明日咲く花~後編~ by 凪子さま
Special Thanks ビー玉の瞳 凪子さま
あたしの
俺の
一番は___
PCの前...
ひとりぼっちの部屋で、膝を抱える。
「…っ…花沢類のバカっ…」
―…~ン
「グスッ、何で返信、くれないのよ…」
―…ンポーン
「ヒック、何でここにっ… 居ないのよぉ...... 」
―ピンポン、ピンポーン!
「…っ!…るっさいっ//!もおっ//!人の気持ちも知らないで//!?」
さっきから五月蝿いぐらいに鳴り響く、チャイムの音に…
どうせ宅配便かなんかだと
あたしは涙をゴシゴシっと擦って、印鑑片手に玄関を勢いよく開ける。
―ピンポン、ピンポン、ピンポ~ン!
―ガチャン!
「そんなに何回もピンポン押さなくてもねぇっ//!
今出ますっ!!…か…ら...... 」
突然
ドアを開けたあたしの目の前に現れたのは
鮮やかな紫色のチューリップで...
「駄目だよ、女の一人暮らしですぐに玄関開けたら…」
耳を擽る、柔らかくて懐かしい声...
嘘......
「…な… んで//...... 」
「ほら?俺のも咲いたんだ。…なんかやっぱり、牧野に直接、見せたくなって…」
ニコッと鉢植えの後ろから
のほほんと、綺麗な笑顔を向ける人...
逢いたくて
逢いたくて
堪らなかった...
「…によ…//」
「…え?」
「何でよっ//!」
「わっ!ちょっと//!?」
彼は突進してくるあたしを見て、慌ててチューリップの鉢植えを片手に掲げると、飛び込んできたあたしの身体をもう片方の手で… 受け止めきれずに…
「…っ//!!」
「うっそ//!?」
―ドッシーン!!
あろうことか、花沢類に思いきり飛び付いたあたしは...
そのままの勢いで、彼に酷く尻餅をつかせて
自分はちゃっかり…彼の身体の上に......///
*
「イテッ//! …テテテっ//…牧野...は、怪我はない//…??」
俺は、そのまま無様にコンクリートの床に転がりながらも、なんとか抱き止めた彼女の無事を確かめる。
ハハッ、我ながら、なんて格好悪い再会//…
だけど...
「プッ//!やっぱり牧野最高っ//!…」
突然行って驚かせるつもりが、まさか飛び付かれてこっちが転ばされるなんて!
「ごめんっ//!ヤダッ//…大丈夫っ//!?」
「…ククッ…ん、支えられなくて、ごめんな…?」
どうやらすっかり元気になってる牧野が嬉しくて、
こうして、今ここに久し振りの彼女が、何故か俺の胸の中にいることも、嬉しくて...
笑いながら、そう言ったのに
あれ... 牧野...?
「花沢類のバカっ//!!」
「......... 」
そのまま起き上がるでもなく、しがみつくように俺の胸に顔を埋めて...
「…なんで返事っ、くれなかったのよっ//!?」
「...ん... 」
震える彼女の頭を、そっと撫でる
「髪、随分伸びたんだね...」
「…切ってくれる人、居ないもん//…!」
「…そっか」
「そうだよっ///…グスッ//」
愛しいな...
あんたが愛しくて、堪らない...
「…いつだって//...勝手にさっ//…」
「…ん」
「…寂しかったんだからねっ//…」
「…ごめん」
「…もう何処にもっ//!…行かないでよ///…っ//」
「…あい」
スーツがしわくちゃになるほど、ギュッときつく手を握りしめ、今までの彼女の想いを絞り出すような声...
その震える肩を、俺はしっかりと抱き締める。
だっていつの間にか、チューリップの他にも...
彼女の中に育っていた、"思いの丈"があったなんて
この時俺は、初めて知ったんだから...
「…牧野」
「…ぐすっ…//」
「ただいま…」
「…ふえっ//…おかえり//…」
花沢類の懐かしい香りに包まれて...
その暖かな胸の中で
あたしはわんわんと、声をあげて泣いた
でもこれは、紛れもなく"嬉し涙"...
「うっ…おかえりっ//… おかえりなさいっ//…」
何度も何度も
何度言っても足りないくらい...
あたしの元に今やっと
"春"が、帰ってきてくれたから...
*
翌朝から―――
あたしの部屋の窓際には、2つの鉢植えが並ぶ...
あたしのピンクと
花沢類の紫色
仲良く並んで咲いたチューリップは
楽しそうにキラキラとお日様の光を受けて、
真っ直ぐに空へと伸びていく。
あれから…
あたし達は、離れていた時間を分け合うように
朝方まで互いの一年間を話し続けて
そして、今は//…
「…きの…」
ムニャムニャと、あたしを抱き締めながら呟く彼の寝言が、すぐ側にある幸せ...
「フフっ//… 」
にやける顔をシーツに埋めながら、あたしは自分の胸元に光るペンダントをこっそり眺める。
―『…これ、つけてくれる?』
昨日の夜、1年ぶりに会った彼がおもむろにポケットから取り出したのは、一粒のパールが光る可愛らしいチューリップのペンダント。
―『…やっと、渡せる...』
心から嬉しそうに、噛み締めるように呟いた彼の言葉が、きっと随分前からあたしの為に用意してくれていたんだとわかり、胸が詰まる...
言ってくれれば良いのに//
言わないんだよね//…
そんなところも…
「…ほんっと、変わらない///...」
「ん?」
「ううん///… なんでもない///...」
振り向いて、変わらない温もりを
あたしは抱き締める。
いつでも側に居てくれたのに
近すぎて、わからなかったもの...
でも、今ははっきりとわかるよ
あなたこそが
あたしの中にある、かけがえのない"光"...
ねぇ? 類…
ここからまた、始めてもいいかな///…
不器用な牧野つくしは、きっとずっと前から...
世界で一番に
あなたを愛しています。
Fin.
※花言葉
ピンクのチューリップ… 愛の始まり、誠実な愛
紫のチューリップ… 不滅の愛、永遠の愛
お誕生日のお祝いに頂きました♪素敵なお話をありがとうございます♡


♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
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