ずっとずっと 82
初めて彼女と出逢った、雪月堂。
あの日から、もうじき2年の月日がこようとしている。
あの日、彼女に出逢わなければ僕は、彼女に恋をしなかったのだろうか?
いや、そんな事はない。あの日出逢わなくとも、ここ嵐山で邂逅(かいこ)したように‥…僕等は出逢う運命だったのだ。出逢ったら最後、僕は君に恋をする。それは詮無いこと。
恋をしたら、一緒にいたい。全てを手に入れたい。それも詮無い事。
愛する人が傷ついたら、自分で守ってあげたい。そう思うのも詮無い事。
一度、手にしてしまったら、2度と放せない。それさえも詮無い事。
千尋さんの話しを聞き、愛したら仕方の無い事があるんだと解った。
あんなに愛し合ってるように見える2人でさえ、嫉妬もするし愛に狂う事もあるのだと知った。だから、僕は、醜い自分を飼い馴らす事にした。
僕は君の退路を断ち、司君との幸せを君から奪った。
代わりに僕は君を幸せにする。例えそれが君が一番望むものでなかったとしても‥…君が穏やかに楽しく幸せに過ごせる日々を作っていくよ。
もう一度、彼女の髪を撫でる‥…
「っん?薫?あれ?ここどこ?」
「ここは、嵐山の別邸」
「あっ、そうだったー。また寝ちゃった?」
「一日ハードだったらからね。」
夢心地で話す彼女の髪を撫で、耳朶を弄る。
「うーー‥ん‥…あっ‥」
素顔の彼女はあどけなくて可愛らしい。
夢現の中、よがる彼女はとても色っぽい。
微睡む彼女の胸を愛撫する。少しずつ息づかいが荒くなる。
僕の中で、一枚一枚花開いて行く彼女の身体。 白い素肌が絡み付く‥…とても淫靡で美しい。
ふと思う。
つくしは、あの男に何度抱かれ、何度逝かされたのだろうと。
僕は、想像に激しく嫉妬し、半覚醒のつくしを貫く。
「か‥おる‥…う‥…あっ‥あぁ」
彼女の身体を弄(もてあそ)び、逝かせる事が出来るのは、僕だけに許された特権。
つくしの身体は僕のものだ。もう指一本たりとも触れさせない‥…
***
嵐山の朝は、嵯峨豆腐森嘉の湯豆腐で始まる。美味しい昆布出汁で炊いたお豆腐を生醤油で頂くのが、僕とつくしの好きな食べ方だ。
何でも美味しくいただく彼女だけど、好きなものは、格別な表情を浮かべる。
その顔が見たくて、その顔を見るのが幸せで、好きな食べ物等なかった僕だったのに、彼女と暮らす内に色々なものが好きになっていく。彼女のつくる出汁巻き卵。たまに僕も一緒に作る。父さん母さんも大好きだった鰯のつみれ鍋。焼きたてのクロワッサンとミルクたっぷりのカフェオレ。関東風に、豚バラで作ってくれる肉じゃが。まだまだいっぱいある。
好きなものを好きな人と頂く幸せ。
昼下がり、2人でカウチに腰掛けながらウトウトと微睡む幸せ。
暖炉の前で二人並んで手を繋ぎ、口づけを交わす幸せ。
お風呂上がりの彼女の髪を乾かす幸せ。
僕は、何気ない日常の中に詰まっている、沢山の幸せに気付く‥…
貪欲にならなければ、幸せはすぐ隣にある。
多くを望めば、行き着く先には不幸が待っている。
ならば、彼女が傍に居てくれる幸せだけを見ていこう‥…
パンドラの壷に希望が残ったように‥…
僕の未来にも希望があるかもしれない
***
賑やかな朝が始まる。
つくしが笑い、僕が笑い、皆が笑う。
僕等の幸せな一日が始まる。
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