19
2016
ciel 類つく 06
彼女が倒れた瞬間‥‥この世から彼女が居なくなってしまったらそんな気持ちが過った。抱きかかえ、部屋に運び込む俺の顔は顔面蒼白だったようで‥‥屋敷のものが心配げに俺を見つめた後、何も言わないのに、医師が呼ばれた。「詳しい検査は、また後日してみないと何とも言えませんが、他に異常は見受けられませんので、もう少しで目を覚まされるかと思います」医師の言葉に安堵する。医師が告げた通り‥‥1時間ほどでつくしが目を覚ます...
18
2016
ciel 類つく 05
話は、トントン拍子に進んでいく。政略結婚なんだから当たり前なのだけど‥‥まるで、夢の国のお姫様になった気分で、あたしの心は浮き足立っている目と目があった瞬間‥‥あたしは花沢さんに恋をした。でも?花沢さんは?手を掴んだからって言って、あたしを好きとは限らない‥よね?彼の家で花沢さんを待ちながらソラに話しかける。なぜなのか、花沢家の皆さんは、庭師の人迄あたしに親切で、不思議な気持ちになる。女中頭の佳代さん‥...
17
2016
ciel 類つく 04
全てを知ったのは、偶然だった。時に神様は、素敵な悪戯をするもんだと笑ってしまった。いや、この場合はソラのお陰かな?ソラがニャーニャー鳴いて俺を呼んだ。どこだと探し歩けば、地下室の書庫だった。ソラが、ピョーンと跳ねた。跳ねた瞬間‥‥‥シェルがそこにいたんだ。ソラと、ソラが落としたシェルを抱えて部屋に戻った。あの頃のシェルが、少しだけ澄まし顔で写ってた。「父さん、もう一度この方とのお話を進めてくれません...
16
2016
ciel 類つく 03
あたしには、17の年の半年間の記憶がない。ある日突然消えて、ある日突然帰って来たのだと父母が言う。空白の時間に一体何があったのか?あたしは憶えていない。家を飛び出したのは、あたし達の間では良くある些細な出来事が原因だった。まだ幼かったあたしは、自分の立場に直面した時とてもショックを受けたんだ。突然消えたあたしを、両親は死ぬ程に心配して血眼にさがしたけれど見つからなかったらしい。そして、突然にまた戻っ...
15
2016
ciel 類つく 02
「ここって‥‥」「うん。シェルと出会った別荘‥嫌だった?」あたしは、慌てて首を振る。湖に行きたいと行ったのは自分だもの。ただ、黒い魔の手があたしを引き寄せているような気がして‥ここは、怖い。頭が痛くなって、ブルッと身体が震える。「寒い?大丈夫?風邪ひいたら大変だから上を羽織って」綺麗な瞳でニッコリと笑いながら、あたしの肩にカーディガンを羽織らせる。この目が好き。この声が好き。この手が好きううん。類の全...
14
2016
ciel 類つく 01
「おはよう、起きて。ねぇ起きて」「あぁ、おはよう」「おはよう、寝坊助さん」天使が笑う。笑い顔があまりにも綺麗で見つめれば「どうしたの?何かついてる?」キョトンとした顔で聞いて来る。「あっ、いや‥朝から綺麗だなと思ってね」ポッと顔を赤らめて、天使が笑う。空に帰ってしまわないようにギュッと抱きしめる。至極、あどけない顔をして笑っている目の前の彼女は、壊れている。いや‥彼女だけじゃない。俺も壊れているのだ...