明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

02

2016

シーソーゲーム Fin 類つく 

つくしが帰国したと聞いたあの日から、俺は、待ち続けている。つくしが自ら自分を許して、俺の元に再び現れてくれる日を。1年経っても、2年経っても‥中々現れない。3年、4年、5年、6年、7年目に突入だ。俺も大概‥気が長い。ねぇ、つくし、この6年間で俺を取り巻く環境も、色々変わったよ。3年半前に作り出したビルも来月には完成披露だ。それと共に、橘と花沢を一つにするつもりだよ。でも‥俺には、少し荷が重いんだよね。...

01

2016

シーソーゲーム 62 類つく

感激に浸る暇もなく‥「そうそう如月‥悪いんだけど、あなた出向してくれないかな?」既に加藤社長の顔に戻って、涼しい顔をして事も無げに、あたしに言う。目をパチクリするあたしに「じゃぁ、そう言う事で、今日これから宜しくね」そう言う事で宜しく?はぁっ?のあたしに「新しく会社を立ち上げるらしいのよ。と言うわけだから、まっ宜しくね」宜しくねで片付けられて、何の説明もないまま‥あたしの丸6年が終わりを告げた。出向か...

30

2016

シーソーゲーム 61 類つく

「ポペ、クゥちゃん‥ぽんぽん‥すいたよ」あたしのお腹は、ぐぅーっとなっている。冒険だと勇んで屋敷を飛び出した筈なのに‥‥すっかりと、道に迷って迷子になっている。至る所、擦り傷だらけのあたし。千恵子の持たせてくれたポシェットの中から、最後のクッキーを一つ取り出して、ポペト半分こする。小さなクッキーは、もっと小さくなる。半分こにわったクッキーは、片方がちょっぴり大きくて、あたしは悩む。どっちをポペにあげよ...

29

2016

シーソーゲーム 60 類つく

決意を決めたあの日から1年半‥あたしは、柊兄ぃを待っている‥‥計算が正しければ、もうじきこのドアが開くだろう。目を閉じてから、息を吐く。〝ごめんなさい〟呪文のように何度も唱えた言の葉を心にしまう。目を開け、真っ直ぐにドアを見る。3、2、1 バタンッ柊兄ぃが‥青い顔をして部屋に飛び込んで来る。「つくし‥どういう事だ?」「一之宮の大老にお聞きになられた通りです」「‥‥一年半は、このためか?」「はい」あたしは、微...

26

2016

シーソーゲーム 59 類つく

「あなた達って、いつからそんな関係だったの?」受話器の向こう側の第一声。続けて言われたのが「来週、夫と共に類に会いに行くから。時間作って貰えるかしら?」貰えるかしら?じゃなくて、それは作れって事だよね?相変わらずの静の女王ぶりに苦笑するけど‥いま、一番頼りに出来るのは静だ。翌週、待ち合わせの場所に、兵藤氏と連れ立って静はやって来た。「類、久しぶり」静とハグを交わした瞬間‥…兵藤氏の眉間に皺が寄る。兵...

25

2016

シーソーゲーム 58 類つく

お爺様とお婆様があたしの卒業式のお祝いにと、前日から泊まりに来てくださる。「あらっ、柊君は?」「明日の式典には出るって言ってたんだけど‥‥今日はごめんなさいって」今日、お爺様達が来る事を前もって知らせていなかった。今朝、出張先の柊兄ぃに電話で告げたんだ。どうせバレるから‥嘘は吐かない。ただ言わなかっただけ。2人で食事をとる。「つくしちゃんもいよいよね」「あぁ‥そうだな。つくしの花嫁姿を見れるのは楽しみ...

23

2016

シーソーゲーム 57 類つく

幾夜となく抱かれる。その度にあたしの心は死んでいく。これ以上、この男ひとを憎みたくないのに‥‥そんな感情を見透かした様に男は、あたしの頬に手を這わせながら、「憎んで憎んで‥それから愛せばいいよ」愛おし気に優しく微笑む。この言葉を聞く度に、あたしは全てを諦め、暗い暗い穴に堕ちていく。なのに‥あたしは暗い穴の中で、全てを受け入れなければいけない。「柊兄ぃ‥お願い‥もう‥」「つくし、もう柊兄ぃは変だよ。柊でい...

22

2016

シーソーゲーム 56 類つく

目の前から、愛おしい人が連れ去られて‥一之宮と如月の提携、つくしと柊さんの婚約のニュースが街を駆け巡り。ゆみさんからは「類君、ごめんね」そう謝られて‥‥全て泡になった事を知る。あの日、会いに行かなければ良かった?違う‥‥もっと前からだ。柊さんは入念に計画を立てたのだろう。もう遅過ぎるのだろうか?俺の心の中を、空虚という風が流れて行く。年が明けた後‥‥柊さんから一度会いたいと連絡が入る。何を今更?訝しがる...

12

2016

シーソーゲーム 55 類つく

「ニィ、ニィ、クゥちゃんはニィがいいの」小ちゃなつくしが泣き叫んでいる。「兄ぃ、みんながねくぅちゃんには、弟だけでお兄ちゃんはいないって言うんだよ。兄ぃはくぅちゃんのお兄ちゃんなのに、変だよね」初等部に上がった頃かな?「柊兄ぃー あのね、あのね、皆が柊兄ぃが一番カッコいいって。うふふっ凄いね」これは、中等部の頃のつくしだね夢を見る。小ちゃなつくしが段々と大きくなる夢を見る。16の誕生日‥如月つくし...

11

2016

シーソーゲーム 54 類つく

約束の場所には、もう既に類が着いていて、慌てて車を降りて駆け寄った。「類」嬉しくて嬉しくて、笑顔が溢れ出す。類の腕があたしをギュッと抱きしめながら「寒くない?」「いっぱい着込んで来たから寒くないよ。類こそ大丈夫?」「俺は、鍛えてるから」そう言いながらクスリと笑う。手を繋ぎ‥二人で歩く。「学校、入りたかった?」「うん。ちょっとだけ非常階段、見たかったかな‥」「実は、入れるように手筈は整えたんだ」悪戯っ...

09

2016

シーソーゲーム 53 類つく

「つくしー こっちこっち」優紀達と共に、楽しい時間を過ごす「つくしもいよいよ婚約だね」「そっかー早いよね。その前に親族会議だっけ?」「あっ、うん‥」「一番ねんねのつくしが、一番始めに人妻になるの?なんか可笑しいねー」「ははっ そうだね」「柊さんだったら間違いないよね」「うん。そうだよねー つくしのこと大事にしてくれるもんね~つくしは幸せものね」「ははっ…優紀も、滋もそろそろでしょ?」「ウフッ…そうな...

08

2016

シーソーゲーム 52 類つく

俺の隣で泣き疲れて眠るつくし‥嫉妬に駆られ、無体な事をしてしまったと後悔が胸に押し寄せる。寝入るつくしを抱きしめようとした瞬間‥つくしの口から‥小さく小さく言葉が漏れる。「‥るい‥」愛おしそうに、男の名前を呟く。初めて、この女が憎いと言う感情が湧き出て来る。押さえても押さえきれない程に、憎悪が沸いて来る。愛おしい‥なのに、憎らしい。つくしの心が俺のものになるのなら、喜んでこの命を差し出そう‥そう強く願う...

05

2016

シーソーゲーム 51 類つく

「お久しぶりでございます」柊兄ぃが優雅な身のこなしで、出迎えたお婆様とお爺様に挨拶を交わしている。「柊のような立派な男に愛されてつくしは、本当に幸せな娘じゃな」お爺様が、盛んに柊兄ぃを褒め称えているのを頭の片隅で聞きながら‥曖昧に笑う。如月の人間は、お爺様を筆頭に皆、柊兄ぃが大好きだ。柊兄ぃが驚く程に美しく、優秀だから。小さな頃から知っているから。あたしの婚約者だから。ううん‥そんな理由だけじゃない...

04

2016

シーソーゲーム 50 類つく

あの日から、柊兄ぃと共に起き、共に眠る生活が続いている。昼間は、SPかメイドの誰かしらが、柊兄ぃが帰って来るまであたしの元を離れない。今日も一日が終わる。「つくし‥おいで」柊兄ぃの胸に抱かれ、朝まで眠るのだ。あたしに拒否権などある筈はない。「小ちゃな時を思い出すね。つくしがまだ小ちゃな時、こんな風に2人でお昼寝をよくしたよね。つくしはね、俺がいなくなると直ぐに、ニィって呼んでね‥」昔話を語りながら、柊...

02

2016

シーソーゲーム 49 類つく

つくしと共に生きていける日を思い浮かべ、指折り数えて時を待つ。つくしがゆみさんの家を去った翌日、つくしからの手紙と、大きな笑顔を携えてゆみさんが橘にやってきた。爺様に呼ばれ、橘を継ぐ覚悟が出来たかどうかを確認される。一度心を壊した俺に両親を始め周りのものは、何もいわなかった。これ幸いとばかり‥ゆっくりとのんびりと人生を送ろうと決めていたなのに‥‥自分の全てを変えてでも、欲しい女が現れた。俺の中にこん...

01

2016

シーソーゲーム 48 類つく

泣かないと決めた筈なのに、涙が後から後から溢れ出してくる。「つくし‥つくし‥つくし‥なんで泣くの?」「‥お‥ね‥‥い‥ヒック‥もう‥止めて‥お願い」「つくし、俺等は結婚するんだよ?」「シュ‥二‥おね‥い‥‥ィッ‥ヤメテ‥」「今日は、ダメダ‥許さない‥」柊兄ぃの手があたしの胸を弄り、ざらつく舌があたしの全身を愛撫する。「つくし‥愛してる‥お前は、お前は、俺だけのものだ」シュルッルルッ外したネクタイで、あたしは両手を縛られ...

29

2016

シーソーゲーム 47 類つく

目を瞑り深呼吸をしてから、0時と共にスマホを鳴らす。「つくし」柊兄ぃの優しく包む声がする。心の中で、ゴメンナサイ ゴメンナサイ と謝りながら‥あたしの舌は、嘘を吐き、楽し気に今日一日の事を報告する。4日目の夜「朝一の飛行機に乗るから、夕方にはそっちに戻れると思う。ゆみさんに御礼がてら迎えに行くからね」そう告げられた瞬間‥‥身体の中から血の気がひいていくのが解った。怖い‥柊兄ぃに会って秘密がバレてしまった...

28

2016

シーソーゲーム 46 類つく

俺の心に、暗闇が訪れる‥愛する女性ものがもうじき手に入れられる筈なのに‥不安で、不安でたまらなくなる。こんなに長い間、つくしと離れるなんて‥ここ数年なかったからなのだろうか?一緒に連れてくれば良かったと、後悔が押し寄せてくる。疑わしい事など何も無い筈なのに‥‥だ。今朝のつくしは、どこか変だった‥‥昨日までの、つくしとは何処か違った様に感じたのは気のせい?ゆみさんの所に、滞在する事など許さなければ良かった...

26

2016

シーソーゲーム 45 類つく

部屋に戻り、スマホの電源を入れた瞬間‥ベルが鳴る。慌ててタップする。スマホの向こうからは、あたしを愛する男おとこの声がする。「つくし、朝早くから何度もゴメン」「あたしこそ、電源が切れてたみたいでごめんなさい‥何かあったの?」「いや‥昨晩の電話で何か言いたそうにしてただろう?」「あっ‥うぅん‥あっ、あのね‥柊兄ぃが帰ってくるまで、ゆみ叔母ちゃまのお家に居ては、ダメかな?って‥」「ゆみさんの所に?」「うん‥‥...

25

2016

シーソーゲーム 44 類つく

ゆみさんは「くぅちゃん、先ずは柊君に電話してきて頂戴。類君はちょっとここに残ってもらってもいいかな?」「あっ‥はい」「くぅちゃん‥くれぐれも柊君には、勘ぐられないようにしてね」ゆみさんが俺に向き直って「ねぇ、類君は柊君を知っているのよね?」「‥‥はい。小さな時から色々とお世話になってます」「柊君がくぅちゃんの婚約者だって言う事は?」「さっき、つくしとゆみさんの会話で‥」「そっか‥‥それまで知らなかったの...

22

2016

シーソーゲーム 43 類つく

愛する女を再び手にした喜びと、いつまた失うかもしれない不安とが同時に訪れる。俺に抱かれ、スヤスヤと眠るつくしを見つめ、少しだけ憎くなる。目が覚めたら、つくしは‥この跡をつけた男の元に帰ってしまうのだろうか?呼吸いきが止まるかと思う程に、嫉妬した。つくしの涙を見て、ズルイ女だと思った‥‥だけど‥つくしを‥嫌いになどなれるワケがない。何で?どうして?聞きたい事は山ほどあるのに‥出てきた言葉は、俺の前から消え...

21

2016

シーソーゲーム 42

ゆみ叔母ちゃまが、飲み物と軽食を出して「じゃぁ、私は先にお休みするわね。皆さんゆっくりね」そう言いながら、部屋を去って行く。漆黒の人が、あたしを見て微笑んでいる。刹那‥瞳が絡み合う。これは、幻? 「吉野君は、メルヘン君って呼ばれてるのよ」真理さんが話しだす。「メルヘン‥君?」ハルちゃんが笑いながら「夏みかん姫に、恋してるから」漆黒の人が「厳密に言うと、彼女は姫じゃなくて、妖精だよ」「姫も妖精も一緒じ...

19

2016

シーソーゲーム 41 類つく

一歩も動けないで、立ちすくむ。心のどこかで、絵空事に過ぎないと思っていた《結婚》という2文字が突如として現実として、突きつけられた気がした。「そっかぁ‥結婚か」婚約の先にあるのは、結婚。ハルちゃんと梨乃さんを見ていると至極当たり前だと理解出来る。でも‥そんな当たり前の考えが、あたしの中には、欠如していたのだ。心の何処かで柊兄ぃが、無理矢理ことを進めて行く筈は無いと信じていたのかもしれない。この期に及...

18

2016

シーソーゲーム 40 類つく

グツグツ音を立てるお鍋を見ていたら‥涙が一筋流れてた。「くぅちゃん‥?」ゆみ叔母ちゃまは、何も聞かず優しくあたしの身体を包み込んでくれていた。ヒック‥ヒック‥スンッ‥ウウッウウッ‥堪えていた涙が溢れだす。毎晩繰り返される儀式が嫌‥あたしの上を這いずり回る、唇が舌が嫌。あたしの髪を優しく撫でる指先が、ことある毎に落とされる口づけが嫌。「つくし」優しく呼ばれ、愛を囁かれるのが嫌。自分の奥底に眠る感情に、あた...

15

2016

シーソーゲーム 39 類つく

「くぅちゃーん」「ゆみ叔母ちゃま~」手を取り合ってクルクル回ったら、あまりにも沢山の人が振り返って‥ゆみ叔母ちゃまと2人で大笑いしてしまった。「くぅちゃん、久しぶりね~」「ゆみ叔母ちゃま~ 会いたかったぁ~貴史おじちゃまはお元気ですか?」「えぇ、元気よ。柊君はお元気?とても優秀だって、皆が注目してるわよ。今回の仕事も決まりそうだって‥小さな頃から優秀だったものね」「‥‥あっ‥はい」一拍遅れて返事をした...

03

2016

シーソーゲーム 38

木枯らしが舞う。冬が両手を広げて待っている。朝、起きる度に冬に近づいているのを感じる。やり手の吉野夏橙は、朝も電車で通って、なんとコーヒーショップに一人で入る。クククッ つくしが見たらビックリするよ。そう言えば、ラブレターをもらったよ。告白もされたよ。どうやら夏橙はモテてるようだ。つくしに、怒られないように、ちゃんと対応しているよ。っん?どうしてるかって?「ありがとう。でも俺には、大切な人がいるん...

02

2016

シーソーゲーム 37

吉野夏橙は、忙しい。花沢類の時代も充分に忙しいと思っていたのに、俺って、何してたんだ?って、ぐらいに忙しい。「うーん サラリーマンって昼寝が出来ないんだね」同僚の加藤に、ギョッとした顔をして見られて「吉野‥そんなの決まってるだろうよ」そう笑われてから…「‥でも、お前たまに寝てるよな?」「うーん…そうでもないよ」「‥そうでもないって‥吉野、寝るのは外回りでさぼる時だけにしとけ‥」「そっかー了解!」窓の外の...

30

2016

シーソーゲーム 36

紅く咲く花びらが姿を消しても、柊兄ぃは、あたしを無理矢理抱く事はなかった。変わった事は2つだけNYにある一之宮の邸で、あたしが暮らす事になった事と儀式の様に、あたしの全身に口づける事だ。あたしの身体には、無数の黒紫色の花が咲いている。あたしには、柊兄ぃを拒否する権利はない。なぜなら、婚約者だから。なぜなら、愛されているから。なぜなら、彼を裏切ったから。眠りに付く前に、あたしを抱きしめて、柊兄ぃは話す...

29

2016

シーソーゲーム 35

つくしは夏みかんの妖精なのかな? そんなあり得ない事を何度も思った。それほど完璧に彼女は姿を消した。Nシステムの追跡、防犯カメラの捜査をしたけれど、何も解らなかった。不思議な事に、じじ様と一緒に来た時の画像さえないのだ。映っているのはじじ様だけ。ポペとつくしの写真もいつの間にか無くなっていた。残ったのは、ありがとう さようなら と書かれたメモだけ。  別れの言葉なのに‥‥そのメモさえも愛おしくて堪ら...

27

2016

シーソーゲーム 34

柊兄ぃの唇が、あたしの全身を生き物のように這っている。動きが止まる‥「なんで‥なんでなんだ‥」太腿の付け根に付いた無数の紅い花びらを、見下ろしている。打ぶたれる、そう思ったのに‥柊兄ぃは、あたしの上に跨がって見下ろしたまま「つくしは、いつもそうだ。自分だけが傷ついた顔をする‥‥」柊兄ぃの目に狂気が宿り「つくしが他の男を好きでも構わない。お前は俺のものだ」バタンッあたしは、一人取り残される。ヒック‥ヒック‥...