明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

05

2021

猫 04

ニャォーン猫が鳴いた。陽だまりの中、ムゥを膝に抱えたつくしが微睡んでいる。ムゥもくるりと丸まり幸せそうに眠っている。総二郎の唇が柔らかな笑みを作る。事の切っ掛けは、大々的な区画整理だった。色々あって、ずっと半家猫だったムゥを何故か西門で面倒見ることになったのだ。最初は勿論つくしやワタル、その他諸々のムゥの出没場所だった家の住人が引き取ると言ったのだが、つくしは一人暮らしの上に出張で家を空ける事が多...

04

2021

猫 03

ニャオォーン 猫が鳴いたワタルの腕から飛び出したムゥが、人の輪に囲まれた女の元に一目散に走っていった。ムゥは女の足にスリスリしながら、鈴を転がしたような声で鳴く。女は膝を折りムゥに手を伸ばし喉元を撫でながら「えっ ムゥ? 久しぶり。元気だった?」ムゥがゴロゴロと喉を鳴らして喜んでいる。ワタルの背後に居た総二郎の目に入ったのは、しゃがんでムゥを撫でる白くて細い腕と、真っ直ぐに伸びた黒髪だった。黒髪と...

03

2021

猫 02

ニャオォーン猫が鳴いた。その夜総二郎は珍しく酔っ払っていた。やるせ無い気持ちを抱えて昼間からずっと飲んでいたからだ。迎えの車を途中で返し、あてもなくブラブラ見知らぬ路地裏を歩いていた。路地裏で猫が鳴くなんて珍しいことでも何でもないことだ。でも、なんだか気になって総二郎は声の主を見つけるために路地裏を覗いた。声の主は、ニャオォーン ともう一声鳴いて、総二郎に擦り寄る。総二郎はしゃがみ込み「おっ、お前...

02

2021

猫 01

ニャオォーン 猫が鳴いた。思い返せば、それがドミノ倒しの一コマ目だったのだろう。鳴き声につられ、お隣の藍田さんから貰った椅子から立ち上がり窓を開け外を見た。藍田さんから貰った椅子は、チャーチチェアと呼ばれる代物で背面に聖書を入れるボックスが付いていてつくしのお気に入りだ。藍田さん宅にお呼ばれした時にその椅子を褒めたら気前良くくれたのだ。恐縮するつくしに、「じゃあ、ムゥに しばらくおやつ上げてやって...