イノセント 45 司つく
全身の気怠さでつくしは眼を覚ます。
いつも通り、ベッドから這い出て服を着替えようと辺りを見渡せば、頭の先からつま先まで完璧な装いに整えた男が自分を見下ろしていた。
シーツを身体に巻き付けて
「あたしの服はどこですか?」
「処分した」
「どう言う事ですか?」
「お前の身体は俺のもんって言ったろ?だから処分した」
「だからの意味がわからないんですけど」
つくしの瞳がキッと司を睨む。
「くくっ、この状況でお前、よくそんな好戦的な物言いが出来るよな」
「好戦的もなにも、あんたなんかに屈服するいわれは無いから」
「へぇーー、俺一応もなにもお前の雇い主だろよ?」
「お嫌でしたら首になさって下さって構いませんから」
「チィッ」
「で、あたしの服はどこですか?」
「だから、捨てたって言ってんだろ」
「はっ?あたし、それじゃ家に戻れませんよね?」
「下の部屋は解約した」
「はっ?それはどう言う事ですか?ってか、出て行っていいってことですか?」
「ココに住むんだよ。ココが狭いなら違う所でも良いけどな」
「社長の仰ってる意味がちっともわからないのですが」
「そのまんまだ。第一、毎晩お前はここに来てるんだから、別にこのままココに住んでも構わないだろうよ」
「……構わなくないですよね?」
「それとも何か?俺と四六時中一緒にいたら身体だけじゃなくて心まで俺にもっていかれる事が怖いのか?」
「だ、だ、誰があんたなんか」
「じゃぁ、別に構わないだろうよ」
「ゥグッ……」
つくしが言葉に詰まればこの言い争いはお終いだとばかりに、片頬を上げて微笑する。
昨晩の侮辱が悲しみが忘れられないのに__司の事を憎んでいる筈なのに、道明寺と同じ瞳に唇に指先に気が付けば視線を奪われてしまう。
時折見せる哀し気な表情に……心が痛んでしまう。やっと築いた全てのものを奪い取った目の前の男を憎もう憎もうと思うのに……いや、心底憎んでいる筈なのに…ふと見せる表情に心が寄り添いそうになってしまう。
「っはぁーー。では部屋を一部屋頂けませんか?」
こんなところに彼女の強さと優しさがあるのかもしれない。いや、実のところは、ただただ彼の中に眠る〝道明寺〟への思いだけに突き動かされて行動しているのかもしれないが。
ニヤリと司が笑い顎で合図される。シーツを巻き付けたまま、司の後に続きベッドルームを出て奥の部屋のドアを開けた瞬間
「うわぁっ」
目の前には、つくしが夢見ていたような空間が広がっていた。
燦々と降り注ぐ陽の光と自然と一体になったかのようなリゾート感溢れるベッドルーム。
床から天井まで繋がる大きな吐き出し窓と目の前に広がるプール
「って、ここの部屋__プール付いてたんだ」
つくしが眼をパチクリとさせて走り寄ろうとした瞬間、ぬっと司の手が伸びて……
「そんな格好で外に出るな」
「えっ」
「誰かに見られる」
司の顔を見上げた後に自分がシーツを巻き付けてるだけなのを思い出した。
「ギャッ」
つくしの嬉しそうにはしゃぐ顔が嬉しくて司は思わず顔を綻ばせた。
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