ずっとずっと 132
ゆくっりゆっくりと目を開ける。
夢でない事を願いながら‥
司の香り、司の声、司の‥
手を伸ばせば触れられる。すぐ近くに司が居る‥
触れたい‥ 髪に 素肌に 唇に
目を瞑る。
薫と琉那の笑い顔が浮かぶ
琉那に子守唄を歌う薫。
宝物を愛でるように、あたしと琉那を目一杯愛してくれる薫の顔が浮かぶから。
触れてはいけない‥ 司に触れたら、あたしは戻れなくなってしまうから
触れてはいけない‥ 全ての破滅が待ち受けているから
だけど‥ 司の髪に、素肌に、唇に触れたい。
そして‥ 抱きしめて口づけて欲しい。
全てに蓋をする。
宝珠つくし を身に纏い、道明寺社長にご挨拶をする。
「お久しぶりです。お元気でいらっしゃいましたか?」
全てを胸に押し込める。
司‥そう呼んで、飛び込みたい。 許されない思い。
私は微笑む。
少しでも、綺麗だと思ってもらいたい。
私は微笑む。
猾い私は、あんたに愛し続けて欲しいと思うから。
少しでも綺麗に見えるように微笑みながら、当たり障りのない会話を交わす。
「グレンダと、嶺君は、元気にしてますか?」
司の話す声がする。少し掠れた低い声。
この声で、何度愛を囁かれただろう。
司が話す姿を盗み見る。相変わらず、美しい。
**
花が咲き乱れる楽園に、光の女神が現れる。
綺麗だ‥ 素直に素直にそう思う。
お前に言ったら、もうからかわないでって、言って怒るんだろうな。
俺,一度だって‥からかって言った事なんか、ねぇんだぞ。
触れてぇ、お前の美しい黒髪に
触れてぇ、お前の白い柔肌に
触れてぇ、蠱惑(こわく)的なその唇に
指先だけでも、触れてしまったら、お前を離せねぇ
お前を攫って逃げ出してしまうだろう‥
逃げる?どこに?
ふっ、宝珠が草の根を掻き分けても探し出すだろうよ。
お前は、閉じ込められて、自由を奪われる。
お前を攫ったら、道明寺は破滅する。
ただそれだけの結末だ。
俺には、守んなきゃいけねぇもんがある。
お前に、守んなきゃいけねぇもんがあるように。
拳を握る‥
お前を連れ去りてぇな、連れ去って2人で暮らせるなら‥
どこか、海が綺麗に見える田舎町で2人で暮らしてぇな
お前と2人なら、何もいらねぇし、何も欲しくねぇな。
2人で生きれるのならどこでも、俺にとっちゃ楽園だかんな。
見果てぬ夢を俺は見る‥
「お久しぶりです」お前の固い声がする。精一杯他人行儀な声がする。
グレンダと嶺の事を聞いてくる。
何も言えず、何も聞けず、当たり障りのない会話をする。
お前を盗み見る。
ふっ、奥様然として、すげぇ変わってるのに、変わらねぇな
お前のまわりは、あたたけぇなぁ。
熱い気持ちとは裏腹に、時間は刻々と過ぎて行く。
くっ、にしても宝珠の野郎はどういうつもりなんだろうな?
つくしを奪われないように、俺に釘を刺してんのか?
お前など、とるにたりないのだと。
全て自分の掌中にあると誇示をしながら
これで我慢をしろと暗に仄めかしてんのか?
それとも‥‥
ただ、あいつも狂ってるだけなのか?
歪で歪んだ愛‥ どうせ狂うなら狂い咲きすればいい
この庭に咲く花のように、満開に美しく、妖しく咲けばいい。
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