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2016
蝶と薔薇と 〜アゲハ蝶 あきらver〜 by haruwo さま
「美作さ~ん、早く、早く~~♪」 夏の終わり、蝶柄の浴衣姿の牧野が俺を呼ぶ 双子の妹たちと揃いの浴衣を着て、家の庭で花火を楽しんでいる 薔薇の咲き誇る家の庭を、妹たちとはしゃぎながらちょこまかと動く姿は、牧野が蝶のようだ 漆黒の髪に花火が反射して、まるでアゲハ蝶がひらり、ひらりと飛んでいるようで、何だか胸が苦しくなる 「そんなにはしゃいでると転ぶぞ?ヤケドでもしたらどうするんだ?」 牧野が望む、優しくて...
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2016
宵月孤月 あきつく たろさ様
どこにスピーカーが仕掛けられているのか。 それとも本当に誰かが吹いているとでもいうのか。 宵闇をすり抜けるように祭囃子のか細い笛の音が鳴る。 聞き慣れないその音に一瞬気を取られ、はっと前を見ると紺色の両袖をひらひらと靡かせながら牧野が小走りに背中を見せていた。 すぐ届く距離なのに、なぜかひどく遠い気がして。 慌てて伸ばしかけた手のひらが宙に舞う。 まだ増え始めたばかりの人並みは薄く、華奢な後姿は切り抜い...