un secret ~秘密~ 最終話 りおりおver.後編
10:00、、
09:59、、
09:58、、、
北 「はい、、スタートが切って落とされたわ」
その言葉が意味する者は、幾ら鈍感と言われるつくしにも直ぐに分かった
なぜなら、目の前の数字が、カウントダウンを始めているのだから、、
09:49、、
09:48、、
09:47、、、
北 「このままドカ~ンでも良かったんだけど、それだとスリルが無いでしょ?
だから、、ちょっとチャンスを上げるわ」
つ 「チャンス?」
北 「ここに、5本のコードがあるんだけど、見えるかしら?
これを2分以内に、一本ずつ切らないとアウト
もちろん、本物のコードを切っても即アウトよ
あっ、、動かさないでね、、ちょっとした振動でもアウトだから」
その言葉に、つくしの顔が引き攣る
北 「クックックッ、、その顔、、その顔が見たかったのよ」
つ 「これ、、本物?」
北 「あら、、信じないの?それならそれでも良いんだけど、、
早く一本切らないと、タイムリミットなんじゃない?
じゃ、、残り少ない人生を、楽しんでちょうだい」
そう告げた後、つくしの前にハサミを置く
つ 「ちょっと、、」
つくしの呼びかけにも、立ち止まる事無く、女はドアへ向かう
北 「私も、、類様とキスがしてみたかった、
それが偽りのキスだとしても、、、ね」
振り向く事なく、ポツリとそう告げた後、ドアを開け出て行った
そのすぐ後、ドア付近と窓からオレンジ色の炎が見え、煙が室内に入り込んできた
それを見た途端、、、つくしは恐怖にさいなまれる
もう二度と、、会えなくなるかもしれない、、
家族はもちろんの事、、あの人にも、、
あの人の笑顔、言葉、にどれだけ癒され、どれだけ心満たされたか、、もう一度会いたい
もう一度、、もう一度、、会いたい
つ 「る、、い、、、るい、、、類、、、類!!」
と、目の前の時限爆弾を見ながら、その名前が自然に口をついて出ていた
***
その頃、、
F4は、つくしの会社の前に来ていた
その入り口は、既に火が燃え広がり、逃げ遅れた人達が窓を開け、救助を待っている
4人の耳には、イヤホンが付けられ、つくしの声を拾っている
総 「司、、お前は、その怪我じゃ足手まといにしかならねぇ。
悪りぃが、ここの消化とマットの手配と、社員の救出に当たってくれ。
牧野は、5階だし、万が一、落される可能性も考えられるしよ」
それだけ告げると、類とあきらの元へ向かった
その後ろ姿を見ながら、、
司 「頼むから、、、助けてくれよ。 そして、、誰も死ぬなよ」
と、携帯を取り出し指示を出しながらも、心の中で祈っていた
二人は、社屋の中に入れそうな場所を探していた
そして、比較的火の手が回っていない場所の窓を叩き割った
あ 「ここからなら、何とかは入れるんじゃね?」
そう呟いている間にも、類は窓枠に足をのせ、中に入っていく
あ 「おいおい、、水を被るとかだな、、」
類 「そんな時間は無いだろ?
それより牧野に、爆弾が取り付けられた。
早くしないと、この建物ごと吹っ飛ぶよ」
あ 「ああ、、そうだな」
類の後を追うように、あきら、、そして総二郎も、その窓から中に入った
一階は、既に火の手が回り、煙が充満し始めている
その中を、低姿勢で階段へ向かい、ゆっくりと登っていく
すると、3階辺りで犯人である北川原が、不気味な笑みで降りてきた
煙が階段を登っていると言うのに、口元を塞ぐ事すらしていない
そして類の姿を見つけると、その場で立ち止まった
北 「類様、、こういう状況でも、あの女を助けに行かれるのですか?」
類 「当り前、、俺の愛する女だからね」
北 「愛する? あの女は、お友達と言ってらしたけど?」
類 「それでも、、俺が愛しているんだ。 おかしい位にね」
その類のイヤホンから、つくしの呟きが聞こえてくる
≪ る、、い、、るい、、、類、、、類!! ≫
その呟きに、類はフッと笑みを漏らす
類 「どうやら、、片想いから卒業できたらしい。
あきら、総二郎、、悪いけどこの女、警察に突き出して!
あんたも、もう抵抗する気は無いんだろ?」
北 「ええ、、私はただ、復讐がしたかっただけですし、、、
それももう完了しましたから」
そう呟くと、再び不気味な笑みを漏らす
総 「類! お前は早く行け!」
あ 「何が何でも、助けろよ!」
二人も、つくしの呟きが聞こえている
この極限状態の中で、無意識に口から出た名前こそが、
つくしの選んだ男だと分かったのだろう
類 「ん、、、行って来る」
総 「死ぬなよ」
類 「出来ればね、、お前らも早く、このビルから脱出して!
あいつ、、もう何本かコードを切っていると思うし、
いつ爆発するか分らないから」
それだけ告げると、上へ向かって階段を駆け上がった
***
つくしは、目の前の時限爆弾を見る
そこの5本のコードは、赤、青、緑、黄、白だ
昨日皆で飲んだ、カクテルと同じ色と言う事にも、運命を感じてしまう
もう、、心は決まった
そろそろ、一本切らないと、タイムリミットが近づいている
08:21、、
08:20、、
08:19、、、
つくしは、ハサミを手に取り、一度目を瞑る
つ 「これは、私があやふやな行動をとっていたから、起きた出来事、、
だから、、そんな自分に、サヨナラする」
それはまるで断末魔の様に、F4の耳には届く
つくしは、目を開けると、白のコードをジョキッと切った
爆発は免れたものの、緊張と恐怖から、ドキドキと心臓が早鐘を打つ
残り4本、、時計は、更にカウントを続けている
07:45、、
07:44、、
07:43、、
煙もだんだんと、室内の天井を覆ってきた
今では、入り口のドアも炎を上げ燃え盛っている
06:46、、
06:45、、
06:44、、、
つ 「道明寺、、ごめんね、待てなくて。 ゴホッ、、
この8年の間に、あんたと過ごした日々も、、、
そして心の中にあった熱い想いも、、、
全て思い出として、しっかり刻まれたみたい。 ゴホッ
だから、、ごめんね、、ありがとう」
そう呟いた後、、赤のコードを切った
***
その頃、、類は5階に到着した
すると、一か所だけ火が上がっている場所がある
そこへ近づくと、ドア付近が、激しく燃えている
類 「牧野! 牧野! そこに居る?」
すると中から、、
つ 「る、、い? ゴホッゴホッ、、類?」
類 「そう! 俺! 今すぐ、助けるから」
つ 「ダメ! もうすぐまた、一本コードを切るから、、ゴホッ、、
爆発するかもしれない! ゴホッ、、早く逃げて!」
類 「死ぬ時は一緒だろ! でも諦めるな!」
類の呼びかけに、つくしの返事は無い
ただ、再びイヤホンから、つくしの呟きが聞こえてきた
***
05:33、、
05:32、、
05:31、、、
つ 「美作さん、、いろいろありがとね。
美作さんといると、安心して丸ごと預けられる。
ゴホッ、、どんなドジを踏んでも、笑って許してくれて、
笑顔でその後始末をしてくれて
ゴホッ、、私にとって、大切なお兄ちゃんって感じ? ありがとう」
そこまで呟くと、黄のコードを切った
と同時に、廊下の窓ガラスが割られ、類の顔が見え隠れする
類 「今から、そっちに行くから」
と叫んだかと思うと、炎を飛び越え、窓枠に足をかけ中に入って来た
そして、直ぐにつくしの元へ駆け寄る
そこには、左の二の腕が真っ赤に染まり、今もポタポタと血が流れ落ちている
そして、左手首と爆弾が、手錠で繋がれている
類 「あの女、、どこまで牧野を傷付けるんだよ」
と、怒りに満ちた声で、叫ぶ
つ 「ゴホッこんな状態だから、、ゴホッ、、類だけでも逃げて?」
類 「無理、、あんた一人を、置いて逃げるなんてさ」
そう言いながら、手錠や爆弾、それが入れられていた箱などをチェックしている
その間も、時計はカウンタダウンを続けている
03:56、、
03:55、、
03:54、、
つ 「西門さん、、ほんとにありがとう。
西門さんの冗談交じりの励ましに、何度心が軽くなり、、
ゴホッ、、救われた事か分らない。
それに、キラースマイルに、どれだけドキドキした事か、、
でも、、ごめん、、上手く言えないんだけど、、ゴホッ、、ごめん」
ここで、つくしは、類が入ってきた窓を見る
そこは、既に火の海で、とても出られそうにない
つ 「類、、ごめんね」
その呟きに、類がつくしの元へ戻ってくる
つ 「そろそろ切る時間だから」
類 「そっか、、好きな方を切ると良い。 確率は2分の1だね」
つ 「うん、、でもその前に、ハッキリ言っとく。
私、、類が好き。 大好き」
類 「ん、、ありがと、、俺を選んでくれて」
つ 「皆から告白された時、『もう死んでも良いかも』って言ったけど、
やっぱり死にたくない」
類 「大丈夫。
まだ死ぬって決まった訳じゃないし、これからやっと始まるんだからさ」
つ 「うん、、そうだね、、」
類は、つくしの言葉に、ニッコリと微笑み、チュッとキスをする
そして、つくしの後ろから、ギュッと抱きしめ、耳元に囁く
類 「あんたを、一人にはさせないから。 好きな方を切りな」
つ 「うん、、」
目の前のコードは、緑と青が残っている
つくしは迷わず緑のコードにハサミを宛てがい、ギュッと目を瞑って、手に力を入れた
ジョキン、、、
つ 「生、、、き、、てる?」
ゆっくり目を掛けると、爆弾が目の前にある
つまり爆発は回避できたのだが、、今もカウントが続いている
01:50、、
01:49、、
01:48、、、
つ 「何で? 何で止まらないの?」
類 「そっか、、そう言う事か。 元々、止めるつもりは無かったんだよ。
このコードも、ただのフェイク、、こうする事で恐怖を煽ったんだ。
だからあの時、、復讐は完了したって言ったんだ」
つ 「嘘でしょ? じゃ、初めから爆発させるつもりだったって事?
ゴホッ、、類だけでも逃げて! お願いだから、、逃げてよ、、」
類 「黙ってて! 俺は、あんたと一緒に居るって言っただろ!」
類は、必死に考える
牧野を殺すつもりだったのは分かる。 そして、俺がここに来る事も分かっていた。
じゃあ、俺も一緒に殺す気だったのか? それとも、、試すつもりとか?
その時、類の脳裏に、あの女が最後に牧野に呟いたフレーズが飛び込んだ
≪私も、類様とキスしてみたかった。 それが偽りのキスだとしても、、ね≫
類は、すぐさま時限爆弾に貼られている、雑誌の切り抜きに目をやる
そして、自分の部分を慎重に剥がす
するとその裏に、鍵が付けられていた
それを手に取り、手錠に挿しこみ回す
ガチャッ、、
手錠が外れた事に、二人は思わず顔を見合わせる
それでも、カウンターは既に15秒を切っている
00:14、、
00:13、、
類は、外窓を開けようと、サッシに手をかけたが、かなり熱く開けられない
つ 「類! どいて!」
そこには、椅子を持ったつくしの姿
類が避けると、すぐさまその椅子を振り下ろした
ガシャ~ン
ガシャ~ン
00:08、、
00:07、、
類 「すごっ、、でもここ5階だよ?
ちなみに、バンジージャンプってやったことある?」
つ 「ある訳ないでしょ!
でも、類となら何だってやれる気がする」
その頼もしい発言に、類はクスッと笑ってしまう
類 「じゃ、、行くよ、、怖かったら、目を瞑りな」
つ 「分かった、、天国へのカウントダウンだね」
窓の下に椅子を置き、そこに上り、窓枠に足を掛ける
00:04、、
00:03、、
類 「愛してる、、牧野」
つ 「私も、、類を愛してる」
それを合図に、二人は外へ向かってダイブした
00:01、、
00:00、、
ドーン、ドカーン
***
バウン、、、
と、身体が大きく数回バウンドする
類 「牧野! 大丈夫?」
類は、すぐさまつくしの元へ這うようにして近付く
つ 「ここ、、どこ? 天国?」
類 「ん~、、まだ現世」
つ 「生きてるって事?」
類 「ん、、そう、、無事、生還?」
類は、つくしをゆっくり抱き起し、座らせる
二人ともススだらけで、つくしに至っては、左手が血だらけだ
それでも、生きている事に安堵し、自然に、しっかりと抱きしめあう
類 「良かった、、、ほんとに、、」
つ 「うん、、良かった、、生きてる」
類 「ん、、でも確かめさせて?」
つ 「ん? 何を?」
つくしが上を向くと、類の顔が近付き、、そして、、ゆっくりと唇が重なった
***
司 「なあ、、あいつら、テレビで生中継されてるって、知ってっか?」
司は、報道陣を見る
そこには、テレビカメラ全てが二人を捉え、アナウンサーが興奮気味で実況中継をしている
あ 「類は、知ってんだろうなぁ、、何気に、テレビカメラに良く映る角度じゃね?」
総 「でも、、牧野は知らねぇんだろうなぁ。 あいつ、まだ夢の中の様じゃね?
きっと現実に戻ったら、大声で叫ぶぜ?」
司 「だな、、それに救急車も来ているし、俺らはもう帰ろうぜ?」
あ 「そうだな、、ここにいると、俺らもあいつらの引き立て役になり兼ねねぇし」
三人は、しっかりと頷き、踵を返しその場を後にする
その30秒後、、、
つくしの雄叫びが、響き渡った事は言うまでもない
fin

09:59、、
09:58、、、
北 「はい、、スタートが切って落とされたわ」
その言葉が意味する者は、幾ら鈍感と言われるつくしにも直ぐに分かった
なぜなら、目の前の数字が、カウントダウンを始めているのだから、、
09:49、、
09:48、、
09:47、、、
北 「このままドカ~ンでも良かったんだけど、それだとスリルが無いでしょ?
だから、、ちょっとチャンスを上げるわ」
つ 「チャンス?」
北 「ここに、5本のコードがあるんだけど、見えるかしら?
これを2分以内に、一本ずつ切らないとアウト
もちろん、本物のコードを切っても即アウトよ
あっ、、動かさないでね、、ちょっとした振動でもアウトだから」
その言葉に、つくしの顔が引き攣る
北 「クックックッ、、その顔、、その顔が見たかったのよ」
つ 「これ、、本物?」
北 「あら、、信じないの?それならそれでも良いんだけど、、
早く一本切らないと、タイムリミットなんじゃない?
じゃ、、残り少ない人生を、楽しんでちょうだい」
そう告げた後、つくしの前にハサミを置く
つ 「ちょっと、、」
つくしの呼びかけにも、立ち止まる事無く、女はドアへ向かう
北 「私も、、類様とキスがしてみたかった、
それが偽りのキスだとしても、、、ね」
振り向く事なく、ポツリとそう告げた後、ドアを開け出て行った
そのすぐ後、ドア付近と窓からオレンジ色の炎が見え、煙が室内に入り込んできた
それを見た途端、、、つくしは恐怖にさいなまれる
もう二度と、、会えなくなるかもしれない、、
家族はもちろんの事、、あの人にも、、
あの人の笑顔、言葉、にどれだけ癒され、どれだけ心満たされたか、、もう一度会いたい
もう一度、、もう一度、、会いたい
つ 「る、、い、、、るい、、、類、、、類!!」
と、目の前の時限爆弾を見ながら、その名前が自然に口をついて出ていた
***
その頃、、
F4は、つくしの会社の前に来ていた
その入り口は、既に火が燃え広がり、逃げ遅れた人達が窓を開け、救助を待っている
4人の耳には、イヤホンが付けられ、つくしの声を拾っている
総 「司、、お前は、その怪我じゃ足手まといにしかならねぇ。
悪りぃが、ここの消化とマットの手配と、社員の救出に当たってくれ。
牧野は、5階だし、万が一、落される可能性も考えられるしよ」
それだけ告げると、類とあきらの元へ向かった
その後ろ姿を見ながら、、
司 「頼むから、、、助けてくれよ。 そして、、誰も死ぬなよ」
と、携帯を取り出し指示を出しながらも、心の中で祈っていた
二人は、社屋の中に入れそうな場所を探していた
そして、比較的火の手が回っていない場所の窓を叩き割った
あ 「ここからなら、何とかは入れるんじゃね?」
そう呟いている間にも、類は窓枠に足をのせ、中に入っていく
あ 「おいおい、、水を被るとかだな、、」
類 「そんな時間は無いだろ?
それより牧野に、爆弾が取り付けられた。
早くしないと、この建物ごと吹っ飛ぶよ」
あ 「ああ、、そうだな」
類の後を追うように、あきら、、そして総二郎も、その窓から中に入った
一階は、既に火の手が回り、煙が充満し始めている
その中を、低姿勢で階段へ向かい、ゆっくりと登っていく
すると、3階辺りで犯人である北川原が、不気味な笑みで降りてきた
煙が階段を登っていると言うのに、口元を塞ぐ事すらしていない
そして類の姿を見つけると、その場で立ち止まった
北 「類様、、こういう状況でも、あの女を助けに行かれるのですか?」
類 「当り前、、俺の愛する女だからね」
北 「愛する? あの女は、お友達と言ってらしたけど?」
類 「それでも、、俺が愛しているんだ。 おかしい位にね」
その類のイヤホンから、つくしの呟きが聞こえてくる
≪ る、、い、、るい、、、類、、、類!! ≫
その呟きに、類はフッと笑みを漏らす
類 「どうやら、、片想いから卒業できたらしい。
あきら、総二郎、、悪いけどこの女、警察に突き出して!
あんたも、もう抵抗する気は無いんだろ?」
北 「ええ、、私はただ、復讐がしたかっただけですし、、、
それももう完了しましたから」
そう呟くと、再び不気味な笑みを漏らす
総 「類! お前は早く行け!」
あ 「何が何でも、助けろよ!」
二人も、つくしの呟きが聞こえている
この極限状態の中で、無意識に口から出た名前こそが、
つくしの選んだ男だと分かったのだろう
類 「ん、、、行って来る」
総 「死ぬなよ」
類 「出来ればね、、お前らも早く、このビルから脱出して!
あいつ、、もう何本かコードを切っていると思うし、
いつ爆発するか分らないから」
それだけ告げると、上へ向かって階段を駆け上がった
***
つくしは、目の前の時限爆弾を見る
そこの5本のコードは、赤、青、緑、黄、白だ
昨日皆で飲んだ、カクテルと同じ色と言う事にも、運命を感じてしまう
もう、、心は決まった
そろそろ、一本切らないと、タイムリミットが近づいている
08:21、、
08:20、、
08:19、、、
つくしは、ハサミを手に取り、一度目を瞑る
つ 「これは、私があやふやな行動をとっていたから、起きた出来事、、
だから、、そんな自分に、サヨナラする」
それはまるで断末魔の様に、F4の耳には届く
つくしは、目を開けると、白のコードをジョキッと切った
爆発は免れたものの、緊張と恐怖から、ドキドキと心臓が早鐘を打つ
残り4本、、時計は、更にカウントを続けている
07:45、、
07:44、、
07:43、、
煙もだんだんと、室内の天井を覆ってきた
今では、入り口のドアも炎を上げ燃え盛っている
06:46、、
06:45、、
06:44、、、
つ 「道明寺、、ごめんね、待てなくて。 ゴホッ、、
この8年の間に、あんたと過ごした日々も、、、
そして心の中にあった熱い想いも、、、
全て思い出として、しっかり刻まれたみたい。 ゴホッ
だから、、ごめんね、、ありがとう」
そう呟いた後、、赤のコードを切った
***
その頃、、類は5階に到着した
すると、一か所だけ火が上がっている場所がある
そこへ近づくと、ドア付近が、激しく燃えている
類 「牧野! 牧野! そこに居る?」
すると中から、、
つ 「る、、い? ゴホッゴホッ、、類?」
類 「そう! 俺! 今すぐ、助けるから」
つ 「ダメ! もうすぐまた、一本コードを切るから、、ゴホッ、、
爆発するかもしれない! ゴホッ、、早く逃げて!」
類 「死ぬ時は一緒だろ! でも諦めるな!」
類の呼びかけに、つくしの返事は無い
ただ、再びイヤホンから、つくしの呟きが聞こえてきた
***
05:33、、
05:32、、
05:31、、、
つ 「美作さん、、いろいろありがとね。
美作さんといると、安心して丸ごと預けられる。
ゴホッ、、どんなドジを踏んでも、笑って許してくれて、
笑顔でその後始末をしてくれて
ゴホッ、、私にとって、大切なお兄ちゃんって感じ? ありがとう」
そこまで呟くと、黄のコードを切った
と同時に、廊下の窓ガラスが割られ、類の顔が見え隠れする
類 「今から、そっちに行くから」
と叫んだかと思うと、炎を飛び越え、窓枠に足をかけ中に入って来た
そして、直ぐにつくしの元へ駆け寄る
そこには、左の二の腕が真っ赤に染まり、今もポタポタと血が流れ落ちている
そして、左手首と爆弾が、手錠で繋がれている
類 「あの女、、どこまで牧野を傷付けるんだよ」
と、怒りに満ちた声で、叫ぶ
つ 「ゴホッこんな状態だから、、ゴホッ、、類だけでも逃げて?」
類 「無理、、あんた一人を、置いて逃げるなんてさ」
そう言いながら、手錠や爆弾、それが入れられていた箱などをチェックしている
その間も、時計はカウンタダウンを続けている
03:56、、
03:55、、
03:54、、
つ 「西門さん、、ほんとにありがとう。
西門さんの冗談交じりの励ましに、何度心が軽くなり、、
ゴホッ、、救われた事か分らない。
それに、キラースマイルに、どれだけドキドキした事か、、
でも、、ごめん、、上手く言えないんだけど、、ゴホッ、、ごめん」
ここで、つくしは、類が入ってきた窓を見る
そこは、既に火の海で、とても出られそうにない
つ 「類、、ごめんね」
その呟きに、類がつくしの元へ戻ってくる
つ 「そろそろ切る時間だから」
類 「そっか、、好きな方を切ると良い。 確率は2分の1だね」
つ 「うん、、でもその前に、ハッキリ言っとく。
私、、類が好き。 大好き」
類 「ん、、ありがと、、俺を選んでくれて」
つ 「皆から告白された時、『もう死んでも良いかも』って言ったけど、
やっぱり死にたくない」
類 「大丈夫。
まだ死ぬって決まった訳じゃないし、これからやっと始まるんだからさ」
つ 「うん、、そうだね、、」
類は、つくしの言葉に、ニッコリと微笑み、チュッとキスをする
そして、つくしの後ろから、ギュッと抱きしめ、耳元に囁く
類 「あんたを、一人にはさせないから。 好きな方を切りな」
つ 「うん、、」
目の前のコードは、緑と青が残っている
つくしは迷わず緑のコードにハサミを宛てがい、ギュッと目を瞑って、手に力を入れた
ジョキン、、、
つ 「生、、、き、、てる?」
ゆっくり目を掛けると、爆弾が目の前にある
つまり爆発は回避できたのだが、、今もカウントが続いている
01:50、、
01:49、、
01:48、、、
つ 「何で? 何で止まらないの?」
類 「そっか、、そう言う事か。 元々、止めるつもりは無かったんだよ。
このコードも、ただのフェイク、、こうする事で恐怖を煽ったんだ。
だからあの時、、復讐は完了したって言ったんだ」
つ 「嘘でしょ? じゃ、初めから爆発させるつもりだったって事?
ゴホッ、、類だけでも逃げて! お願いだから、、逃げてよ、、」
類 「黙ってて! 俺は、あんたと一緒に居るって言っただろ!」
類は、必死に考える
牧野を殺すつもりだったのは分かる。 そして、俺がここに来る事も分かっていた。
じゃあ、俺も一緒に殺す気だったのか? それとも、、試すつもりとか?
その時、類の脳裏に、あの女が最後に牧野に呟いたフレーズが飛び込んだ
≪私も、類様とキスしてみたかった。 それが偽りのキスだとしても、、ね≫
類は、すぐさま時限爆弾に貼られている、雑誌の切り抜きに目をやる
そして、自分の部分を慎重に剥がす
するとその裏に、鍵が付けられていた
それを手に取り、手錠に挿しこみ回す
ガチャッ、、
手錠が外れた事に、二人は思わず顔を見合わせる
それでも、カウンターは既に15秒を切っている
00:14、、
00:13、、
類は、外窓を開けようと、サッシに手をかけたが、かなり熱く開けられない
つ 「類! どいて!」
そこには、椅子を持ったつくしの姿
類が避けると、すぐさまその椅子を振り下ろした
ガシャ~ン
ガシャ~ン
00:08、、
00:07、、
類 「すごっ、、でもここ5階だよ?
ちなみに、バンジージャンプってやったことある?」
つ 「ある訳ないでしょ!
でも、類となら何だってやれる気がする」
その頼もしい発言に、類はクスッと笑ってしまう
類 「じゃ、、行くよ、、怖かったら、目を瞑りな」
つ 「分かった、、天国へのカウントダウンだね」
窓の下に椅子を置き、そこに上り、窓枠に足を掛ける
00:04、、
00:03、、
類 「愛してる、、牧野」
つ 「私も、、類を愛してる」
それを合図に、二人は外へ向かってダイブした
00:01、、
00:00、、
ドーン、ドカーン
***
バウン、、、
と、身体が大きく数回バウンドする
類 「牧野! 大丈夫?」
類は、すぐさまつくしの元へ這うようにして近付く
つ 「ここ、、どこ? 天国?」
類 「ん~、、まだ現世」
つ 「生きてるって事?」
類 「ん、、そう、、無事、生還?」
類は、つくしをゆっくり抱き起し、座らせる
二人ともススだらけで、つくしに至っては、左手が血だらけだ
それでも、生きている事に安堵し、自然に、しっかりと抱きしめあう
類 「良かった、、、ほんとに、、」
つ 「うん、、良かった、、生きてる」
類 「ん、、でも確かめさせて?」
つ 「ん? 何を?」
つくしが上を向くと、類の顔が近付き、、そして、、ゆっくりと唇が重なった
***
司 「なあ、、あいつら、テレビで生中継されてるって、知ってっか?」
司は、報道陣を見る
そこには、テレビカメラ全てが二人を捉え、アナウンサーが興奮気味で実況中継をしている
あ 「類は、知ってんだろうなぁ、、何気に、テレビカメラに良く映る角度じゃね?」
総 「でも、、牧野は知らねぇんだろうなぁ。 あいつ、まだ夢の中の様じゃね?
きっと現実に戻ったら、大声で叫ぶぜ?」
司 「だな、、それに救急車も来ているし、俺らはもう帰ろうぜ?」
あ 「そうだな、、ここにいると、俺らもあいつらの引き立て役になり兼ねねぇし」
三人は、しっかりと頷き、踵を返しその場を後にする
その30秒後、、、
つくしの雄叫びが、響き渡った事は言うまでもない
fin

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