明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

un secret ~秘密~ 第1話 written by 空色


この季節にしては珍しく、何処までも澄んだ空を見上げて、
今日、誘って良かったと思った。


一ヶ月程の少し長い出張から、帰って来たのだと連絡を貰ったのは、三日前。

何時もなら、お土産が在るからと誘われるのだが、
今回は、自分から誘い出した。
彼が私の為に選んでくれる嬉しいお土産が、
欲しかった訳では無い。



会いたかったのだ。…堪らなく。




道明寺とは……。

結局、四年の約束は果たされず、迎えに来てはくれなかった。

待って居たのかと問われても、
何と答えて良いのか、よく判らない。
待って居たかもしれないし、そうでは無かったのかもしれない。
何ともイイカゲンな自分に、
ため息が出る事もある。


大学在学中から、就活して就職先を決めて、
普通に卒業して普通に就職した。

もしかしたら、私を気遣ってそう出来る様に手を回してくれたのかもしれないが、
本当の事は判らない。

確かなのは、現在(いま)の職場を選んだのは、
自分自身。と、言う事だ。


あれから、三度目の季節達が流れている。

こんな私でも最近は、一丁前と言われる様になって来た。
私よりも一歩先に社会人になっていった、
あの仲間達とは、今でも近況報告会の様に集まる事がある。

あの頃抱いていた、
住む世界の違いとか、価値観の違いへの激しい嫌悪感は、
何だったのだろうか?
と、思うほど、彼等に会うと、懐かしい。とか、嬉しい。とか、ホッとする。とか、
嫌悪感とは、程遠い感覚を覚えるのが不思議だ。


大人になった。

そんな言葉が、頭の中に浮かぶ。





いつもの散歩道をいつもの様に、
二人して歩く。

今日は、ほんの少しだけ後ろを歩いている事に、
彼は、気が付いているだろうか?


この感じが、心地良い。



「………ね。」


「ん?」



あたしに合わせて、少しだけ屈み込み、
上半身を捻って目線を合わせてくれる。

太陽を背に、澄んだ空の中の彼の顔を見上げた時。



あぁ、この顔が見たかった。


そう思った。

…………そしたら、
鼻の奥がツンとしてしまって、
堪えても堪えても、
込み上げて来る何かを、抑えようとすればする程、
失敗して、零れそうになる。



「泣き虫。」


「………………。」


「そんなに、会いたかった。とか?」



聡い彼が、私の様子に気が付かない筈もなく、
いつもの冗談を交えながら、目尻の雫を綺麗な指で掬ってくれる。



タマラナク、アイタカッタ。

云えなくなった、そのセリフは、何処に仕舞おうか?
知らずに、顔も視線も下を向く。



「……牧野?」



俯いてしまったあたしに掛けられた声に、顔を上げた瞬間、
鞄の中が震える。



「……………。」


「出ないの?」


「………………。」


「出なよ。」




ごめん。と一言、言い置いて、背を向けたあたしは、
今、彼がどんな顔をしているかなんて、
知る由も無かった。





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