明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

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2016

序章 

あたしの心は、酷寒の地獄を彷徨い続けている。凍える寒さは、肌を切り裂く。切り裂かれた肌からは、血が流れでて、真っ赤な蓮の花を咲かせる。淡い初恋のあとに、ジェットコースターのような恋をした。全てを引き換えにしてもいいと思えるような恋だった。めくるめくる夢のような恋だった。だけど、幸せは長くは続かない。身分違い。最初からわかっていた。いつでも覚悟はあったから、ギリギリ迄踏ん張ってくれたあいつの手をあた...

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2016

紅蓮 01 つかつく

竹林の中に一条の光が射込んでいる。毎日見ても見飽きない、陽の光。そっと手を伸ばし、光を掴もうとする。だけど光は掴めない。「つくし」悋気のこもった声がする。あたしは、後ろを振り向いて、笑顔を作る。「寒くなって来たから、そろそろ部屋の方に戻りなさい」「はい」促され、縁台から邸に上がる。「今晩は、つくしのかぶら煮が食べたい」「ご用意しておきますね」宗谷凌 それが、あたしの夫の名前だ。何の因果なのだろうか...

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2016

紅蓮 02 つかつく

お茶にお花に踊りに、お琴のお稽古。お稽古ごとの先生は、全てこちらに来て頂く事になっている。お稽古事の先生方を始め、あたしの身の周りの世話をするのに、二階堂以外の男性は一切置かないと言う徹底ぶりだ。宗谷の悋気ぶりには頭が下がる。二階堂は,宗谷の犬だ。舐めろと言えば、宗谷の靴の裏でも舐めるだろう。あたしの教育係兼見張り番だ。「つくし様」二階堂の冷たく尖った声に、何も悪い事などしていないのに、あたしの身...

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2016

紅蓮 03 つかつく

夕刻過ぎ、宗谷の希望のかぶら煮を炊く。カタカタッと雪平の鍋の落し蓋が揺れている。宗谷から料理を頼まれるのは嬉しい。あたしのために作られた台所だから、宗谷以外は、誰も入ってこない。ここの空間ならば、誰の目を気にすることなく振る舞えるから。屋敷の中では、二階堂の目が光り、鼻歌さえ気軽に口ずさめない。あたしは、二階堂の真似をする。「つくし様、宗谷家の奥方様として…」ぷっ、五月蝿いちゅぅのー 宗谷家の奥様...

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2016

紅蓮 04 つかつく

西門さんと、桜子を二階堂が客間に案内する。宗谷がいないところで、二人と話したいのに、二階堂が「つくし様は、先に凌様のお着替えをお手伝い下さいませ」そうあたしに言い伝える。他の人に聞こえないように、小さく小さく溜め息を吐く。宗谷の着替えと言っても、 あたしが何する訳でないのだから、たまに友人と会えた時くらい、二階堂も気を使えばいいのに‥そう思う。だけど‥犬がとる行動としては、素晴らしいものなのだろ。あ...

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2016

紅蓮 05 つかつく

2人と会話を楽しむ。桜子が、そっとあたしに手紙を渡して来る。あたしは、違う話題を交わしながら、そっと受け取る。襖が開き、宗谷が入ってくる。あたし達は、立ち上がり宗谷を迎える。宗谷は、美しい笑みをたたえあたしの横に腰掛ける。彼の前では、決してこの2人と必要以上に仲良さげにふるまっては、いけない。宗谷にとって、あたしは人形。人形は、意思も持ってはいけないから。美しいべべを着て、横に座っているのがあたしの...

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紅蓮 06 つかつく

否、正確に言うと、この時のあたしは、まだ気が付いていなかった。久しぶりに会えた、桜子と西門さんの存在が嬉しくてたまらなかったから。後悔先に立たず‥まさしくだ。2人がいる間、宗谷は始終笑顔だった。和やかに食事がすすみ、10月の西門さんのお披露目のお祝いとして、宗谷に伝わる茶碗を譲る話しまで出た。茶人ならば、誰しもが欲しがる茶碗。国宝級のお茶碗だ。値段をつけるつけない以前の問題だ。驚く西門さんに「西門は、...

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2016

紅蓮 07 つかつく

宗谷の前では気を抜かない。この3年で身につけた習い性だ。気をつかっていない振りをしながら、最大限に神経を張りつめさせている。屋敷の者、たまに会う外部の者達も全てのもの達が、「奥様は、宗谷様に愛されてお幸せでいらっしゃる」そう言う。幸せ?誰が?そう思うけど、木偶の人形は、3年で完璧に身に付けたアルカイックスマイルとやらで「えぇ」と返答する。こんな生活が幸せというならば、くれてやるそう思いながら。紅い...

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2016

紅蓮 08R つかつく

宗谷が、あたしを立たせたまま、大きなカウチに腰掛ける「脱ぎなさい」肘掛けに寄りかかるように、頬杖をつきながら、宗谷があたしを見つめる。「早くしなさい」命が飛ぶ。帯を解き‥腰紐を外す。薄紅色の着物を脱ぎ、伊達締めを外す。長襦袢を脱いで、肌襦袢と裾よけ姿になる。宗谷に手招きをされる。あたしに、逆らう自由は許されていない。肌襦袢が、宗谷の手によって脱がされる。手を出しなさい。そう言われ両の手を合わせて、...

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2016

紅蓮 09R つかつく

宗谷が、あたしを抱き上げ、お風呂に入れる。丁寧に丁寧にあたしを洗う。指の一本一本を愛撫するように、慈しむように、あたしを洗う。再び大きくなった宗谷自身で、あたしを貫く。浴室に淫らな音がこだまする。幾度の快感の末に、あたしは意識を手放す。目覚めたあたしの横には、宗谷が眠っている。美しい男だと思う。あたしの身体に喜びを与えてくれる人だと思う。だけど、あたしはこの男を愛せない。抱かれる度に、心は冷めてい...

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2016

紅蓮 10 つかつく

豪奢な地下牢で、ひとしきり泣いて紅をさす。外界と遮断されたこの空間。この部屋まで来るのは、宗谷だけ。ここに閉じ込められている間は、宗谷としか言葉を交わせない。食事は、二階堂と山下が隣室に用意する。隣室へと続く扉は、二人が来る時間には閉まってしまう。ここに在るのは、宗谷と彼がもたらす快楽だけ。天空の空を見つめる…手を翳す。手首には、うっすらと縛られた痕がついている。極力、痕をつけないようにする宗谷と...

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2016

紅蓮 11R つかつく

宗谷が、部屋に入ってくる。あたしが、準備したお道具を目にして、顔を綻ばせる。満足気にカウチに腰掛け、玩具を物色しながら、「つくし、自分の手で、私を迎え入れる用意をしなさい」そう命を出す。宗谷の前にある一人掛けの大きなソファーに座り、着物をはだけ、乳房を揉む。乳首を摘まむ。。冷たい目で見られてる。そう思うと、身体中に快楽が駆け巡り、汁が滴り落ちる。屈辱的なのに…あたしの身体は、敏感に反応する。右手で...

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2016

紅蓮 12R つかつく

司の名前は、あたしを生身の女に戻す。紅蓮の恋に傷つき、心に血を流し続ける惨めな女に戻す。あたしは、首を振り続ける。叱られる。そう思うのに、身体が止められない。「つくし」叱咤の声が飛ぶ。冷たく暗い声音。宗谷に抱えられ、ベッドに落とされる。ドスンッベットに縫い付けたれたあたしの身体を宗谷の舌が隅々まで這う。足の指を宗谷が舐る。媚薬が塗られ、ローターが花芯に押しあてられる身体中が、蕩けてしまいそうに熱い...

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2016

紅蓮 13 つかつく

天空から差す光で、目が覚める。燦々と輝く太陽の光。眩い程に美しい光。宗谷の腕が、あたしの身体に絡んでいる。起さないように、細心の注意をはらい、絡まる腕から、そぉっと逃げ出す。寝間から抜け出し、薩摩切子のデカンタに入った水を注ぐ。コクリコクリと音をたて、水を飲む。喉が上下する。グラスに、光があたる。上から覗いた、深紅の切子グラスはまるで万華鏡のように美しい。「あぁ、綺麗」感嘆の声が出る。一人でシャワ...

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2016

紅蓮 14R つかつく

バカな男は、あたしが服従していると思ったのか?あたしの手を取り、施錠を解いていく。渡り廊下を抜け、本丸に戻ると、使用人達が並び、一斉に挨拶をしてくる。地下牢で行われる痴態を見られたわけではないのに、この瞬間あたしは、羞恥に包まれる。牢から戻って来た時の宗谷は、いつも以上にあたしを愛でる。人目憚らず、あたしの髪を撫で、口づけを落としてくる。気持ち悪い‥ そう思うのに、逆らえば牢に逆戻りだ。それが怖く...

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2016

紅蓮 15 つかつく

宗谷があたしを抱きかかえて浴室に運び込み、全身を綺麗に洗う。丁寧に、丁寧に、慈しむように綺麗に洗う。手を叩いて山下と侍女を呼び、朦朧としたあたしを引き渡す。薄衣を羽織り、椅子に腰掛けたあたしは、化粧を施され、髪を結い上げられる。意識がしゃんと戻った頃に、美しい着物を着せられる。飾り立てられながら、あたしは思う‥‥この人達は、あたしのこの身体に施されたピアスや、鞭の痕を見て、恥丘に彫られた紅い蓮を見て...

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2016

紅蓮 16 つかつく

一度、蓋を開けてしまったあたしの思いは止まらない。目から涙が溢れ出す。「あのね、一人でお風呂に入りたいの。一人でお食事がしたいの‥」「つくし様、お湯浴みに関しましては、山下が全てやらせて頂きますので、どうぞお気持ち落ち着け下さいませ、明日は、ごりょん様もいらっしゃいます事ですし、ご主人様も無体な事はなさりませんので、落ち着いて下さいませ」精神を落ち着ける香蘇散を飲まされ、麝香が焚かれる。麝香には、...

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2016

紅蓮 17 つかつく

「ねぇ山下、蝶々の着物を作って頂くのはどうかしら?」あたしが意地悪く言えば「つくし様のおねだり‥お喜びになるかと思います」笑顔で言葉が返ってくる。長い長い廊下を歩き、本丸の玄関に向う。宗谷が、あたしを見つけ嬉しそうに微笑む「凌さん、お帰りなさいませ。お待ちしておりました」先ほどまでの事は、おくびにも出さず微笑む。「あぁ、このまま出掛けるので、車に乗りなさい」玄関口の前に止められたリムジンに、宗谷と...

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2016

紅蓮 18R  つかつく

宗谷は、驚くほど丁重に、パパやママを扱う。見ているあたしは、滑稽に感じる。頻繁にこれない事を、丁寧に謝ったあと‥周りで変わった事は、無かったか。必要なものは無いかを確認する。パパは、始終卑屈な笑みを浮かべ、おもねる眼差しで。「つくしを、どうぞ宜しくお願い致します」そう言って,使用人の淹れてくれたお茶を勧める。宗谷は、優雅にソファーに腰掛け、茶を啜る。病室とは思えない程の、豪奢な空間で、優雅に茶を啜...

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2016

紅蓮 19  つかつく

醜くなったあたしの身体を、宗谷は愛する。愛おしそうに、愛撫する。宗谷を憎んだあの日から、幾つの夜が過ぎたのだろう。“宗谷つくし” になって気が付けば3年だ。3年の間に、全てが変わってしまった気がする。病室の扉がノックされる。使用人が扉を開けると病院長が看護婦長と共に立っている。宗谷の所へ、挨拶にやって来たのだろう。「屋上庭園に行って来ても宜しいですか?」「‥あぁ、外には出ないように」一瞬の間をおいて...

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2016

紅蓮 20 つかつく

色とりどりの反物が、目の前に並べられる。店主の手で、畳の上に、蝶々が舞う。「綺麗」あたしが言うと、宗谷が嬉しそうに笑う。店主が、あたしの肩に反物を掛けようとした瞬間、パシッ 宗谷が、店主の手を払いのける。店主の顔が青ざめ、女将と共に平謝りをする。丁度、その時あたしの目に飛び込んできたのは‥「凌さん、見て」白地に、色とりどりの蝶が舞っている「菊子さん、その反物を羽織らせて頂けますか?」反物を持ち、棒...

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2016

紅蓮 21 つかつく

紅いのかしら? 蝶々の血も‥「っん?なにが紅いって?」「いえ‥紅くて綺麗だなぁ‥って」「つくしには、紅が似合うからね」至極、満足そうな微笑みが目の前にある。室井が頷いた後、「宗谷様、先日のチョーカーとアンクレットが出来上がって参りましたが‥いかがなさいますか?」「ついでだから、貰って帰ろう」宗谷が返事をすると「つくし様、お付けになられますか?」室井が、あたしに問うてくる。態々、あたしに聞かなくても良い...

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2016

紅蓮 22R  つかつく

メープルの総支配人が、近づいて来る。「宗谷様、奥様、ようこそいらっしゃいませ」カードキーを受け取る。宗谷は、意地が悪い‥時折、こうしてあたしが、宗谷の持ち物だと認識させる。決定権は、全て自分が持っているのだと‥「先に、食事に行こうか」美しい顔で微笑む。当たり前のように、個室に通される。あたしは、案内係の後ろを歩く。その後ろを宗谷が歩いて付いて来る。レディファースト‥中々慣れない習慣だといつも思う。屋...

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2016

紅蓮 23  つかつく

逃げ出してしまいたい。宗谷が作る檻の中から‥どこへ? 何しに? それに、逃げたとしても、どうせ連れ戻されるだけ‥ 連れ戻されれば、地下牢が待っている。挙げ句の果ては、一生屋敷から出られない。惨めな気持ちになる夢想は、止めにしよう自分に言い聞かせる‥逃げても何一つ良い事など無いんだと。ならば、山下の言う通り、心を殺そう。伽藍堂の木偶に戻ろう。これ以上傷つかないように‥少しでも自由を勝ち取る為に、心を殺そ...

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2016

紅蓮 24  つかつく

グラスを光りに翳して水を飲む。ゴクリゴクリと音がする。喉の渇きは潤っても、心の渇きは潤わない。「ねぇ山下、ごりょんさんにお土産を買っていきたいのだけど‥」「それは宜しゅうございますね。何に致しましょうか?」「ねぇ、ケーキはどうかしら?それでね、その時一人でお店に入って、選んでは駄目かしら?」つくし様なりません‥咎められるかな?‥そう思った次の瞬間‥ホテルの中の洋菓子店でなら良いとの許し貰う。山下とSPが...

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2016

紅蓮 25  つかつく

歪んだ表情は、一瞬で‥誰をも魅了するであろう極上の笑みを浮かべて、宗谷があたしに近づいてくる。動かなければ‥そう思うのに、足が竦んで動けない。呼吸が苦しくなり、色彩が消えて、目の前が暗くなる。意識の遠いところで、宗谷のあたしを呼ぶ声を聞いた。目覚めたら、いつの間にか屋敷の布団の上に寝かせられていた。花の薫りが辺りに漂う。「つくし様、お身体大丈夫でいらっしゃいますか?」山下が心配そうに声をかけてくる。...

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紅蓮 26  つかつく

宗谷の手を握り締め、メープルで買った洋菓子の話しをしながら、廻り廊下を歩く。「‥凌さんのは、メロンの王様が入っているのですよ‥」「つくしが選んでくれたのなら、一口頂いてみよう」山下の言う通りなのだ‥ どうせこの屋敷で生きるのなら、妄語を吐いて可愛い女になれば言い。だけど、反吐が出る。 宗谷に、自分に反吐が出る。居間のドアが開かれる。「つくしちゃん、お邪魔しますよ」ごりょんさんの笑顔が見える。「お会い...

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2016

紅蓮 27R つかつく

開開け放れた玄関から一陣の風が吹きこんで来る。宗谷を見送り、ごりょんさんの元へ戻り、色々話して、明日からの予定を立てていく。「あんまり詰め込み過ぎると、凌さんに叱られてしまうわね」戯けながらおっしゃったあとに、真顔になって‥「つくしちゃん、不自由はない?凌さんの束縛が少し強いように感じるのだけど‥」不自由なら死ぬ程ございます。そう言えるわけもなく‥微笑みを浮かべ、何の不自由も不便もないと答える。二階...

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2016

紅蓮 28  つかつく

妄語を覚えたあたしの生活は、前よりも少しだけ自由が増えた。ひと月に一度、凪子先生のカウンセリングを受けに行き、2週に一度、ごりょんさんの手伝いをしに表に出掛ける。山下は同行するが、二階堂は来ない。お陰で、帰り道は、自由に買い物をさせてくれる。その際は、どんなに小さなものでも宗谷にお土産を買う。出掛けた日の夜伽は、あたしから誘う。股を開き、汁を垂らして宗谷を銜えこむ。自由を与えてくれた対価を払うのだ...

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2016

紅蓮 29R  つかつく

「つくし様、先ずはお分かりかと思いますが」そんな一言と共に、山下が何着かピクニック用にと銘打って、カジュアルな装いを用意してくれる。「山下、ありがとう」「そのお言葉、どうかご主人様におしゃって下さいませ」「えぇ、心得てます」あたしは、山下に微笑み返す。宗谷が帰って来たら真っ先に出迎えて御礼を言おう。そう心に誓う。宗谷の帰りを告げる鈴がなる。重い心は横に置き、あたしは妄語を操る。小首を傾げて、微笑み...