シーソーゲーム 30
RRR
沢の近くに、雷が落ちたらしく木が倒れてしまって今日は帰れなくなったと、徳ちゃんと秀美さんから連絡が入る。
この屋敷の中に、2人きり‥そう考えると居心地はわるいのだけど‥そんな思いも一瞬で過ぎて行く。
花沢類が、お茶を啜りながら
「牧野が、クゥちゃんだったんだね」
「花沢類が、お兄ちゃんだったんだね」
目を見合わせクスクスと2人で笑う。
「あれ、冒険じゃなくて迷子だったよね?」
「違うよ。冒険」
「違わないよ。迷子」
冒険、迷子で言い合って
「じゃぁ、冒険でいいよ」
「じゃぁ、迷子で構わないよ」
2人の声が重なって、
「じゃぁ、やっぱり冒険」
「迷子で決定だね」
刹那‥‥
ガラガラガラーン ドォン 稲妻が光り、大きな音がして、部屋中の電気が、一斉に消えた。
「キャッ」
「大丈夫だよ」
思わずしがみついたあたしを、ギュッと抱きしめてくれる。
抱きしめられたまま、ソファーに腰掛ける。
花沢類の腕の中は、まるであたしの為に作られたみたいで‥
ずっとずっと、この腕の中に抱かれ続けたいと願っていた。
「今日は、枯れ草がついてないね?」
そんな風に戯けながら、彼の手があたしの髪の毛を優しく優しく撫でる。
「クゥちゃんに、会いたかった」
「あたしも‥お兄ちゃんに、会いたかった」
「牧野に、会いたかった」
「うん‥会いたかった」
真っ暗闇に、あたしと彼の鼓動が響く。
真っ暗闇に、夏みかんの香りが充満する。
花沢類の腕に力が入り‥ふわっと、口づけを落とされる。
口づけされた瞬間に、あたしの身体の中に、この男が欲しい。そんな思いが駆け巡った。
雨が、風が強く強く吹き荒れている。
あたしは、花沢類にしがみつく。花沢類の唇があたしの唇に触れる。
舌があたしの唇をこじ開ける。生き物の様に舌と舌が絡み合い、貪り合う。
息も出来ない程、息も忘れてしまう程、あたしの舌は花沢類を求める。
「つくし‥」
彼の声が、あたしの名を紡ぐ。自分の名前が愛おしく感じるほどに、甘い声。
「花沢類‥」
「くすっ、類って呼んでご覧」
「る、る、るい」
「類‥だよ。言えるまで辞めないよ」
そう言って、類の舌があたしの首筋を這う。
「る‥い」
「クククッ わざと言ってる? それじゃぁ辞めないよ」
指先が、あたしの背に触れる。
美しい音を奏でる類の指先を、ほっそりと長い指先を思い出す。
「‥‥類、辞めないで‥」
激しい口づけが降ってくる。大人の口づけが降ってくる。
類は、あたしの全身に口づけを落として行く。
全身を紅い花びらが舞う。
窓の外では、強く強く風が吹き、雨が降っている。
類とあたしは、一つになった。
↓ランキングのご協力よろしくお願い致します♥


♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
- 関連記事
-
- シーソーゲーム 33
- シーソーゲーム 32
- シーソーゲーム 31
- シーソーゲーム 30
- シーソーゲーム 29
- シーソーゲーム 28
- シーソーゲーム 27