un secret ~秘密~ 第8話 written by 蜜柑一房
「_牧野っ!」
「る、るい・・っ!?」
類が部屋に飛び込んですぐ目に入ってきた光景_。
屈強な男が、下卑た笑みを零しながら牧野ににじり寄り、腕を伸ばそうとしていた。
次の瞬間__
カッ………っと頭に血が上った。
思考するよりも先に身体が動き……気がつけば、牧野を襲っていた男の首に肘打ちでも食らわせたのだろうか。
ドサリ_という音とともに男の身体が崩れ落ちていた。
_危機一髪だった。
あと10分でも遅かったら牧野は奪われていたかもしれない。
_そう思ったら、我知らず青ざめ、小刻みに身体が震える。
「遅くなってごめん…行くよっ!」
「う、うん」
牧野の手をグンっと引いて立たせようとするが、恐怖のあまり腰が砕けてしまったのだろう・・
類の手を借りて立ち上がろうとはするものの、ガクガクと足が震えて立つことさえままならない様子だ。
「…あ、あれ?_や、やだ…お、おかしいなぁ__っあ、足が震えてる……ははっ」
「ごめん、緊急事態だから」
類はすっかり腰が砕けてしまった牧野の身体をひょいっと横抱きにして、長居は無用…さっさと忌まわしい場所を後にする。
牧野を抱いて建物を脱出した瞬間……
_ドッカーーンッ ガシャーン!!
まるで、狙ったかのようなタイミングで建物に何かが打ち込まれ、戦場さながらの物々しい爆発音が鳴り響いた。
「る、るい!?」
状況を全く掴めていない牧野が、怯えたように類を見上げてくる。
「心配しないで?あれは司が仕掛けたこと。間違っても死人なんてでないはずだから」
「そ、そうなの?!」
「うん、あんたは自分の心配だけをしていればいい」
_司のやつ…ずいぶん派手にやらかしたな。ま、あいつの事だ……後始末までしっかりとやってくれるだろう。
類は、巻き添えを喰わないように周囲に気を配りながら、キョロキョロと辺りを見回し、目当てのものを探す。
_あった。
**
「すぐに、あきらの家に向かって!」
目立たない場所に待たせておいた車に、牧野を抱えて乗り込むと、すぐにあいつらの待つあきらの屋敷に向かった。
_はぁはぁはぁ・・・っ!
後部座席のシートに二人並んで腰を掛け、久々に全速力で走ったせいで上がってしまった息を整える。
「た、助けてくれてありがとう。…類が来てくれなかったら、あ、あたし……」
「牧野、本当に間に合ってよかった」
何度も深呼吸を繰り返し、なんとか呼吸が整い始めると、ジットリと獣くさい汗が全身の毛穴から湧き上がってくるようで……今更ながら無謀なことをしたものだと、実感させた。
ようやく興奮状態が覚めた牧野にも、実感ってやつが湧いてきたのか__
大きな瞳に涙の膜が張ったかと思った次の瞬間にはこぼれ、ポロポロと何粒も頬を滑り降ちる。
「_る、い…、あ、あたし…うぅ……」
緊張の糸がぷつんと切れたように、とうとう泣き崩れてしまった牧野の肩を引き寄せて、ぎゅうっとキツく抱きしめる。
「__っ!」
抱き寄せた牧野の細い肩は小刻みに震えていて、よほど恐ろしかったのだろう__、気丈な彼女が堪えるように嗚咽を漏らした。
_もしかしたら、その彼女の肩を抱く俺の腕の方こそが、本当は震えていたのかもしれないけれど。
「まきの……怖かったよね?ごめんね、すぐに助けに行けなくて」
「うぅ…くっ…ふぅぅ」
泣きじゃくる牧野を、震える腕で更に強く抱き寄せ、譫言のように漏れた声はみっともないほど震えていて__
「牧野…俺がもっと気をつけていたら、こんなことにはならなかったんだ……」
**
俺には政略結婚の話があった。
花沢的には、その女と結婚すれば、まあメリットはあるかもしれないがどうしてもというほどの相手ではなかった。
だが、仲人に入ろうと紹介してきた人物が厄介だったんだ。
紹介者は、花沢が今最も力を入れている医療介護ロボの開発に、外すことのできない特許を持った先端企業の経営者で、それだけでも厄介だというのに父の大学時代の学友というおまけ付き。
本来なら、あの程度の見合いの話なんかに耳を貸すような父ではないというのに、学友の紹介ということで類の元まで話が降りてきてしまった。
断るにはそれなりの理由が必要だった俺は、女の素行について秘密裏に調べ始めたんだ。
だが、いくら調べても小さなホコリ一つ出てこなかった。
__人は、どんなに清廉潔白なつもりでも、一つや二つ何かしら隠したい過去や疚しい秘密を持っている。
F4だなんてもてはやされていたって、類にしても心を閉ざした時期があり、ほとんど病的と言っていいほど他人に心を開かない。
_ある一人の女と昔馴染みを除いては…だが。
他の3人に至っては……まぁ、言うまでもないけどね。
いくら調べてもその女については、何一つ出てこなかった…。だが、それこそがその女の綻びだったんだ。
不自然に思った俺は、あきらに調査を依頼した。
裏の世界にも顔が利くあきらでも何も見つけられないとしたら、それがその女の真実の姿なのだろうと__。
だけど、いや、当然というべきだろうか。
あきらは見つけてくれたんだ・・あの女のとんでもないスキャンダルを。
「…お前に見合い持ちかけてきた女、北川原だったか?とんでもないあばずれだぞ。表面的には上手く隠しているつもりみてーだけどな」
「ふ〜ん、やっぱりそうなんだ。おかしいと思っていたんだよね…あんなに調べても何一つ出てこないんだからさ。でも、よく見つけられたね?」
類の言葉に、あきらは呆れたような表情で声を潜める。
「_おい、お前、今更それを言うか?うちの家のことはよくわかっているんだろうが」
「…まあね」
類は、あきらに渡された調査報告書をパラパラと捲りながら適当に相槌を打つ。
「でも、よかったな?この事が間に入っている…親父さんの学友だったか?その人に知られたら、類との見合いどころの話じゃあねーだろ。その女、下手したら刑務所だぜ?」
そう言うと、あきらは苦笑いしながら、ウェーブのかかった長い髪をかきあげた。
「ん、そうだね。あきら助かったよ。いつか、借りは返すから」
「お、期待してるぜ?」
あきらは、「油断するなよ」とかなんとか釘を刺して、早々に引き上げて行った。
あきらの持ってきた調査報告書の内容は、まさにあの女の人生を一発で終了させられるほどの内容だった。
「全く、父さんもとんでもない女と引き合わせてくれたよね」
類は思わず独り言ちる
_ま...おかげでしばらくの間は、見合いを回避できそうだからいいけど。
見合い相手の女は、表面的にはお嬢様然としていたが、とんでもない裏の顔を持っていた。
見合い写真では、並以下の容姿の冴えない女に見えるが、裏の世界ではかなりの有名人という話だった。
セレブ御用達のSMクラブでは、かなりハードなプレイを好む女王様として名を馳せ、行き過ぎたハードプレイの末に、とうとうペットの男を一人死なせてしまったというのだ。
焦った女は、金を使って秘密裏に事実をもみ消して事なきを得た。
_そんな女が、花沢の名前欲しさに……
いや、実は昔から俺に憧れていたとかなんとかそんな理由で、伝の伝まで頼って、断れない筋から見合いを持ちかけ、結婚までこぎつけようとしていたらしい。
類は調査報告書に添付された写真を眺めると、お見合い写真の中で、振り袖姿で楚々と微笑んでいた女と同一人物とは思えない、醜いボンテージ姿で男に鞭を振るう姿が納められていた。
なんでも、その事件の後は、夜のクラブ活動は控えているらしい。という、いらぬ情報まで添付されているのがあきららしくて笑えた。
「_く、くくくっ・・」
俺は、その資料を女の家に送りつけ、向こうから見合いの話を無効にさせる事に成功した。
その時は__
**
類が、一息に経緯を説明すると、
牧野はやはり気丈な性質なのかな、なんとなく平静さを取り戻してはいるがどこか困惑したような表情で見つめ返してくる。
「た、大変だったんだね。…でも、それが今回の事件になんで?」
_ふっ、まあ、そうだよな。急にこんな事言われても飲み込めるはずがない…しかも、大切な事を一切話していないんだから。
「あんたが、拉致られたのは、あの写真のせいなんだ。」
「…え、しゃ、写真??」
牧野は意外な事でも聞いた・・とでも言うように瞳を大きく見開いた。
「どうしても俺のことが諦められなかった女は、見合い話が流れてからも俺の事を調べていたらしい。そんな時に、あの雑誌が発刊されるという情報が何処からあの女に耳に入り、自棄になった女があんたに怒りの矛先を向けた…」
_俺たちが拉致られた時、あいつらがすぐに動いてくれた。じゃなかったら、こんなに早く助け出す事なんてできなかっただろう。
あきらは、俺が調査を依頼した後もそれとなく俺たちの動向を気にしていてくれていて、あの雑誌が発刊される前に、会社に訪れて俺に忠告していた。
_牧野が危ないと。
司や総二郎にも当然の如く経緯が耳に入っていて__。
「_えぇ!?…どうして?だって、あれは誤解でしょ?それに…あたし達ただの友達なのに……」
_ただの友達。
牧野の無神経な言葉が、類の表情を一瞬にして奪った。
「誤解じゃないだろ?あんたの事が好きだって何度言ったらわかってくれるのさ」
「えっ…あ、あのね…話を‥?」
牧野が何かごちゃごちゃと言い訳する声を、意識の遥か向こうで聞きながら運転席に向かって告げる。
「あきらの家やめて、うちに向かって」
「る、るい・・!?」

「る、るい・・っ!?」
類が部屋に飛び込んですぐ目に入ってきた光景_。
屈強な男が、下卑た笑みを零しながら牧野ににじり寄り、腕を伸ばそうとしていた。
次の瞬間__
カッ………っと頭に血が上った。
思考するよりも先に身体が動き……気がつけば、牧野を襲っていた男の首に肘打ちでも食らわせたのだろうか。
ドサリ_という音とともに男の身体が崩れ落ちていた。
_危機一髪だった。
あと10分でも遅かったら牧野は奪われていたかもしれない。
_そう思ったら、我知らず青ざめ、小刻みに身体が震える。
「遅くなってごめん…行くよっ!」
「う、うん」
牧野の手をグンっと引いて立たせようとするが、恐怖のあまり腰が砕けてしまったのだろう・・
類の手を借りて立ち上がろうとはするものの、ガクガクと足が震えて立つことさえままならない様子だ。
「…あ、あれ?_や、やだ…お、おかしいなぁ__っあ、足が震えてる……ははっ」
「ごめん、緊急事態だから」
類はすっかり腰が砕けてしまった牧野の身体をひょいっと横抱きにして、長居は無用…さっさと忌まわしい場所を後にする。
牧野を抱いて建物を脱出した瞬間……
_ドッカーーンッ ガシャーン!!
まるで、狙ったかのようなタイミングで建物に何かが打ち込まれ、戦場さながらの物々しい爆発音が鳴り響いた。
「る、るい!?」
状況を全く掴めていない牧野が、怯えたように類を見上げてくる。
「心配しないで?あれは司が仕掛けたこと。間違っても死人なんてでないはずだから」
「そ、そうなの?!」
「うん、あんたは自分の心配だけをしていればいい」
_司のやつ…ずいぶん派手にやらかしたな。ま、あいつの事だ……後始末までしっかりとやってくれるだろう。
類は、巻き添えを喰わないように周囲に気を配りながら、キョロキョロと辺りを見回し、目当てのものを探す。
_あった。
**
「すぐに、あきらの家に向かって!」
目立たない場所に待たせておいた車に、牧野を抱えて乗り込むと、すぐにあいつらの待つあきらの屋敷に向かった。
_はぁはぁはぁ・・・っ!
後部座席のシートに二人並んで腰を掛け、久々に全速力で走ったせいで上がってしまった息を整える。
「た、助けてくれてありがとう。…類が来てくれなかったら、あ、あたし……」
「牧野、本当に間に合ってよかった」
何度も深呼吸を繰り返し、なんとか呼吸が整い始めると、ジットリと獣くさい汗が全身の毛穴から湧き上がってくるようで……今更ながら無謀なことをしたものだと、実感させた。
ようやく興奮状態が覚めた牧野にも、実感ってやつが湧いてきたのか__
大きな瞳に涙の膜が張ったかと思った次の瞬間にはこぼれ、ポロポロと何粒も頬を滑り降ちる。
「_る、い…、あ、あたし…うぅ……」
緊張の糸がぷつんと切れたように、とうとう泣き崩れてしまった牧野の肩を引き寄せて、ぎゅうっとキツく抱きしめる。
「__っ!」
抱き寄せた牧野の細い肩は小刻みに震えていて、よほど恐ろしかったのだろう__、気丈な彼女が堪えるように嗚咽を漏らした。
_もしかしたら、その彼女の肩を抱く俺の腕の方こそが、本当は震えていたのかもしれないけれど。
「まきの……怖かったよね?ごめんね、すぐに助けに行けなくて」
「うぅ…くっ…ふぅぅ」
泣きじゃくる牧野を、震える腕で更に強く抱き寄せ、譫言のように漏れた声はみっともないほど震えていて__
「牧野…俺がもっと気をつけていたら、こんなことにはならなかったんだ……」
**
俺には政略結婚の話があった。
花沢的には、その女と結婚すれば、まあメリットはあるかもしれないがどうしてもというほどの相手ではなかった。
だが、仲人に入ろうと紹介してきた人物が厄介だったんだ。
紹介者は、花沢が今最も力を入れている医療介護ロボの開発に、外すことのできない特許を持った先端企業の経営者で、それだけでも厄介だというのに父の大学時代の学友というおまけ付き。
本来なら、あの程度の見合いの話なんかに耳を貸すような父ではないというのに、学友の紹介ということで類の元まで話が降りてきてしまった。
断るにはそれなりの理由が必要だった俺は、女の素行について秘密裏に調べ始めたんだ。
だが、いくら調べても小さなホコリ一つ出てこなかった。
__人は、どんなに清廉潔白なつもりでも、一つや二つ何かしら隠したい過去や疚しい秘密を持っている。
F4だなんてもてはやされていたって、類にしても心を閉ざした時期があり、ほとんど病的と言っていいほど他人に心を開かない。
_ある一人の女と昔馴染みを除いては…だが。
他の3人に至っては……まぁ、言うまでもないけどね。
いくら調べてもその女については、何一つ出てこなかった…。だが、それこそがその女の綻びだったんだ。
不自然に思った俺は、あきらに調査を依頼した。
裏の世界にも顔が利くあきらでも何も見つけられないとしたら、それがその女の真実の姿なのだろうと__。
だけど、いや、当然というべきだろうか。
あきらは見つけてくれたんだ・・あの女のとんでもないスキャンダルを。
「…お前に見合い持ちかけてきた女、北川原だったか?とんでもないあばずれだぞ。表面的には上手く隠しているつもりみてーだけどな」
「ふ〜ん、やっぱりそうなんだ。おかしいと思っていたんだよね…あんなに調べても何一つ出てこないんだからさ。でも、よく見つけられたね?」
類の言葉に、あきらは呆れたような表情で声を潜める。
「_おい、お前、今更それを言うか?うちの家のことはよくわかっているんだろうが」
「…まあね」
類は、あきらに渡された調査報告書をパラパラと捲りながら適当に相槌を打つ。
「でも、よかったな?この事が間に入っている…親父さんの学友だったか?その人に知られたら、類との見合いどころの話じゃあねーだろ。その女、下手したら刑務所だぜ?」
そう言うと、あきらは苦笑いしながら、ウェーブのかかった長い髪をかきあげた。
「ん、そうだね。あきら助かったよ。いつか、借りは返すから」
「お、期待してるぜ?」
あきらは、「油断するなよ」とかなんとか釘を刺して、早々に引き上げて行った。
あきらの持ってきた調査報告書の内容は、まさにあの女の人生を一発で終了させられるほどの内容だった。
「全く、父さんもとんでもない女と引き合わせてくれたよね」
類は思わず独り言ちる
_ま...おかげでしばらくの間は、見合いを回避できそうだからいいけど。
見合い相手の女は、表面的にはお嬢様然としていたが、とんでもない裏の顔を持っていた。
見合い写真では、並以下の容姿の冴えない女に見えるが、裏の世界ではかなりの有名人という話だった。
セレブ御用達のSMクラブでは、かなりハードなプレイを好む女王様として名を馳せ、行き過ぎたハードプレイの末に、とうとうペットの男を一人死なせてしまったというのだ。
焦った女は、金を使って秘密裏に事実をもみ消して事なきを得た。
_そんな女が、花沢の名前欲しさに……
いや、実は昔から俺に憧れていたとかなんとかそんな理由で、伝の伝まで頼って、断れない筋から見合いを持ちかけ、結婚までこぎつけようとしていたらしい。
類は調査報告書に添付された写真を眺めると、お見合い写真の中で、振り袖姿で楚々と微笑んでいた女と同一人物とは思えない、醜いボンテージ姿で男に鞭を振るう姿が納められていた。
なんでも、その事件の後は、夜のクラブ活動は控えているらしい。という、いらぬ情報まで添付されているのがあきららしくて笑えた。
「_く、くくくっ・・」
俺は、その資料を女の家に送りつけ、向こうから見合いの話を無効にさせる事に成功した。
その時は__
**
類が、一息に経緯を説明すると、
牧野はやはり気丈な性質なのかな、なんとなく平静さを取り戻してはいるがどこか困惑したような表情で見つめ返してくる。
「た、大変だったんだね。…でも、それが今回の事件になんで?」
_ふっ、まあ、そうだよな。急にこんな事言われても飲み込めるはずがない…しかも、大切な事を一切話していないんだから。
「あんたが、拉致られたのは、あの写真のせいなんだ。」
「…え、しゃ、写真??」
牧野は意外な事でも聞いた・・とでも言うように瞳を大きく見開いた。
「どうしても俺のことが諦められなかった女は、見合い話が流れてからも俺の事を調べていたらしい。そんな時に、あの雑誌が発刊されるという情報が何処からあの女に耳に入り、自棄になった女があんたに怒りの矛先を向けた…」
_俺たちが拉致られた時、あいつらがすぐに動いてくれた。じゃなかったら、こんなに早く助け出す事なんてできなかっただろう。
あきらは、俺が調査を依頼した後もそれとなく俺たちの動向を気にしていてくれていて、あの雑誌が発刊される前に、会社に訪れて俺に忠告していた。
_牧野が危ないと。
司や総二郎にも当然の如く経緯が耳に入っていて__。
「_えぇ!?…どうして?だって、あれは誤解でしょ?それに…あたし達ただの友達なのに……」
_ただの友達。
牧野の無神経な言葉が、類の表情を一瞬にして奪った。
「誤解じゃないだろ?あんたの事が好きだって何度言ったらわかってくれるのさ」
「えっ…あ、あのね…話を‥?」
牧野が何かごちゃごちゃと言い訳する声を、意識の遥か向こうで聞きながら運転席に向かって告げる。
「あきらの家やめて、うちに向かって」
「る、るい・・!?」

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