明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

01

2023

無花果 最終話

彼女は、俺の目を真っ直ぐに見ながら緩やかに微笑み「重くてすみません」そう謝った。「俺を愛してくれてありがとう」俺は、冷静に振り返れば恥ずかしい言葉を……でも、自分の気持ちそのままの言葉を返していた。生きててくれて______再びあらわれてくれて_____俺を愛し続けてくれて_____ありがとう。「そんな風に言って後悔しても知りませんよ。私の愛_____本当に重いんですよ。なんせ年季が入ってますんで」「うん。ありがとう。...

15

2023

30

2022

12

2022

まだ気づかない Fin 類つく

牧野の肩が小さく小さく揺れている。抱きしめたい。でも……いまは……小さく揺れる肩を類は見守った。牧野がゆっくりと振り向く、フィレンツェの風に牧野の黒髪がサラサラと揺れた瞬間。あの日フィレンツェの朝靄の中で見た幻の彼女がそこにいた。類の中で全てが繋がっていく。類は手を伸ばして牧野を抱きしめた。幻の彼女が消えてしまわないように。「牧野、俺、今気がついたよ。初めてあんたと出逢った瞬間から心奪われてたんだって...

23

2021

17

2021

まだ気づかない15 類つく

「あぁーーーーー」たわわになる葡萄を見つめながら、雪之丞は呟いた。早くくっついちゃえばいいと思ったのも、類に発破をかけたのも自分だ。それでも____類から貰った電話の後、何度も何度もため息をついた。覚悟してたとは言え「結構、キツイよね あぁーーーーあ」そんな雪之丞のボヤキを知らない牧野は、真っ赤な顔をしたまま車を降りて、勝手知ったる我が家の如く、雪之丞のもとに向かって歩き出す。類は、そのあとを__...

13

2021

11

2021

まだ気づかない14 類つく

類の顔を見た瞬間……恋に免疫のない牧野は気まずくて気まずくてたまらなくなった。一方、類の方は……牧野が叫んだ『雪ちゃん……会いたい』という言葉に心を抉られていた。重たい空気が二人の間を流れている。あまりの重さに耐えきれなくなった牧野は類に「……専務、私、何か専務のお気に障るようなことしましたでしょうか?」思い切ってぶつけてみた。「別に」この雰囲気が嫌で思い切って聞いたとう言うのに、あまりにも素っ気ない言葉...

16

2020

まだ気づかない13 類つく

類は牧野を抱きしめる。牧野の匂いが類の欲をくすぐる。顎先を持ち上げ唇を合わせようとした瞬間……雪之丞の顔がよぎった。類は牧野をもう一度抱きしめてから「ねぇ牧野、ちょっと一緒に着いてきて欲しい所があるんだけどいいかな?」そう声をかけた。1時間後……「専務 これって、プライベートジェットとかいうんじゃないですか」「快適でしょ。司が貸してくれて、ラッキーだったよね」「ラッキーって、一体どこに行こ「あっ、牧野...

01

2020

まだ気づかない12 類つく

類は牧野を抱えたまま、車を降りた。手揉みをしながら挨拶をしてくる初老の男達に「無理言って悪かったね。寄付金はあれくらいで良かったかな?また何かあったら、田村に連絡しといて。じゃっ お借りするね」爽やかに告げると、スタスタと男達の前を通り過ぎる。「あっ 花沢さまっ」追い掛けて来ようとする男等に「もう用はないから着いてこないでね」とってもにこやかに、それでいてどこか冷たく言い切った。角の道を曲がると共...

17

2020

まだ気づかない11 類つく

いくつもの視線に晒されて「腰、腰、腰、腰」と言葉を繰り返す牧野を、類は抱き抱えながら「早退するって、田村に言っといて」ニッコリと笑って爽やかに去っていった。バタンっ秘書室のドアが閉まった5秒後________「いまのって、いまのって、そういう事よね?」そんな言葉を皮切りに「キャーーーーーーッ」「オォーーーーー」と歓声が上がった。「うぅうぅっ」美人秘書が涙を流し悲し……「ヤッターーーー」いいや、喜び「はい、は...

15

2019

まだ気づかない10 類つく

「せ、せ、専務ーーー」いつも強気の牧野が涙目になりながら類を見上げる。いつもと違う牧野の表情が、一瞬触れた唇が_______類の鼓動を早くさせ、無意識の中で育んできた恋心を意識させる。牧野を膝に抱えたまま類の思考は、過去を旅する。「せ、専務……花沢専務っ、あっもう花沢っ!」牧野が何度も何度も類を呼ぶ。それでも類の思考は過去に思いを巡らしたまま。牧野の声が嗄れた頃_________「あんた、ポスター泥棒したよね?」唐...

09

2019

まだ気づかない09

眠ろうと思えば思うほどに目が冴えて眠れずに、何度も何度も寝返りを打った。オス鳥が求愛の歌を歌い出す頃、漸く眠りについた。漸くついた眠りの中で_______類は夢を見た。フィレンツェの丘でいつか見た彼女が、黒髪を揺らしながら振り向く。あの時見えなかった彼女の顔が何故か_______牧野になっていて、あどけない表情の中に色香を纏わせて微笑みながら駆け出してくる。嬉しくなって、両手を広げ抱きしめようとした、今まさにの...

28

2019

まだ気づかない08 類つく

現在、牧野は非常に困っている。原因はいくつかあるのだが、一番の困りポイントが、雪之丞がオランダに行ってこの方、ゆっくり話しが出来ていないことだ。牧野にとって雪之丞は、ある意味〝特別〟だ。困ったときは、雪之丞。何かあったら雪之丞。いや、何がなくとも雪之丞。出会ってから十年の間に培わされた関係だ。学生の頃は、ほぼ毎日。社会人になってからだって、少なくとも週に二回は会っていたのだ。そこまで考えて、はたと...

22

2019

まだ気づかない07 類つく

「ハァッー」 突然の牧野の溜息に、類が顔をあげた。牧野が何か言いたげに類を見る。類は牧野から視線を逸らした。「ふぅっーーーー」牧野は類に一歩近付いて、ため息を吐く。類は、その溜息を振り払うかのように、「コホンッ」咳払いを一つしてから「決まったこと。牧野も了承したろ?」「だって……」「だっては、ない」「でも……」「でももない」「専務……意地悪ですよね」「あんた随分とハッキリ口にすんね」「それは そうですよ...

20

2019

まだ気づかない06 類つく

「早く、くっついちゃえばいいのに」雪之丞は、パソコンのデスクトップ画面に映る牧野に呟いた。本音を言えば、今だって雪之丞は、牧野が欲しくて欲しくてたまらない。十年の恋心に終止符を打つなんて、そんなに生易しいものじゃないのだから。十年間……一番そばにいた……だからこそわかる。「なーんで、気がついちゃったのかな。なーんで、類さんいい男だったのかな」本当は、最後の最後までもがきたかった。憐憫でも、同情でも、な...

17

2019

まだ気づかない05 類つく

「ズビッ……ズビビっ 雪ちゃん気をつけて行ってきてね 元気でね」「うんっ つくしちゃんも元気でね」「雪ちゃん、Bedankt tot nu toe(これまでありがとう)」「Graag gedan(どういたしまして) ……って、つくしちゃん、オランダ語、練習してくれたの?」「……まだ挨拶くらいしか出来ないから……帰ってきたら雪ちゃん教えてね」牧野は、大きな瞳に涙を溜めながら雪之丞を見上げる。「そうだね……でも……類さんにオランダ語習って、遊びに...

16

2019

まだ気づかない04 類つく

「専務って本当に笑い上戸ですよね」「牧野が変なことばっかりするからだろう」「えぇーーー人のせいですか?専務だって随分と変なことしてますけど……」牧野の言葉に類は、手身近にあった書類を丸めるとポカンっと叩きながら「牧野のフォローしてるとだろう」「あぁーーーーーー 暴力上司ですわぁー コンプライアンス委員会の登場ですよね」「何が、ですわだよ。それより朝頼んどいた書類は?」「いまお手許に丸められているかと...

13

2019

まだ気づかない03 類つく

「ふぅーーっ」一拍置いて、周りを見回せば……タラリと冷や汗が出る。どうやら牧野……乗ってはいけないエレベーターに乗ってしまったようだ。なるべく目立たないように小さくなってみたけれど、閉まる直前に乗ってきた人間が目立たないわけもなく……トホホ状態だ。それでも、目立たないように精一杯小さくなってうつむいた。そんな中《たしか君、牧野……つくしさんだったよね?》とても綺麗なスワヒリ語で話しかけられた。だ、だ、誰、...

12

2019

まだ気づかない02 類つく

六度目の出会いは、気に入らない見合い相手を撒くために紛れ込んだ仮装パーティー。余興で出て来たキャラクターマスコットがダンスするのを見て、後ろの女が嬉しそうに声をあげた《 おぉーーー懐かしい! 私も着ぐるみ着てバイトしてた事あるんだよね! でねでね、頑張ったって言って金一封貰ったのが花沢。それまで色々バイトしてたけど、外部の業者にも親切で頑張りを認めてくれるなんてウチの会社くらいだったんだよ。もう一発...

11

2019

まだ気づかない01 類つく 

「うわっ 虹 虹ですよ専務!しかもダブルレインボーですよ。ダブルレインボーって幸運の象徴なんですよ。専務、今日は間違いなくついてますよ!ラッキーデイです。一緒に宝くじ買いましょう。宝くじえっ? いらないんですかぁ。 えぇー残念! 買う時半分。当たれば一儲け出来るかと思ったんですけどねチッ 残念あっ、冗談ですって、冗談。それより、虹って言えばですね、小さな頃、繰り返し繰り返し同じ虹の夢を見てたんですよ。...

20

2019

無花果の花は蜜を滴らす 13

敵情視察だと言って、桜子と連なり滋さんが、あたしを送ってくれた。「お初にお目にかかります。大河原滋と申します。大切なつくしさんにご迷惑お掛けした上に、長々とお引き留めする形になってしまって誠に申し訳ございませんでした」さっきまで大口開けて馬鹿笑いしてたとは思えない様な令嬢らしい微笑みを浮かべ、優雅に会釈した。瞳子おば様は「息子も直に戻って来るので、ご迷惑でなければお茶でもいかがしら?」滋さんと桜子...

18

2019

無花果の花は蜜を滴らす 12

その様が、あまりにも可愛くてクスリと笑えば「ひゃー つくしちゃんマジ可愛い♡桜子、桜子、私、キュンキュンし過ぎて萌え死しちゃうかもだよぉ くぅうーーー 可愛い♡」「あー、はい。はい。萌え死でもキュン死でもお好きなだけなさってください」「ェェーーー 冷たすぎぃ本当、友達甲斐無いよねぇーーー」「あらっ、友達甲斐ない者が、大切な友達を紹介しますかしら?まったく もぉ」桜子に大切な友達って横で言われて、何だかこ...

17

2019

無花果の花は蜜を滴らす 11

護衛と言う名の見張りがついていても、束の間の自由な時間は、あたしの呼吸を楽にしてくれる。同時に湧き上がってくるのは、彼と会いたいという思い。会って彼に触れ、彼の吐息を、彼の温もりを感じたい。ううん……と、あたしは下を向きながら首を振り、自分の思いを追い払う。ポンッと肩を叩かれて、顔を上げれば「牧野……つくしちゃんよね?」そう言って艶やかに笑う女性が立っていた。コクンと頷けば「私、滋。 大河原 滋。 桜子...

29

2018

無花果の花は蜜を滴らす 10

あたしには、役者の才能があるんじゃないかと錯覚するほど、万里くんを愛する恋人役を演じた。最初は訝しがっていた万里くんも、恋する男そのものに……そのうち、自分の望む “つくし” しか見なくなってくれた。万里くんの望む “つくし” は、茶番のように滑稽だ。天真爛漫に屈託無くよく笑い、楽しくも無い話をさも楽しそうに話し、万里くんの女友達にヤキモチを妬き、媚びを売るように甘え、おねだりをする。本当のあたしは、恋した...

28

2018

無花果の花は蜜を滴らす 09

バタンッと扉が閉まれば、この部屋特有の甘い香りがあたしを包む。「つくし、とってもいい子だったね」万里くんはそう言うと満足そうな微笑みを一つ浮かべた。「学校もそろそろ行かなきゃね」「行ってもいいの?」「もちろんさ。いい子にするって約束守れてるしね」繋がれていた指先が解けて、テーブルに置かれた錠剤と水の入ったグラスをいつもの様に手渡された。万里くんは、あたしが嚥下するのを確かめたあと、あたしの髪を撫で...

08

2018

無花果の花は蜜を滴らす 08

千暁さんは、あたしの手を取り「つくし行くぞ」そう言ってくれたのに……あたしの身体は動かない。まるで全てがわかっているかの様に瞳子おば様は、優雅な仕草でベルを鳴らし執事を部屋に呼んだ。「鴇田、千暁さんにお帰り頂いて」執事が三回手を叩くと黒服の屈強な男達が現れて、「つくし、一緒に来るんだ」と叫ぶ千暁さんを引きずっていった。いつのまにか隣に来ていたおば様が、あたしの髪をゆっくりと撫ぜている。そして連れて行...

03

2018

無花果の花は蜜を滴らす 07

あの後、帰国した千暁さんがどんなに抗議しようともあたしの前の学校への復学は認められず、中学の時に通っていた付属の高校に転入が決まっていた。特権階級の人間達の巣窟のような場所だ。あたしがあたしでいるために、呼吸いきを自由にするために飛び出したのに……再びその場所に引きずり戻された。しかも……幾つかのオマケ付きで。「進君、大学はハーバードに行きたいんですってね。将来優秀よね。ねぇ、つくしちゃん、それなら、...

23

2018

無花果の花は蜜を滴らす 06

「うーん やっぱりつくしちゃんには、こんな風な柔らかい色合いのドレスが似合うわね。ねぇ、万里そう思わなくて」「うん。この方がつくしらしいよね」髪をフワリと巻かれて淡い色合いのシフォンのドレスで身を包んだあたしは、作り物の笑いを浮かべている。櫻之宮の屋敷の中にいると、あたしはあたしらしく笑えなくなる。「そうそう、つくしちゃんにプレゼントがあるの。万里、つくしちゃんに付けてあげて」瞳子おば様は、ベルベ...

15

2018

無花果の花は蜜を滴らす05

『つくし……いまなにしてる?』どういう経緯になっていたのだろうか? 無断欠席したあたしの連絡が櫻之宮に届いたらしく、大ごとになっていると万里くんから電話が入ったのだ。『お母様が警察に届けるって言ってるんだ。直ぐに迎えを出すから、こっちに来てくれるかな?』「……電話で話すだけじゃダメ…なのか…な………」帰りたくなくて、勇気を出して口にした。『そう言ったんだけど、電話に出ただけじゃ分からないって。誰かに脅され...