禁花〜愛しいあなた〜09
きらう花とては、八つ花かたのわりき物とて、花入れに、いれざる花は
ぢんちゃうげ み山しきびに けいとうの花
おみなへし ざくろ かうほね きんせんくわ せんれんくわをも きらひこそすれ
南方録に載っている禁花を歌った利休狂歌だ。
でもな つくし……禁花なんてもんは、絶対的なものじゃないんだ。古い時代には禁花に歌われている花が使われていた記録もあったりするんだ。利休禁花はあくまでも利休の時代の利休の考えた禁花だ。
現に、歌に歌われてる女郎花 は、七草の一つとして活けたりするんだからな。
静謐な空気の中、独服をする。
己の茶に、己の心に向き合うために。
茶を口にすれば、緩やかに頬が上がる。茶の道が好きだ____西門に生を受けた義務や責任感からではなく、茶の道を生涯学び続けていきたい。誠の心でそう思う。 共に_____つくしが欲しいと渇望する。
なぁつくし、禁花なんてもん気にするほどに俺を愛してるのか?
なぁつくし、俺、自惚れてもいいのか?お前が俺との未来を望んでいるのだと…………
ならば何を迷おうか___心のままに、俺の唯一を手に入れる。
❋❋❋❋❋❋
つくしの部屋の前に立ち、深呼吸を一つしてから
ドンドンドン
「つくしっ」
ドンドンドン
「つくし」
ドンドンドン
「つくしっ」
ドンドンドン
「つくし」
ドアを叩き愛する女の名を呼べば_____
「「「あんた朝から、なに!!」」」
向こう隣りのドアが一斉に開き、声がした。
出てきたのは、グラマラスな美女三人。アンド カツンカツンとヒールの音がして……魔女? あっ、いいや女王? まぁそんな威風堂々としたラスボスのような老婦人が登場した。
「貴方さまはどちら様かしら?」
色々驚いたが……同時にここなら心配なかったなと安堵しながら
「私、西門総二郎と申します。こちらの部屋に住む牧野つくしさんにプロポーズしに参りました」
直球勝負に出た
「「「「あらっ」」」」
四人の声が見事な程に重なって、そのあと四人で何やら小声で話し合っている。
「ソウジロウって、あのソウジロウじゃない」
「マッキーが酔うと口にする男の名前だよね」
「「「うんうん」」」
「えっ あの絶倫のソウジロウって、こんなに爽やかイケメン」
コソコソが案外大きい。しかも……絶倫って______女同士そんな話までするのか? 違う小宇宙を垣間見たと思った次の瞬間
「あらっ 短小包茎みこすり半男じゃないの?」
ラスボスがニヤリと笑いながら微妙に大きな声で言えば
ドアの向こう側から
「えっ そんな事ない」
愛する女の声がした。ドア一枚隔てた向こうにつくしがいる。
俺は_________ドアの前で愛を叫ぶ。
「つくし……俺はお前を愛してる」
「………………」
愛する女からは、何の言葉も返ってこない。ドアは天岩戸のようにきっちりと閉まったままで動かない。
「ほらやっぱり、見掛け倒しの粗ちんよ粗ちん」
ラスボスがニヤつきながら口火を切れば、
「テクなし粗ちんで絶倫? それ最悪じゃない」
「マッキーもそれは出たくないよねー」
「「「ねー」」」
次の瞬間、ガチャリと天岩戸と化していたドアが開き
「清子さん、あたしそんなこと言ってない」
口をへの字にさせながら、つくしが四人を怒ってる。
なんか……すげぇシュールだななんて思いがチラッと浮かんだが、そんな思いは直ぐに消えて、愛しい女を抱きしめた。両手いっぱいで抱きしめた。俺の腕の中ではぐはぐしてたけど、そんなのお構いなしに抱きしめた。
「ソウジロウ君 全部嘘だから。マッキー毎日君を恋しがって泣いてたから。じゃっ頑張ってと言いたいとこだけど、ここ壁薄いんでお取り込みはどこか他所でよろしくね」
ラスボス改め清子さんは、牧野を抱きしめ続ける俺の耳元でそんなことを囁いて、美女3人を従えて階下に下がっていった。
「つくし、俺もうお前を離したくないんだ。後生だと思って俺と結婚してくれ」
俺の言葉に、つくしは泣きながら首を振り
「無理だよ。無理だよ。無理だよ」
何度も無理だと口にする。
「俺のこと嫌いか?」
「…………」
「嫌いじゃなければ社会貢献の一環とでも思ってくれ。なっ」
「総二郎は次期家元なんだよ……」
「そんな事が理由で俺を排除すんのか?」
「そんなことって……総二郎にとってそんな事じゃないでしょ。だって貴方にとって茶道が一番でしょ……一番大事なものは、一番大事なものは……捨てちゃダメだよ」
「あぁ茶の道は俺の生涯に渡ってのライフワークだ。でもな_______俺の一番大事なもんは、つくしお前だ」
「ダメダメダメダメ……あたし総二郎に何も与えられない」
「はっ? 何言ってんだお前。お前から俺はどんだけ色んなもんをもらってるかわかってるのか?」
「へっ?」
「へっじゃねぇよ。俺の幸せってお前がいないと成り立たないみたいなんだよ。だからお願いだ。俺と共に生きてくれ」
「でも……でも……総二郎には西門が……」
「だから、それは大丈夫だ。政略結婚なんてしなくてもいいくらいのものを俺は持っている。それでもだめだというならそれはそれまでだ。
西門の未来が心配か?西門にはまだ俺の弟がいるし、他にも親父の弟達の息子達だっているしな。それよりなにより、まだまだ親父は元気だ」
「でも……」
「心配するな、茶の道を辞めはしない。
ただ、お前のことを諦めないことにしただけだ。
なぁ、つくし……俺と共に未来を歩んでくれ」
「総二郎との未来……考えてもいいの?
本当に本当にいいの?」
つくしの瞳から、真珠のような涙がポロリと落ちる。涙さえ愛おしくて、頬に伝う涙をペロリと舐めれば____つくしの口から微かな吐息が溢れる。
つくしの全てが愛おしい。

ありがとうございます
ぢんちゃうげ み山しきびに けいとうの花
おみなへし ざくろ かうほね きんせんくわ せんれんくわをも きらひこそすれ
南方録に載っている禁花を歌った利休狂歌だ。
でもな つくし……禁花なんてもんは、絶対的なものじゃないんだ。古い時代には禁花に歌われている花が使われていた記録もあったりするんだ。利休禁花はあくまでも利休の時代の利休の考えた禁花だ。
現に、歌に歌われてる
静謐な空気の中、独服をする。
己の茶に、己の心に向き合うために。
茶を口にすれば、緩やかに頬が上がる。茶の道が好きだ____西門に生を受けた義務や責任感からではなく、茶の道を生涯学び続けていきたい。誠の心でそう思う。 共に_____つくしが欲しいと渇望する。
なぁつくし、禁花なんてもん気にするほどに俺を愛してるのか?
なぁつくし、俺、自惚れてもいいのか?お前が俺との未来を望んでいるのだと…………
ならば何を迷おうか___心のままに、俺の唯一を手に入れる。
❋❋❋❋❋❋
つくしの部屋の前に立ち、深呼吸を一つしてから
ドンドンドン
「つくしっ」
ドンドンドン
「つくし」
ドンドンドン
「つくしっ」
ドンドンドン
「つくし」
ドアを叩き愛する女の名を呼べば_____
「「「あんた朝から、なに!!」」」
向こう隣りのドアが一斉に開き、声がした。
出てきたのは、グラマラスな美女三人。アンド カツンカツンとヒールの音がして……魔女? あっ、いいや女王? まぁそんな威風堂々としたラスボスのような老婦人が登場した。
「貴方さまはどちら様かしら?」
色々驚いたが……同時にここなら心配なかったなと安堵しながら
「私、西門総二郎と申します。こちらの部屋に住む牧野つくしさんにプロポーズしに参りました」
直球勝負に出た
「「「「あらっ」」」」
四人の声が見事な程に重なって、そのあと四人で何やら小声で話し合っている。
「ソウジロウって、あのソウジロウじゃない」
「マッキーが酔うと口にする男の名前だよね」
「「「うんうん」」」
「えっ あの絶倫のソウジロウって、こんなに爽やかイケメン」
コソコソが案外大きい。しかも……絶倫って______女同士そんな話までするのか? 違う小宇宙を垣間見たと思った次の瞬間
「あらっ 短小包茎みこすり半男じゃないの?」
ラスボスがニヤリと笑いながら微妙に大きな声で言えば
ドアの向こう側から
「えっ そんな事ない」
愛する女の声がした。ドア一枚隔てた向こうにつくしがいる。
俺は_________ドアの前で愛を叫ぶ。
「つくし……俺はお前を愛してる」
「………………」
愛する女からは、何の言葉も返ってこない。ドアは天岩戸のようにきっちりと閉まったままで動かない。
「ほらやっぱり、見掛け倒しの粗ちんよ粗ちん」
ラスボスがニヤつきながら口火を切れば、
「テクなし粗ちんで絶倫? それ最悪じゃない」
「マッキーもそれは出たくないよねー」
「「「ねー」」」
次の瞬間、ガチャリと天岩戸と化していたドアが開き
「清子さん、あたしそんなこと言ってない」
口をへの字にさせながら、つくしが四人を怒ってる。
なんか……すげぇシュールだななんて思いがチラッと浮かんだが、そんな思いは直ぐに消えて、愛しい女を抱きしめた。両手いっぱいで抱きしめた。俺の腕の中ではぐはぐしてたけど、そんなのお構いなしに抱きしめた。
「ソウジロウ君 全部嘘だから。マッキー毎日君を恋しがって泣いてたから。じゃっ頑張ってと言いたいとこだけど、ここ壁薄いんでお取り込みはどこか他所でよろしくね」
ラスボス改め清子さんは、牧野を抱きしめ続ける俺の耳元でそんなことを囁いて、美女3人を従えて階下に下がっていった。
「つくし、俺もうお前を離したくないんだ。後生だと思って俺と結婚してくれ」
俺の言葉に、つくしは泣きながら首を振り
「無理だよ。無理だよ。無理だよ」
何度も無理だと口にする。
「俺のこと嫌いか?」
「…………」
「嫌いじゃなければ社会貢献の一環とでも思ってくれ。なっ」
「総二郎は次期家元なんだよ……」
「そんな事が理由で俺を排除すんのか?」
「そんなことって……総二郎にとってそんな事じゃないでしょ。だって貴方にとって茶道が一番でしょ……一番大事なものは、一番大事なものは……捨てちゃダメだよ」
「あぁ茶の道は俺の生涯に渡ってのライフワークだ。でもな_______俺の一番大事なもんは、つくしお前だ」
「ダメダメダメダメ……あたし総二郎に何も与えられない」
「はっ? 何言ってんだお前。お前から俺はどんだけ色んなもんをもらってるかわかってるのか?」
「へっ?」
「へっじゃねぇよ。俺の幸せってお前がいないと成り立たないみたいなんだよ。だからお願いだ。俺と共に生きてくれ」
「でも……でも……総二郎には西門が……」
「だから、それは大丈夫だ。政略結婚なんてしなくてもいいくらいのものを俺は持っている。それでもだめだというならそれはそれまでだ。
西門の未来が心配か?西門にはまだ俺の弟がいるし、他にも親父の弟達の息子達だっているしな。それよりなにより、まだまだ親父は元気だ」
「でも……」
「心配するな、茶の道を辞めはしない。
ただ、お前のことを諦めないことにしただけだ。
なぁ、つくし……俺と共に未来を歩んでくれ」
「総二郎との未来……考えてもいいの?
本当に本当にいいの?」
つくしの瞳から、真珠のような涙がポロリと落ちる。涙さえ愛おしくて、頬に伝う涙をペロリと舐めれば____つくしの口から微かな吐息が溢れる。
つくしの全てが愛おしい。
ありがとうございます
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