明日咲く花

月の明かりに照らされた温室の中。
南国の花が咲き誇り、異空間を醸し出している。

せせらぎの音を聞きながら、山下の文を思い出す。
主を裏切る行為、決死の覚悟で書いてくれた文。

山下の指示する通りの場所を探す。
むき出しの錠剤の粒を見つける。アフターピルの粒だ。

今日は、取りあえずこれを飲み、消退出血の後にピルを飲み始めるように書かれていた。
曜日事に置いておく場所が変わっている旨も文にしたためられていた。

「ありがとう」
月に向って、謝辞を述べる。


懐中時計の中に、粒を忍び込ませる。

今まで、子を孕まなかった事に安堵して、長椅子に腰掛ける。
バレないように、蝶々の中の文は捨て去った。
蝶々をもう一度折り直し、文机に飾ってある。

我ながら、天晴な行動だと感心する。

だけど‥宗谷の子など孕みたくない‥あたしの切なる願いだ。
その為には、抜かり無く進めなければいけない。


バレたら？　
そんな恐ろしい事を考えないように、頭から振り払う為に、ふるふるふるっと首を振る。


長椅子に腰掛けて、想像の羽根を広げる。


今日は、宗谷殺人事件なんてどうかしら？　

先ずは、手はじめてに
犬二匹が宗谷を騙し、刃を向ける。うふふっ　これは激情型のA案に決定

睡眠薬を飲ませて、竹林に結わえて放置する。
竹は一晩でニョキニョキ伸びていく。
天に向かって伸びて行く。宗谷の身体を貫きながら‥　
ジワリジワリと襲ってくる死。　これは恨みますのB案に決定だ。

題名は？宗谷殺人事件はそのまんま過ぎる。
うーん何にしようかしら‥
我ながら病んでると思いつつも、笑みが止まらない。


死ねばいい。あんな男。抱かれる度にそう思う。
それなのに、あたしの身体は宗谷を受け入れて嬌声をあげる。

慌てて首を振る。今は楽しい事だけを考えよう‥


ぼんやりと、来月の西門さんの家元襲名の事を考える。
家元襲名の儀には、出して貰えるのだろうか？
宗谷自身も出席するのだから、流石にお留守番はないわよねと、考える。
西門さんの襲名式‥　みんなは来るのかしら？

せせらぎの音に誘われて目を閉じる。ウトウトと微睡む。
優しく包みこむように抱き上げられる。
微睡みながら、薄目を開けると、宗谷があたしを愛おしそうに抱きかかえているのが目に入る。
東屋に連れられて、今宵もこの男に抱かれるのだろう。

カウチに寝かされ、髪を撫でられる。あたしは寝たふりを続ける。
「つくし、海で出会ったあの日から，私は君を愛しているよ」
寝ているあたしに、小声で宗谷が囁いている。

海‥？　宗谷と出会ったのは、西門での筈‥　なのに‥海ってなに？
飛び起きて聞きたいけれど‥聞いた所で、はぐらかされるだけだろう。

宗谷の指が、あたしの胸元を弄る。
襦袢がはだけ、あたしの胸が露になる。
宗谷の唇が、舌が、あたしの胸を這う。
頂きを口に含ませ‥絡めとるように舐（ねぶ）る。
胸のピアスを弄ぶ。

あっ‥あぁ‥あぁん　　思わず声が漏れる‥
指が、下半身を弄（まさぐ）ってくる。

態と乱暴にあたしの中に、指を挿れてくる。
太腿に、汁が滴り落ちていく。

着物の裾をたくし上げ、秘部に顔を埋める。
グチョグチョに溢れた蜜を舐めとるように、あたしの秘部を口にする。

「つくし‥きみの此処は、いつでも美味しいね」



せせらぎの音がする。




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