31
2016
バカ言ってるんじゃない 21 司つく
「牧野、明日から一緒に出張ね。用意しておいてね」百瀬社長がつくしに向って、ニッコリと笑う。「はい。了解致しました」つくしは、頷きながら道明寺を見てる。まるであんたも一緒に行くんだからね!というようにそんなつくしの表情を目敏く見つけた百瀬社長は「牧野だけよ。道明寺は百瀬室長と一緒に此処に残って頂戴」ほへっと何ともまぁ、間の抜けた顔の2人。まさか、離れ離れになるなんて思いもよらなかったのだろう。つくし...
31
2016
開かずの扉 〜アゲハ蝶 総つくver〜 by haruwo さま
テレビの中を一羽のアゲハ蝶が飛んでいる もの哀しげなメロディともに… ひらり、ひらりと、男子禁制の女の園を 「ふふっ……政略結婚、愛されない御台所にたくさんの側室、お世継ぎ争いに嫁姑争いかぁ…400年前から変わんないんだね」 ふと、愛しいあなたを思い出す 「この中にいても違和感ゼロだわ…平成の光源氏っていうより、上様がピッタリだね?」 サングリアを飲みながら、みんなにいつも笑われる大きな独り言をあたしは言う 半...
31
2016
月夜の人魚姫 19 総つく
恋に手慣れた男は、スマートにあたしを助手席に乗せた。密閉された空間は、二人の濃度を増す。西門さんの匂いと、あたしの匂いが入れ混じり‥淫美な想いに囚われる。信号待ちで車が止まった瞬間に「海行きませんか?」返事の前に車がUターンする。「あっ、あの‥私‥了承してませんけど‥?」「もう高速乗ったので引き返せません」美しい牡が、意地悪く笑う。着いたのは、大桟橋で、二人並んで仲良く〝くじらのせなか〟を歩いてる。「...
30
2016
シーソーゲーム 61 類つく
「ポペ、クゥちゃん‥ぽんぽん‥すいたよ」あたしのお腹は、ぐぅーっとなっている。冒険だと勇んで屋敷を飛び出した筈なのに‥‥すっかりと、道に迷って迷子になっている。至る所、擦り傷だらけのあたし。千恵子の持たせてくれたポシェットの中から、最後のクッキーを一つ取り出して、ポペト半分こする。小さなクッキーは、もっと小さくなる。半分こにわったクッキーは、片方がちょっぴり大きくて、あたしは悩む。どっちをポペにあげよ...
30
2016
月夜の人魚姫 18 総つく
コホンッと一つ咳払いしたあとに‥「倉科さん‥いいや未悠さん‥失礼な事をすみません‥あなたは、私の友人に本当に良く似ていて‥‥」西門さんが、あたしを射抜くように見つめながら、口にする。「先日お話して居た女性ですか?」「えぇ。彼女も此処のゴボウ天が大好きで、今みたいに2人で分けたんですよ」忘れてなかったんだ。そんな何でもない事が嬉しい。「尤も‥いつも大口開けて笑ってるような奴だったんで、未悠さんのような艶や...
29
2016
シーソーゲーム 60 類つく
決意を決めたあの日から1年半‥あたしは、柊兄ぃを待っている‥‥計算が正しければ、もうじきこのドアが開くだろう。目を閉じてから、息を吐く。〝ごめんなさい〟呪文のように何度も唱えた言の葉を心にしまう。目を開け、真っ直ぐにドアを見る。3、2、1 バタンッ柊兄ぃが‥青い顔をして部屋に飛び込んで来る。「つくし‥どういう事だ?」「一之宮の大老にお聞きになられた通りです」「‥‥一年半は、このためか?」「はい」あたしは、微...
29
2016
ケサランパサラン fin 司つく
すげぇ怒ってる。マジに怒ってる。そりゃそうだ。怒んない方が可笑しい。だが、俺に取っては、たかだか3年半だ。これからの長い長い人生の中での3年半だ。この先は、決して離れ離れにならないのだから。俺は、頑張ってすげぇ爺ぃになるまで長生きする。お前は勿論、すげぇ婆ぁになってる予定だ。そうなるまでに少なく見積もって50年。そっから10年くらい生きるとしてだ、60年お前といられるんだぞ?そんな中の《たったの3年半だ...
29
2016
ケサランパサラン 04 司つく
ラクダ、その他に見送られ‥エレベーターに乗り込む。密室の中には、不敵に笑う男とその秘書。2人きりになったら文句の一つでも言って、そのままばっくれようと考えていたのに、中々チャンスは訪れないままにエレベーターは、地下車庫に降りて行く。チーン「では道明寺社長、私はこちらで失礼させて頂きます」会釈をして、秘書の人が去っていく。ヨシッと気合いを入れた所で‥前方5メートル車の扉を開け待っていたのは、懐かしい顔...
29
2016
ケサランパサラン 03 司つく
得体のしれないフワフワとした何かが目の前を漂う。掌を広げれば、俺の掌にフワリと乗る。「何だコレ?」フッと息を吹きかける。息を吹きかけた瞬間、何故か愛する女の顔が浮かび、愛する女の幸せをただただ願ってた。フワフワしたものは、もう一度風に乗り開け放された窓から飛んで行った。* **約束の4年をもうじき終える頃、親父の具合が最悪に悪化した。共に道明寺HDの株価もだ。財閥立て直しの為にと政略結婚の話が、重役...
28
2016
ケサランパサラン 02 司つく
このドアを開けた先には‥‥大体想像はつく。っん?そりゃぁつくよ。あいつと何年付き合ったと思ってるの? 付き合いの長さって言うよりも‥‥あいつは、あたしの青春そのものだったんだから。あはっ、そりゃぁ唄の歌詞だ。人間、切羽詰まると変な事しか考えないって事にあたしは、今更ながら気が付いた。それにしても‥‥今更、何の用だ?「コホンッ」係長が態とらしく咳なんてしながら「なあ、牧野、お前もうちょっとだな‥こうなんだ...
28
2016
ケサランパサラン 01 司つく
雑踏の中‥あたしの目の前にケサランパサランが飛んで来る。幸せを運ぶ、ケサランパサラン‥‥そっと掌を出せば、ふわりと掌にのる。誰かのもとに、幸せを運んであげてと‥‥ふっと吹く。ケサランパサランは、風に乗って空に飛んでいく。行き先を目で追いながら、どうかどうかあいつが幸せでありますようにと願っていた。「つくし、おはよう」「菜々、おはよう」挨拶を交わし世間話を交わしながら、雑踏の中を歩き社に向う。いつものよ...
28
2016
宵月孤月 あきつく たろさ様
どこにスピーカーが仕掛けられているのか。 それとも本当に誰かが吹いているとでもいうのか。 宵闇をすり抜けるように祭囃子のか細い笛の音が鳴る。 聞き慣れないその音に一瞬気を取られ、はっと前を見ると紺色の両袖をひらひらと靡かせながら牧野が小走りに背中を見せていた。 すぐ届く距離なのに、なぜかひどく遠い気がして。 慌てて伸ばしかけた手のひらが宙に舞う。 まだ増え始めたばかりの人並みは薄く、華奢な後姿は切り抜い...
28
2016
星の中の君 類つく 凪子さま
サワサワ サワサワ 川のせせらぎの音 もうすぐ夜の帳が降りる頃 俺達は二人 ここ 養老渓谷までやって来た ――― ねぇ花沢類、蛍って見たことある? あの牧野の一言が無かったら 俺 知らなかったよ 虫達の鳴き声 生き物達のざわめき... 大自然の中って 結構いろんな音があるんだな 「凄いね~!空気が美味しいってホントなんだぁ~! 」 ...プッ! 中でも一番にぎやかなのは、あんただった ヒラヒラと 楽しそうに動き回って 闇の中に...
28
2016
月夜の人魚姫 17 総つく
俺の声に、ゆっくりとゆっくりと女の顔が上がる。洗練され格段に美しくなっているが‥やはり牧野に似ている。いや、牧野だ。「先日は、大変お世話になりました」丁寧なお辞儀が返ってくる。声と口許の黒子が違う。やはり‥牧野じゃないのか?他人の空似なのか? 隣に座っていた男が、俺の顔をマジマジと眺めながら‥何やら考え込んだ顔をしてから、ポンッと一つ手を叩き「もしや、西門流の若宗匠ですか?」「あっ、はい。ご挨拶もせ...
27
2016
バカ言ってるんじゃない 20 司つく
ここは、仄暗い地下にある秘密結社‥ではなくて‥‥‥燦々と光り輝く朝陽に包まれたダイニングルーム。「コードNo. 008。ゼロゼロエイトこちら新たな動きを発見!」「工さん、こないだはコードNo. 009ゼロゼロナインだったけど?」「いやぁー、流石に漫画のパクリじゃぁどうかとおもったのよぉ」「うふふっ、それもそうね‥って、そうじゃなくって」「あらっ、いやだ。うふふっそうなのよぉ。新たな動き発見!」何やらゴニョゴニョ話し...
27
2016
月夜の人魚姫 16 総つく
俺の俺だけの隠れ家‥‥時折、無性にこの部屋に来たくなる。茶人、西門総二郎女たらしの、西門総二郎他人がイメージする 西門総二郎を捨て、ただの男になりにこの部屋に来る。伽羅を焚き、愛しい女を感じて青い人魚を眺める。牧野が去って八年も経つと言うのに‥俺の心には今も鮮明にアイツが、アイツだけが居座り続けている。何故、あの時もっと早く牧野に思いをぶつけなかったのだろう?落ち着いてから話せばわかってくれる‥浅はか...
26
2016
シーソーゲーム 59 類つく
「あなた達って、いつからそんな関係だったの?」受話器の向こう側の第一声。続けて言われたのが「来週、夫と共に類に会いに行くから。時間作って貰えるかしら?」貰えるかしら?じゃなくて、それは作れって事だよね?相変わらずの静の女王ぶりに苦笑するけど‥いま、一番頼りに出来るのは静だ。翌週、待ち合わせの場所に、兵藤氏と連れ立って静はやって来た。「類、久しぶり」静とハグを交わした瞬間‥…兵藤氏の眉間に皺が寄る。兵...
26
2016
ポペとクゥちゃん
ボクの名前は、ポペ。クゥちゃんを守るのがボクの仕事だ。クゥちゃんが産まれる前からボクは、クゥちゃんの家にいる。クゥちゃんがお母さんのお腹にいるときから、ボク等は一緒にいたんだ。クゥちゃんがくるまえは、ボクはお父さんと、お母さんの一人息子だった。「ポペおはよう」で始まって、「ポペおやすみ」で終わる。ボクが二人に沢山の笑顔をあげてきた。クゥちゃんが、お母さんのお腹に小ちゃなお豆でやって来たとき。「ポペ...
26
2016
月夜の人魚姫 15 総つく
青い人魚だけが知っている。この部屋に居る時は、全てのものを脱ぎ去って、ただのオトコとオンナになって抱き合う。これは、ただの情事。これは、恋じゃない。あたしは、あたしに言い聞かせ伽羅の香り立立ち込めてるこの部屋で、西門さんに抱かれ続けている。指先が触れただけで、あたしの身体は、跳ね上がり狂おしい程に西門さんを求め疼き始める。男は嬉しそうに、あたしの反応を楽しみながら、わざと焦らし続ける。男の手で、口...
25
2016
シーソーゲーム 58 類つく
お爺様とお婆様があたしの卒業式のお祝いにと、前日から泊まりに来てくださる。「あらっ、柊君は?」「明日の式典には出るって言ってたんだけど‥‥今日はごめんなさいって」今日、お爺様達が来る事を前もって知らせていなかった。今朝、出張先の柊兄ぃに電話で告げたんだ。どうせバレるから‥嘘は吐かない。ただ言わなかっただけ。2人で食事をとる。「つくしちゃんもいよいよね」「あぁ‥そうだな。つくしの花嫁姿を見れるのは楽しみ...
25
2016
バカ言ってるんじゃない 19 司つく
牧野との生活が日常になっていく。朝も晩も一緒に過ごす。怒る牧野。笑う牧野。困る牧野。喜ぶ牧野。寝る牧野。食べてる牧野。怒る牧野。って、一番怒るのが身近なところがなんだが‥色んな牧野が、俺の周りを取り囲む。殺風景だった、屋敷に色が付き、殺伐としていた俺の人生に花が咲く。 パーティーも、会食も接待も、道明寺司としての役割をバンバン受け入れる。何故かって? 予定が入っていれば、牧野を拘束できるからだ。時折...
24
2016
バカ言ってるんじゃない 18 司つく
鬼軍曹は、半端ない。それについてる第一秘書の百瀬課長(今は課長じゃないけど)も半端ない。くぅっーーーってぐらいに、半端ない。もうね‥‥毎日、毎日叱られてる。この男、そう隣に偉そうに座ってる男のせいで。なんでも、道明寺とあたしは新人秘書同士、二人で一人なので連帯責任らしいのだ。そんなのってあり?あっ、もう一つそうそう‥道明寺の腕のひび‥とっくのとんまに、完治してたんだ。猛烈に、あたしは怒った。なのに、な...
24
2016
月夜の人魚姫 14 総つく
するりと入ってきた西門さんがあたしにとってかけがえの無い人に変わったのは、何時だったんだろう?気が付いた時には、溺れてた‥‥軽口を叩きながら、西門さんの一挙手一投足に、胸がドキドキとときめいていたんだ。一緒に居たいから‥自分の気持ちに気が付かないふりをした。悲恋で終わった恋があたしの気持ちを支えてた。恋をしてはイケナイと支えてた。それなのに、人は繰り返す。傷つくとわかっている恋を。違う‥‥繰り返したん...
23
2016
シーソーゲーム 57 類つく
幾夜となく抱かれる。その度にあたしの心は死んでいく。これ以上、この男ひとを憎みたくないのに‥‥そんな感情を見透かした様に男は、あたしの頬に手を這わせながら、「憎んで憎んで‥それから愛せばいいよ」愛おし気に優しく微笑む。この言葉を聞く度に、あたしは全てを諦め、暗い暗い穴に堕ちていく。なのに‥あたしは暗い穴の中で、全てを受け入れなければいけない。「柊兄ぃ‥お願い‥もう‥」「つくし、もう柊兄ぃは変だよ。柊でい...
23
2016
月夜の人魚姫 13 総つく
「シレーヌに、でっかい仕事くれてやる」そう言った後に「だから、ミュウに夏休み1週間やってくれ」暖が言い放ち。勿論勿論と遊が頷いて‥蒼と2人で夏休みを満喫中だ。「ママ、オレ、お茶のおけいこ始めたんだよ」「えっ?そうなの?」「オレね、スジがいいんだって。お茶って面白いよね」得意気な顔で、蒼が話す。「蒼は、お茶が好きなんだ」「うんっ なんかね、せなか?せすじ?」「背筋かなっ」「せすじがピーンとするの」「...
22
2016
紅蓮 64 つかつく
小さな小さな穴でさえ、幾十も重なれば光が差す。思いがけない所からも、光が漏れて来る。つくしの母親の容態は安定して、つくしも週に2度顔を出していると報告が上がって来る。それ以外にも、献茶式の準備に総二郎の屋敷に、最低でも週に1度訪れている。時が俺に味方している‥‥胸が高鳴る。頼んでいた相手から、連絡が入る「司‥この前言っていた日にちで、手筈は整えてあるから。あと‥気になる事が一つあるの。あとで書類を送る...
22
2016
シーソーゲーム 56 類つく
目の前から、愛おしい人が連れ去られて‥一之宮と如月の提携、つくしと柊さんの婚約のニュースが街を駆け巡り。ゆみさんからは「類君、ごめんね」そう謝られて‥‥全て泡になった事を知る。あの日、会いに行かなければ良かった?違う‥‥もっと前からだ。柊さんは入念に計画を立てたのだろう。もう遅過ぎるのだろうか?俺の心の中を、空虚という風が流れて行く。年が明けた後‥‥柊さんから一度会いたいと連絡が入る。何を今更?訝しがる...
21
2016
天使ちゃん 時計をくるっと 類つく
時計をクルクルと先に巻き‥‥あーちゃん7歳。メロンズ4歳の夏。~~~~「あーたん あいどうじょ」「藍あい、織おり、マモンに見つからなかったでしょうね?」「「あい、だいじょうぶです」」「優秀、優秀」メロンズの持って来た〝恋いちご〟を摘み口にいれながら、優雅にカウチに腰掛ける。「たいがい、マモンもケチよね。あーちゃんが、コゴ君からもらったのにミンナでねっ!なんてねぇー 藍も織もそう思うでしょ?」「あい」「...
21
2016
20
2016