18
2017
No.100 始まりの時 司つく
花が舞い、色とりどりの風船が空に飛んでいく。「おめでとうーー」至る所から声がかかる。リンゴンカンコーン 幸せの鐘が大きく大きく鳴り響いている。隣りを見れば、好奇心に満ち溢れた瞳のお前が俺を見て俺等二人は見つめ合う。ヒュゥーヒュゥーッと3人からの口笛が鳴れば、牧野は真っ赤に頬染めて手で顔を扇いでる。そんな顔が相変わらずで愛おしくて、俺はお前を抱き上げる。「ちょっ、ちょっ、道明寺」なんて言って暴れてる...
10
2017
No.092 夢、夢、ドリーム 司つく
雄叫びを上げたあと__ バッチーンッ 大きな平手打ちの音が店内に鳴り響いた。 つくしが上げた雄叫びに注視していた人々の視線が二人に注がれ動きが止まる。 まるで『時間よ止まれ』的な感じで__いやっ『だるまさんが転んだ』的な感じで? 「ちょっ、おまっ 何すんだっ」 司が頬を押さえながら声を荒げる。 いつもの通り威勢よく言い返してくると思っていた司が見たものは、ウサギみたいに目を真っ赤にさせなが...
05
2017
No.087 恋、始まる 司つく
恋、始まる。中吊り広告の雑誌記事の見出しが、つくしの目に飛び込んで来た。「うわっ、なんてタイムリーな記事♡」電車から吐き出された瞬間、身体がウキッ♪ 口許がウフッ♪ となって駅の売店に駆け込んだ。「おはようございまーす」朝からつくしは元気いっぱいにお盆を片手に専務室を訪れる。「おっ、今日は珍しくご機嫌だな。また貝柱だったけ?立ったのか。ったく、ホントお前安上がりだよなぁ」そんな言葉で嬉し気につくしを...
31
2017
No.082 幸せ 司つく
恋の色は何色だろう?引き出しからベビーピンクのグロスを取り出して唇に塗る。幼かった自分を思い出して笑いが零れる。デートの時、あたしの唇にはこの色のグロスをよく付けていた筈だ。少しでも可愛く、綺麗に見られたくって。うふふっ 可愛かったなぁー あたし。アレッ?それなのに……なんで付けなくなったんだっけ? あっ!! そうだ___「なぁ、前から一度言おうと思ったんだけど、お前天麩羅食ったあとはちゃんと口拭い...
26
2017
No.077 50/50 司つく
朝が始まる。「髪型 ヨシッ!」「服装 ヨシッ!」「顔 う〜ん 今日も可愛い ヨシッ!」ニッコリ姿見の前で笑って「行ってきまーす」大きな声で叫んで家を出た。オンボロ自転車に跨がって「いざ行かん!」何をそんなに気合い入れてるかって? 戦いよ戦い。うんっ?何との戦いかって___それ聞く? 聞いちゃうんだーー?「牧野————」コレコレ、あたしの名前を偉そうに呼ぶこの男との戦い。毎朝、毎朝、よーくこんなに色々見...
21
2017
No.072 ダイタンのたがも 司つく
「おーたん、ちってましゅか?」小っこいのが小鼻をひくつかせ顎先をクイッとしゃくりあげながら言ってくる。「っん?なにがだ?」「ダイたんたがも でしゅ」ダイたん? ダイたんとは? しかも たがも……ココは下手に返事をしてはイケナイ。小っこいのと付き合う鉄則だ。うーーん、新しい年になって、俺もまた一つ賢くなったな。シミジミとシミジミと頷く。「おーたん ちらないんでしゅか?」横目で俺をみながら含み笑いを浮か...
16
2017
No.067 ツイテル?ツイテナイ? 司つく
春が始まる。明朝まで続いた雨が上がり雲一つ無い真っ青な空。真新しいパンプスを履いて、あたしは外に出る。気恥ずかしい程にピカピカのパンプス。ちょっとだけ目を細めて真っ青な空の下に飛び出した。自転車に颯爽と乗って駅に向った。オンボロ自転車はギコギコ音を立てているけど風を切りながら走らせるのは爽快だ。ふわっと風が舞い桜の花びらが一斉に舞う。「うわっ、綺麗」自転車を止めて空を見上げた瞬間、あたしの隣りを赤...
11
2017
No.062 ったくなぁ 司つく
世界中で一番可愛い女が笑ってる。雑誌に目を通すふりしながら盗み見る。うーーん やっぱり可愛いよなぁ。俺様の目には狂いは、ない。なんて悦に入って思わず笑いが零れそうになる。だが、この糞不味いコーヒーは頂けねぇもんだ。っつぅか……俺、久しぶりのオフだ。なんでココでこんな風にお前を盗み見てなきゃいけないんだ。「お替わりいかがですか?」入れ替わり立ち替わり聞かれて五月蝿くて仕方ない。俺の貴重な時間__こんな...
06
2017
No.057 マキちゃん食堂の憂鬱 司つく
俺等のオアシス__マキちゃん食堂。キラビやかな表通りから一本路地を入ったうら寂しい所に立つ食堂だ。お洒落でも綺麗でもないなんつぅーことのない食堂だ。だが、真っ白な飯といつもの味噌汁に美味い魚と漬け物__何よりも晴ちゃんや千恵ちゃんの笑顔が俺等の心を身体をほっとさせるそんな店だ。マキちゃん食堂の辺りの土地は__実は俺等常連で全部買い占めてある。どんだけ都市開発が進もうが、どんだけ表通りがキラビやかに...
01
2017
No.052 おめでとうおめでとう 司つく
コッコッコッコッ♪ ニワトリしゃんチュンチュンチュン♪ すずめしゃんポッポッポッポッ♪ ハトしゃんもみんーなソロって あら カワイイ♪♪♪何つぅ歌を歌ってるんだ?って思う正月の朝。うんっ?正月の朝__ パチリと目を覚ます。ガチャッ ドアが開いて助走を付けてタッタッタッ! 駆けて来る。ガバッ両手を目一杯広げて……小っこいのを抱き締めて「結、4才おめでとう」心からのおめでとうを小っこいのに伝えればデッカい目を...
29
2016
No.049 陰の黒幕楓さん 司つく
漸く漸くこの日を迎える事が出来るのね。堪えようと思っても嬉しくって嬉しくって思わず笑みが零れる。「楓様、随分とご機嫌でいらっしゃいますね」「うふふっ、わかる?」「いよいよでございますね」「えぇ、長かったわよね。あの二人案外臆病なのよね」「然様でございましたね」待って待って待ちくたびれた。うふふっ うふふっ ついつい笑みが溢れる。つくしちゃんを見つけたのは、23年前だ。主人が過労で倒れ病院に運ばれた...
28
2016
No.048 幼馴染みのつくしちゃん 司つく
俺様は、何でも持っている。美貌も金も権力もありとあらゆるものを持っている。俺様がパチンと指を弾けば、大概直ぐに手に入る。そんな俺様の弱点は__「司君、起きろー」なんて言いながらドスンッとベッドにダイブしてくる__コイツだ。俺の気持ちを楽しくさせんのツマンナクさせんのもコイツだ。気怠気にゆっくりと目を開ければ「ぅわっ、起きたぁーー」無邪気に笑いながらベッドの上をピョンピョンと飛び跳ねてやがる。嫌にな...
27
2016
No.047 幼馴染みの司君 司つく
多分……好き多分……大好きいやっ、多分なんていらない。好き堪らなく大好きそう、あたしは、目の前のトンデモナく横暴で横柄な司君が好きなんだ。自分でも全くもってイタダケナイ思いだと思う。イタダケナイから何度も勘違いだと言い聞かせた。でも……どうやら勘違いじゃないらしくって、司君のこと大好きなんだ。「おいっ、つくし、ぼぉっーとしてんな。そんじゃなくてもお前トロイんだからよ」「つ、つ、司君だってそうじゃん」「は...
22
2016
No.042 天に向かって 司つく
柚子の香りが漂う部屋で目が覚める。昨晩の出来事を思い出してニンマリとする。隣りで眠る牧野を抱き締めようと手を伸ばせば__「っん?っん?っぅぅん?」ガバッと飛び起きる。ベッドサイドにはメモが一枚 おはよっ!ルカちゃんがインフルでお休みみたいなので今日は代わりに出勤になりました。じゃぁね♡ じゃぁね__って、ひと月ぶりに会う彼氏よか仕事かよ?ったく、仕事、仕事、仕事ってお前は、ワーカホリックか。女なら愛...
17
2016
No.037 政略結婚 司つく
あたしの頭の中でパンツの紐が長—く長—く伸びて行く。「つくしさん、あなたも大見得切ったわりには大した事はないのね?お父様の会社がどうなっても宜しいってことかしら?」プッツーンと切れる音がしてハァッーーー? ふんっ、やってやろうじゃんなんて思って「お受けさせて頂きます」そう言った瞬間、サッと書類が目の前に出された。「中身は、先程説明した通りよ」そんな風に追い討ちを掛けられて__サインしていた。魔女は、...
12
2016
No.032 マキちゃん食堂 司つく
一本路地を入った通りにひっそりこっそり建っているのが……【マキちゃん食堂】お店の外観は__お世辞にもお洒落とは言えないし__いやいやお洒落どころか綺麗とも言えない店構えだ。100歩?いやいや1000歩譲って……レトロ__うーーんそうじゃないなぁ、あぁ、味のあるお店っていう外観だ。だけど___ここには、お客さんの楽しそうな笑い声とお腹をグゥーーと空かせるいい香りが絶えない。ボーン ボーン ボーン 柱時計...
07
2016
No.027 見つけた 司つく
「見つけた!」ずっとずっと夢の中に出て来たあの人の後ろ姿をあたしは見つけた。大きな道路を挟んだ反対側に彼を見つけたあたしは自転車に跨がり全力疾走で追い掛けた。追い掛けて死に物狂いで追い掛けて__グルッと回って彼の前に立った瞬間彼が嬉しそうに片手を上げた。やっぱり!彼はあたしの運命の人嬉しくなって 満面の笑みで手を振リ返した嬉し涙で顔が良く見えないけど__あのクルンとした髪の毛、モデルのようなあの身...
02
2016
No.022 ありったけ 司つく
「バカ、バカ、バカ……追いかけて来い」無茶苦茶な事をいってることくらい百も承知だ。でも、でも追いかけてこない司に頭にきてる。確かに追いかけるなといったのはあたしだ。放っておいてと啖呵を切ったのもあたしだ。でも、でも……前の司なら道明寺なら追いかけて抱きしめてくれたのに「バカ……」発端は、些細な事だった。それがいつの間にかヒートアップしていて要らぬ事を口走っていた。「あぁあ……」思わず溜め息を吐いていた。の...
27
2016
No.017 宝物 司つく
お尻フリフリ〜♪ あんよフリフリ〜♪あらあら ははぁっん♪すっかり母ちゃんって奴になった小っこいのが、杏のオムツを替えながら歌ってやがる。こんなとこまでつくしにそっくりだから笑っちまう。に、してもだ__あらあら ははぁっん♪は、無いんじゃねぇのか?あんま、へんな歌ばっか唄ってると桐人に捨てられんぞ。いやっ、捨てられるのも一計か?結も杏も二人してココにずっといる。中々いいなぁいやっ、良くねぇか。娘の可哀...
22
2016
No.012 真夏の夜の夢 司つく
真夏の夜___痩せっぽっちで小っこい犬っころが虐められていた。「止めろ」車を降りて思わずその犬を助けてた。犬は嫌いだ。なのに......なんでか不憫になっちまってついつい__助けちまった。踵を返しそのまま車に戻るつもりだった。『オィ オィ』っん?誰かに呼ばれた気がして後ろを振り返る。誰もいねぇ。さっきの小っこい犬っころが一匹 クゥ~ンと鳴いてるだけだ。プルプルッと首を振り踵を返す『オィ オィ そこのお...
17
2016
No.007 縁は異なもの味なもの 司つく
信じられねぇ 信じられねぇマジ、信じられねぇ……この女ばっかりは予想の範疇を超えやがる。予想の範疇? あぁ、勿論突拍子もないことまで想定してる。だけど、だけど それさえも超えやがる。「牧野、お前よぉ」溜め息と共にそんな言葉が口の端から一緒に出れば「うんっ?」キョトンとした顔してやがる。ったく、なんだその顔? 世辞にも美人じゃねぇなーなんて思うのにドキンッと胸が高鳴りやがる。「はいっ。ちゃんと並んで並...
12
2016
No.002 いつも通りの朝だった 司つく
いつもの通りの朝だった。朝起きてご飯を食べて__いつも通りガタゴトガタゴト電車に揺られながら出社して。いつもと変わらぬ一日だった。いや、いつもよりもタイミングが悪っくて......仕事でミスしたり、社食のスペシャルランチを食べ逃したりとツイテナイ一日だった。まぁ、こんな日もあるさぁーちょっぴり落ち込みながら退社した。会社の前には人集りだ。うんっ?うんっ?何かの撮影?ヒョコヒョコと飛び上がって黒山の先を見...