明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

un secret ~秘密~ 最終話 空色 ver.

あの時……、
あたしは、あたしの幸せを見つける為に、
あたしの一番を見つける為に、
宣戦布告を受けて立つ宣言をした。



「ね、牧野。これ良く写ってるよね?」


「……………。」


「あっ、もうちょっと、こっち側の角度からの方が良かったかな?」


「………………。」


「でも、大丈夫。全部綺麗に撮れてるよね。」


「……………………。」


「ね、牧野…「あの、」」


「ん?」

「あのさ…。」

「何?」

「これは、何?」

「ん?……明日発売の週刊誌?」


「…………………。」


「便利だよね。牧野と婚約する事も、牧野に手を出すなよ!って事も、あいつ等に連絡しなくて済むじゃん。」


「いや、そっちじゃ無くて、」

「何で、昨日の夜撮られたらしい写真が、明日発売の週刊誌のネタになってんのかって聞いてるのっ!」


「あぁー、俺じゃないよ?」
「誰よっ!!」


「親父?」


「あ゛?」


*****

そう、昨日の事…。

彼等の宣戦布告を受けて立つと宣言してから、
まもなく一年になる。

その後も、たまに会ったり、電話したり、
私達は別段変わらず、良い関係を続けている。

選ばない事は縁を切る事では無いのだと、
日々教えてくれるあの人達の優しさが、覚悟が、
染み込む。

ビシバシアタックも、たまにはあるが、それとこれは別物だ。

花沢 類とは、すれ違いが多くなり、
電話もメールもするけど、半年以上会って無い。


数日前、「久しぶりに会わない?」と、連絡が来た。
嬉しかった。


タマラナク、アイタカッタ。


あの時、仕舞い込んだセリフを思い出して、
それも選択肢の一つだと、
笑みが零れる。



久しぶりだね。ただいま。と、挨拶を交わした途端、
差し出されたビロードの小さい箱に、ちんまりとお座りしているそれを見て 、
固まった。



「迎えに来た。」


「はい?」


「はい、これね。うん、ぴったりだっ。」


あたしの左手を拐って、薬指に、「いつの間にっ!」の早業で填められた指環に、
全機能がダウン。

これは何?とか、何で、薬指に指環?とか、聞きたい事が沢山あるのに、
あ。とか、え。とか、う。しか出て来ない。

そんな、わたしの耳に入った声に、
咄嗟に返事をしていた。



「堪らなく、会いたかった。」


「私も、堪らなく会いたかった。」


忘れる筈もない花沢 類の匂いに、
ぎゅうーーっと、抱きしめられて、


「良かった。Yesって事だよね?」


壊れてしまったカラクリ人形の様に、コクコクと頷く事しか出来なくて、
彼も、緊張してたのだろうか?幾分肩の力が抜けた何時もの笑顔で、
「じゃ、改めてね。」と、前置きして、



「俺は、あんたじゃなくちゃダメだし。あんたも、俺じゃなくちゃダメで居て欲しい。ずっと。」


そう、言ってくれた。


あの宣言から、知らずに張り詰め続けていたらしい糸が、ぶつぶつ切れた様に大号泣し始めたあたしを、
柔く柔く抱きしめて、


「俺も、言ったよね?諦める積もり無いって、」

「それにあの時、堪らなく会いたかった。って言ってくれたし。」


!!!


「何で?って?だって聴こえたんだもん。」

「ちゃんと、言ってくれるかな?って期待してたのにさ、三条に邪魔されるし?司の動きが早かったよね?失敗。」

「でも、あれで…、あんたを絶対離しちゃダメだって思ったんだ。」


「…………。」


「あんたが言ってくれるのを待つだけじゃダメだって。……だから、俺も頑張って言ってみた。」



その後、盛大に泣き続けて寝落ちしたあたしを抱き上げて、連れ帰ってくれたらしい。
目が覚めて、何となく記憶の片隅にある天井だと、眺めてた時、


「おはよ、よく眠れた?」


爽やかに声を掛けられ、ズイッと、差し出されたのがこの週刊誌のゲラだった。


[花沢物産、御曹司花沢 類氏。長年の恋実る。婚約発表、秒読み!!]


「だからって、これは…」


「親父にさ、今度は逃がすなよ。って言われた。」


「社長が?」


「大体さ、あんたがうちの会社に入社した時点で捕獲は完了してた訳だし?」


「はっ?」


「うちの親父のお気に入りだったんだよ、あんた。知らなかった?」

「一年前の事があったからさ、今はクールダウンが必要だろうって言われてたし。勝機は有るんだろうな?敗けは許さんぞっ!だってさ。」


「……敗け…って。」


「全く、勝手にも程があるだろって話し。グズグズしていた俺に痺れを切らして、煽るつもりだったらしいけど、人間関係込み入り過ぎ。あんな女使って煽るってどうなの?あんなめにあったし。あの時はさすがにキレたもん。」


「……キレたの?」


「まぁね。ロクでも無い女連れて来たあげく、二人して襲われるって、どういう事なの?ってね。」


「あぁー、そうだったね。」

「あんた、人が良すぎ。」


「だって。」


「だってじゃ無いからね。」

「…………はい。」


「しかも、しかもだよ。あの人さ、あんたに謝った時にますます気に入っちゃって、自分の秘書にしちゃうしさっ!お陰でこっちは、遠距離じゃん。」


「遠距離って……」


「スレ違いばっかでさ、俺が居てもあんたは居ない。あんたが居ても俺は居ない。花沢の邸に戻っても、牧野の話しばっかりだし。」

「あはは。」


「笑い事じゃ無いよ?だから、何時までも抱え込んで無いで返してって、言ったんだ。愛人に間違われる!って。」


「ぷっ。」


「そしたら、敗けるな。だって。だから、これは、親父。」


「そうなんだ。」


「俺の選んだ女性は、逃げ足が速いからね。」


「ひどっ!逃げないわよっ!」


「まぁ、逃がさないけどね。」


花沢 類は、少しだけはにかんだ顔で、昨日填めてくれた指環を綺麗な指で確認する様に触りながら、


「牧野、よろしくね。」


っ!!


「また、泣く。」


昨日から、ユルユルになってしまった涙腺に蓋をする事が出来ずにメソメソするあたしに肩を貸してくれて、コットンシャツの袖口で涙を拭いてくれる。


「泣かせるのも、泣き止むまで待つのも俺だけでしょ?……嬉しいけどね。」


「…もうっ!…」



花沢 類の肩口をポンと叩いた手を捕られ、


「…キス、していい?」


「…………ん………。」



頬に、目に、優しいキスが降ってくる。
昨日まで積み重ねて来たみたいな、
優しいキスが降ってくる。

その後、鳴り続ける二人の携帯の電源を落として、
笑いあった。





人生には、不思議が沢山詰まっている。
嬉しい事も、楽しい事も、悲しい事も、仕方の無い事も。
もしかしたら、奇跡も。
あなたと二人で、この不思議だらけの人生を歩いて行こう。
きっと、きっと楽しい筈だ。




あたしの幸せはあなたで、あなたの幸せがあたしである事に。
あたしの一番はあなたで、あなたの一番があたしである事に。

沢山のありがとうを……。



fin


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