紅蓮 58 つかつく
光を手放さなければいけなかったのに、
手放す勇気が持てなかった。
真っ直ぐで、キラキラ輝く私の光。
この光があったから、私は生きて来れたのかもしれない。
それなのに、
私はこの光を手放せないで、自ら消してしまった。
私は、大きな間違いを犯してしまったのだろう。
どんなに怖くても、どんなに真っ暗闇でも、飛び立てば良かった。
自由に飛び立てば、
いつかいつの日か、
どこか違う出口に辿りつけたかも知れなかったのに。
太陽の光のようなあなたを、
罪の世界に連れ込んでしまった。
それなのに私は抱かれ続け、
あなたを穢し続けている。
狂おしい程に、あなたを愛している。
目を閉じて、初めて宗谷の邸連れられて来た事を思い出す。
なんの話し合いがされたのか、
一体幾らの金銭が動いたのかは知らないけれど、
私は実父に売られたのだ。
私は6つ あなたが5つの年だった。
母親違いのあたしの弟。美しいあたしの弟。
実父は、宗谷の総帥だったお爺様に才能と容姿を見込まれて、
宗谷の跡継ぎを作る為に、凌のお母様に宛てがわれたのだ。
凌が生まれた翌年には、莫大な慰謝料を手にし、
お払い箱だとばかりに追い出された。
当時付き合っていた私の母は絶望の中で、私を生んだ。
身よりもなく天涯孤独の母だった。
だけど‥‥いっぱいいっぱい愛してくれた。
母が死んだ時、実父の元に連絡が入り私は引き取られた。
針の筵のような家だった。
血の繋がりだけが存在してる実父と、義母と小さな妹達。
邪魔者のあたしは、宗谷の家に売られたのだ。
私が美しく賢い子供だったから。
取引は成立したのだろう。
凌のお母様は、凌を産んですぐ体調を崩されていた。
療養先で日々の大半を過ごし、お婆様もそれに付き添う生活をされていた。
使用人の人々は居たけれど‥‥
寂しかった凌と私は、
それから10年‥2人の世界で生きて来た。
時折いらっしゃる、お婆様はお優しい人で、
血の繋がりのない私の事まで可愛がり慈しんで下さった。
お爺様とて同様だった。
あの日まで、内情はどうあれ、
実の孫と同じように大切にしてくれたいたのだから。
お爺様に犯された16の時、
お婆様に知られ悲しむ姿を見たくなかった。
大事な娘さんを亡くされて、
悲しまれているお婆様を、あれ以上傷つけたくなかった。
私は必死に隠した。
留学する凌に付き添って、
海外に行こかどうしようか悩まれていたお婆様の背中を押したのは私だ。
2人が旅立った時は、これでバレずに済むと安堵したほどだ。
お婆様と凌‥この2人を悲しませたくなくて、ただそれだけの為に私は生きていた
5年間‥ あの男が私を弄び続けても、
凌が私の救いだった。私の希望だった。
だから、壊れないでいられた。
時折、送られてくるエアーメイルが、
外界と私を繫ぐ数少ない楽しみの一つだった。
太陽の光のようにキラキラと輝いていた。
それを私は穢してしまった。
自らの手で‥自らの意思で‥
愛する男の寝顔を見つめながら、私は涙を流す。
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