ずっとずっと 45
「どれどれ?ホントだ。」
「あっ、コレも素敵♡」
くるくるよく動く表情
時折見せる憂いを帯びた大人の君とはちがって、少女のような可愛いしぃちゃん
「あっ、この香り‥…似てる」
麝香が密かに香るこの店オリジナルのフレグランスを持ち一人呟きながら妖艶に微笑むしぃちゃん。
一瞬、見てはいけないものを見てしまった気分に囚われる。
あまりにも官能的な笑みに魅せられて‥…
麝香漂うフレグランスをこっそり買ったのは僕のただの気まぐれだった。
「ねぇー薫~ 亜矢さんはどんなのが好き?」
「うーん。何でも持ってるからね~」
「そうなんだよね。雪月堂さんは?って、思ったけど雪月堂さんのは、亜矢さんご自分で買いたいみたいな感じだしね。」
「そうだね。雪月堂さんのは亜矢さんにとって特別だからね。今年の春、雪月堂さんにしぃちゃんと2人で行ったって聞いて驚いたよ。」
「雪乃さんにもそう言われたよ。‥ねぇ、薫あたしは誰に似てるの?」
「うーーん。この話しは夜落ち着いてからでも大丈夫かな?」
「あっ、薫が言いづらいなら話さなくていいの。いいの。」
「クスッ 話したくないんじゃなくて、落ち着いて話したいだけだからいいんだよ」
「うん。じゃぁ落ち着いた時にでも話してください。」
何件目かのお店で、やっとお目当てのものを見つけた僕たち
二人同時に手に取る。
「あっ、ねぇねぇ このストールは? すっごく綺麗な桜色してるよ。」
亜矢さんにとても似合いそうな、薄い桜色したカシミヤのストール。
「本当に綺麗な色だね。これなら亜矢さん喜ぶよ。」
*****
2人のペントハウスで用意してもらった夕食をとり、少しだけ食後のワインを楽しむ。
「昼間の事なんだけど‥…」
「あっ、薫本当にいいの。余計な事、聞いてしまってゴメンナサイ。」
「そうじゃなくて、僕はしぃちゃんに聞いて欲しいんだ。」
薫が話し始める。
「しぃちゃんも疑問に思った事があると思うけど‥ 僕には両親がいないんだ。両親の変わりに僕を育ててくれたのが、宝珠の祖父母であり、筒井の祖父母なんだ‥」
「僕の両親は、僕が4つの時に僕を庇って亡くなった。まだ4つの僕は何が起こったかわからなかった。ただ、両親が死んだのは自分のせいだって人生に絶望したんだ。だってそうだろう?僕だけが生き残って、僕を庇った両親2人が亡くなってしまったんだから‥…」
「僕は生きる事に絶望して、何も食べれなくなったんだ。生きる事を拒否したんだと思う。両方の祖父母は自分たちの子供の死を悲しむ余裕が無い程、僕の事を心配してくれたよ。」
「母と雰囲気が似てる亜矢さんが僕の世話を一手に引き受ける事になったんだ。大変な事だったと思うよ。それでも亜矢さんは僕の世話を一心不乱にしてくれた。筒井の祖父母も毎日の様に僕の元にやって来た。4人が4人とも自分たちの子供を失った悲しみも癒えてないのに、原因となった僕を助けようと必死になってたんだ。」
「僕は幼いながらも、生きなくてはいけないって感じたんだと思う。最初はおかゆを一口次の日は2口と段々と食べれる様になった。僕は、両親を死なせてしまった罰に両祖父母の為に生きようと決心したんだ」
「薫‥」
いつの間にか泣いていた薫をつくしは抱きしめる。聖女のように‥
「僕はなんでも頑張ってきたよ。勉強もスポーツも遊びも笑う事さえ頑張って来たよ。僕が少し楽になったのは、悠斗のお陰かな? 僕の父と悠斗の父親は親友で、僕らは小さな頃から交友があったんだ。しばらく疎遠になっていたのだけど、小学校に上がった時に悠斗ともう一度再会したんだ。」
「悠斗は悠斗であんな性格だろ? 真っ直ぐな奴は他者にも真っ直ぐなんだ。それで色々屈折しててさ」
その頃の事を懐かしむように笑う薫‥…
「悠斗の前だと普通に笑えるようになったんだ。普通に食事も取れる様になった。両祖父母はえらく感謝してね、筒井のお爺様が祥子さんをまた可愛がる様になったのもその頃からだよ」
「誰もその名を口にしないけど、TSUTSUIセミナーの初参加の女性は実は2人いたんだ。一人は祥子さん。コレはもう知ってるよね。もう一人が祥子さんの親友でもあり、筒井の一人娘でもある筒井由那。僕の母さんだったんだ。」
「神楽貴士と僕の父の宝珠伊織もそのセミナーに参加してた。4人は同世代なのもあって、たちまち仲良くなったんだ。まるで小さな頃からの親友の様になり、2組のカップルになったんだ。」
「でもね、僕の母さんの結婚は一筋縄じゃいかなかったんだ。なんせ筒井のジュエルの一人娘だろ。お爺様もお婆様も母さんを偏愛してたからね。」
可笑しそうに薫が笑う。
「想像出来るだろう? それじゃなくても手塩にかけた一人娘。可愛くて可愛くて仕方なかったんだよ。それに僕が言うのもなんなんだけど、才色兼備を絵に描いたような女性だったからね。」
「父さんは、LUCYの一人息子。お爺様同士が元々親友だったから、何とか纏まった縁組みだったけど、当初は大変だったみたいだよ。」
「でもね、不思議な事なんだけど亜矢さんと母さんは似ていたんだ。実の親子以上に似ていたんだよ。最初にそれに気が付いたのはお婆様。娘を偏愛するお婆様はすぐさま、亜矢さんを大好きになったんだよ。可笑しいよね」
クスクス楽しそうに笑いながら
「筒井も宝珠も実のところ、奥方が力を持っていてね、鶴の一声ならぬ、奥方の一声で瞬く間に縁組みが整ったんだよ。亜矢さんも棗さんも自分たちの娘の様に母さんを可愛がったんだ。勿論父さんも筒井の祖父母に息子の様に可愛がられた。元々息子が欲しかった筒井のお爺様はどこにでも引っ張り回して大変だったらしいよ。」
「で、しぃちゃんが似てる似てるって皆から言われる人物が 僕の母さん。宝珠由那 その人だよ。姿形が良く似てる訳ではないから初見の人は気づきにくいけど、母さんをよく知る人は君といると母さんを思い出すようだよ。」
「あっ、でも誤解しないでね、母さんによく似てるから、皆がしぃちゃんを好きなんじゃないんだよ。しぃちゃんがしぃちゃんだから皆しぃちゃんが好きなんだよ。」
それまで黙って聞いていたつくしは
「薫、話してくれてありがとう。」
そう言い、慈しむように薫をもう一度抱きしめる。
薫は堰を切ったかのように、つくしの胸に顔を埋め小さい子の様に声を出して泣いた。
この日を境に、薫とつくしの関係は少しずつ変わっていく。
今迄は、一方通行的に薫がつくしを守り、愛し慈しんできた。つくしもまたその気持ちを甘受し、兄を慕う妹のようにふるまってきていた。
薫の涙を受け止めたとき、薫に対してこの人を守りたいと強く思う気持ちが芽生えたのだ。
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