明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

un secret ~秘密~ 最終話 miumiu ver 後編

あの茶会の後から、西門さんとの連絡が途絶えていた。
普段は西門さんから、お稽古の日程についての連絡や、今度私が行きたいところに連れて行ってくれるための予定についての連絡が来ていたのに・・・。

急遽の出張で、2週間ほど海外に出張に行っていた私は、今度のお稽古についての日程が西門さんと調整できずにいた。

そして2週間の出張を終えて、東京に戻ってきても西門さんから稽古の日についての連絡がこなかった。
おかしいなぁ。今までは頻繁に連絡を返してくれていたのに・・・。

そう思いながらも、出張のお土産をもって、いつもお世話になっている西門の皆さんへ届けに西門邸行く。
門のところで取り次いでもらうと、パタパタとこの家にそぐわない、廊下をかけてくる音がする。
「牧野さん」
そういってかけてきたのは家元夫人の秘書の伊沢さんだった。

「こんにちは。2週間ほど出張に行ってまして、今日もどったのでご挨拶に・・・」
そう話を始めた時に伊沢さんの顔色が悪いことに気付く。
「どうなさったんですか?」
そう聞くと
「牧野さん。すぐに都内の総合病院まで私と一緒にきていただけませんでしょうか?
実は、実は総二郎さんが・・・」
・・・えっ?総合病院??
まさか・・・西門さんに何かあったの?
西門さんから連絡が来ないのは、病気か何かで入院でもしているの???

「牧野様。お気をしっかり持ってお聞きください。あの茶会が大好評だったのはご存知ですよね?」
「はい。あの翌日の新聞記事にも乗りましたから・・・。」
「その日の帰りです。総二郎さんは飲酒運転の対向車に・・・」
そこまで聞いた私はショックで声が出なかった。

西門さんが事故に巻き込まれた?それも飲酒運転のって・・・。

そこまで思っていた時に伊沢さんが、
「総二郎さんが目を覚まされないんです。車の座席と、前のシートの関係で、事故の規模ほど、大きな怪我はされませんでした。
ですが、事故のショックからか、2週間たつのですがいまだに目を覚まさないんです」

えっ・・・?
今、なんて・・・?
西門さんが事故に遭ったって、言った?
嘘でしょう?


そう思いながら、伊沢さんに連れられて病院に行く。
裏から入って伊沢さんが進んでいった先には、家元夫人が座っていた。
「奥様。牧野さまをお連れいたしました。」
伊沢さんがそう伝えると、家元夫人は
「伊沢さん。つくしちゃんを連れてきてくれて、ありがとう」
それだけを言うと伊沢さんは家元夫人に頭を下げてその場を後にする。

気丈にふるまっている家元夫人の表情にも疲れが見えていた。

・・・なんと声をかけたらいいのだろう。
そんな事を考えながら、家元夫人に
「・・・おばさま・・・にし・・・」
西門さんは・・・?って聞こうとしたけど、
私の方を見た時の家元夫人の表情を見たら、
何も言えなかった。

今は何も考えられないだろうし、何も話せないだろう。
こんな状況に頭の整理もつかないのだろうと思える。

どのくらい時間が過ぎたのか、家元夫人が私を見て
「つくしちゃん。総二郎さんが・・・。総二郎さんが・・・。」
それだけ言うのが精一杯なのだろう。
「えぇ、伊沢さんから聞きました。こちらに来るのが遅くなりまして申し訳ありません。」
そういうと家元夫人は弱々しく頭を振る。
「・・・つくしちゃんが、つくしちゃんがきたって知ったら、総二郎さん慌てて目を覚ますかもしれないから
つくしちゃんから総二郎さんに声をかけてあげてほしいの。」

そう言って特別室に入れてくださる。
普通は、家族以外は入れないそうだけれど・・・。
家元夫人の計らいで、入れてもらえることになった。


特別室の中はホテルの部屋の様だった。

その中で、静かに寝息をたてている西門さん。
酸素マスクと、ピッピッという音さえ聞こえなければ、
ホテルの部屋で静かに眠りに落ちているようだった。

西門さんの手をギュッと握って声をかける。
「西門さん。ただいま。出張から帰って来たら、この間二人で行ったプラネタリウムみたいなあのすごい景色をみせてくれるっていってたじゃない。
帰って来たら絶対行くって返事したよね?私。
・・・ねぇ、西門さんそれを楽しみに帰って来たんだから、早く起きてその景色をみせてよ。
西門さんと行くのを楽しみにしてたんだから・・・」
私の目からは涙が零れていた。

ギュッと握りしめた西門さんの手の間に私の涙が零れ落ちていた。


***************************
誰かが泣いている声が聞こえる。

いつもの俺なら素通りするんだが、その鳴き声がどこかで聞いた声に似ていて、
思わず立ち止まる。

「お前。なんで泣いてるんだ?怪我でもしたのか?」
しゃがみ込んでそう尋ねると、
泣いていたその女の子が顔をあげる

・・・この目をどこかで・・・この目にすごくひかれていたことを思い出す。

「大切にしていたネコちゃんが死んじゃったの。可愛くて、ホントに大好きだったの。いつも一緒だったの・・・」
そう言って涙を浮かべている。

その女の子の真っ黒で癖のない髪を梳いて、
「・・・そっか。じゃあお兄ちゃんが、大好きだった猫の代わりにそばにいてやろうか?」
そう尋ねると、俺の手をギュッと握ってくる。
「・・・お兄ちゃん。ホントにずっとそばにいてくれる?」
「あぁ、俺がお前の傍にいてやるよ。」
これは誰かにいったことがある言葉だったのを思いだす。

女の子と同じ目の高さでそう答えると、
嬉しそうににっこり笑って、俺の頬にキスをする

「・・・ありがとう。お兄ちゃん。
でもね、お兄ちゃんはここに長くいちゃだめだよ。お兄ちゃんの大切な人が待ってるよ。
お兄ちゃんにはいつもうまく伝えられないみたいだけど、お兄ちゃんの事が大好きなんだって・・・。
今もお兄ちゃんの傍で、お兄ちゃんの事を思って泣いているよ。早く傍にいってあげて・・・」
そう言って見せてくれた光景は、牧野が目に涙をためながら、俺に何かを一生懸命話していた。

「・・・牧野・・・」
「お兄ちゃん。このお姉ちゃんは素直じゃないけど、お兄ちゃんの事が大好きだよ。」
俺はこのこの小さな女の子がはっきり言い切ったことを不思議に思って
「なんでそんなにこのお姉ちゃんの事に詳しいんだ?」
そう聞いてみると
「だって、わたし・・・・・・と・・・・・・から・・・んだもん」
・・・えっ?
何だって?今なんて???

そう聞こうとしてその女の子に手を伸ばすが、何も掴むことができないまま
意識が飛んで、目の前がの世界が真っ白になった。


「・・・さん?・・・さん?」
あぁ・・・この声は・・・。この声にすごく癒されたのを思いだしていると

手に重さとぬくもりを感じた。
俺の手に何か乗ってるのか?
そう思いながら手を動かすと、その手に温かさを感じる。


「ねぇ・・・ねぇ・・・西門さん??」
牧野の声が聞こえた気がして、目をあけようと瞼を動かす。
そっと目を見開くと、目の前にあの小さな女の子・・・を大きくした、牧野が俺を覗き込んでいた。

「・・・まき・・・の?」
一番初めに発した言葉がそれだった。

「・・・西門さん・・・」
それだけ言うと牧野は、俺に目に涙をためながら笑いかけてくれた。


目を覚ました西門さんは、私がギュッと手を握っているのを知ると、
そっと私の手を握り返してくれた。

私はホッとして西門さんを見ると西門さんは私の顔を覗き込んできた。
さっきまで泣いていたのを見られたくない私は西門さんから顔を逸らす。
西門さんはしたから覗き込んでニッコリ笑うと、
私の手を握ってる方とは反対の手を私に伸ばして、私の頬を伝う涙を掬ってくれる。



「・・・ただいま。牧野」
それだけを言うと牧野は、泣き笑いの顔で俺を見て
「ねぇ。それ私のセリフだよ。2週間出張だったんだから・・・。
・・・ただいま。西門さん」

目を覚ましてから俺は、すぐに医者を呼ばれ、隅から隅まで検査をされる。

そして、特別室に戻って来た時には、家元夫人が俺が目を覚ました連絡を家元にするために部屋を出て行った。
電話から戻ってくると、家元夫人は、家元に俺の事で呼ばれてるので戻らなければならないという。
俺が目を覚ますまでは毎日ココに来ていたと聞いているが・・・目を覚ました途端、慌ただしいなぁと思っていると
「あとの事は申し訳ないのだけれどつくしちゃんにお願いしていいかしら?」
と聞かれた牧野は
「はい。私が無理させないようにしっかりと見てますので、おばさまは安心してお仕事なさってください」
と私が言ったのを聞いて家元夫人は笑顔になると、慌ただしく病室から出て行った。

すぐに結果の分かる検査の結果を報告に来た医者がと看護師が、俺達を見て
「奥様。旦那様の検査の結果をお知らせさせていただきますね。」
などと言ってきた。
俺は牧野が『奥様』と呼ばれたことに、少しくすぐったいような恥ずかしさがあった。
牧野の方は特に、そんなこと言われなれてないから、真っ赤になって俯いていた。

「旦那様はあの事故の時に運が良かったので、怪我といえば左の足を骨折されています。
事故の規模からみると、骨折だけですんだのは奇跡です。本当に運がいい。
今は大変だと思いますが、3ヶ月ほどすれば骨がくっつくと思いますので、
それまでの間は奥様がしっかりとフォローして頂ければ・・・」
などと言っている。

牧野は俺の世話をしてくれると言っていたが、
俺のところには毎日忙しくも来客があったり、病室でできる仕事をしたりと入院している割にはせわしなく過ごしていた。

入院して一週間ほどたって、俺は特別室で穏やかに過ごしていた。
天気のいい昼間に、牧野がソワソワと外を見ていたので、
「どうしたんだ?外になんかあるのか?」
そう聞くと、
「ううん。今日はお天気がいいから、外に出たいだろうなって思って・・・」

来客が多くて、その来客が西門の関係者ばかりなので、気が張ってるだろうと牧野なりに気にかけて
そう声をかけてくれているのだろう。

ニッコリ笑ってそんな風に言われちゃ
「・・・そうだな」
お前の笑顔につられてそう答えるしかできねーよ。


牧野の手助けで何とか屋上までいく。
牧野は小さいから途中バランスを崩したりしていたけど、それでもしっかり支えてくれる。

屋上について、ベンチから外を眺めていると、牧野がポツリとつぶやく
「私ね、美作さんに事情を話して、いま仕事お休みしてるでしょ?
・・・このまま休んでると会社に行きにくくなっちゃうよね・・・。
そうじゃなくても、みんなに色々噂されて行きにくいのに・・・ね。」

俺に聞こえるか聞こえないかくらいの声でそんな事をつぶやきながら、小さくため息をつく牧野に
「・・・だったら、ウチくるか?」
なんてことを聞いちまっていた。

「西門流でって・・・まだ人様にちゃんと見せられるだけの所作なんてできてないよ・・・
そうゆうのが出来てないと西門流じゃ働けないんじゃない?西門さんに迷惑になっちゃうよ。」

真面目にそう答える牧野に笑いがこぼれる
「・・・そういう意味じゃなくて、ウチに来るかって聞いたんだけどな」
「だから西門流でしょ?」
「違うよ。俺のところに来いよって言ったんだよ」
「・・・えつ。・・・それって・・・。」

やっと牧野は俺の言わんとしてることに気付いたみたいだった。

「牧野は、俺が嫌いか?」
「・・・嫌いじゃないよ。いつもいつもなんか知らないけど、西門さんの事ばっか頭に浮かぶ・・・取材で女性記者と話してるのを見てチクっとしりもしたけど・・・」

牧野。その感情は、世間的に言えば「好き」っていうんじゃねーのか?
お前は司でも類でも、あきらでもなく、俺の事が好きなんだよ。

「・・・俺も・・・何しててもお前の事ばっかり頭に浮かんでくるよ。」
そう言って西門さんは私の顎を掴むとそのまま顎をあげさせキスをしてくる。
優しく触れるだけのキスでさえもドキドキする私。
「・・・あのね。その・・・西門さんは・・・私なんかでいいの?
私なんかと一緒にいたら、西門さんがいろいろ言われちゃうよ」
「お前じゃなきゃダメだよ。俺が間違えたほうに進みそうになったら、お前はきちんと助言してくれるだろう。
そんなお前が好きなんだ。
お前の事は西門でどんなことがあっても俺が絶対に守ってやるし、俺が傍にいる。だから俺と一緒に・・・」
そこまで言った時だった。

抱きしめていた牧野の後ろに小さな女の子の幻覚を見た。
「お兄ちゃん。お姉ちゃん素直になったみたいだね。お姉ちゃんはお兄ちゃんの事が大好きだよ」


えっ・・・あの女の子・・・と思い少し身を固くするが、牧野は女の子の気配さえも感じていないようだった。

その女の子をよく見ると、本当に牧野がそのまま小さくなったようだった。
大きな目でまっすぐ俺を見てくる。
その目を見た時に俺はあることに気がついた。

あの小さな女の子はもしかして・・・
俺達の将来の子供なのか?
あの時聞こえなかった言葉が、頭をよぎる

「だって、わたしお兄ちゃんとお姉ちゃんから近い将来うまれてくるんだもん」


退院してからの俺は、家元と家元夫人に会いに行き、牧野と結婚したい旨を伝える。
ただスムーズに事が進むとは決して思っていない。

両親は、快く迎えてくれたが、一門には、受け入れないものも少なからずいるので、
そう言った人たちには、それから一年をかけて牧野の良さを理解してもらった。


そして無事に結婚することができて一年が過ぎたころ、つくしの妊娠が明らかになる。
西門流の跡取りが生まれてくるのか?
そんな目でみんなが見る中、俺は生まれてくるのが女の事だと確信があったんだ。

つくしは苦笑いしながら、
「総ってば、まだ性別がわかんないのにそんなに女の子のものばっかり買ってきて・・・
これで男の子が生まれたらどうするの?コレ?」
などと言っている。

俺はつくしの頬にキスをしながら、
「俺はぜったいにお前にそっくりの女の子が生まれると思ってるからな」
といってやると、
「・・・総に似てる方が絶対に可愛いのに・・・」
などとブツブツ言っている。

そんな日常さえもいまの俺は、とても幸せだと感じることができているのだった。



************** FIN



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