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2016
ケサランパサラン fin 司つく
すげぇ怒ってる。マジに怒ってる。そりゃそうだ。怒んない方が可笑しい。だが、俺に取っては、たかだか3年半だ。これからの長い長い人生の中での3年半だ。この先は、決して離れ離れにならないのだから。俺は、頑張ってすげぇ爺ぃになるまで長生きする。お前は勿論、すげぇ婆ぁになってる予定だ。そうなるまでに少なく見積もって50年。そっから10年くらい生きるとしてだ、60年お前といられるんだぞ?そんな中の《たったの3年半だ...
29
2016
ケサランパサラン 04 司つく
ラクダ、その他に見送られ‥エレベーターに乗り込む。密室の中には、不敵に笑う男とその秘書。2人きりになったら文句の一つでも言って、そのままばっくれようと考えていたのに、中々チャンスは訪れないままにエレベーターは、地下車庫に降りて行く。チーン「では道明寺社長、私はこちらで失礼させて頂きます」会釈をして、秘書の人が去っていく。ヨシッと気合いを入れた所で‥前方5メートル車の扉を開け待っていたのは、懐かしい顔...
29
2016
ケサランパサラン 03 司つく
得体のしれないフワフワとした何かが目の前を漂う。掌を広げれば、俺の掌にフワリと乗る。「何だコレ?」フッと息を吹きかける。息を吹きかけた瞬間、何故か愛する女の顔が浮かび、愛する女の幸せをただただ願ってた。フワフワしたものは、もう一度風に乗り開け放された窓から飛んで行った。* **約束の4年をもうじき終える頃、親父の具合が最悪に悪化した。共に道明寺HDの株価もだ。財閥立て直しの為にと政略結婚の話が、重役...
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2016
ケサランパサラン 02 司つく
このドアを開けた先には‥‥大体想像はつく。っん?そりゃぁつくよ。あいつと何年付き合ったと思ってるの? 付き合いの長さって言うよりも‥‥あいつは、あたしの青春そのものだったんだから。あはっ、そりゃぁ唄の歌詞だ。人間、切羽詰まると変な事しか考えないって事にあたしは、今更ながら気が付いた。それにしても‥‥今更、何の用だ?「コホンッ」係長が態とらしく咳なんてしながら「なあ、牧野、お前もうちょっとだな‥こうなんだ...
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2016
ケサランパサラン 01 司つく
雑踏の中‥あたしの目の前にケサランパサランが飛んで来る。幸せを運ぶ、ケサランパサラン‥‥そっと掌を出せば、ふわりと掌にのる。誰かのもとに、幸せを運んであげてと‥‥ふっと吹く。ケサランパサランは、風に乗って空に飛んでいく。行き先を目で追いながら、どうかどうかあいつが幸せでありますようにと願っていた。「つくし、おはよう」「菜々、おはよう」挨拶を交わし世間話を交わしながら、雑踏の中を歩き社に向う。いつものよ...