月夜の人魚姫 15 総つく
この部屋に居る時は、全てのものを脱ぎ去って、ただのオトコとオンナになって抱き合う。
これは、ただの情事。
これは、恋じゃない。
あたしは、あたしに言い聞かせ伽羅の香り立立ち込めてるこの部屋で、西門さんに抱かれ続けている。
指先が触れただけで、あたしの身体は、跳ね上がり狂おしい程に西門さんを求め疼き始める。
男は嬉しそうに、あたしの反応を楽しみながら、わざと焦らし続ける。
男の手で、口で、オトコ自身で何度も何度も逝かされ続ける。
「うっ、おまっ‥締め過ぎ‥うぅっ‥」
肉襞は、オトコのものを全て捕らえて離さないとばかりに、絡み付き締め上げる。
オトコが、子宮の奥底を突き上げる度に、クラクラする快楽があたしを襲う。
「背中に手を回して、俺にしがみつけ」
フィニッシュの前に必ず、西門さんがあたしに言う言葉だ。
深く突き上げるオトコをより深く感じるために、背中に手を回ししがみつく。
「あぁっ あぁーーー ‥総‥総‥だめ‥あぁっあぁーーーー」
壊れてしまいそうな絶頂があたしを襲う。
青い人魚が哀し気に微笑んでいる。
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いつの間に眠ってしまったのだろう‥
新幹線のアナウンスは、じきに東京に着くと告げている。
身支度を整え、電車を降りる。
「ヨッ」
遊と暖が2人で、あたしを出迎えてくれる。
「ただいま‥」
迎えの車に乗り空を眺める。
東京には、星がない。星の代わりにネオンで街が光っている。
東京の街は‥あたしの感情を揺さぶる。しっかりと蓋をした筈だったのに‥‥
「なんか食いに行くか?」
暖が心配げにあたしの顔を覗き込む。
「うーん‥お蕎麦が食べたいな」
「おぅっ、蕎麦な。どこがいい?」
「うーん‥‥あっ、花鳥がいいかな」
「あっ、俺パスね。今日は、この前の合コンの子とデートだわ」
「はいはい。相変わらずお盛んで」
「遊、遠慮はいらん。今夜も明日も明後日も、なんならもっとずっとゆっくりして来い」
遊を途中で降ろして、暖と2人で花鳥に向かう。
そば処花鳥は、ゴボウ天せいろが絶品だ。
西門さんも、花鳥のゴボウ天せいろに目がなかったなぁーなんて思いながら、暖簾をくぐる。
「いらっしゃいませー」
お店の女の子の元気な声に案内されて、席に着く。
花鳥でのお約束とばかりに席に着いて、ゴボウ天せいろに、車エビ天せいろを頼む。
「暖、ここねゴボウ天が美味しいんだよ」
「ミュウ…申し訳ない!俺‥ゴボウだけは食えん」
「えっ‥‥あはっ、そっか」
半々にしようと思っていたあたしの考えは脆くも崩れさる。
ここのゴボウ天‥‥もの凄く美味しい。そして、量も多い。
西門さんと車エビとゴボウをトレードするのが、ここ花鳥での不文律。
本数数えて、きっちり半分こ‥‥それが2人の間の不文律。
ゴボウ天食べきれるかな?なんて思った丁度その時
「あれっ?もしかして倉科さんじゃないですか?」
あたしの頭上で、一番会いたくなくて、でも、会いたい人の声がする。
火、水、金、土、日 0時更新


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