頬を赤く染めて照れてる。
こんな時は、一気に攻込むのが【西門流】だ。
「いつもつくしにばっかり嫌な役おしつけてごめんな。今度は、きちんと叱る。約束する。菫の行為がどんだけ周りに迷惑かけるかって事もきちんと教える…..だからな」
つくしを抱き寄せて、熱いキスをすれば、小さく漏れる吐息と共につくしから熱いキスが返ってくる。
思いもよらぬつくしのキスに、頭の中がスパークしそうだ
もう駄目だ。押し倒すぞと思った瞬間__
するりと俺の胸の中から飛び出て
「お・あ・ず・け」
ニッコリと笑う。
「つ、つ、つくし、それは殺生だ」
「うふっ、可愛くってごめんね」
そう言い残して美しい所作で襖を開けて出て行った。
はぁーーー あっちもこっちも
可愛くってたまらん!
贅沢な悩みだよね?


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