20
2017
イノセント Fin 司つく
つくしは、司にピタリと身体をくっ付けて目を閉じる。 そんなつくしが愛おしくて愛おしくて__司はつくしをギュッと抱き締め目を閉じる。 もう暗闇は怖くない。 つくしには司が、司にはつくしがいるから。 二人の身体に、心に、穏やかな眠りが訪れる。 真っ白なお月さまが、二人の幸せそうに眠る顔を照らしている。 軽やかな二人の寝息が微かに聞こえる。 *-*-*-*-* 燦々と輝く朝陽の中、二人同時に目を覚ま...
19
2017
イノセント 78R 司つく
「……ま、ま、牧野?」 「牧野じゃない……つくし」 耳元でピチャピチャと耳孔を舐める音と、つくしの艶かしい声がする。 堕ちていく 堕ちていく 快楽に堕ちていく 「つ、く…し」 つくしは全てを包みこむように、妖しく笑いながら愛を囁く。 「司を愛してる…...」 愛してるの声が甘い麻薬のように司の耳に響く。 「つくし……」 首元をつくしの舌が蛇のように這う。 「ねぇ、司、愛して…る…愛してる…愛...
18
2017
イノセント 77 司つく
着いた先は__色とりどりの下着が並ぶランジェリーショップ 2時間後___沢山のランジェリーとナイトウェアをそれぞれが抱えていた。 「さぁ、あんま遅くなると司がヤキモチ妬くからね~」 邸に戻れば……滋の言う通り司がピキピキしながら待っていた。 「滋、遅いぞ! 周防がさっきからソワソワしてるぞ」 周防が隣りで眉間に皺を寄せながら首を振る。滋もホンファも笑いを噛み殺しながら 「まぁ...
17
2017
イノセント 76 司つく
天井のファンがカタカタと音を立てながら回っている。窓越しにはアスファルトからゆらゆらとした陽炎が上がっているのが見える。 つくしは、ぼんやりとその光景を眺めながら、外は今日も、うだるような暑さなんだろうな……そんなどうでもい事を考えていた。 黙り混むつくしはお構い無しとばかりに 「でもさぁ、皆の話しを追憶してあの日の純粋な気持ちを取り戻したんだから、ある意味凄いよね」 「あらっ、追憶...
16
2017
イノセント 75 司つく
「つくし?大丈夫?気分悪くなった?」 ホンファが心配そうにつくしの顔を覗き込む。 「ううん。大丈夫__あたし、雅哉さんの事、道明寺を吹っ切るために中途半端に受け入れてたんじゃないかって……結果的にそんな気持ちが雅哉さんを追い詰めたんだって、申し訳なくて仕方なかったの」 「つくし___」 「……ホンファさん、千里さんに会ったら__ありがとうって伝えておいてくれないかな」...
15
2017
イノセント 74 司つく
「で、で、で、司の事で相談ってなに?」 バナナの皮に盛られたブリヤニライスにフィッシュ・ヘッド・カレーをかけながら、滋がつくしに聞いて来る。 「うーーん。ま、ま、先ずはカレーを食べてから。あっ、ホンファさんあたしに何か話しがあるって言ってたけど」 「ぁあ、うーーん、それこそ私の話しは、カレーを食べてからがいいかな」 「あらあらっ、二人とも歯切れが悪いんだ。 あっ、コレ美味しいね~」 「あ...
13
2017
イノセント 73 司つく
「つくし~」 滋とホンファの声がして司が軽く眉を顰める。その様が可笑しいと後から来た周防が笑う。 つくしが目覚めてからよく見られる光景だ。 「ドウミョウジ、心配しないで__ラブラブな二人の邪魔をするほど飢えてないから」 ウィンクをしながらホンファがイタズラ気に笑う。 「……でも、つくしがその気なら私は何時でもつくしを受け入れてよ」 ホンファがつくしに向き直り優しく...
12
2017
イノセント 72 司つく
「道明寺__?」 つくしが司の顔を心配そうに覗き込み 「どうした?なんかあった?」 司は柔らかく笑い 「お前と一緒に居れて、すげぇー幸せだなって」 「えっ」 つくしの頬が赤らみ__司の胸にそっと顔を埋める。司がギュッとつくしを抱き締める。 「風呂入るか?」 「うん」 司は、つくしを抱き上げてバスルームに連れて行く。最初は恥ずかしがっていたつくしだが、司がつくしの事を人任せにするの...
11
2017
イノセント 71 司つく
つくしは、再び目を覚ます。 暖かい吐息を、人の温もりを感じながら目を覚ます。 目を開ければ愛おしい人が自分を優しく抱きしめている。心がふんわりと優しく包まれる。つくしの顔に笑顔が広がっていく。 司が目を覚まし、つくしと視線が重なった。 「牧野、牧野、牧野か?」 慌てる司の声音が可笑しくて、つくしは思わずクスリと笑って 「き、こ…てる」 「あっ、ごめんっ」 司は、ゆっくりと起き上がっ...
10
2017
イノセント 70 司つく
パタンッ静かにドアが閉められて滋が部屋を出て行く音がする。開け放たれた窓から風が吹き、パタパタとシフォンのカーテンを揺らしている。椅子を引き楓は、つくしの隣りに腰掛ける。「こんな姿であなたに会うなんて……皮肉よね。ねぇ、牧野さん、私に啖呵を切った貴方はどうなさったの?もう一度あの勇姿をお見せなさい」そんな言葉を皮切りに「ずっと、お待ちしていたのよ__いつ私の前にもう一度来て下さるかって。私ね、嘘つき...
09
2017
イノセント 69 司つく
天上の調べが聞こえる。 甘く蕩けそうな声が唄を奏でている。 暖かな温もりがつくしを包む。 幸せな温もり。 いつまでもこの温もりに抱かれていたい。 深く深くつくしは、眠る。 眠りを揺り動かすように柔らかな風が頬にあたる。 「おっ、きょ…は、かおい…がい…な」 バリトンの声がしてふわりと優しく包まれる。 誰だろう? もしかして__道明寺? うふふっ、...
08
2017
イノセント 68 司つく
つくしが目覚めずにひと月ほどたった。 柔らかな時間が過ぎていく。 どうしてもつくしの隣りで行えない会議の時以外は、司は側に居る。 その会議とて同じ邸の中に作らせたミーティングルームで行っている。会議の時は、滋がつくしを見守る。 あの日__いつも通り周防にくっ付いてやってきた滋がつくしが目覚めるまで自分も近くにいさせて欲しいと懇願したのだ。 「あのさぁ、司が会議の時だけでもつくしと一緒に居...
07
2017
イノセント 67 司つく
司は、つくしの記憶を失ってから避け続けていた親友達に連絡を取った。 「牧野に、俺に……会いにきてくれないかな?」 司とつくしの元を訪れた類の第一声は 「へぇっーーー やっぱり記憶が無くても惹かれちゃうんだ。やっぱり司だね」 類に総二郎、あきらが語ってくれた17の道明寺司は、純粋で好きだけが詰め込まれいた。 「俺__すげぇ幸せだな」 力づくで手に入れてしまったつくしを思い司の瞳から涙が零れ後悔が...
06
2017
イノセント 66 司つく
ブランケットを幾重にも巻かれたつくしが司の胸に抱かれている。 まるで鼓動を感じていなければ不安でしょうがないと言う様に司は、つくしを無言で抱き締めつづけている。 ヘリの音だけが……バタバタバタと耳につく。 緊急搬送されたつくしの意識が戻らないまま手術が行われた。 手術室の赤く灯るランプを、血の気のない表情で両手を強く組み合わせただただ真っ直ぐに見つめている。 ランプが消えた瞬間 ...
04
2017
イノセント 65 司つく
司の目にクルーザーが見えてくる。あの船につくしが乗っている。司の心は逸りながら船を待つ。物陰に隠れながらつくしを待つ。大粒の雨が司の身体を激しく濡らして行く。心がつくしを愛おしい、愛おしいと叫んでいる。滑稽な程につくしを愛し求めている。雅哉が出て行った部屋でつくしは、足枷を取ろうと必死にもがいている。ジャラジャラと音が鳴る。つくしの足許にキラリッ 銀色の金属が光り輝く雅哉は、つくしとの未来を思い浮...
02
2017
イノセント 64 司つく
吹き始めた風が雨を連れて来る。ポツン ポツンとクルーザーの丸窓を濡らし、風浪が船を揺らす。 「雅哉…さ…ん、いつから、知ってったの?」 「最初から知ってたよ。いつつくしちゃんが言ってくれるのかって思ってたんだ__でも、人には言いたくない事ってあるからね」 カラカラと喉が渇き、つくしの顔はえも言われぬ気味悪さで引き攣っている。 「君は、勇敢で美しかった。二度目に出会った君...
28
2017
イノセント 63 司つく
足を動かす度にジャラジャラと鎖の音がする。繋がれている事への恐怖感がつくしを襲う。爪を噛みながら思案に暮れた後、立ち上がり歩いてみる。一歩 二歩 三歩…………あと少しでドアに届く所で、鎖はピーンと張りそれ以上は動けない。反対側に向い丸窓から外を見れば真っ暗な海を進んでいる。海は嫌い。怖い。 嫌い。怖い。逃げ出せないと理性では解っているのに、つくしの本能が逃げ出そうともがく。足首から抜けないかとガチャ...
26
2017
イノセント 62 司つく
ボタンを一つ一つ外してシャツを脱がせ、ジッパーを卸し、ジーンズを脱がせる。下着姿になったつくしに用意していた純白のシフォンワンピースを着せてから、左手の薬指にあの日つくしに贈ろうと思っていた指輪を嵌める。「つくしちゃん、良く似合ってるよ」意識を失って眠り続けているつくしに、前と変わらぬ優しい笑顔を投げかけてから、もう一度、優しくカウチに寝かせた。「愛してるよ」そう囁いてから、額に貼り付いた髪の毛を...
24
2017
イノセント 61 司つく
サンスクリットの提携話が上手くまとまり司は、珍しくにこやかに笑みを浮かべる。サンスクリットの女社長ホンファはアジア圏で大規模のゼネコン会社を統括しているWongグループの孫娘だ。この提携が決まれば、Wongグループに近づくための足がかりになる。Wongグループとの事は、勿論道明寺HDにとっても有益なものには間違いないのだが、それよりも何よりもWongグループとの仕事が決まれば、つくしが魅力を感じる仕事を与える事が出...
22
2017
イノセント 60 司つく
暗い海を一艘のクルーザーが走っている。 沖合まで船を走らせると雅哉は自動操縦に替えて、つくしの元に向った。 つくしは、軽やかな寝息を立てながら船内のソファーで身体を横たえている。 「つくしちゃん……」 つくしと一緒になる事を信じて疑わなかった過去に思いを馳せながら、雅哉の指先がつくしの指先にそっと触れる。 愛おしい人___雅哉はつくしのことを心から愛していた。 ...
20
2017
イノセント 59 司つく
夕闇が迫る頃___つくしは立ち上がり服を着替えた。 部屋の電気を消し、バルコニーに出る。火災用に備え付けられている避難ロープを探した。 カチャリッ、身体に器具を嵌める。用意が出来た頃には夕闇色の空は、漆黒色に姿を変えていた。 つくしは、バルコニーから階下を見る。ブルッと一瞬脚がすくんだが躊躇いを捨て、シュルシュルと地面に降りた。 パタパタと汚れをはらい、ホテルを出てからタクシーを拾った。運転手...
18
2017
イノセント 58 司つく
パリン パリンッ パリンッつくしの中で何かが…壊れていく音がする。パリン パリンッ パリンッ司を愛していると気が付いて___惨めさがつくしをジワジワと包み込んでいく。同じ男を2度失う惨めさにつくしは戦く。どれだけ酷い事を言われようとされようとしっかりと立っていられたのは、愛していないと思っていたから。叶わない愛は……惨めだ。嫌というほどつくしは、知っている。「フフッ、ハハッ、うっ…ぅっ…もう…思い出にも...
16
2017
イノセント 57 司つく
「ハァッー」つくしは、無意識に爪を噛みながら目の前のスマホを見つめる。自分がいま持っているスマホが一つだけならば、間違いなく連絡など取っていないのだけれど、幸か不幸かつくしの手元には、滋から無理矢理手渡されたスマホがもう一台あったのだ。元来生真面目な性格のつくしは、咄嗟にでた言葉とは言え__雅哉にまた嘘を吐く形になるのが心苦しくてたまらない。「ハァッー」テーブルの上に置かれた花を弄りながら何度目か...
13
2017
イノセント 56 司つく
司は苛々と脚を揺らしている。周防は申し訳なさそうに目を伏せ、つくしは困惑した表情を浮かべている。一人嬉し気にはしゃいでるのは__滋ただ一人だ。「うふふっ、周防と結婚して良かったぁー。あの人さぁ、私にべた惚れでね、大概の我が儘は聞いてくれるのよ。ププッ司は凄く嫌そうだけどね。でもさぁー、つくしの独り占めはズルイよね。あっ、この前の約束も類君来るとか行ったから妬き持ち妬いたんでしょ?ゥププッ、相変わら...
11
2017
イノセント 55 司つく
長い脚を組み、煙草を燻らせながら司は、失った筈の過去を紐解いている。 文字としての情報は入って来るのに__何の実感もわからない牧野つくしとの思い出。 文字にしてしまえば、たかだかA4用紙5枚にも満たない牧野つくしとの過去の思い出。 指の腹でコメカミを揉みながら眉を顰める。 用紙を丸めてゴミ箱に投げ捨てた。封書から一葉の写真が滑り落ちる。嬉しそうに笑う自分が写っている。 クシャリッ 写...
09
2017
イノセント 54 司つく
二人揃って愛を乞うている。なのに、お互いの心にまだ届かない。司は夢を見ている。夢の中で司は、愛する女に向けて必死で手を伸ばしている。女の手が司の手を取ろうとした瞬間___闇が司を追って来て一気に呑みこもうとする。「ヤメロ 離せ」必死にもがけばもがく程__闇は司を追い詰め呑み込もんでいく。「はぁっ、はぁっ、はぁっ」喉がカラカラに渇いて目を覚ました。隣りを見れば__つくしが丸くなって眠っている。蕩けそ...
07
2017
イノセント 53 司つく
つくしが脚を動かす度に水面に映る月が、 星が、暗闇が揺れる。目を瞑ればあの日の幸せな思い出がつくしの心にぶわぁーーっと溢れだしていく。両手をクロスさせ自分自身を抱き締める。声にならない嗚咽が漏れる。「っぅくっ ぅっうっ」あとからあとから涙が零れ頬を濡らす。哀しみが切なさがつくしの心を包み込んでいく。もう一度、もう一度__道明寺に会いたいくてもう一度、もう一度__抱き締められたくて「牧野、好きだ」「...
05
2017
イノセント 52 司つく
何度目の絶頂を迎えたのだろう。身体は昂り凄まじいほどの快楽を得て司の下でよがり声を上げている。反比例するように心が冷たくなっていく。一瞬、心と心が通じ合えたと思ったのは、やはり瞞しまやかしだったのだと__冷めた心で思ってから__つくしは目を瞑り首を振る。もともとここにあるのは瞞しまやかしだけなのだと。次の瞬間、全てを諦めたように意識を手放し閃光の中に漂った。司は、狂ったように喘ぎ声をあげ意識を手放...
02
2017
イノセント 51 司つく
バスルームのドアがパタンと閉められる。雅哉とお揃いの時計を思い出の品だから返せと言われ__司の心は、ギリギリッと痛む。「お前がいまだに思ってるのは……新堂…なのか?」司の哀しみの呟きはつくしには、聞こえなかった。司が慌てふためきながら来た姿を思い出しながら真っすぐに自分を愛してくれた道明寺と重ね合わせ、つくしは嬉しそうにクスクスと笑う。口許に指先を這わせてから全身を洗う。忌々しい筈の胸元の赤い花びら...
31
2017
イノセント 50 司つく
太陽がギラギラと照りつけている。「ふぅっーーーー」大きな溜め息を吐いてプールから上がったのと、部屋のドアが開いたのは丁度同時だった。つくしは自分が全裸なのを思い出し、投げ捨てたバスローブを慌てて羽織った。「お前、なんで返事をしない」「あんた、なんでいるの?」司とつくしの言葉が重なり合う。司の顔とつくしの顔が怪訝に歪みあう。「なんでいるの?仕事は?それになんで鍵かけたの?」「…………」「ねぇ、なんで?」...