月夜の人魚姫 12 総つく
やってきた。
ガンガンと、ドアが叩く音がして‥
って、セキュリュティー満載のこのマンションにどうやって入ったんだ?
なんて思う暇もなく、チャイムが鳴らされて
出てみれば、案の定というか‥なんのその‥
「ヨッ!ミュウ」
満面の笑顔の男が一人。
はぁっーーーー と思う間もなく、あたしに抱きついて来る。
遊と雪さんを見ても、見事な程に2人とも知らん顔だ。
「暖、どうやってここまで来たの?」
「あっ?車だよ」
「そうじゃなくて、どうやってここのマンションの中に入ったのかって聞いてるの?」
「あっ?両隣の部屋を買った」
「ゴボッ コホコホッ‥えっ?」
「だから、両隣にだな」
「それはわかった。で、いつ?」
「昨日、雪さんから聞いて直ぐに手配させた。案外時間くったな」
いつの間にか、冷蔵庫から料理を取り出し、食べはじめている。
「ちょっ、ちょっ」
「ミュウの飯は、相変わらず美味いな」
竜崎暖‥雪さんの親友の忘れ形見で、竜崎家当主。
あんまり考えたくないが、かなりのお金持ちだ。
「暖‥‥あんた、どうしょもないだらだ‥」
「あっ?右は、蒼の入学祝いだ。とっとけ」
「そんなん、いらんわ」
「ミュウにじゃない。蒼にだ」
遊も雪さんも、暖の行動には慣れっこだ‥2人でお酒を酌み交わしはじめた。
もう笑うしかない‥
「ははっは‥」
「なぁ、遊はここに住んでんだろう?」
「グッ‥‥」
「なっ、じゃぁ仕方ないだろうよ。と言うわけで、明日から、突貫工事すっから」
「ゴメン。意味不明‥ここのオーナーが許さないだろうし」
「いや、ここも買収済みだ。家賃はミュウの飯でいい」
「おっ、ラッキー! 暖、いいの?」
「あぁ 勿論だ」
「ミュウ、経費削減じゃん」
じゃんじゃない。じゃんじゃ。額に掌をのせ天を仰げば、雪さんが笑ってる。
はぁっーーー
いつの間にか、暖も2人と一緒に呑みはじめて、
「まぁ、ミュウと俺は婚約者って奴だしな」
なんて事を言い出した。
「暖‥ゴメン‥それ意味わかんないから」
「倉科の親父さんには、許しを得たぞ」
「いやいや、聞いてないし」
「いま聞いたから良いだろう」
「ゴメン‥本当に、意味が分からない。って、あたし‥お先に失礼させて頂きます」
蒼のベッドに潜り込む。
「アオ‥」
愛する我が子を抱えて幸せな眠りに入る。
って、婚約者って‥あははっ アイツはアイツでイカレポンチだ。
目覚めてみれば、イカレポンチは夢じゃなく‥蒼と一緒にライダーごっこだ。
その姿を目を細めて、遊が見ている。
「ママー。暖がオレのパパになるって聞いた?」
「蒼、それ暖のジョークだから」
「なーんだ。でもオレ、暖か遊だったらどっちでもいいよ」
「蒼、俺だけにしとけ。遊のとこより俺のが金持ちだぞ」
「えっ、じゃぁさ、グルグルライダースーツとかも買える?」
「あぁ、蒼が欲しけりゃグルグルライダーの権利ごとかってやるぞ」
「ちょっ、暖! 蒼、ライダースーツぐらいママが買ってあげるから」
「えっ?ママ本当に?お誕生日じゃないのに?ママお仕事がんばってるんだね。すごいねーすごいね」
「ママ頑張ってるから、暖はいらないね」
「うんっ」
「蒼— 裏切んなぁー」
暖がコーヒーを取りに、キッチンに入って来て
「ミュウ、俺マジに言ってからな」
耳元で囁く。
「はいはい。了解。りょーかい」
「マジだってぇの」
真摯な瞳が目の前にある。
多分‥本気で暖は、あたしを愛してるのだろう。
一度だけ、あたしは暖と寝た。その時、暖の思いを強く感じた。
身体の疼きを止めるため、セックスをする男は必要だ。
でも‥あたしは、愛する男が欲しいわけじゃない。
だから、遊が丁度いい。遊もあたしと同じだから
I'm bitch それでいい
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