ずっとずっと 85
一対の絵のような素敵な2人。
2人は恋人同士なのかしら?それともご夫婦なのかしら?
アレンに
「とても素敵な演奏を聴けて幸せです。」
そう挨拶をすると
「あなたに、演奏を聴いて貰うのは、今日で2度目よね?」
あたしは驚き、アレンを見ると
「NYでも、あなたは泣いていたでしょ?」
優しく微笑みながら、あたしに囁いた。
「なぜ?」
「幸せそうなのに、なぜあの娘はあんなに泣くのかしら?って、とても印象的だったのかしらね」
「アレンさんの奏でる音があまりにも切なくて‥」
「うふっ、ありがとう。あっ、アレンと呼んで。とっ?」
「あたしは、つくし。星野つくし。」
「OK つくしね。」
アレンは、あんなダイナミックで官能的な演奏をする人とは思えない程、とってもチャーミングでサバサバとした親しみやすい女性だった。
「9月に東京公演があるの。つくしにチケットを贈るから是非聞きにきてね」
そう言って、アレンのプライベートな連絡先を教えてくれながら
「暇な時にでも、メールを頂戴。」
薫が、慌てた様子で戻ってくる。アレンが軽く片手を上げて「それじゃ待ってる」そう言いながら、場を離れる。
アレンの元にも、あたし達の元にも入れ替わり立ち替わり人が集まり、その後は話す機会はなかったが、彼女とはまた会える。そんな気がした。
***
アレンの奏でる音を聴き、涙を流すつくし。
とても美しい僕のつくし。僕は、君の手を握る。
クライスラーの言う通り、愛で満たされているのにも関わらず、もっともっとと求めてしまう、愛は残酷で悲しい。
アレンの奏でる音に、つくしと2人酔い痴れる。
京社長に呼ばれ、つくしの横を離れた隙に、アレンがつくしに何やら話しかけている。驚いた顔になり、そして親し気に会話をする2人。僕の関与していない人間関係を作らせたくないと思い、慌ててつくしの隣に舞戻った瞬間、アレンは片手をあげつくしと別れの挨拶をしていた。
女性に、嫉妬するなんて‥なんて滑稽な僕。
慌てて戻ってきた僕に、つくしは少し驚いた様子で‥
「どうしたの?」
そう問うてくる。
「ホストの一員として、つくしと一緒に挨拶周りをしなさいって」
咄嗟に嘘を吐くいた僕の元に、入れ替わり立ち替わり人々が訪れる。
僕は安堵をしながら、つくしと2人で挨拶をする。
彼女は、僕の婚約者を完璧にこなしてくれる。
***
演奏を始める前から気が付いていた。彼女がきっと”つくし”だと。
彼女と出会ったのは、これが二度目。
一度目は、NY。私の演奏を聞いて、涙を流した東洋人の女の子。彼女の周りは、優しく温かい光で溢れかえっていた。なのに、彼女はただただ涙を零す。
愛している切ないほど、あなたを、と。彼女の涙が物語る。
泣いている彼女は美しく、そして妖艶で思わず見惚れてしまった。
彼女が、私に話しかけてくる。
とても素敵な演奏が聴けて幸せだ。と。
NYでの演奏した時、つくしを見かけた事を話す。
彼女は、驚いて「なぜ」と聞いてくる。
クスリっと笑って、あの時感じた事を彼女に話す。
東京公演のチケットを譲るので、自分の宛名あてに連絡を送って欲しいと伝える。
宝珠薫が私とつくしを見て、慌てて駆け寄ってくる。
彼ほどの男が、余裕を無くすなんて、愛はなんて滑稽なんだろうか。
フッ 愛は満たされても残酷で悲しい。逆に失望感に見舞われても愛する事を止められない。
愛は愚か、だけど美しい。いや、だからこそ美しい。
私は、愛を糧にして音を奏でる。
愛するあの人に届くようにと‥願いを込めながら
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