シーソーゲーム 20
季節はすっかり移り変わっている。
花沢邸の楡の木の、緑が隆盛だ。
楡の木を見る度に、この下でお昼寝したら気持ちいいんだろうなぁーと考える。
いつの日か、花沢類が、意地悪ビー玉んに戻ったら、
楡の木の下でお昼寝させてって頼んでみよう。
「早く、ビー玉んになれ!」
あたしは、願う。
「つくし様」
声がして振り向くと‥
花沢類と佳代さんの2人がが立っていた
「‥‥どうしたの?」
「プッ、どうしたのって、ここ俺んち」
「あっ‥うん‥」
「はいっ」
花沢類が手を出してくる。
何? 首を傾げると‥
「今日は、水曜日でしょ?」
毎週水曜日は、優紀と2人でバイトの日。
少しでも心が元気になりますようにと、季節の生菓子をお土産で持ってきていたんだ。
あぁーー 食べててくれたんだ。
嬉しくなって、子犬のようにはしゃいでた。
この瞬間、あたしはわかったんだ。
子犬のように、はしゃいでた花沢類の気持ちが。
好きで好きでたまらない気持ちが。
そっか。これが好きなんだって‥
そっか。だから、あたしここに毎日来ちゃってたんだ。
「はい‥」
「へぇーー紫陽花かぁー 綺麗だね。佳代、お茶淹れて」
佳代さんが、嬉しそうに邸の中に戻って行く。
「入りましたら、お声おかけしますね」
そう言いながら
あたしは、花沢類と2人で、お庭に残される。
「ねぇ、あんた一生懸命なに見てたの?」
「‥‥楡の木‥」
「楡の木?」
「うん。楡の木」
へぇーー と、嬉しそうにビー玉色の瞳が笑った。
「綺麗」
思わず声に出していた。
花沢類の瞳が、あたしを見つめる。
あたしの瞳が、花沢類を見つめる。
バフッ バフッ
「し、し、し、白熊?」
「ククッ アハハッ グレート ピレニーズのトトだよ」
トトに、抱きつかれたあたしは、芝生の上に大の字だ。
それでも、トトはあたしの顔をベロンベロンっと舐めている。
トトを抱きしめた。トトは温かくて、ポペの匂いがした‥
芝生の上に、トトと寝転びながら
「うちにもね、ポペっていうワンコがいたんだよ」
花沢類も、ゴロンっと、芝生に寝転がる。
2人で、ううん3人で星を見る。トトと、花沢類とあたしの3人で。
どれくらいそうしていたのだろう、
「風邪をお引きになりますよ」
佳代さんが、ニッコリ笑って立っていた。
トトと3人で慌てて起き上がる。トトがあたしの横を歩く。
「へぇー、トトがこんなに懐くの珍しいね? ねっ、佳代」
「左様でございますね。いつもは類坊ちゃんにベッタリでございますものね」
トトが、あたしの顔を見上げ、バフッと一声鳴いた。
花沢類がクスリと笑う。
誰かを好きになるって、好きな誰かが自分に笑いかけてくれるのって、
こんなにも幸せなんだと、初めて知った。
そっか‥‥
静ちゃんのワンコなんて言ってゴメンね。心の中で謝った。
そして、あたしは決心する。
佐助さんと静ちゃんの婚約話を壊してやるって。
佐助さんは、静ちゃんじゃなくても笑える。
うん。笑える。
だったら‥‥
あたしは、佐助さんに会いに行こうって、決心する。
火星が真っ赤に輝いて見えていた。
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