明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

29

2016

イノセント 01 R 司つく

無意識に人差し指を噛みながら、幾度も、幾度も、腕時計で時間を確認する。女が約束の時間を過ぎる事など無いのにも関わらず、男は、女が部屋に来るまでイライラと落ち着かない。記憶をなくし、NYでの8年間__怜悧な経営者として名を轟かせ感情などどこかに置き去った筈なのに。部屋のベルが鳴る。女は合鍵を持っているにも関わらず、決して鍵は使わずにベルを鳴らす。ジュッ吸っていた煙草の火を忌々しげに灰皿に押しつけながら...

01

2016

イノセント 02 司つく

司の寝息を確認してから気が付かれないように、そっとベッドを抜け出す。大きな満月に司の顔が青白く光っている。一瞬、そう一瞬‥‥つくしは、彫刻のように整った司の顔に手を伸ばしそうになって、慌てて手を止める。自分の行動を戒めるように踵をかえしてシャワーを浴びる。温かいお湯が全身を心地よく流れ落ちていく。鏡に映るつくしの身体には、無数の花弁が舞っている。全身に咲いた花弁を消すようにゴシゴシと身体を洗う幾ら洗...

03

2016

イノセント 03 司つく

酷く蒸し暑い夜だった__七時を過ぎても涼しくなるどころか、気怠い暑さが続いている。店を出たばかりだと言うのに、汗で身体がべとつきだしている。「蒸すね」「一雨来るのかな?」「あぁ、凄く蒸してるもんね」そんな会話を交わしながら雅哉が予約した店にタクシーで向かう。着いた先は、都内でも屈指の高級料亭だった。食い道楽の雅哉は、時折とても高級な店につくしを連れて来るのだ。「ここはね、東京なのに美味しい鱧を食べ...

05

2016

イノセント 04 司つく

つくし達を乗せたタクシーを射る様な視線で追いながら男は、北原に向かって「__今のは、どなたですか?」そう問うていた。「新堂はんの所の息子はんと、その彼女はんと仰っておりましたなぁ」「どうかされはりましたか?」「あっ、いや_女性の方が知り合いと似てましたので__」「そうどすか、名前は確か__牧野さんとおっしゃっておられましたよ。いやー私の学生時代の友人の会社に勤めているとかで」「北原さんの学生時代の...

06

2016

イノセント 05 司つく

「……ちゃん……つくしちゃん……じっと見てどうしたの?」「あっ、ごめんなさい」「ううん、俺がビックリさせちゃったから……だよね?やっぱり、戸惑わせちゃったよね」雅哉は、申し訳なさそうな表情を浮かべながら必死に謝っている。つくしは、雅哉をただただじっと見た後に漸く口を開く。「雅哉さんには、変わりがないんだよね?」「_勿論だよ。俺は俺だよ……それとも、少しは、変わった方が良いかな?」少し戯けながらでも真剣な眼差...

08

2016

イノセント 06 司つく

雅哉に抱きしめられるのは、決して初めての事ではない。それなのに身が強張る。決して無理に強いられることなどないのにも関わらず。雅哉の指が黒髪を掻き分けながら、首筋から項を撫で上げる。つくしは、何かを必死に堪えてるようにギュッと目を瞑る。これから起きる事に対して許しを得るかのように。つくしの胸元に指先が緩しなやかに這っていく。一瞬、つくしの眉根が寄せ合わさった。まるで勘の強い子供のように。雅哉の唇が耳...

06

2016

イノセント 07 司つく

マンションの前でタクシーを降りたつくしは、無意識に星空を見上げ立ち止まる。いつからの癖だろう?彼女は時折こうして空を見上げる。見上げる瞳には、この星空が映っているのだろうか?それとも何か別のものが映っているのだろうか?ギィッー バタンッ パチンッ 灯りをつける。「ふぅっーーーー」溜め息を吐きながら手を洗い冷蔵庫を開けポットに入ったジャスミンティーをグラスに淹れる。コポコポコポッ グラスにジャスミン...

07

2016

イノセント 08 司つく

再び東京に出て来て3年余り__繰り返されてきた休日の風景だ。掃除、洗濯、買い物に常備菜作り。ここに引っ越しを決めたのは、駅から明るい所を通って帰れるのにも関わらず太陽が良く当たる事と、ダイニングキッチン、バス、トイレがきちんと独立してる事だった。お給料の半分近くを家賃と光熱費が占める事になるがつくしは、この暮らしに至極満足していた。快適な住まいとやり甲斐のある仕事__そして安心出来る雅哉という恋人...

08

2016

イノセント 09 司つく

忙しい毎日が続いていた。雅哉も手が離せない状態が続いているようで__あの日からひと月ほど会えない日が続いている。少ない時間を見つけては、こまめに連絡を寄越して来るのは雅哉の誠実さとつくしへの愛なのだろう。「牧野、昨日頼んでおいた図面出来てるか?」「この強度計算ってこれでよかったんだっけ?」一級建築士の資格を収得したからといってまだまだ下っ端なつくしの仕事は、縁の下の力持ち的な役割を担う事が多い。「...

09

2016

イノセント 10 司つく

「あっ先生、今回のクライアントって?」つくしの問いに「あっ、ゴメン、ゴメン、肝心な事話してなかったよね__っと、もうじき着くんだけど__道明寺HDホールディングスの都市開発なのよ。まだ内々みたいなんだけどね」まるで暗い穴の中に吸い込まれていく様に道明寺HDの地下車庫に車が入っていく。「牧野、どうしたの?具合悪い?」つくしは首を振りながら「__あっ、いえ、あっ、お腹……そう、お腹が空いちゃったみたいで」「...

10

2016

イノセント 11 司つく

面白い玩具を見つけた___男は、女を見かけた日にそんな事を思った。直ぐさまに女の現状と一緒に居た男の素性を調べ上げさせた。瞬時に判断を下し男の稼業に罠を仕掛けた。同時に、女の住む部屋に忍び込ませパソコンを遠隔操作出来るようにさせた。流石、天下の道明寺___裏の世界にも精通しているのだろう……僅か2時間ほどで全ての手筈が整えられたのだ。あの日から……つくしの行動は全て見張られている。男の頭の中を 牧野つ...

12

2016

イノセント 12 司つく

美しき邪神__道明寺司は、日本は勿論海外でも有数な財閥の総領息子であるのと同時に、人並み優れた才智と美貌を併せ持つカリスマ経営者として名を馳せているNYに渡ったこの8年の間で他者に対してのあからさまな凶行は鳴りを潜め、王者然とした佇まいを身につけていた。だがそれは、本物の権力を得たが為に形を変えただけなのだ。指一本動かさぬとも、眉を顰める__たったそれだけの事で片がつくのだから。現世に、男が欲しいと...

14

2016

イノセント 13 司つく

カチャ カチャ玄関を開けるとむわっとした空気が身体に纏わりついた。「ふぅっーー 暑い」エアコンのスイッチを付け、お風呂のスイッチを押してから化粧を落とした。纏めていた髪を解けば、サラサラと黒髪が揺れる。……昼間の事を反芻する。予期せぬ司との再会に、息が止まるかと思う程に驚き咄嗟に立川の後ろに隠れてしまったことを思い出していた。男は、つくしの事などまるで覚えてなどいなかった。会えばあの時のように否定的...

16

2016

イノセント 14 司つく

ジリジリジリーンいつもの朝がやってくる……ベッドで微睡みながら今日を思い浮かべる。午後からは、立川と共に道明寺HDに向かい先日見せた数パターンのイメージ画に対しての最終的な判断を仰ぐ形になっている。本決まりになれば設計管理とし新和が加わる予定だ。新和が道明寺の新事業に加わるという噂は、すでに業界内に流れこのふた月近く下降の一途を辿っていた株価もここにきて盛り返しを見せている。契約が締結されれば今期分の...

20

2016

イノセント 15 司つく

真っ赤な夕陽に照らされながら___沈黙を破ったのは、つくしだった。「出向先の部署は、どちらになりますか?」松永の目がにこやかに微笑みながらつくしを見て「都市開発部に入って頂く形になります」つくしは、一つ頷いて立川に向き直った。「先生、出向のお話。私では心許無いかもしれませんがどうぞ宜しくお願い致します」「牧野、いいの?」つくしは、ニッコリと微笑んで松永と立川に向けてお辞儀をした。つくしが一生懸命作...

22

2016

イノセント 16 司つく

「ふぅっ__」小さく息を吐きながら窓の外を見てコキコキと首を鳴らし背伸びをする。サインを終えたつくしに業務に対する一通りの説明がなされ、新しい同僚が紹介された。挨拶のあと、つくし立ち会いのもと引っ越し業務が行われる。「__牧野さん、重複するものに関しては、如何なさいますか?」「重複ですか?」「えぇ、家電製品は全て備え付けになりますので、お預かりさせて頂く形で宜しいでしょうか?」そんなやり取りの後、...

24

2016

イノセント 17 司つく

ギリッ ギリリ絡み合った視線を見た瞬間……青い炎が司の心に点火する。ギリッ ギリリ面談の時間が終わりを告げ、雅哉がつくしと部屋を出ようとした瞬間__「牧野に聞きたい事があるので少し残って貰えるか?」司から声がかかる。内心、驚きながらも他の者に悟られない様につくしは、返事をした。雅哉が名残り惜しそうにつくしを見て、束の間交わせられる瞳と瞳。ギリッ ギリリ司の胸に醜い炎が燃え上がる。「あの__社長……どん...

26

2016

イノセント 18 司つく

ギリギリとした心の痛みは、堪え難い程の頭痛を呼び起こす。司が眉を顰めこめかみを押さえた「どうされました?」「………」無言の答えが返って来る。「__あの、説明させて頂く前に化粧室に行ってきても宜しいですか?」大迫に声をかけた。つくしは、化粧室には向わず給湯室に向った。お湯を沸かてして丁寧にコーヒーを淹れ盆に乗せた。かつて司のために淹れた事のあるコーヒーを。コンコンッ社長室の扉がノックされ盆を持ったつく...

28

2016

イノセント 19 司つく

寝息を立てて眠るつくしの頬を指先でなぞる。赤い唇に触れれば司の中に陶酔感が襲ってくる。睫毛に舌を這わせながら耳朶を弄ぶ。眠ったままのつくしは、まるで大きなマリオネットのようだ。つくしの身体にかかった布団をはぎ取りパジャマのボタンを一つずつ外していく。司の指先が微かに震えている。ボタンを外した瞬間、つくしの乳房が露になる。女など性欲を処理するための道具でしか無かった筈なのに……白い肌が上下する度に狂お...

30

2016

イノセント 20 司つく

倫子が話すのを上の空で聞きながら___そんなそぶりも見せていなかった司の事を考えていた。「とは言え__持ち物というだけでお見かけした事はないのだけどね。あら、長々とお話しちゃったわね。牧野さんこれからお仕事だったわよね」倫子が最後に放った言葉で資産活用の一環で持っているマンションだと合点がいきホッと息を吐きながら「あっ、はい。またお会い出来るのを楽しみにしております」会釈をしながら席を立てば倫子が...

02

2016

イノセント 21 司つく

__眠くて眠くて仕方ない様子でつくしは、今日何度目かの小さな欠伸を噛み殺す。眠気に拍車をかけているのは司の傍に何もせずに待機している事だ。午後迄の間にやった事と言えば__コーヒーを淹れた事と昼食のお供。視察だと言っていたが……つくしの業務には何の関係もない仕事だ。気が狂いそうな程の退屈な時間が流れる。白く美しい裸体を小さく漏れた吐息を思い浮かべるながらつくしを見つめる。自分の為に作られたような完璧な...

04

2016

イノセント 22 司つく

マンションのエントランスでコンシェルジュに声を掛けられる。「牧野様、お荷物をお預かりさせて頂いておりますのでこれからお届けに上がらせて頂いて宜しいでしょうか?」「あの、宜しければ持って参りますが」「お夕食の方もご指示頂いておりますので__それにかなりの量をお預かりしておりますので……」「……あっはい解りました。では宜しくお願い致します」つくしが部屋に戻り数分後ハンガーラックに掛かった大量の衣服が届けら...

06

2016

イノセント 23 司つく

雨が降っている。つくしは、車の窓に雨粒があたるのをぼんやりと眺めながら……何故毎晩の様に会食に付き合わなければいけないのだろうかと考えていた。大迫からは、これからのプロジェクトで関係してくる人物だとは説明を受けているが__解せない思いが積もって行く。「牧野、資料を」司に声を掛けられて慌てて資料を手渡せば、いつ何時も気を抜くなとばかりに「チィッ」と小さく舌打ちされる。つくしが気を抜ける時間などなく会食...

08

2016

イノセント 24 司つく

平日定時で帰宅出来ないと言うよりも__司に付き添い帰りは車で送られいるので食材を買いに行く暇すらない毎日だ。とは言え買いに行く暇があったとして__オフィス街の中につくしが愛用していたようなスーパーがあるわけでもなく……逆に高い買い物になってしまうのだ。平日の朝同様__カフェに行き食事をとる。和食と洋食の二種類だが凄いのはメニューが毎日違う事だ。お陰で飽きる事なく食事を楽しむ事が出来る。「こんなに豪華...

10

2016

イノセント 25 司つく

立川が米神を押さえながら「ふぅっーー あの子あんなに強いなんて思わなかったぁ。って、蒔田さんは帰ったの?」「あっ、はい。先生、蒔田さんてどこかのお嬢様ですか?」「飛田さんからの紹介だから__そうなのかな?……って、なんかあった?」「あっ、いえ。昨日タクシー呼ぶかって聞いたら迎えの車が来ますからって言ってたんで__」「あらっ、じゃぁガチでお嬢様かな。それにしちゃ随分と人なつこい子だこと」つくしの淹れた...

12

2016

イノセント 26 司つく

苦しそうに呻きながら、つくしが手を伸ばす__側に居た雅哉がつくしの指先を掴み手を握りしめた。つくしの意識が覚醒していき目を開けた。朦朧とした意識の中に入って来たのは「つくしちゃん?」つくしの手を握りしめ心配げな表情でつくしの顔を覗き込む雅哉の顔だった。「まさ…やさん?」「そうだよ。良かった」夢を見ていたのだと安堵する。医師が呼ばれ一通りの検査が行われた。結果、何の異常も見当たらなかったが大事をとる...

14

2016

イノセント 27 司つく

長友を見送った後、立川と雅哉、杉下に連絡を入れる。程なくして大迫から連絡が入り「明日から__牧野さんのマンションの前に迎えの車が参りますのでそちらに乗って下さい」「あの__一人で行けますが」「社長命令ですので」有無を言わせない言い方で電話が切られた。「はぁっーー」つくしは、大きな大きな溜め息を吐いてごろりとソファーに横になった。三十分程ソファーに横になったあと鬱屈した気分を一新するかのように勢い良...

16

2016

イノセント 28 司つく

大迫の後ろに付き添いながらメープルに足を踏み入れた。メープルの絢爛さと重厚さに未だにつくしは、圧倒される。立川と共に幾つもの国に行き様々な一流ホテルに行った筈なのに__メープル TOKYOはつくしを17才の少女にもどしてしまうのだ。幾度となく足を踏み入れたインペリアルスイート__つくしは息を整え大迫の後ろに位置した。呼び鈴を押し幾つかのドアを開ければガウン姿の司がバスルームから出て来る。洗い立ての髪は、...

18

2016

イノセント 29 司つく

煌びやかな光と喧噪の中__司の隣りで引き攣る様に笑みを浮かべ続けたパーティーがようやく終わりを告げる。皆を送り出した後、司はそのまま部屋に引き上げていった。「フゥッ」誰にも聞かれないようにつくしは小さな溜め息を洩らした。「牧野さん」まるで溜め息が聞こえていたかのようなタイミングで後ろから大迫に声かけられ身体をビクッとさせながら後ろを振り向く。「はい。どうしましたか?」「お疲れさま」大迫からいつもの...

20

2016

イノセント 30R 司つく

司の手によってつくしの白い腕に、ダイヤモンドで埋め尽くされたセルペンティの腕時計が嵌められる。それは、まるで本物の白蛇のようにつくしの腕に絡み付く。司は、つくしの目を見つめながら人差し指を掴んでてねっとりと舐る。「……辞めて下さい」「辞めてだと?お前は俺のものだ。お前に拒否権など存在しないんだよ。それとも何か?立川も新和も潰すか?」強張るつくしの身体を抱き寄せて指先を一本ずつ口腔内で弄びもう片方の指...