明日咲く花

アルコールが入って、ほんのり桜色に頬を染めた牧野が
「そう言えばね、希美社長が言ってたんだけど、夢子さん狙った獲物は逃さないって本当？」
何かを思い出したのか、ククッククッ笑いながら話す。

「狙った獲物？」
「うんうん。すぐるパパさんしかり、ドリームカンパニーしかりだって」
「あぁ、欲しいもんは、何がなんでも手に入れるってやつだろう？」
「そうそう。それも、絶対にバレないように、蜘蛛の巣を張り巡らせるように‥って」
ククッ、お袋の目下の一番の獲物は、牧野お前だぞ？
牧野は気が付いてないけど、希美伯母さんの所で働いてのも偶然じゃないと思うぞ。

「お袋の手腕はわかんねぇけど、欲しいものは手に入れるって言うのは本当だよ」
「へぇー　凄いね～流石、夢子さん」
あぁ、あの人はあんな外見をしてるのに、マジ凄いと思うよ。
お袋が、自分の身内で良かったって、心底思う時があるからな

実の所、お株急上昇の親父なんかよりも数段やり手で、最後は、婆ちゃんが、すぐるの嫁は、夢ちゃんしかいないって太鼓判押したらしいからな。

「そうそう、すぐるパパさんって言えば、朝子さんに会ったよ」
「いつあった？」
「今日だよ。今日。希美社長に用事があったみたいだよ」
旨そうに，焼き鳥を頬張りながら暢気に話してる。

って、婆ちゃん投入か‥　うーーーん‥牧野、申し訳ない。
俺は、心の中で牧野に謝罪しながら話しを繋ぐ。

「牧野、あのさぁー、婆ちゃんは、お袋の上をいくんだ」
「っん？なにが？」
「うーーーん、色々」
「ヘェ～人は見かけによらないタイプ？」
あぁ、それも協力にな。婆ちゃんの事を知ってる奴らは、爺様でも親父でもなく、皆婆ちゃんに媚びへつらってんだぞ。希美伯母さんだって、婆ちゃん行くと背筋が伸びてんだろ？
「そうかもな」
「流石、美作家だね～」
何が流石って言ってるのかは、かわかんねぇけど‥
多分、そう多分‥だけど、流石は、お前に間違いない。
「あははっあははっ」
「突然、どうしたの？きゃっ、こわーい。ぷぷっ」
アルコールが入ってご機嫌な牧野は、クスクス笑い続ける。

これ以上、飲ませるとグデングデン状態になんから、もうそろそろ引き上げるかな。
時計の針は、10時半をさしている。

あははっ、俺、またまたヘタレ認定だな。

「牧野そろそろ行くか？」
「えぇー、もうちょい飲もうよ」
「それ以上飲むと、足に来るから駄目だ」

チェッとかなんとか言いながら、鞄を持って立ち上がって、店を出る。
ご優待券で支払いを済ませたもんだから、ホクホク顔の牧野。

鞄をゴソゴソして、何やら包みを取り出す。
ピンクの包みに白いレースのリボン。
「はい。これ、今日のお礼ですって、夢子さんに渡しといてくれる？」
コイツは、いつもちょっとした心遣いが出来るんだよな。
こんな所に、お袋も婆ちゃんも入れ込んでいるんだよな。

「中身なに？」
「なんだと思う？」
「おっ、質問返しかよ」

牧野が、笑って、じゃぁ、当たったら美作さんの欲しいものをあげるよ。代わりにハズレたら、Dreamの食べ放題に連れて行ってー　ケタケタ笑いながら言っている。

俺の欲しいもん？お前との時間だから、当たっても外れてもこの際どっちでも構わない感じだな。
じゃあ、さっきみた

「ブルーローズ…」
牧野が、目を真ん丸くしながら
「えっ、えっ、えぇ～～何で分かったの？えぇ～～すごい！すごい！」

火照った体を夜風で、冷ましながら…
美作さんって、本当に魔法使いみたいだよね～なんて事を呟きながら感心してる


牧野、魔法使いは、お前のほうだよ。





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