04
2016
君の天使 Fin 司つく
車を降りた2人の目の前には、秘書尾形が待っていた。あれっ?アレレ?尾形がなんだか違ってる。 なんて言うのかな?ウーーーーン あっ、神々しいだ。なんてことを思った次の瞬間‥《 2人ともお疲れ様。そろそろ準備の時間だよ 》《 準備? 》《 何の準備? 》神々しい尾形が、ポンッと手を叩いて《 スーパーミラクルはね、天使にもミラクルを起こすのさ 》《 天使にも? 》オレが聞けば《 それってどういう事?教え...
03
2016
君の天使 34 司つく
車を降りた2人の目の前には、秘書尾形が待っていた。なんで、秘書がつくかって?ククッ‥尾形、なんかカッコイイんだ。キリッ パリッ としててね。司に向かって、恭しく一枚の書類を出して来る。ニコッと笑って「ワリィな、有り難う」「専務、つくしさんお幸せに。今日のこの後の予定は全てキャンセル済みですので」満面の笑みを浮かべて尾形が、去っていく。何となく、シューニャとオレつくしと司でその姿を見送った。「ホレッ...
02
2016
君の天使 33 司つく
オレの目の前に、突然シューニャが現れた‥って、現れた?《 どうしたの? 》《 連れてきたの 》シューニャが美しくウィンクをして《 ヒー、フー、ミー Go! 》ガラッ勢い良く襖が開いた。立っていたのは、司だった。驚いて固まるつくしの横を、トモがそっと通り過ぎて行く。代わりに、司が部屋に入って来て‥何も言わずにつくしを抱きしめた。「ちょっ、ちょっ、ちょっと‥何する‥」「黙ってろ‥」「ちょっと‥道明寺‥」ギュ...
01
2016
君の天使 32 司つく
「あぁ、それくらいだよ」「それくらいじゃないよ‥」「決まったわけじゃなかっただろう?仮にそうだとしても、司さんはつくしさえ居てくれたら良いって言った筈だよ」「だから‥だから‥嫌だったの」つくしの身体には、傷がある。卵巣腫瘍で、卵巣を一つ取った傷だったんだ。「あたしね、本当は自分が、もっと強いと思ってたの。でもね、実はコンプレックスの塊だったみたいでね‥」渇いた笑いをさせながら、つくしは語る。度重なる貧...
30
2016
君の天使 31 司つく
翌日から、スッポンのトモ‥復活だ。たちまち、道明寺HD内の有名人になっている。杏奈嬢は、嬉しいんだか、嬉しくなんいんだか良くわかんないけど、取りあえず好きな男性ひとに毎日会えて幸せそうだ。いつの間にか、トモは尾形とも仲良しになっている。司もトモの人懐こさには、苦笑している今日この頃だ。つくしは‥‥「はぁっーーーーちゃんと言わなきゃだよね」毎日、ため息と共に同じ台詞を繰り返している。化粧室から戻って来た...
29
2016
君の天使 30 司つく
司とつくしの慌てぶりに焦ったのは‥尾形でも誰でもなくて‥‥トモだった。「調所会長は、弓道をされるとか?実は私も、弓道が趣味でして‥」滔々と話しだした。「ほぉー、それは、それは、弓道は杏奈も中々のもんなんじゃよ。今度是非、杏奈と3人で」見事に話を変えただけでなく、3人で弓を射る約束までしている。あからさまに、ホッとした表情を2人同時に浮かべている。尾形は「へぇー、杏奈さんが弓道?こりゃまた凄いっすねー」...
28
2016
君の天使 29 司つく
つくしを見つめるトモ‥‥トモを見つめる杏奈嬢‥中々もって、キュンとくる光景だ。愛するものには、相手が誰を真剣に愛してるのかって事が、手に取るようにわかるから。トモが切なげな表情を浮かべれば、杏奈嬢も切なげな表情を浮かべる。「「あのー」」トモと杏奈嬢の声が重なった。2人で、遠慮勝ちに譲り合っている。つくしが、にっこりと2人に向けて微笑んで、「寺沢専務と杏奈さんは元々のお知り合いなんですか?」2人揃って...
27
2016
君の天使 28 司つく
2人の、手と目が絡みあう‥‥‥刹那‥「あぁ〜はぁっ〜」盛大な欠伸の声がする。ぷっ、尾形っち〜 そりゃぁないよなんだけど‥2人の耳には何の音も聞こえない。瞳にはお互いしか映らない。手と目は絡み合ったままだ。コンコンと音がして、ガチャリッ‥‥扉が開く。トモと杏奈嬢2人が、話しながら入ってくる。司とつくしの手と目は、慌てて離される。何となく、いいや何となくどころか‥非常に気まずい空気が流れる。「あぁ〜はぁっ〜は...
26
2016
君の天使 27 司つく
杏奈嬢に‥黒い影が近寄る。大きく黒い人影が‥「誰だ?」「えっ、えっ」見知らぬ声に恐怖して、次の瞬間‥「キャァッー」突然の大声に、男は驚き、声を上げた彼女を抱きすくめた形になりながら「ご、ご、ゴメン‥‥つくしの香りと一緒で、それに後ろ姿が‥」慌てて釈明する男の口から、〝つくし〟の名が出て、冷静さを取り戻した杏奈嬢は、上を見上げる。3、2、1、ゼロリリリリリーン リリリリーン リリーン杏奈嬢の上で、高らかに...
25
2016
君の天使 26 司つく
司の苦虫もさることながら‥会食場所が近づくに連れて、つくしの顔も曇って行く。仕事とはいえ、久しぶりに彼氏に会えるのにね?おかしな事だ。そんな中‥一人ウキウキは、杏奈嬢。クククッ、この表情(かお)‥最初はいけ好かない?なんて思ったのが、嘘のように、滅茶苦茶可愛くなってるよ。元々顔立ちが整ったお嬢さん。生粋のお嬢様だったからか?マダム付きのヘアーメイクだったのを、同僚達の指示のもと、ナチュラルメイク?それ...
24
2016
君の天使 25 司つく
「専務‥驚き過ぎです」「お前が急に立ってるからだ」「お声掛けましたし、専務お返事されてましたけど?」「グッ」ふっふん〜♪つくしの鼻唄が、聞こえてきそうな勢いだ。間違いなく、つくしの手帳に正の字の1本がプラスされるだろう。つくしの得意気な表情かおに、少しだけ頬を緩めた後に「牧野、今日の会食は市井物産と寺沢商事だ」「あっ、はい。先ほど尾形さんからお伺いしました」「そうか‥」「なぁ」「あの」2人の声が重なる...
23
2016
君の天使 24 司つく
危うい均衡の中、日々が過ぎて行く。一番に痺れを切らしたのが‥「櫛崎、道明寺HDと提携の話あったよね?」「はい、専務」「それ、俺も関わる事にするから、道明寺専務にアポとって‥‥で、アポとる際に、牧野さんも同席でって伝えておいて」ニッコリと、トモが微笑んでいた頃‥「つくしさーん」「牧野さーん」女神つくし‥前の職場同様に、あちらこちらから声がかかるようになる。ホッと出来る。誰にでも優しい。お掃除の人だろうが、...
22
2016
君の天使 23 司つく
トモから、LINEに連絡が入る。今日は、時間大丈夫そう?トモのメッセージを見つめながら、ため息を吐いて返信を出す。ごめんね。今日もダメみたいです。また連絡します。「はぁっー‥」後ろから近づいた影の手で、目を隠される。「ヒャッ だ、だ、誰??」「つくしさーん。私です。わ、た、し」影の手の正体は、杏奈嬢。「あははっ‥杏奈さん‥」「つくしさーん、お久しぶりです。丸一日ぶりですぅ」「あははっ、そうだね‥‥」「今日...
21
2016
君の天使 22 司つく
時計の針が天辺で合わさった瞬間に「調所さーん、お昼行かなーい?」杏奈嬢に、お誘いの声がかかる。「はーい」嬉しそうに、お財布もって皆に駆け寄って行く。ひと月も経つ頃には、すっかり皆に溶け込んだ杏奈嬢。彼女が皆に溶け込むと共に、猛獣使いのつくしは、女神として、その名を馳せて行く。「ねぇねぇ、知ってる? この前‥エントランスで、専務が大笑いしてたんだって」「えっ、マジマジ?いやーん見たかったぁ」「でもで...
20
2016
君の天使 21 司つく
食後のエスプレッソを飲みながら「で、この店はどうだ?」「もっと一般的にするって事だよね?」「あぁ‥」「うーん‥ここはフラッグショップにして、残した方が良いんじゃないかなぁ」「フラッグショップか?」「うん。女子は、綺麗なもの、優雅なもの、雰囲気あるものに憧れるから‥アチェロ本店は、ちょっと特別。そんな感じで残した方がいいんじゃない?」「そんなもんか?」クスリッ と笑った後に、「庶民は、そんなものでござ...
19
2016
君の天使 20 司つく
司天使が、つくし達2人を見ながら笑ってる。オレを見つけて、ウィンク一つ投げてくる。アイツ、ウィンク上手いなぁ。変な事に感心しちゃったよ。おぉっと、2人を見れば‥‥「ったくお前、相変わらず、ドンクセェな‥」「鈍臭いって、ちょっと‥それ失礼だよ。別に大したことないし!」「いや、よくないだろうよ。足、痛くねぇか?」「大丈夫‥それより、あんたの秘書ってなにそれ?」「営業推進が秘書課に名称変更変しただけだ。さっ...
18
2016
君の天使 19 司つく
いつもなら、人の歩調など気にしない司が‥クスクスッ‥へぇーーー 珍しいもの見させてもらったって感じかな。っん? アタシ? アタシ天使司について彼此れ6年。なんで、こんな俺様の司に付いてるかって? 教えて欲しい?うふふっ‥ じゃぁ、ちょっとだけねフッ!『うーーん。任務完了! さて、次のターゲット探しをしなくっちゃね』アタシ、天使 これでも結構優秀。サクッサクッと、お手軽に纏まる幸せを沢山生み出して来た...
17
2016
君の天使 18 司つく
ほらほら、見てご覧‥「つくしさん」「つくしさん」杏奈嬢‥お目目キラキラさせながら、カルガモの親子よろしく、つくしに付いて回ってる。面白くないのが、司だよ。つくしを呼べば、もれなく杏奈嬢もついてくるのだから。苦虫噛む表情になってるよ。つくし? 至って通常営業中。ただ、流石のつくしも耐えられなかったのが、杏奈嬢の芳香‥だってさ、下手したら30分置きに、トワレをシュッシュカつけようとするんだ。な、もんで‥何...
16
2016
君の天使 17 司つく
「‥あ、あのー尾形さん‥」「はいっ。何でしょうか?」「つかぬ事を、お聞きしますが‥」「はいっ」「専務秘書課って、言うのは?」「基本、専務の秘書です。秘書って解ります?牧野さん、秘書検持ってるから解りますよね?」「えぇ‥額面通りには‥」「じゃぁ、それです」尾形は、誰が見ても憎めない様な、人懐っこい顔で、ニコッと笑う。わかったんだか、わかんないだかの説明を受けて‥でもなんとなく、笑顔に騙されて「はぁ‥」と、...
15
2016
君の天使 16 司つく
旨そうに珈琲を飲む司に、つくしが一瞬見惚れた。コフンッ 小さく咳をして、意識を反らしてる。尾形は、どうやら色んな事に気がついたようだ。司の機嫌がすこぶる好い理由わけ。未だかつて見た事がなかった笑顔を見た理由。そして‥目の前のつくしが司の想い人で、 つくしの想い人も司で‥でもってだ、つくしは、ビックリするくらい旨い珈琲を淹れてくれて、中々もって、人が好さそうだって事にまで気がついた。で、はたと気が...
14
2016
君の天使 15 司つく
「‥き‥さん、牧野さん‥」尾形に何度か名前を呼ばれ、つくしは、やっと我に返る。「す、す、すみません‥読んでおりません。社会人として失格です‥よ‥ね‥」「嫌々、でも、それで受付で手間を取っていたのですね。了解です。謎が解けました」中々、チャーミングな笑顔で尾形が笑う。「謎が‥‥ですか?」「えぇ、あの中にこちらの部署名が載っていたのに、何故手間取ってるか不思議だったんです」ホラッ、だから言ったじゃん。消え入り...
13
2016
君の天使 14 司つく
気合いを入れた筈なのに‥アレッ? アレレ?アチャー 受付で手間取ってるよアタシ、出端を挫かれましたぁー状態だね。ククッ、しかもだしかも‥‥うんっ。やっぱり!こういう事なんだと思う。ホラ、ホラサン、ニー、イチ、ゼロ「牧野、おまえ‥何やってんだ?」グットタイミングだね。司の天使と目を合わせ、頷きあって笑い合う。オレ達が、なんも動かなくても、一旦動き出した歯車は、カチコチカチコチ動き出す。これが、運命。これ...
12
2016
君の天使 13 司つく
「トモからどうぞ」「いや、つくしから」いやいやどうぞと言い合ってもう一度、二人同時に言葉が重なって、顔を見合わせ笑い合う。一頻り笑った後に「つくしから話して」そう言われて「‥じゃぁ失礼し‥‥あのね、明日から道明寺HDに出向になりました。で、ちょっと忙しくなるかな」トモは、ポケットから取り出そうと思っていた手を止めた。「トモの話は?」ニッコリと笑ってつくしが聞いた。「あれ?なんだったけかなぁーあははっ」...
11
2016
君の天使 12 司つく
契約書を捲る、つくしの手が止まり「えっ」もしや、感づいた?「うわっ、出向手当だって。うわっ」そっちか‥‥つくしの頭の中は、出向手当で占められいく。そうこうしている内に、クライアントと打ち合わせの時間だ。「牧野、担当はずれる挨拶しとけな」先輩に言われて、慌てて席を立つ。契約書は、ファイルに入れられ仕舞われる。クライアントの西野さんは、大層驚きながらも「道明寺HDなら、またお会い出来ますね」そう言って微笑...
10
2016
君の天使 11 司つく
たった今、デートの約束をした人と思えない、なんの感慨もない表情で、スマホをポケットにしまう。首をぐるんと一つ回して、紙袋と、書類を脇に抱え、部屋を出る。パタンッ会議室に残されたのは、綺麗に置かれた皿と湯のみと、オレ。トモ‥可哀想だけど、トモのミラクルはつくしじゃない。好きな男には、女って、もっともっと嬉しそうにしたり、逆に切なそうになったりするんだ。有頂天のトモの事を思って、可哀想になった。同時に...
09
2016
君の天使 10 司つく
広瀬さん‥この人流石だねー!人事部長だけあるよ。流れるように説明している。優しい物腰に、口調だけど「「牧野さんのお陰で、向こう1年間の道明寺HDの広告は、全て御社が請け負う事になったんですよ!なんでも、水素水のフレーズが、いたくお気に入られたとかで‥お調べになられたらしく‥」つくしのご機嫌フレーズを並べていく。つくし、でも、ちょっと待て‥それ全部、司がやってる事だからね。ククッ、そんなに鼻の穴広げちゃっ...
08
2016
君の天使 09 司つく
孤立無援で残されたつくし‥‥アルカイックスマイルを浮かべた役員秘書に促され、席に着いた。緊張から、鼻の横を触ってる。この緊張が、何に変わるか? ククッ見物だね。「若いお嬢さんは、甘いものが好きと聞いてるが、君はどうかね?」つくしの見た物は、足立音衛門の栗のテリーヌ。ボーナスが入ったら、お取り寄せしちゃおうかなぁーなんて、密かに狙っていたものだ。ゴクンッ 生唾を飲み込む音が聞こえる。ゴロゴロ入っている...
07
2016
君の天使 08 司つく
パンッ両の手で、頬を叩いて「うん。今日も牧野つくしだ。うん。つくし、ファイトだ」身体を震わせ、今にも泣き出しそうな声で呟いた。そうか‥‥つくしの日課は、司への思いだったんだ。泣けないつくしの代わりに、オレの目からもう一粒涙が溢れてた。つくしは、皆とは反対方向に、駅に向かって進んで行く。6年前、何があったんだろう?雑踏に紛れた、つくしの後ろ姿を見ながら考えていた。震えるほどに好きなのに? お互い好きな...
06
2016
君の天使 07 司つく
無意識に、耳朶を触りながら「何年だ?」司の問いに、間髪を入れずにつくしが答える「6年‥‥」司の唇が、嬉しそうに片方上がった。「ククッ、会社に入ってだ」「あっ‥‥」恥ずかし気に、つくしは下唇を噛む。「4年目‥」「どこの部署だ?」「クリエイティブ制作部」「花形部署だな」つくしとて、人の子だ。褒められて悪い気はしなのだろう。鼻をピクピクさせながら笑って答える「下っ端だけどね」「ククッ‥お前、変わらねぇな‥鼻ピ...
05
2016
君の天使 06 司つく
「婚約?婚約破棄じゃなくてか?」そんな言葉とともに、大きな笑い声がする。司の笑い声だ。2人の幸せだった時を、彷彿させる大きな大きな笑い声だ。「お前、それいつの情報だよ?」「いつって‥‥先週の女性週刊誌よ」「クククッ その女性誌とやらはどこで見たんだよ?」「ど、どこって‥び、び、美容院よ」「婚約は、もうとっくに過去の事だ」司は、婚約を過去のものだと一蹴(いっしゅう)して、愉快に楽しく笑う。事実、愉快だ...