03
2019
紅蓮 109 つかつく
司は、目に見えぬ者に対しての精一杯の誠意だとばかりに、護衛の者も付けずにただ一人、地図に指し示されていた場所に向かった。目的の場所は、廃墟と化した一軒の洋館だった。波が満ち溢れて来たのだろうか、窓の外から潮騒の音が聞こえる。潮騒の音は司に、つくしを迎えに来た日のことを皮切りに、二人で過ごした日々を思い起こさせる。司の表情(かお)にに柔らかい微笑みが浮かんだ。つくしと出会うまでの司は、空虚の中を彷徨...
03
2019
司は、目に見えぬ者に対しての精一杯の誠意だとばかりに、護衛の者も付けずにただ一人、地図に指し示されていた場所に向かった。目的の場所は、廃墟と化した一軒の洋館だった。波が満ち溢れて来たのだろうか、窓の外から潮騒の音が聞こえる。潮騒の音は司に、つくしを迎えに来た日のことを皮切りに、二人で過ごした日々を思い起こさせる。司の表情(かお)にに柔らかい微笑みが浮かんだ。つくしと出会うまでの司は、空虚の中を彷徨...