明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

un secret ~秘密~ 第2話 written by りおりお

♪~♪♪~♪~

二人だけが共有する独特の空気感
それを引き割くかのように、突然彼女の鞄が震えはじめた

一瞬にして空気が変わった事に、少し苛立つ俺
気付けば、ぶっきらぼうに呟いていた

「出なよ、、、」

彼女は、少し困った表情になり、、
「ごめん」と呟いて、背を向けた

「はい」
<先輩、、今どちらです?>

「えっとね、、、公園?」
<と言う事は、お暇ですね>

誰と話をしているのかは分からないが、彼女がしきりに俺を見る
だからわざと、小首を傾げ、彼女をジッと見る
(この表情に、彼女が弱い事を知っているから、、
 早く、電話を切って欲しいから、、)


案の定、彼女はポッと顔を染め、ジッと俺を見つめ返して来た

<先輩! 聞いています? 先輩!>

電話口から漏れ聞こえるのは、女性の声
その声にホッと安堵する物の、相手の方はかなり苛立っているように聞こえる
彼女も、その苛立つ声にハッと我に返った様だ

「あっ、、ごめん」
<ごめんじゃありません。 つまりお暇って事ですね!>

「いや、、暇って言うか、、暇じゃないと言うか、、」
<分かりました。 今すぐ恵比寿のカフェ『Notre fleur』に来て下さい!>

「えっ! 今すぐ?」
<そうです!今すぐです! 重要なお話があるんです! すぐに来て下さいね!>
「えっ? ちょっ、、」

スマホ片手に、茫然とした顔で、俺を見上げる彼女、、
「ごめん、、桜子なんだけど、、何か重要な話があるらしくて、今すぐ来い!って言って、話が切れちゃったんだけど、、」

(そんな困った顔で言われたら、嫌とは言えないだろ?)
「そっか、、仕方ないな、、行っといで」

「ごめん、、私の方から連絡しておきながら、、」
(いや、、凄く嬉しかったから、、あんたは気にしないで)

「良いから、、早く行きな」
「うん、、分かった。 ホントにごめんね。 この埋め合わせは必ずするから」
と、彼女は俺に軽く手を振り、駆け出した

(仕方ない、、
 彼女は、俺だけの物じゃないんだから、、)


ふいに予定が開いた俺は、時間を見るべく携帯を取り出す
その画面の日付を見て、クスッと自然に笑いが漏れた

そして、澄んだ空を見上げ、遠く異国の地に居る親友に思いを馳せる

(いよいよ、、明日、、始まるよ。 お前はどうする?)



***

つくしは、桜子が待つ恵比寿の『Notre fleur』に着いた
電車を乗り継ぎ、駅から走って来たのだが、既に1時間以上経過している
急いで店内に入ると、奥の窓際で、紅茶を飲みながら、雑誌を読んでいる桜子がいた

「ごめん、、少し遅れたよね?」
そう言いながら、桜子の前に腰を降ろし、すぐさまアイスティーを注文した

「まあ、想定内ですし、ここまで走ってこられたようですから、許して差し上げます」
「ごめん、、いや~でも外は、暑いよね~」
と、目の前の水を、ゴクゴクと飲み、空になったグラスを置く
(ほんと、、皆さんは、どうしてこのような女性らしさの欠片も無い先輩が良いのでしょう?
 日本の七不思議に入る事柄だと思います)


「それで何? 重要な話って?」
「先輩、、明日、この雑誌が発売されるんです」
と、つくしの目の前に、先程まで読んでいた雑誌を差し出す

「ふ~ん、、明日発売の雑誌が、手に入るなんて、、桜子って凄いね~、、って、、えっ!! 」
つくしは、その雑誌の見出しに目が留まった

そこには、、
≪ 美作商事、花沢物産、茶道西門流のジュニア達が、こぞって惚れる一人の女性≫
と書かれている

「これ、、美作さんと、類と、西門さんの事?」
「そうです」

「あの三人が、、、こぞって惚れる一人の女性? そんな人がいたの?」
「そうです」

「凄いよね~。 そんな才色兼備な女性が、この世に居るんだ、、」
そう呟くものの、つくしの心臓は、ドキドキと早鐘を打ち、平静ではいられない
その動揺を、桜子が見逃すはずは無い
(鈍感ですから、、まさか自分の事だとは、思いもしないみたいですね)

「道明寺さんとは、あれから何か連絡はありましたか?」
その問いに、つくしは首を左右に振る

「全然。 何も無い。
 4年後迎えに来るって言いながら、既に8年になるし、、
 F3が、何度か連絡を取ろうとしたらしいんだけど、何時も留守電とかで繋がらないって言ってた」
「そうですか、、」

桜子は、その言葉に少し考え込む
その間に、つくしの前にアイスティーが置かれ、それにストローを突き刺し飲み始めた

「なるほど、、、そう言う事ですね」
桜子が突然、納得が言ったようにポツリと呟く

「ん? 何? 何がなるほどなの?」
つくしは、アイスティーにガムシロップを入れながら、他人事のように呟いた
その様子を見て、桜子はハ~と深い溜息をついた

「先輩、、正直に答えて下さいね」
(こうなったら、私が先輩の気持ちを、お調べいたします)

突然、真剣な口調に変わった桜子に、つくしもアイスティーを置き、身構える
それを見て、桜子がその雑誌を開いた

そこには、カラー写真で、三人それぞれと戯れるつくしの姿
一応、つくしの目元には線が入れられ、分からないように加工されている物の、あきらかに同一人物と分かる

つくしはそれを見て、目を見開き素っ頓狂な声を上げる
なっ、、えっ? 何これ? えっ? 私?

「そうです。 先輩です。
 まずお聞きしたいのですが、このお写真は、どういう事ですか?」

そこには、桜の木の下で、あきらがつくしの頬に手を添え、顔を傾けている写真。
(二人の距離は、ほんの数センチです。 それに、しっかりと見つめ合っています
 しかも頬に手を添えていますし、この顔の傾け方、、間違いなくこの後、キスしましたよね?)


「あ~、、この時、目にゴミが入って、、
 ほらっ、、美作さんが下まぶたを下げて、覗き込んでいるでしょ?」
(はっ? 目にゴミ?)

そう言われ、桜子がもう一度よく見ると、そう見えなくもない
でも、バックの桜がムード満点で、恋人同士の甘いひと時に見えてしまう
(やりましたね、、美作さん。 他人が見れば、どう見てもこれは、恋人同士のワンシーンにしか見えません)

「それでは、こちらの写真は何ですか? どう見ても西門さんに、肩を抱かれていますよね?」
そこには、つくしの肩をしっかりと抱き、身体を密着して歩く総二郎とつくしの姿。
つくしの顔は真っ赤で、、総二郎は嬉しそうに笑っている

(これは決定的ですね。 先輩が人目もはばからず、西門さんに肩を抱かれています。
 恥ずかしがり屋の先輩が、こういう事をする相手、、それこそ好きな人です)


「あ~、、これね///」
つくしは、その当時を思い出しているのか、真っ赤に顔を染めた
その表情に、桜子はもう一度よく写真を見る
すると、二人の後ろにホテルが見える

(まさか!! 先輩! 脱バージンですか? まあ、好きな人なら、、自然な行為ですから、何の問題も有りませんけど、、)

「かけられちゃって////」
(かけられる? ホテルで? 西門さんに? それって、、それって、、)

「あんなに、激しく飛ばす事無いじゃない?」
(まあ、、勢いが良いと、かなり飛びますが、、それにお若いですし)

「それで、服が汚れちゃって////」
(服が汚れる? もしかして、、服を着たままやっちゃったんですか? 初めてですよね?
 私の知らない間に、既にそう言う関係が何回も?って事ですか? 
 それとも、西門さんが暴走してしまって、、って事ですか?)

桜子は、確認すべく恐る恐る聞いてみる
「先輩? 初めて、、ですよね?」

「もちろんよ!」
(ですよね、、、)

「でも、大型車が隣をものすごいスピードで通ってね。
 バシャッってかけられて、片側の腰から下が泥水だらけでね////
 西門さんが、笑いながら隠してくれて////」
(はぁ? と言う事は何ですか?
 泥はねで、片側だけ服が汚れてしまい、その部分を隠すために、西門さんがぴったりくっついて歩いたと?)

桜子は気を取り直し、次の写真を指差す
「これは何ですか?」

そこには、類が運転する車の助手席に、つくしが乗り込む姿。
車内で、類がつくしの肩に手を回し、顔を重ねている姿。
そして、、類は満足そうに微笑みハンドルを握り、つくしに至っては真っ赤になっている姿。
その3枚が、連写の様に載せられている

(これで決まりでしょう。 先輩は、元々花沢さんの事が好きでしたし、二人だけの世界感を持っています
 それにこれはどう見ても、キスをされています)


「やだっ////これっ////」
と、瞬時に照れる
(決まりですね。 先輩は、花沢さんの事が好きなんです)

「されたんですね」
(もちろん、、キスをされたんですよね?)

「やったよ」
つくしは、ポッと頬を染め、小さく呟く
(やっと認めましたね。 つまり今は、花沢さんの事が好きなんです)

「だって、今は必ずシートベルトを付けるじゃない?」
「はっ? シートベルト、、ですか?」
桜子は、思わず呆けた声で呟いた

「そう、、類の車って、外車じゃない? シートベルトが引っ掛かって、、そうしたら、類が身を乗り出して、ベルトを引っ張ってくれて////」
(なんで、シートベルトを着けたぐらいで、顔が赤くなるんですか!
 その後、キスをしたんでしょ? 正直に白状して下さい!!)


「それくらいで、ここまで顔が赤くなるはずが無いと思いますが?」
桜子は、真っ赤になっている写真を、チョンチョンと指で押す

「だって、、類の顔が目の前に来るんだよ?
そっ、、それに、、クスッって小さく笑って、、かっ、顔に、類の吐息がかかって///」 
(はぁ? 吐息? それぐらいでこんなに赤くなっていましたら、キスをされた時には、心臓が止まってしまいます!)

桜子は、もう一度すべての写真をよく見る
(つまり、、これらすべての写真は、あの御三方との、なんちゃって写真、、奇跡の1枚って事ですか?
 そしてその御三方が、満を持して行動に打って出たと言う事ですね)


桜子は、姿勢を正し、つくしを見る
「先輩、、この雑誌は、明日発売されます」
「うん。 どうしよう。 ねぇ、、どうしたらよい? これ、止められないかな?」

「無理です。 この記事は、この御三方が意図して撮らせ、そして書かせた物だからです」
「えっ? 何で?」

「道明寺さんに、宣戦布告をする為です。
 4年を経過しても迎えに来ませんし、御三方が連絡しても、梨の礫だとお聞きしました」
「うん」

「そこで、御三方の恋の噂、、しかも先輩を取り合っていると知れば、世界中のどこに居ても、必ず道明寺さんの耳に入るはずです。
 それでも、何の連絡も行動もとらなければ、、既に先輩は、捨てられた事になりますし、この御三方も、遠慮なく先輩を自分の彼女に出来る、、と言う訳です」

桜子のキッパリとした発言に、つくしは驚愕する

「ちょっ、、ちょっと待って! 連絡が来なければ捨てられたって事は分かるよ?
 でも、彼女に出来るって、、」
「まだ分からないんですか? 御三方共、先輩の事が好きなんですよ!
 良く考えてみてください。 御三方共、お仕事も凄く忙しい方です。
 ですが、どなたも彼女を作る事無く、ずっと先輩を支え続けています。 
 ただの友達としか思っていないのであれば、こうして数少ない休日を、先輩と過ごすために当てるとは考えられません」

「えっ? でも、、私、、」
「そうです。 先輩は、この方達と親密に接しすぎた為、自分の気持ちが分らないまま時間が過ぎているんです。
 それに元々鈍感ですから、友達と恋人の区別が上手くつかないのかも知れません。
 ですから、こうして強硬手段に出たんですよ。
 良いですか、、もう逃げられませんよ。
 皆さんとキチンと向き合い、誰の事が好きなのか、、それとも4人共好きでないのか、きちんと判断する時期に来たと言う事です、、」

「そんな、、急に言われても、、」
「そうでしょうか? 先輩と皆さんとは既に8年もの付き合いになります。
 きっと心の中では、既に本命の相手がいるのではないですか?
 それを見極める、良い機会だと思うんです。
 とりあえず、、明日この雑誌が発売されると同時に、戦闘開始のゴングが鳴らされます。
 逃げ出す事無く、きちんと自分の気持ちを確認してくださいね」

桜子の迫力のある言葉に、つくしはごくりとつばを飲み込み、、
「分かった、、」
と呟いた

「それと、、一応確認ですが、道明寺さんから預かっている携帯は、電池切れとか故障中とかって事は無いですよね?
 万が一、そのような事があれば、シャレになりませんよ?」

その言葉に、つくしは鞄から二つ折りのド派手な携帯を取り出す
「一応、、充電はしているんだけど、、どうだろ?」

それを確かめるべく、その携帯を開こうとした時、、
突然、その携帯が大きな音を立て始めた

そのタイミングの良さに、思わずつくしと桜子は、目を合わせた









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