紅蓮 26 つかつく
「‥凌さんのは、メロンの王様が入っているのですよ‥」
「つくしが選んでくれたのなら、一口頂いてみよう」
山下の言う通りなのだ‥
どうせこの屋敷で生きるのなら、妄語を吐いて可愛い女になれば言い。
だけど、反吐が出る。 宗谷に、自分に反吐が出る。
居間のドアが開かれる。
「つくしちゃん、お邪魔しますよ」
ごりょんさんの笑顔が見える。
「お会いしとうございました」
この屋敷の中で、唯一寛げる時間が流れていく。
ごりょんさんの作る時間は、優しい。
宗谷に嫁ぎ、たった一つ良かった事は、ごりょんさんに出会えた事。
ごりょんさんの一人娘‥宗谷家の総領娘は、生まれつき身体が弱く、宗谷の出産を機に寝込むようになり、療養先で生活を続けていたが、宗谷が十五の時に死去している。
宗谷の父親は、優秀な人材を作るために、先代に選ばれた人物。
宗谷が生まれた後に、もう用済みだとばかりに、お金を持たせ離縁させたと聞いている。
肉親に縁のない人。
お金持ちには、良くある事なのだろうか?そんな風に感じる。
「‥ちゃん、いいかしら?」
「あっ、はい。」
「あら、良かった。では約束よ。凌さん、そういうことですからね」
何かが決まったようだ。宗谷の顔が少し怒って見えるのは気のせいかしら?
二階堂と山下の顔も、心なしか曇った表情に見える。
ごりょんさんお一人が、ご機嫌だ。
「ですが、お婆様、つくしは先ほど倒れたばかりですよ」
悋気のこもった声で、宗谷がごりょんさんに何やら言っている。
「あら、まだ1週間も先よ‥それに、凌さん一人でつくしちゃんを束縛し過ぎよ」
「つくしは、身体が弱いんだ。お婆様もご存知の筈だ」
無理はさせないし、山下と二階堂も必ず同行させるから、大丈夫だとごりょうさんも譲らない。
宗谷とごりょんさんのやり取りをみていたあたしに、山下がそっと囁く
「つくし様を、京都にお連れしたいと‥」
あぁ、そうか‥それでか‥ならば
「ごりょんさん、ごめんなさい、私ぼぉっとしていたようで、良く聞き取れてなかったみたいです」
「あら、でも‥大丈夫よね?3泊するだけだし‥」
「3泊でしたら、凌さんもご一緒に行ける時にお邪魔させて頂けませんか?」
「でも‥」
宗谷は勝ち誇った表情で、京都の出張の時にでもそ、ちらには行くからと話している。
山下も二階堂も、ホッとした表情を浮かべている。
本当は、少しでも宗谷と離れて過ごしたい。だけど二階堂の犬がいるのでは、この屋敷にいるのとさして変わらない。
ならば、ここは宗谷の肩を持ち、次に繋げよう。
あたしは、ごりょんさんに丁重に詫び、お茶の用意を始める。
ごりょんさんも、あたしが言うのなら仕方ないと納得してくださった後に
「じゃぁ、こちらには少し長く居させて貰おうかしらね」
そんな嬉しい事までおしゃった。
仕事に戻る宗谷を送り出す際に、宗谷に謝罪する。
「凌さん、ぼぉっとしていてごめんなさい‥」
宗谷は、微笑みながら
「来月から、凪子先生の所に通う手筈は整えたからね」
そう言って、ご機嫌で出掛けていった。
うふふっ、嬉しさがこみ上げて来る。
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