明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

un secret ~秘密~ 最終話 やこ ver. 後編

司side

牧野から別れを告げられて、物わかりのいいオトコを演じたつもりでいたが、8年離れて暮らし恋い焦がれたオンナをすぐに忘れられるほど俺のハートは強くなかったらしい。

 ―職権乱用であきらが手を出すんじゃないか?

 ―お茶の稽古だとか言って総二郎に押し倒されたらどうしたらいいんだ?

 ―魂の一部とか言って類が牧野の心に入っていくんじゃねぇか?

 ―いや、天下のF4をここまで翻弄したオンナだ。もしかしたらその辺のザコみたいな男にカッさらわれることだってあるな。

あの日から俺は気が休まる暇がない。
密かに西田に調べさせ、美作商事に紛れ込ませているココアとかいうSPに変な虫がつかないように命じてたりする。

チャンスは結構早く来た!

偶然を装って牧野に近づき食事に誘うことに成功した俺は、牧野が好きそうな店を片っ端からリサーチした。
この【miumiu】だってそうだぜ?

やたら長身のスッとぼけた女主人と何がキッカケだったか気が合うんだとかなんだとか言って気に入ったようで、何度も何度も連れてきた。

強引に手に入れようとしたあの頃とは違う。

西田に「坊ちゃん、お相手に合わせることから始めましょう」なんて言われて、この俺様が牧野をあの手この手で誘い出し天然女店主のいる店に通いつめてる。

牧野に気づかれないように、実は会社以外でもSPを付けてたりする。
柔道も剣道も有段者という女SPのオダワラを配置。

ある日、会議中の俺にオダワラから緊急の連絡が入った。

「司様、どうも牧野様のことを怪しい男が尾行しています。牧野様は気づいていないご様子です」
「なんだと?!」

俺は会議をスッぽかし、急いで牧野の元へ向かった。

「どいつだ?」

ワンボックスカーで待機していたオダワラが最新鋭の衛星動画が表示されたモニターを指さす。

「この男です」

なるほど、いかにもなヤツだな。
この野郎!俺の牧野に近づこうなんて100万年早いんだよ。

「あっ!!」

オダワラが大きな声を上げた。
モニターを見ると変態クソ野郎が牧野に接触し、いかがわしいことをしようと…しているように見えた。

「あの野郎、ブッ殺してやる!」
「司様、我々も行きます!」
「お前らは手を出すな!俺が(カッコよく)牧野を助ける!」

あの時の俺は、y●ut●beで全世界発信したいくらいにカッコよかったはずだ。
マッハで牧野に近づき、男の背後に回る。

「この野郎っ!」
「キャーッ」

まずは飛び蹴り。奇麗に決まった。

次にパンチ。鼻の骨はいったな。

それからみぞおちに膝蹴り。

変態は呻いてその場に膝をつき、スローモーションよろしく倒れた。

半殺しにしたあとは警察へ。

「牧野っ!」
「どっ道明寺っ」

ガクガクと震える牧野を抱きしめ、車に乗せた。

たぶん、牧野は例の北川原のザコにヤラれそうになったことがトラウマになってる。
俺は何も言わずに華奢な体を抱きしめ、震える牧野をメイプルのスイートに連れて行った。

前後の話はプライバシーに関わるから省略するが、成り行きで牧野を抱いてしまった。
もちろんお互い初めて。

お初を勝手に省略するなという声が聞こえてくるが、そこは俺様特権でスルーだ。

そりゃもう無我夢中で、よく覚えてない。
だがすげぇ幸せだったのは鮮明に覚えてる。

ところが付き合ってもいない男女が寝たことをえらく気にした牧野がグダグダ言い出した。
いいじゃねぇかよ、心の向くまま生きていけばよ。

別にセフレとかそういうんじゃねぇんだし。
類達だってそんなに心の狭い男じゃないぜ?

この押し問答が約半年。
その間俺は仕事も中途半端。

愛し合っているのに、抱き合っているのに付き合っていないという微妙な関係が続く。

キッカケはあきらと総二郎にそれぞれオンナができたと聞いたときだったのかもしれない。

あきらにはアオイとかいう人妻の彼女ができ(今は違うみたいだが)
総二郎は(そのときは)G美とかいう女と遊ぶようになった。

俺はこれに便乗して類にみか子という女を紹介した、いやほとんど押し付けた。
みか子に興味を示さない類に、さらにリオという女を押し付けた。

それぞれが新たな一歩を踏み出したと感じた牧野がついに首を縦に振った!

それからというのも俺は「我慢」とか「忍耐」という言葉を忘れてしまったかのように牧野を愛し、離せなくなった。

ベッドに入れば朝までバカみたいに襲いかかり、次の日お互いに足腰立たなくなるまで愛し合う。

もうサルだな、サル。

そして現在に至るわけだ。

「おい司、お前もうまくやったよな」
「俺もそう思うわ。結局お前の思う通りになったじゃねえか」
「…牧野、今からでも俺んとこおいで」

ふっ、お前ら。何とでも言え。
牧野は俺を選んだんだ。

「みんな…本当にごめんなさい…なんか成り行きでこうなっちゃって」

ほらみろ、牧野だってこう言ってるだろ?

「アタシ、やっぱりこの人を見捨てられないみたい。介護だと思って一緒にいるつもり」

ん?

なんだと?介護だって?
まあいい。とにかく一生俺の傍にいるってことだ。

「まあそういうことだ。お前ら諦めるんだな」


**


西田side

―数日後―

「皆様、このたびはご苦労様でした」

【miumiu】に集まる女性たち数名。

「皆様のおかげで、我が道明寺財閥は安泰です。お約束の報酬になります」

「明日香」「空子」「ひま子」「ココア」「オダワラ」「アオイ」「G美」「みか子」「リオ」そして【miumiu】の女主人に分厚い茶封筒を手渡した。

「今後一切の接触は避けていただきます」

女たちは封筒を受け取ると、それぞれ黙って去って行く。
その姿を見ながら道明寺司の秘書、西田は思う。

司様に暴行された入院中のオトコ「星野」の見舞いにも行かねばならない。

ちょっと突き飛ばすくらいだと依頼したが、司様が暴走し病院送りにしてしまったのは誤算だった。

牧野様に別れを告げられてからの司様は抜け殻のよう。
重要な会議では上の空、あり得ないミスを連発するなど会社の存続に関わる事態に陥りかねなくなってきた。

こうなったら私が何とかしなければ。

美作様と西門様にそれぞれ好みの女性を向かわせ、それとなく司様が花沢様に女性を紹介するように仕向けた。

さらに牧野様の好みそうなお店に誘うように司様を誘導し、私の雇った(最強の)SPを牧野様専属として配置。ストーカーを装う男を差し向け司様にその場を目撃させる。

当然司様は激怒し、牧野様救出に向かうと見込んで…。

フフッ

右の口角を上げ不敵な笑いを浮かべる。

我が道明寺財閥が未来永劫繁栄するためには、司様の頑張りが必要なことは言うまでもない。

しかし当のご本人がアレでは…。

司様のご学友のアレコレを利用し、さらに牧野様には申し訳ないが司様の餌になっていただくより仕方ない。


**


司side

あいつら俺と牧野のラブラブっぷりを見て諦めたようだな。

特に類だ。

あの野郎、目ざとくキスマークまで見つけやがって。

フン、嫉妬か?
大いに嫉妬してくれ。

牧野に別れを告げられたとき、お前が付けたキスマークを見てどれだけ怒り狂うのを我慢したことか!

あれは拷問だった。

そういや牧野の奴、介護がどうのこうのとか言ってやがったな?
認知になったり牧野に下の世話をさせるつもりはねぇけど、俺の介護をする覚悟をしたってことは一生一緒にいるってことだよな?



…やべぇ、なんか無性に牧野が抱きたくなってきたぜ。

さっきアパートまで送っていったばかりだってのに、もう会いたくて仕方ない。

「おい、出かけるぞ」

インターフォンで使用人にそう告げる。

『坊ちゃん、このような時間にどちらへ?』

こんな時間にどこへ行くかだって?
決まってんだろ、牧野を抱きに行くんだ…とは言えねぇな。

「お…おう、ちょっとコンビニまでな」
『はぁ、坊ちゃんがこのようなお時間にコンビニ…ですか?』

詮索すんなよ、お、俺様のプ、プライベントウ(※プライベート)を。


**


西田side

「司様、このようなお時間にお出掛けでございますか?」
「おう西田。お前も夜遅くまでご苦労だな。ちょっとコンビニまで行ってくる」

「コンビニ…でございますか?」
「お…おう。なんだか新しい介護用品がそこのコンビニで売ってるっつーからよ、俺様自ら足を運んでどんなもんか見てこようと思ってよ。新しく参入するビジネスの参考に」

…怪しい。

……実に怪しい。

深夜12時をとっくに過ぎている。
こんな時間にあの無駄に大きいリムジンに乗ってコンビニに行く財閥の御曹司がどこにいる?

そもそもコンビニにどんな介護用品が売っていると言うのだ。

ほほう、さては牧野様のところだな?

牧野様と相思相愛になられてからの司様は、思った以上にいいお仕事をされる。
ならば牧野様に頑張っていただけば、我が道明寺財閥は安泰だ。

「すぐに使えるタブレットを持ってきてください」

近くにいた使用人が持ってきたタブレットですぐさま検索。

検索…

検索……

「遅い時間に申し訳ございません。10倍の金額をお支払いいたしますので、そちらの商品を今すぐ指定の場所へ届けていただきたい」

司様。まだまだこれからでございますよ。

フフフ…。


**


司side

牧野のアパートに辿り着いたと同時に、俺のスイッチはONのまま切れることがない。

「もうホントに勘弁して」と懇願する牧野をガン無視し6ラウンド目に突入しようかというところだった。

「なんだよ、お前。これぐらいでダウンするとか年とったな」
「アンタがいい年しておかしいんでしょっ!?この変態っ!」

しょうがねぇな、少し休憩するか、とゼイゼイいってる牧野の肩に腕を回す。

くそっ、何度抱いても抱きたりねぇ…。
いっそ突っ込んだまま仕事したいくらいだ。

なんて言ったら半殺しに遭うな。

やれるもんならやってみろという外野の声は無視だ。

相当疲れたのか(正確には失神しかけている)牧野は俺の腕の中でウトウトし始めた。

「今のうちに休んでおけよ。まだまだこんなもんじゃ終わらないぞ」

ピンポーン♪

誰だこんな時間に!?
夢の世界に入りかけていた牧野もビクッと飛び起きた。

「だ・・誰…?こ、こんな時間に」
「俺のほうが聞きてぇよ」

「み…見てきてよ道明寺…」
「ほっとけよ、それより…」

「イヤッ、見てきてくれなきゃ別れてやるっ!」

ドカンっ

牧野の部屋のシングルベッドから蹴落とされる俺。

「ってぇなテメ、クソ狭いベッドなんか捨てちまえよ。つーか俺んとこ早く来いよ」
「バカっ!そんなこと今はどうでもいいから、外見てきてよ!」

ちっ、めんどくせぇな。
なんで俺が見てこなきゃなんねぇんだよ。

どう脱いだかもわからないほど脱ぎ散らかした下着や上着を適当に集め、とりあえず羽織って玄関へ。

「誰だ?こんな時間に」
『夜分に大変申し訳ありません。大至急お届けするように言われまして…』

宅配ってこんな非常識な時間帯にも来るもんなのか?

開けてみて変な奴ならブン殴っときゃいいか?

ドアを開けるとひ弱そうな男がひとり大きな段ボール箱を抱え困惑の表情で立っていた。
俺はそれを受け取るとサインをしてドアを閉めた。

耳を当ててみるが時限爆弾の類じゃなさそうだし、持った感じもそれほど重くはない。

差出人をみると【道明寺・西田】とある。

西田が牧野に何を送ってきた?
時間帯から考えても西田が無理を言って送ってきたことは間違いなさそうだ。

「オイ、西田からお前に荷物だ」
「え?西田さんって、アンタの秘書の?」

そうだと頷くと着替えを済ませた牧野に箱を渡した。

「見てみろよ、俺はシャワー浴びてくる」


**


つくしside

西田さんがこんな時間に急いで送ってくるってことは重要な要件よね?
でもあたし宛に送ってくるなんて…どういうこと?

引き出しからカッターナイフを取り出し箱を開けていく。

「なにコレ…?」

イスのように見えるが、なんだかゴールドで派手だし…。

プラスチックでできたそれは、どう考えても座り心地がよさそうに見えない。

「あ、メモ」

茶色の封筒に付箋が貼られ、いかにも神経質そうな字がびっしりと並んでいる。
封筒には『取扱説明書』と書かれている。

「イスに取扱説明書?」

なんだか真面目すぎる西田さんのメモにクスリと笑い封筒を開け中身を見る。
が、それを見た瞬間、腰を抜かしてしまった!

「なななな…なにこれぇ!!!」

「どうした!?牧野っ!」

頭を洗っていたのか、シャンプーの泡をつけたまま司が、あたしの悲鳴に驚いてバスルームから出てきた。

「な…なんでも…ないっ」
「なんでもないわけねぇだろ?さっきの荷物か?なんだそれ?」

腰を抜かして座り込んで力が入らない。するとかろうじて指に挟んでいる状態の説明書を司に奪われた。

「ダッダメ!読んじゃっ!!!」

無駄だった。

『取扱説明書』と付箋のメモを読んだ司はニヤリと笑ってこちらを見る。

「西田の好意、受けとろうぜ牧野。さあ来いよ」
「い、いっ、イヤっ!!」

必死の抵抗もむなしく、バスルームに連行された。

西田さんのバカっ!もう信じらんないっ!!

こうしてあたしたちふたりの熱すぎる夜は、西田さんの策略によってさらにヒートアップするのである。



 牧野様

司様がこちらの『介護用品』をお探しに、コンビニエンスストアへ行くと告げて外出なさいました。
お探しのものを一足先に手配させていただきましたので、司様と相談の上、当社で販売なさるかどうかご検討ください。
この封筒に取り扱い説明書が入っております。よくお読みになってからご使用ください。  西田



ご丁寧に記事まで添付されていた。


 スケベ椅子

いわゆるソープランドで使用されているサービス向上のアイテム。
元々は男性の股間へのサービスのために開発されたもの。
近年この『スケベ椅子』が入浴時の必需品として、多くの介護施設で導入されている。





fin




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