イノセント 62 司つく
ボタンを一つ一つ外してシャツを脱がせ、ジッパーを卸し、ジーンズを脱がせる。下着姿になったつくしに用意していた純白のシフォンワンピースを着せてから、左手の薬指にあの日つくしに贈ろうと思っていた指輪を嵌める。
「つくしちゃん、良く似合ってるよ」
意識を失って眠り続けているつくしに、前と変わらぬ優しい笑顔を投げかけてから、もう一度、優しくカウチに寝かせた。
「愛してるよ」
そう囁いてから、額に貼り付いた髪の毛を掻き分け口づけを落とす。
雅哉の頬に微笑みが浮かぶ。欲しくて欲しくてやっと手に入れた___
「もう少ししたら目が覚めるかな?」
カチャッ
手錠をかけて鎖でカウチに繋ぎふわりとケットをかけて部屋を出た。
操縦席に入り着船の準備をする。心はもうじき着く楽園に羽ばたいている。全て用意は、整っている筈だ。
「……誰にも渡さないからね」
港に向けて船が走る。穏やかだった天候が少しづつ崩れ風浪が吹き始めている。
*-*-*-*-*-*
丁度その頃、ホンファのお陰で盗品売り場に来た男が解り、そこから新堂雅哉がつくしを連れ去った事が判明した。
雅哉の名前が出てくれば、紐を解く様にスルスルと行方が明らかになり、雅哉の乗り換えた車が解りクルーザー・ハーバーに向った事が特定出来た。
ヘリを飛ばし着岸予定の港に先回りする事になった。
司の心が急いている……両手を組み合わせ脚をガタガタと揺らしている。
雅哉の車に乗り換える時のつくしは意識を失っていたようだと聞き、もしも__つくしの身に何かあったらと考えただけで身体がガタガタと震え出すのだ。懸命に身体の震えを止めようとするのに__ガタガタガタガタ震える。
バタバタバタバタ…….ジェットヘリの音が暗闇に響き渡る。
島にジェットヘリが着く。着陸時間短縮のために司は、ホイスト*降下することに決めた。
「社長、やはりホイスト降下は危ないですので__少し時間は掛かりますが__平地に着陸をした方が宜しいかと」
大迫が何度も意見したが__司は聞く耳などもたずにホイスト降下用の器具を付けていく。
バタバタバタ…バタバタバタ…
暗闇の中……つくしを追い掛ける。
*-*-*
つくしは眠っている。
夢の中の自分は幸せでいっぱいに笑っている。
「牧野」
愛おしそうに蕩けそうに道明寺がつくしの名前を口にする。
「なに?道明寺」
嬉しそうに幸せそうにつくしが答えてる。
なんてことのない、ただ日常の一コマなのに、幸せでいっぱいの顔をして笑ってる。
どこから海の香りがする……
海は、嫌いだ。怖い。哀しい。
フラッシュが沢山焚かれ、道明寺が刺されて幸せが悪夢に変わる瞬間が訪れる。
神に願った。
何もいらない…. あいつが生きていてくれさえいてくれた…..それでいいと。
つくしは知らない内に涙を流している。
夢の中から目が覚め、朧げながらも現実に戻って来る。
柑橘系の中にスパイシーな香りが含まれる香水が鼻腔を掠める。
「…ぅぅっ、頭痛い」
額に手をあて立上がろうとした瞬間
ジャラリッ
足首への違和感と音を感じて足許を見れば
「えっ……」
足首が繋がれていて唖然とする。
「だ、だ、誰が?」
つくしは痛む頭で数時間前に自分に起った事を必死に考える。
「……ま、雅哉さん…が?」
衣服を見れば__まるでウェディングドレスのように真っ白なドレスで。
ゴクリッ つくしの喉が新たな恐怖で上下する。
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