決まってる 司つく
「あん?なんだそりゃぁ。死は端にはねぇだろうよ。死は終わりにあるだろうよ。」
ドヤ顔して、まるでいい事言っただろうな表情の司...
どこから正そうか? いやいや正したら面倒になる。
うん、やめておこう
「でもよー、もうじき腹ん中の子が生まれるっつーのに、死とか口にだしてんじゃねーよ。縁起悪りぃだろう。」
だから、死じゃないってば! 師だよ!師!教師の事だってば...
願わくば願わくば...お腹の中のちっこいちゃん。司の日本語弱い所だけは似ないでね。
なんて思いつつ、まぁそれはそれでも楽しいかもね。なんてあたしもかなりのいかれポンチだ。
「なぁー」
「っん?」
「幸せだな。」
「うん。幸せだね。」
「来年の大晦日はもう一人増えてんのか?すげぇよな」
「うんすげぇよな」
「おい。乱暴な口きくな。タイチョ―に悪い!!」
体調?体調には影響ないよねー???
あぁぁー胎教ね胎教。
ってか、毎日口うるさく、アレすんなコレすんなって怒鳴ってる方がよっぽど胎教に悪いっつーの。
あたしと、ちっこいちゃんの事が大切で大切で、心配して言ってる事知ってるから、言わないけどね。
司のクルクル巻き毛を見ていたら‥…
あたしのお腹の中にちっこいちゃんがやって来て、不安になっている時にお義母様が話してくれた事を思い出した。
***
「あーーーーもう嫌。嫌。嫌。」
私はただただ彼が大好きで、彼の子供が欲しかっただけなのに、
道明寺の跡取りだ。やれなんだかんだと周りが五月蝿い。
お腹の中の子が女の子と判明した直ぐ後に、言われたのが
「2人目は、絶対に男の子を産んで頂きますからね。」
「はい。承知致しました。」
そう頷くしかなく‥…
お腹の中の赤ちゃんも、私も全てが否定された気がして、哀しくて哀しくて‥…
誰にも会いたくなくなって、食事も喉を通らなくなって‥…
お医者様からも、このままの状態が続く様でしたらお腹の中のお子様にも悪影響が出兼ねませんので、入院になりますと釘を刺され‥
それでも、哀しくて哀しくて自分一人の世界に閉じこもってしまった。
「楓、楓、かえで〜」
「譲さん、どうされたの?」
「お腹の中の子‥…」
あぁ、この人にもお腹の中の子供を否定されるのかと思った瞬間
「凄いよ、凄い。女の子なんだって? ヤッターだな」
そう言いながらウィンクしてくれた譲さん。
嬉しくて嬉しくて泣き出した私に‥…
「ゴメン。どっちでも構わないんだ‥…無事に産まれてきてくれさえすれば、それなのに、女の子で凄いなんて言って傷ついたよね?」
私は慌てて首を振る。
「あぁー良かった。」
「でも、男の子じゃ‥…」
そう言いかける私に
「ねっ、考えてみて?楓のお腹の中には楓にそっくりな女の子がいるんだよ。」
そっくりって?まだ産まれてもないのに?
「あの‥…譲さん‥そっくりかどうかは産まれてみないと解らない‥」
言葉を続ける私を遮るように
「楓に似てるに決まってるじゃないか?だって考えても見てよ‥絶対に絶対に似てるよ。楓の真っ直ぐな髪の毛に似てるかもしれないし、楓の白魚のような指先に似てるかもしれないし、耳の形が、唇の形が、足の形が、ねっ、ねっ、一カ所でも楓に似ていれば、それは楓そっくりって言うんだよ?」
いや、いやそれは違うと思いますが‥…
でもでも一生懸命力説する譲さんを見ていたら、
あぁーこの子は、こんなにも望まれて願われて誕生するんだと思ったら嬉しくなって
「そうね。譲さんに似てる男の子が生まれるって考えたら私も嬉しいものね」
そう答えていた。
譲さんは慌てて
「いや、いや、娘だから良いんだよ。娘だから。息子で俺に似てるなんて嫌だよ」
子供みたいに拗ねているのをみたら、可笑しくなって笑ってしまった。
その瞬間ね、お腹の子が、椿が動いたのよ。
うふっ、お父様大好きって言ったのかしらね?
それにね、あんなに嫌み満載だった義父母も椿が産まれたら、そりゃー可愛がって下さったのよ。
暫くして、司がお腹に出来て男の子だと解った時には、財閥の周りの人間はやっぱり跡取りだなんだと騒いだわ。
だけどね、私はただただ純粋に、あぁー 譲さんと良く似た男の子に会えるんだと思ったら嬉しくなったのよ。
「産まれたらクルクル巻き毛でしょ? もうヤッターって大喜びしたのよ。」
それは可愛らしく、ニコリと微笑まれた。
お話を終えた後‥… コホンっと咳払いを一つされ、いつもの鉄の女に戻ったんだっけ。
***
あたしの愛する男に、この話しを教えてあげたらなんて言うのかな?
照れて真っ赤になって、「ったく」なんて言うのかな?
ねぇ司、あんたがお腹の子を愛おしいと思う様に、お義父様もお義母様もあんたが愛おしくて愛おしくてたまらなかったんだよ。
お義母様は、お義父様の名代を努める為に、鉄の女の仮面を被らなきゃならなかった。
知ってる?お義父様の健康状態が落ち着いてからのお義母様は、とても可愛らしくなったよ。
お義母様の秘書として、暫く携わったから解るんだ。お義母様の背負った苦労も、重圧も。
愛する幼子を残して、後ろ髪引かれる思いで仕事に没頭しなければいけなかったのが、どんなにどんなに辛かったのか‥
司の奥さんになる人にはそんな思いをさせない様に、司の子供達には司が味わった哀しい思いをさせないように、お義母様は必死だったんだって解るんだ。お母様が必死に後ろ盾のあるお嬢さんを司に勧めたのは全て司の為だったんだって。
司と4人でテーブルを囲む時、お義父様が、ちょっと照れた笑いを浮かべる事に気付いてた?
大きくなった自慢の息子を愛おしそうに見るお義母様の視線に気付いてた?
司あんたも、きっともうじき気付くね。
だって‥…ちっこいちゃんのエコーを見る司の瞳と、お義父様の瞳は、そっくりだもの。
もうちょっとで、ちっこいちゃんに会えるよ。
ちっこいちゃんに会えたら、教えてあげるね、あんたをあの2人がどんだけ愛してるかって。
っん?あたし? あたしが司を愛してるかって?
うふふっ 勿論あんたを愛してるに決まってる。
お日様が東から登って西に沈んで行くのが当たり前のように、
司があたしを愛する様に、 決まってる。
***
「うっ‥…つ、つ、司ーー なんだかあたしお腹が痛いみたい‥…」
「ど、ど、どうした?」
「う、うん‥陣痛?うーーん」
司が慌ててる‥…
驚くほどにアタフタしてる。
あははっ、うちのちっこいちゃん‥‥ あんたしあわせだね。
〜よいお年をお迎え下さいませ〜
明朝6時は、この続きの 小っこいの 生まれた日のこと に、なります。
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