22
2016
ずっとずっと 155 final
「おいっ、コラッ」「だめだめ~ベェッーだ」「ったく、この強情ぶりは、誰に似たんだ?」歩を追いかけながら、ジロリと、お義父様が、私と嶺を睨む。「おじいちゃまだよ?」未來が、笑いながら、言い返す。黒髪の大きな瞳を持つ未來。私や、嶺ではなく、お母様に似ている娘が、花咲く笑顔で微笑みながらそう切り返している。お義父様は、愛おしそうに未來を見つめ「違うな。未來にそっくしだな」そう豪快に笑い、未來の髪の毛を、...
21
2016
ずっとずっと 154
パンドーラの甕を解き放ってしまったら、色々な事が見えてきた。だけど、パンドーラの甕には、希望が残った。私は、たった一つだけのものを手に入れた。一つだけだと思っていたのに、私はもう一つの希望を手に入れた。マドレ〜 パドレ〜 私の、いいえ私と嶺の希望が、未來 が私達を呼ぶ声がする。この子が生まれて、私は、確信した。お母様は、私を生んだ事を決して後悔などしなかったて。この子が生まれて、私達は希望に包ま...
20
2016
ずっとずっと 153
グレンダが俺の元を去る日熱い抱擁ってやつを交わした。「幸せになれ」俺が言うと「幸せになる。でも今までも充分幸せだった。ありがとう司」そう言ってグレンダがキスをしてきた。「この26年間、私は司の事も愛していたわ。」「あぁ、俺もグレンダを愛してきたよ。」今度は、俺がグレンダを抱きしめてキスをする。さようならのキスをする。グレンダとアレンには、世間の目と言う茨の道が待ち受けているだろう。だが、あいつ等は、...
19
2016
ずっとずっと 152
愛する娘を思いながら、僕は家路に着く。つくしの事を手放そうと。決心をしながら‥カウチに腰かけ、僕はつくしの髪を梳く。何年この動作を繰り返してきたのだろう?そんな事を考える。彼女は、相変わらず僕のミューズで、僕の太陽だ。幾つになろうとそれは変わらない。何でこんなに好きなんだろう?たまに笑ってしまうほど、僕は君に、未だに恋い焦がれている。つくしと出逢えて、僕は幸せだった。26年間の長い時、君を独り占めに...
18
2016
ずっとずっと 151
意外な人物が僕を訪ねてくる。「お時間を作って下さってありがとう」そう言って美しく笑うのは、グレンダ・道明寺真っ直ぐに、真っ直ぐに、僕の目を見て「嶺が大事なお嬢さんの未来を奪ってしまってごめんなさい。」そう誤った後に「私、道明寺を出て行こうと思っているの‥…」そう語り出す。アレンと共に、暮らしたい。自分に素直になろう。歪な関係に終止符を打とうと決心したとグレンダが言う。僕はワケが解らず‥ 「アレンと?...
17
2016
ずっとずっと 150
ルゥの22才の誕生日祝いは、いつもの様に盛大に行われた。薫もつくしも、美しく成長した自慢の娘が可愛くて仕方ないのだろう、朝から始終笑顔だった。ルゥは、完璧に 薫とつくしの愛娘 宝珠琉那 を演じた。穢れを知らない 宝珠琉那 を。そして、この日を境に琉那は姿を消した。 宝珠琉那は居なくなった。どうかどうか、私を愛しているのなら、捜さないで下さい。どうかどうか、この幸せを壊さないで下さい。そう書かれた手紙...
16
2016
ずっとずっと 149
18の誕生日の翌日、私は イーエル大学に通いたいと両親に告げた。目的は、ただ一つだった。その事はひた隠しにし、私は両親に懇願した。通っていた学校が、国際バカロレア資格認定校だったこと。TOEFL GRE SAT で必要なスコアを上回る事が出来た事NYに、光が居る事も後押しをしてくれた。お父様とお母様を説得するのに功をなした。最終的には、長期休みには、必ず帰ってくるとの条件で留学を許してもらったのだ。4年間、嶺だ...
15
2016
ずっとずっと 148
愛は綺麗なことだけじゃないと知った翌日、私は18才になった。「ルゥ生まれてくれてありがとう」毎年私の誕生日にそう言って、祝ってくれるお父様。その横でいつも微笑んで下さる優しいお母様。幸せを感じる瞬間だった。幾つのときからだろう。何となく違和感を感じたのはだけど、幸せを疑わず、私は違和感に蓋をした。いいえ、気が付きたくなかったから蓋をした。神戸の2人を見て、嶺を愛した私は、この言葉の本当の意味を理解...
14
2016
ずっとずっと 147
「ただいま~」と入ってきたルゥは、朝見たルゥと同じ筈なのに、どこか違っていて、思わず、見惚れてしまった。「ルゥなんかあったと?」「うーーん、色々。今はちょっと纏まらないから今度話すね。」ニッコリ笑う。少しだけ少しだけ憂いを含んだ微笑みで。この子は、容姿だけ見ていたら薫にそっくりだ。誰が見ても美しいお人形の様な容姿を持っている。だけど、この娘は、つくしにそっくりだ。不器用で真っ直ぐ。 どうかどうか、...
13
2016
ずっとずっと 146
目の前の女が、俺が罪の子なら自分も罪の子だと言う。無邪気にも見える笑顔で、俺に言う。手を伸ばして抱きしめたくなる。琉那がいれば、それでいいそう思った。刹那♪♬♪♬♬ この場に不釣り合いな音をスマホが立てる。「インディゴちゃんみたい、ちょっと出るね‥」「えっ‥うんうん。あと‥30分くらいだと思う。うん。‥うん。解った。近くについたらまた電話するね。うん、ありがとう。」静寂の中、車が高速を走る。「電話‥なんだって...
12
2016
ずっとずっと 145
風が吹く中、嶺が私の手を引き、前を歩く。これから遭遇するであろう事よりも、嶺に手を握られ歩いている事に‥ドキドキと、胸が高鳴り嬉しくてたまらない。嶺が振り向き、「ねぇ、信じていた世界が全て壊れた時、俺はどうすれば良かったと思う?」そう問いかける、嶺の真っ黒な瞳と、紅い紅い石榴の花の対比が、あまりにも美しくて酔いしれた。私は、この瞬間もう既に家族よりも、友達よりも、いいえ全ての事よりも‥嶺を選ぶと決め...
11
2016
ずっとずっと 144
無言の私達を乗せて、車が走る。天保山JCTで高速を降りる。もしかして、神戸の別邸にこの車は向っているの?私の頭をお母様の顔が過(よぎ)る。お母様も今日は、お父様にご用事を頼まれて神戸に来ている筈‥「シ‥レ、レイ、ど、ど、どこに行くの?」「もうじき着くよ。」要塞のような塀の前に車が止まる。「降りて」冷たい声で嶺が言う。私は、激しく首を振る。ココにいてはダメ。早く京都に帰られなければいけない。私の中の何か...
10
2016
ずっとずっと 143
筒野さんから、ルゥに呼び名が変わる頃、シンさんからシンへと呼び名が変わる頃私は彼を真剣に愛し始めていた。だけど、呼び名は変わっても、時折手を繋ぐのが精いっぱいだった。人目を避けて、こっそり会って、2人で他愛も無い事を話して、手を繋ぎ合う。「シン、あのね‥…」私はこの日、本当は筒野ルゥじゃなくて、宝珠琉那だって事を打ち明けようと決意していた。「っん?」彼の真っ黒な瞳を見ていると‥吸い込まれそうになる。「...
09
2016
ずっとずっと 142
お父様の一日は、お母様に始まり、お母様で終わると言っても過言でない‥お母様にべったりのお父様。基本、出張は入れない。世界的企業の代表がいいの?って思う程に入れない。どうしてもの時は、小さな時は、家族全員で。私達が学生になってからは、私達を残し、お母様を同行なさる。それが別段おかしな事だと思わなかったのは、それが許される程の力をLucyJwellが有していたのと、瑞希のお家も紅のお家も似たり寄ったりだったから...
08
2016
ずっとずっと 141
沢山、沢山愛されて育ってきた。傍らには、いつでもマミーが、父さんがいてくれた。穏やかで温かい家庭だったと思って生きてきた。マミーと父さんの間には、激しい情愛はないかもしれないけれど‥互いに慈しみ、尊重する間柄の穏やかな愛を育む夫婦。そう思って育ってきた。マミーの本当に愛する人を、父さんの本当に愛する人を、俺自身の出生の秘密を知るまでは‥全てが明るみに出た時に、何を憎めばいいのか解らなかった。ただただ...
07
2016
ずっとずっと 140
瞬きを忘れた。息をするのも忘れた。「うっ、ゲホゲホっ」逢えた途端に窒息死するかと、焦った。「大丈夫?」そう聞いてくる。「あっ、はい。」彼がニコリと笑って、私の名札をみながら「2度目だね。うんと‥筒野ルゥさん?」いやいや、宝珠琉那です。とは言えず「あっ、はい。」彼の名札を見る「‥道下シンさん?」「うん。よろしく。」点呼がかかり班ごとに別れるのに、棒を引く。” 神様!どうかどうか シンさんと一緒の班にして...
06
2016
ずっとずっと 139
小さな頃から私の憧れだった。一途に一途に、お母様を愛する美しく強いお父様。一心の愛をたおやかに受け入れる光り輝くお母様。私の両親で良かったと何度思った事だろう。2人が、私の憧れと同時に、自慢だった。物語の王子様とお姫様みたい。小さな時、何度そう思ったか。お母様は、瑞希のお母様と同様、一般家庭の出自なのだけれど‥…その事について、とやかく言うものは皆無だ。今は亡き 曾祖父母に至っては、お母様を大事に大...
05
2016
ずっとずっと 138
「行ってきまーす」邸の中に、大きな声がこだまする。「琉那様、もう少しお淑やかになさって頂きませんと。」「はーーーい」「琉那様!」毎朝の見慣れた風景に、薫と2人で苦笑する。琉那が喋ると、薫の目尻が下がる。優し気に愛おし気に、目尻が下がる。琉那がお嫁に行くときは大変だろうなぁ〜なんて、毎朝考えてしまう。「っん?どうしたの?」「うふふっ内緒。」首を傾げて不思議そうな顔をしている。それはそうと‥ 琉那の初恋...
04
2016
ずっとずっと 137
「つくし、ほら見てごらん」ルゥが、甲斐甲斐しく光の世話をする。光を取り巻くように、自分の一番大事にしているオモチャを並べてる。つくしと2人でこっそり覗く。「ちょっと前まで、琉那も赤ちゃんだったのにね」「うん。そうだね」2人で交わす何気ない会話。目の前の、琉那を見ながら昔の、何気ない一こまを思い出していた。思い返すと幸せえを感じる何気ない一こま。つくしと2人で、一心に愛し育ててきた。好奇心が旺盛で、物...
03
2016
ずっとずっと 136
火曜日の午後は、あの子がくると。ホラホラ音がする。「インディゴちゃーん」今日も元気にやって来る。薫に似た美しい容姿、つくしに似た全てのものを包みこむ光を放つ女の子。宝珠家の、筒井家の、宝物として、何一つ不自由なく育った少女。今は亡き、宝珠の筒井の者達がが最後迄、愛して止まなかった薫とつくしの子供。カチャッ 「お邪魔しまーす」琉那が入ってくると、部屋の空気がガラッと変わる。亜矢さんも、そうだったなぁ...
02
2016
ずっとずっと 135
雲一つない青空が広がる。使用人達が、ルゥを着飾らせていく。僕は、ルゥを抱きながら「生まれてくれてありがとう。」そう伝える。ルゥが笑いながら、僕の頬を触る。可愛い僕の宝物。ルゥがいて、つくしがいる。僕の幸せな一日がまた今日から始まる。そして、カウントダウンもまた今日から始まる。一年のうち一日だけ、僕は君を自由にする。自由? ふっ 足枷付きのね。これが僕の精一杯。君をここに留めささせるための僕の精一杯...
01
2016
ずっとずっと 134
車に揺られて、帰路に着く。薫と琉那の待つ場所に。胸が苦しくなる。車の中で、一人むせび泣く。何に?誰を思って?わからない。わからないけど‥胸が苦しくて、あたしはむせび泣く。あたしの心は千々に乱れる。紅い石榴の花が脳裏に残る。嵐山の邸に着く。 薫と琉那があたしを出迎える。あたしの胸はズキンっと痛む。「ルゥがね、ママ、ママ、って大変だったんだよ」薫が、微笑みながらあたしに告げる。何気ない会話があたしを責...
29
2016
ずっとずっと 133
ドスンッ 乱暴にチェアに腰掛ける片倉が驚いた表情をしてこちらを見ているのが解る。クルリとチェアを回して片倉をみると、慌てて目をそらす。こんなにも、辛いのなら何故‥ そんなことは、他人(ひと)に言われなくとも百も承知だ。天橋立で彼女と交わした約束だから‥そうじゃないただ、僕は確かめたいんだろう。司君と逢っても、僕の元に戻ってくると言う事を。そして、彼女に解らせたいんだろう彼女の戻る所は、一つしかないと...
28
2016
ずっとずっと 132
つくし‥あたしを呼ぶ、愛おしい男の声が聞こえた気がした。ゆくっりゆっくりと目を開ける。夢でない事を願いながら‥司の香り、司の声、司の‥手を伸ばせば触れられる。すぐ近くに司が居る‥触れたい‥ 髪に 素肌に 唇に 目を瞑る。 薫と琉那の笑い顔が浮かぶ琉那に子守唄を歌う薫。宝物を愛でるように、あたしと琉那を目一杯愛してくれる薫の顔が浮かぶから。触れてはいけない‥ 司に触れたら、あたしは戻れなくなってしまうか...
27
2016
ずっとずっと 131
「はい。これ宜しくね。しっかり届けてきてね」薫が、あたしに、包みを渡す。神戸の別邸にお招きしている人に、この包みを渡してくれと頼まれる。明日、琉那の誕生日を控えているのに、いつもならあたしを手元に置きたがるのに‥変だなと感じながらも、あたしは身支度を始める薫が後ろからあたしを抱きしめ、耳朶をカリリと噛んだ。蠱惑(こわく)的な笑顔で「明日は、ルゥちゃんの誕生日だからね」そんなことを言う。なら、使いな...
26
2016
ずっとずっと 130
子守唄を歌う‥ 小さな時に母に歌って貰った子守唄を。琉那の健やかな、寝息が聞こえて来る。ケットを掛け直し、部屋を出る。「すぐに寝ちゃったよ。お婆様達にいっぱい遊んでもらったから疲れたみたいだね」「楽しそうだったもんね。亜矢さんと雪乃さんも今頃は、お疲れよね。」つくしが微笑む。カウチに腰掛けて、つくしを呼ぶ「‥おいで‥」僕の膝の上に彼女を座らせて、彼女の美しい黒髪に口づけを落とすと、ふんわりと優しい香...
25
2016
ずっとずっと 129
「うん。健康優良児!」キラキラ光る美しい髪の毛に、琉那が手を伸ばす。インディゴちゃんが、琉那を優しく抱き上げる。「もぅ、あんたはいつ見ても可愛いかねぇ〜」インディゴちゃんに抱かれて、得意気に琉那が笑う。「ルゥちゃん、こっちこっち」薫が、琉那に向って手を広げている‥「薫‥ あんたどんだけ、ルゥを独り占めすると?」少し呆れながら、インディゴちゃんが、わざとくるりと向きを変える。琉那が嬉しそうに笑う。「じ...
24
2016
ずっとずっと 128
君が産まれた日。僕は天使が奏でる曲を聞いた。極上の歓喜溢れる曲を。僕等の愛する琉那。 君は、この世の全てから祝福されて誕生したんだ。僕等の愛する愛する可愛い娘。僕の希望。僕の光。お爺様達の喜びようといったら、お正月とお盆が同時にやってきたような騒ぎようだったんだよ。君が泣けば、君のベットには幾本もの手が伸びる。君が笑えば、君の周りに花が咲き、光が溢れる。この世の中の幸せを愛を、君に与えたい。無垢な...
23
2016
ずっとずっと 127
久しぶりに見たつくしは、光輝いていた。綺麗だ‥俺の目は、あいつに釘付けになった。瞬きもせずに、あいつを見つめた。俺の全細胞が、あいつを求めやがる。喉から手が出るほどあいつが欲しい。手に入れられねぇもんだったからか?いいや、違う。あいつは、俺の半分だからだ。俺は、あいつ無しでは生きれねぇ。傍に居なくても構わねぇ。あいつがこの世に居てくれりゃそれで構わねぇんだ。ははっ、俺も形無しだよな。どんだけ、純愛...
22
2016
ずっとずっと 126
ドレスに着替えたつくしは、ハッとする程に美しい。お腹の膨らみが、神々しさを醸し出す。美しく愛おしい僕の妻。何度も何度も、こうやって惚れ直してしまうんだろう。「つくし、良く似合ってるね。とっても綺麗だよ。」僕は君の手をとり、車に乗り込む。僕の永遠のお姫様。可愛い可愛い僕のお姫様。皆が口にするだろう。相変わらずお似合いだと。ふっ、そうだよね、僕等はこの3年、どこに行くのも何をするのも一緒だった。鴛鴦夫...