明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

04

2016

被虐の花 01 R   あきつく

両手を広げ、女が俺の前に立つ‥薔薇を手渡し、手に握らせる。握らせた掌をギュッと掴む。刺の処理をしていない薔薇は、女の掌に無数の痛みを与える。「痛っ」小さく女が呟いた‥広げた真っ白な掌に、うっすらと赤い血が滲んでいる。この女が、たまらなく愛おしい‥大事にしたい‥傷つけたくない‥ なのに、無惨に花を散らせたい。交差した思いが俺の中を駆け巡る。女に会う度に、女を抱く度に、感じる思い。宝物のように大事にしたい‥...

05

2016

被虐の花 02  あきつく

シャアシャアシャアシャアクマゼミが腹部を激しく動かして、けたたましく鳴いている。その日は、暑い暑い日だった。一歩外に出た瞬間、熱風が身体を駆け抜ける。ユラユラと陽炎が揺れていた。商談を終え、秘書を帰し、一人になった俺は街を彷徨っていた。何故あんな所を一人で彷徨っていたのだろう。親友の婚約のニュースを知り、色々な思いに駆られていたからだろうか?そろそろ、俺も年貢の納め時か?周りが勧めてくる見合いを、...

06

2016

被虐の花 03  あきつく

華奢な肩を震わせている。その肩に触れた瞬間‥欲しいと思った。この女を‥身も心も欲しいと願った。シャアシャアシャアシャア‥クマゼミがけたたましく鳴いていた。微睡みの中、あの夏の日に思いを馳せていた。「あきらさん‥?」俺の聖女が、微笑んでいる。こいつに似つかわしくない、儚い微笑みを称えて。俺は知っている、つくしに似合うのは、太陽のように輝く笑顔。向日葵のような笑顔だって。だけど俺は、お前の中に被虐の花を咲...

07

2016

被虐の花 04  あきつく

閉じられた空間で、つくしに許された衣服は、薄衣だけ。「なぁ、俺が居ない時も、その格好してるの?」コクンっと頷く。愛おしい愛おしい女。「いい子だ」口づけを落としながら、囁いて、耳朶を齧る。「明日、会社に来る時は、あの袋に入ってるのを着けて」「えっ‥アレってなに?」怯えるような表情で、つくしが俺に聞く。「下着とスーツ。明日は、会社に類がくるからね。悪い事しないように」「そんな‥こと‥しないよ‥」「つくしは...

08

2016

被虐の花 05  あきつく

「それでも、まだその頃は良かったの‥」決定的に、破滅の一歩を踏み出したのは、2年前からだと話しだした。「両親はすっかり働かなくなっていたの‥それなのに‥借金を繰り返して、気がつけば、闇金にも借金していたの‥」壊れてしまった人形のように、女が笑う。「闇金ね、さっきの一社じゃないの‥他にもまだあるみたい‥うふふっ、あたしってどこまでもついてないみたいでね」壊れた女は、美しく笑い続ける。「あたしね、とある坊っ...

09

2016

被虐の花 06  あきつく

つくしが寝ている間に、先ずは借金の精算をした。有り体に言えば、全額など返す謂れはないのだろう‥だけど、そんな綺麗事が通用しない世界だって言うこと位は、嫌って程に骨身に沁みている。闇の世界には闇の世界のルールがある。全てを清算した後に、爺様を頼り、ここら辺を仕切っている男を呼び出してもらった。若い衆に、部屋を見張らせて、爺様に付き添ってもらい、俺は男と話を付けた。つくしを陥れようとした男の名前を聞き...

10

2016

被虐の花 07  あきつく

コンコンッ…つくしが、紅茶を持って部屋に入ってくる。美しい所作なのに、時折脚を引き摺る。「脚痛むのか?」そう聞けば、「ごめんなさい…」謝るな…悪いのは俺なのだから…「そうじゃない。痛むのかどうか聞いてるんだ」卑屈になるつくしをみて、ついつい詰問になってしまう。「大丈夫ですから‥」つくしが、そっと目を反らす。そう言えば、昨日も脚を引きずっていたんだ。無理をさせ過ぎてしまった。俺の前で、決して泣き言を言わ...

12

2016

被虐の花 08  あきつく

引き摺る脚を見る度に、俺の胸には後悔が去来する。つくしを見初めた御曹司、迫田真人の執念は狂気だった。財閥を追いつめ、迫田の動きを封じ込めた筈だった。何もかもが、迂闊だった‥‥つくしが手に入らないと解った迫田は、つくしを連れ去った。迫田を追った。追いつめられたあの男は、つくしを‥突き落としたのだ。俺の目の前で、つくしの身体が落下した。幸いな事に、高さがそれほどなかったのと、途中の枝木がクッションになっ...

13

2016

被虐の花 09  あきつく

RRRR‥内線が響き渡る。つくしが俺の腕の中から、するりと抜けて受話器を取る。「‥‥えぇ‥お通しして下さい」アポイントの10分前‥もう、類が来たようだ。1分1秒の中で生きている男が、つくしの為にはこぞって時間を作る。つくしの何が、こんなにも俺達の心を魅了させるのだろう。考えても考えても答えなど出はしない。たった一つだけ、つくしが存在するから。それが答えなんだろう。愛に自信が持てたなら、もっと穏やかに愛する...

14

2016

被虐の花 10  あきつく

時計が6時半を過ぎる頃、つくしは部屋を出て行った。独り取り残される。つくしが恩義を忘れて、どこかに羽ばたける訳は無い。「恩義か‥‥」窓から、空を見る。暗くなった空に月が浮かんでいる‥恩義などいらない‥愛が、愛が欲しい‥つくしの心、全てを俺で埋めてしまいたい。窓辺に腰掛け、見果てぬ夢を見る。たかが数時間、つくしが自分の元を離れるだけなのに、心の中に嵐が押し寄せる。つくしが消えたら‥‥恐怖が襲う。類と食事を...

15

2016

被虐の花 11  あきつく

誰かが何かを話してる‥そんな事は、ちっとも頭には入らない。類の手がつくしの髪に、愛おしげに触れる‥それだけしか見えない。「あきら君、早過ぎー‥お陰で類君の独り勝ちだよ」「ホントだよな。ったく、あきら早過ぎ」「たまには、先輩を自由を差し上げなければ、嫌気をさされますわよ」桜子の言葉が、俺の心に刃を降らす。「牧野、嫌になったらいつでも、美作辞めて、花沢においでよ」つくしを見れば、困ったように微笑んでいる...

16

2016

被虐の花 12  あきつく

車を降り立ち、地下車庫から直通のエレベーターに乗り込む。エレベーターの壁につくしを立たせて、ブラウスのボタンを一つ一つ外していく。「あ‥きら‥さん‥お部屋に戻ってから‥」「部屋と一緒だろ?」「で‥も‥」ブラを捲し上げ、胸の頂を舌で転がす。瞬間‥つくしのブラウスから類のフレグランスの匂いが薫り立つ。 メチャメチャニ シテシマイタイ‥嫉妬の炎が燃え上がり、俺の心に火を灯す。チーンつくしを立たせて、一枚一枚服を...

17

2016

被虐の花 13  あきつく

つくしの寝顔を見つめながら‥そっと、髪の毛に触れる。美しい、俺の宝物おんな善きにつけ悪しきにつけ、人の心を魅了する。彼女のもつ温もりを、光を手に入れたいと、願ってしまう。手に入れたいと願い、狂ってしまうのだろう。そっと、ベッドから抜け出して、帰り支度をする。朝陽の中でつくしを見るのは、あまりにも辛いから‥部屋の外から鍵をかける。 逃げ出さないように‥‥**カチャリと部屋の扉を閉める音がした。あきらさん...

18

2016

被虐の花 14  あきつく

夜は嫌い‥真っ暗な闇が天蚕糸てぐすね引いて、あたしを引き摺り込もうとしてるから。あたしの恋は、いつでも上手くいかない。ううん。あたしの人生はいつも上手くいかない。沢山の幸せを望んだつもりは無い。それなのに‥幸せは手の平から、サラサラといつでも溢れていく。パパやママの人生を狂わせてしまったのは、間違いなく、あたしだ。あたしを突き落とした迫田真人とて、あたしの被害者なんじゃないだろうかとさえ思っている。...

22

2016

被虐の花 15  あきつく

あきらさんに抱かれ、幸せに包まれたあたしは‥迫田を受け入れようと覚悟を決めた。迫田の情婦おんなに、なって借金を清算しよう。そう決めた。あきらさんがつけてくれた護衛の人の目を盗んでまで‥あたしは迫田に連絡を入れたんだ。〝 つくしです 〟〝 つくしちゃん?本当につくしちゃん? 〟〝 はい。お会いして話したい事があるのですが‥‥ 〟〝 会いたいって‥本当に? 〟あきらさんが、東京に戻る日に迫田と会う約束を取...

23

2016

被虐の花 16  あきつく

部屋の鍵を閉めながら‥俺は、あの日の出来事を思い出していた。つくしがホテルの部屋から消えたと連絡が入ったのは、会議中だった。会議が終えるまで、俺はそれを知らずに過ごした。つくしは、忽然と姿を消していた。探しても探しても、手がかりさえ見つからず、ようやく見つかったのは、一週間後だった。迫田の別荘につくしは居た。迫田に薬を飲まされ、一週間抱かれ続けていた。俺が部屋に押し入った時、つくしは、嬌声をあげ、...

24

2016

被虐の花 17R  あきつく

あたしの部屋には、刃物は置かれていない。包丁は愚か、鋏さえも置いてはいない。窓ガラスは、強化ガラス。鏡は絶対に割れない、リフェクスミラーだ。あきらさんは、あたしに言わないけれど‥あたしが自分の身体を傷つけないように。行動の管理も「つくしの浮気防止だよ」そう言うけれど‥‥そうじゃない‥あたしが自分の身体を傷つけないように‥‥してくれているのだ。彼は、どこまでも優しい‥‥あたしは、彼の優しさに甘えている。窓の...

25

2016

被虐の花 18  あきつく

朝陽の中、目を覚ます。ペットボトルの水を飲み、シャワーを浴びて身支度をする。身支度を終える頃、施錠が解かれ‥SPの塚本さんが朝食をもって来る。「つくし様 おはようございます」「塚本さん、おはよごうございます」美作の所有するマンションのペントハウスがあたしの住む部屋だ。身分不相応だと断っても、これも契約の内だと‥‥掃除も洗濯も、料理さえも他の人にお任せしている状態だ。塚本さんと、他愛もない会話を交わしな...

26

2016

被虐の花 19  あきつく

パトリシアローズのティーカップに、ゴールデンドロップを注ぎながら、愛を注ぐ。最後の一滴は、紅茶の後味を良くするとともに、あたしのあきらさんへの愛が入っている。あたしの思いは、報われなくてもいい。こうして毎朝愛する人に、美味しいお茶を淹れる事が出来れば、それで良い。2人で蚤の市に出掛けた時に、買ったティーカップ。ピンクのグラデーションにパトリシアローズが描かれている。彼の唇が、ティーカップに触れる。...

27

2016

被虐の花 20  あきつく

どこか淫美な表情を称えて、身支度を整えたつくしが、戻ってくる。刹那迫田に、組み敷かられて虚ろな目になりながらも嬌声を上げていたつくしを思い出す。白い肌が、快楽でほんのりとピンク色に染まっていた。その姿に劣情した‥つくしは、俺と目が合った瞬間‥美しく妖艶にそして哀しそうに‥微笑んだんだ。狼狽えた瞬間‥つくしが迫田の手によって、突き落とされていた。つくしが落とされたのは、一瞬の行動が遅れたから…悔やんでも...

28

2016

被虐の花 21  あきつく

車窓に、大きな雨粒がぶつかり、滝のように流れている。「あきらさん‥あたし‥」小さく震えるつくしの身体を、抱き寄せる。愛してるそう伝えたい。だけど、お前は信じはしない。だから‥俺はつくしに囁く「お前は、俺に買われたんだよ」愛おしい女がコクンと頷いて、ようやっと安堵したのか目を瞑る。雨風の勢いは衰えず、車の窓を打ちつけている。ズルイあたしは、あきらさんに凭れ掛かり目を閉じる。彼の香りが、あたしを包み込む...

29

2016

被虐の花 22  あきつく

仄暗い灯りの中で‥‥目の前の男が、金は出すから俺の秘書になれと言っている。「司お前、酔っぱらってるのか?ったく、言っていい冗談と悪い冗談があるぞ。なぁ‥あきら」「牧野が、俺の秘書になるんなら、俺も1億くらい出しちゃうなぁー ねっ牧野」類が、優しくあたしに微笑みかけているトンッ グラスが、勢いよくテーブルに置かれる「冗談じゃねぇよ‥なぁ、あきら?」「司、もう酔っぱらったのか?」「酔っちゃいねぇーよ。牧野...

30

2016

被虐の花 23R  あきつく

止まない雨が、フロントガラスを叩き付けている。強く、激しく叩き付けている。この雨は、一体いつまで降り続けるのだろう?「あきらさん?」つくしが、心配げに声をかけて来た「っん?」「酔ってしまいました?」「いや、つくしを抱く元気くらいはあるから大丈夫だよ」つくしの肩を抱き寄せて、耳許で「どのくらいビショビショになってる?」真っ赤な顔をしながら俯く。「黙ってないで教えてご覧」俺の胸に、撓垂れ掛りながら「‥...

01

2016

被虐の花 24  あきつく

疲れ果て、腕の中で眠るつくしを見つめながら今日は、朝まで一緒に居たいと思った。久しぶりに、朝陽の中の彼女を見たいと願った。つくしは幸せを怖がる。人一番幸せを求めている筈なのに、心の奥底が幸せを拒否する。日常的に幸せな時が続くと、それを失わないようにしようと恐怖するのだ。根源的恐怖と戦う為に、張りつめられた精神の緊張が、肉体を苦しめるのだ。精神が不安定になり嘔吐を繰り返す。絶え間ない頭痛と発熱を伴っ...

02

2016

被虐の花 25  あきつく

つくしが倒れ、目を覚まさないと塚本から連絡が入った。かかりつけ医に連絡を入れ、つくしの受け入れをお願いする。一旦、社に向かい、業務の確認をした。幸いな事に予定をずらせる事のみだったので、松木に頼んでスケジュールの調整を行ってもらった。今日と明日と土日を併せて4日間の休暇を取った。「あきら様‥つくし様は大丈夫でいらっしゃいますか?」松木は、つくしと俺の全てを知っている。懐刀をと爺様が付けて下さったの...

03

2016

被虐の花 26  あきつく

夕方、爺様と婆様が病院に来てくれた。婆様は、眠るつくしの髪を撫でながら「いい子、いい子、つくしちゃんはいい子」優しい調べで口ずさんでいる。2人につくしを託して、俺は総二郎に連絡を入れる。「‥‥あぁ、突然で申し訳ない‥あぁ、お願いするよ」Bar crimeクリムに向かう。奥の部屋に通される。ほどなくして、総二郎と類‥そして司がやってくる。「突然呼び出して、悪かったな‥」「そんな事はどうでもいい。牧野どうしたの?」...

04

2016

被虐の花 27  あきつく

朝陽の中で眠る愛しい女を眺める。化粧を落として眠るつくしは、童女のようにあどけない。白雪姫が眠りから覚めるように、パチリと目を覚ます。「‥‥あ‥きらさん?‥」「おはよう」「‥‥おはようございます‥」「さぁ、起きてご飯を一緒に食べようか」「‥‥今日は‥あきらさんと?」「嫌?」つくしは、慌てたように首を振る。身体を起こすのを手伝って、病室内のテーブルで2人で食事をとる。ガスパチョに、生ハムのサラダとクロワッサン...

15

2016

被虐の花 28R  あきつく

「あきら‥さん?」愛しい女が、俺を見て俺の名を呼ぶ。出来るならこのまま何を思い出させずに、俺だけのものにしてしまいたい。「なぁ、つくし‥俺、すげぇズルイんだ‥この期に及んでもお前を離したくないと思ってる」つくしが俺の胸に顔を埋めながら「‥あた‥しも‥離れたくない‥」愛おしい女が、蠱惑的な瞳で俺を見る。俺は、目を瞑り‥‥「だったら‥一緒に思い出す努力をしてみないか?」「‥‥」「酷な事を言っているのは、百も承知だ...

16

2016

被虐の花 29R  あきつく

「つくし‥つくし‥やっと‥やっと俺のものだ‥」迫田の舌が、あたしの耳を舐り上げながら囁き続ける‥あたしは、どこか遠いところで、その言葉を聞いている。遠のく思考で、あきらさんを思い浮かべる‥彼の吐息を、口づけを思い出す。迫田が、執拗にあたしを責めてくる。身体の表面にナメクジが這い回っているような錯覚に陥る。あたしの精神は、あきらさんを思い宙に漂う。知らないうちに涙を流して、愛おしい男ひとの名を呼んでいた。...

17

2016

被虐の花 30  あきつく

「つくしさん、つくしさん」主治医の先生の声がする。意識が現実世界に立ち戻る。「決してあなたのせいではないのよ」先生の優しい声が眼差しが、あたしを受け入れてくれる。記憶を取り戻す治療が始まって‥ふた月が経っていた。あたしは、失われていた記憶を少しずつ自分のものにした。屈辱的な思いをしながら、幾度も涙を流した。その度に「怒れ、もっと怒っていいんだ。感情を解き放つんだ」あきらさんは、そう言ってあたしを大...