いつかあなたと陽だまりで 12 司つく
「ねぇママ、日本って‥」から始まって、延々と日本の凄さを教えてくれる。マリアが自分の祖国を好きになってくれたんだと思うと嬉しくて、嬉しくてたまらなくなる。
「桜子ちゃんや、マミーパピーの言う事ちゃんと聞いてる?ジョアンとは仲良くやってる?」
あたしの質問に
「うん。大丈夫、大丈夫。あっ、明日ね、ジョアンマミーとパピーと会うんだよ。今日はね桜子ちゃんと2人でお食事に行くの。」
「そう。じゃあ楽しみね。ジョアンのマミーとパピーに宜しくお伝えしといてね」
家を捨て、弁護士の道を選んだ静さん。
ご実家と疎遠のままにきたのだけど‥ ここ5年ほどの間に、不器用ながらも縁が復活している。
ボスのご両親は、フランスに遊びに来るたびに、あたしとマリアの事も必ず呼んで下さって、一緒にバカンスに行ったりしている。養父母とも気が合うらしく、この頃では、皆一緒に出掛けるのが恒例になっている。
有り難い事に、ジョアンにかける愛情と同じように、マリアを慈しみ愛して下さる。
帰り際に必ず
「ジョアン、いい男になるんですよ。」静さんと同じ言葉を口にして、マリアを抱擁し帰られる。その姿を目にして、必ず静さんは苦笑する。「遺伝なのかな?」って。
「じゃぁ、お昼ご飯食べてくるね〜」そう言って画面がクローズされた。
素敵なワンピースを着ていたから、SAKURAの関連のお店にでも連れて行って貰うんだろうなぁー、何食べるんだろうな〜なんて事を、考えたら、あたしのお腹が ぐぅ〜と鳴った。
「うーん、あたしも何か食べようっと」ひとり言を呟いて、冷蔵庫を開ける。
ゴルゴンゾーラとミルクを見つけ、パスタを作る事にした。
ゴルゴンゾーラ、あははっ
司に連れられて行ったワインバーで初めて食べた日の事を思い出す。
最初、カビを食べるの?ってビックリしたんだよね〜
何を見ても何をしていても、あたしの生活から、司が消える事は無い。
窓を開けて、星を見る。 満天の星がみたいなと思う。
マリアが戻ってきたら、一緒に星を見に行こう。土星のネックレスに触れながらそう思う。
**
「桜子ちゃん、ここ凄いね〜」
「うふふっ、ありがとう。」
「マリアね、何だかレディになった気分よ。桜子ちゃんありがとう。」
そうニッコリ笑って、”ありがとう” を言うマリアちゃんに思わず見惚れてしまう。
誰もがうっとりするような容姿に加え、誰もが、好きにならずにいられない、笑顔を持っている。お二人の美徳を、特に先輩の持つ美徳を余す事無く受け継いでいるマリアちゃん。
この子の幸せの為に、先輩の幸せの為に力を貸したいと心から思う。
先輩は私の心を救い、導いて下さった人。
ありがとう 5文字の美しい日本語を元に、SAKURAは、成り立っている。景気の芳しくない今、SAKURAの成功は、偏にこの言葉のお陰、いいえ、先輩のお陰だと思っている。
ゆっくりでいい、地位を確実にして行こうと決心してやってきた。
いつの日か時が来て先輩の力になれるように‥…
今日ここに、道明寺楓氏がいらっしゃる筈だ。
偶然を装い、私はマリアちゃんを、あの人に会わせよう。
「桜子ちゃん、マリア何か可笑しい?」
「何でですか?」
「なんだか、皆が見るの。」
「うふふっ、マリアちゃん、それはマリアちゃんが美しいっていう意味ですわよ。」
ニッコリと、先輩に良く似た笑顔でニッコリと花を咲かせる。
辺りに、優しい風が吹く。
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