ずっとずっと 46
朝一番に薫があたしの誕生日を祝ってくれる
「薫 ありがとう。」
司からの連絡がないまま、二ヶ月半以上が経とうとしていた。
季節もいつの間にか、秋から冬本番に変わり‥…
クリスマスも過ぎ去り‥…
今日はあたしの誕生日だ
皆からおめでとうの電話が届く。
ただ一人、待ち人からは届かない。
「しぃちゃん、どうしたの?」
「っん?どうもしないよ。今日の誕生日会の事考えてただけだよ。」
「そう。それならいいけど‥」
君が考えていたのは、道明寺司の事じゃないのか?
君の顔を曇らせているのはあいつじゃないのか?
何度もあいつに電話を入れた。連絡が欲しいとメールも入れた。
鳴らないスマホを抱きしめて、
あいつに貰った土星のネックレスを胸につけながら淋しい夜を過ごす。
「司‥どうしちゃったの?」
何かあったんじゃないかと思うと、心が張り裂けそうになる‥…
***
「お招きありがとう」
皆よりも一足先に、大きな花束とヴィンテージワインを抱え、ジョンとナダーがやって来た。
陽気なジョンと、漆黒の髪に褐色の肌をもつ美しい男ナダー
薫と悠斗と、とても気が合うようで今日以外にもこうして連れ立っては、ペントハウスに飲みにやってくる。
ジョンは、アメリカでも有数な大企業の御曹司。ナダーはアラブの大富豪の御曹司だ。
ご多分に漏れず、二人とも負けず劣らずの優秀な人物だ。
「しぃちゃん、ジョンとナダーが来たよ」
「はぁーい」
「ようこそジョン。ようこそナダー。2人が一番乗りよ~」
「薫、しぃちゃん お招きありがとう。しぃちゃん お誕生日おめでとう ‥実は話を聞いて欲しくて先に来たんだ…」
お相手は、まだオフレコなので話せないらしいのだが‥…
どうやら、ナダ― お見合いをしたらしい。
セミナーが始まった後に、突如持ち込まれたお見合い話し。
政略結婚嫌いのナダー、会うだけ会って断ろうと思っていたら‥…
一目見た瞬間に恋に落ち、ナダ―の心は彼女に完全に釘付けになってしまったらしく‥…
押せ押せムード満載に迫ってるらしい。
お相手も最初は渋っていたが‥… ナダ―はかなりのハンサムしかも大富豪で優しい。
アラブの大富豪にしては珍しく、お父様もお爺様も一人の妻しか娶らなかったような超がつく愛妻家。
そんな祖父母両親を見て育ったナダー。もの凄く一途で、生涯娶るのはたった一人の女性と決めている‥…
そんな、ナダーに少しずつ少しずつ相手もほだされてきているらしく‥…
クリスマスも一緒に過ごしたらしい。
このまま上手くいけば、悠斗とかおるちゃんの婚約パーティまでには、皆に紹介出来るんじゃないかと考えているらしく‥…
「しぃちゃん、その時は彼女と是非とも仲良くしてやって欲しいんだ。本当にチャーミングで素敵な子なんだ。絶対にしぃちゃんとも気が合う筈なんだ。」
ナダーが真剣な表情で頼んでくる。
「うふっ 勿論よナダー。ナダーの選んだ人に早く会ってみたいなぁー」
「しぃちゃん、ありがとう。紹介出来るようにあと一押し頑張るよ。」
***
ほどなくして、皆が集まり出す。
「しぃちゃんお誕生日おめでとうーー」
ジョンとナダーが持って来てくれたヴィンテージワインで乾杯をする。
悠斗とかおるちゃんが用意してくれた大きなケーキ。20本のろうそくの炎を吹き消す
沢山の花束とプレゼントを貰う。
華やかに賑やかに時は過ぎていく
パーティーも終盤が過ぎた頃‥…
ノアとマリアーノ2人の会話の中で 「ドウミョウジ」 の名前を耳にした。
何を話してるのか聞きたくて、二人に近づく。
「‥…やっぱりそうなんだ‥…」
「へぇー ‥奥‥か‥」
「‥…なんだろう?」
「それで‥…なのかい?」
「うん‥…大丈夫‥…」
要所要所漏れ聞こえてくるだけでは、何を話しているか、皆目見当もつかない。
2人に聞きたいけど突然そんな事聞ける筈もなく
繋がらない電話。行方知らずの消息。不安で一杯になる。
やっぱり、ノアとマリアーノに聞こうと思った瞬間‥…
待っていたスマホの呼び出し音が鳴る
RR‥…
慌てて部屋を出て、電話をとる‥…
「司‥?」
「あぁー」
電話越しに聞こえてくるのは、疲れきっている司の掠れた声。
「つくし‥…ゴメン‥許してくれ‥……俺と別れて欲しい‥」
「えっ” なに? 今なんて言ったの? ゴメンってどういう意味?許してくれって何?別れるって何?」
「ツッーツー」
切れる電話‥… 鳴らない電話‥…
この後、いつどうやってパーティーがお開きになったのか‥どうやって皆を見送ったのか‥…
あたしは覚えていない。
皆を笑顔で見送った後‥…
あたしは薫の胸の中で倒れ意識を失った‥…
***
目覚めたのは、次の日の朝
目覚めたあたしの横には、一睡もしていないであろう顔面蒼白の薫が居た。
「しぃちゃん 大丈夫? どこか痛い所や気分が悪い所はない?」
倒れたあたしよりも、具合が悪いんじゃないかと思える程に血の気のない薫。
「薫、あたしよりも薫の方が具合悪そうだよ?」
「こんな時に、人の心配しなくていいんだよ。」
優しくあたしの髪を撫でながら薫が言った。
次の瞬間‥…
「うっうっうっう‥…」
涙がとめどなく溢れ出す
「薫 司が司がゴメン許して、別れてくれって‥… ねぇどう言う事? ねぇ薫教えて」
一旦、許してしまった涙は、哀しみは、堰を切ったように後から後から溢れ出す。
薫があたしを抱きしめる。
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