ずっとずっと 50
かおるちゃんの声がする。
久しぶりに薫以外の親しい人の声を聞いた気がする‥…
そう言えば、あたしのスマホどこやったっけ?
ぼんやりと思う。
「かおるちゃん おはよう」
「しぃちゃんのお誕生日以来だね‥帰りちょっと具合悪そうだったから心配してたんだ。ルゥさんに連絡とったら風邪で寝てるっていうし‥…その後は旅行だったんでしょ?」
「ありがとう。もうすっかり元気だ。」
「お正月明けは、薫と天橋立の方に行って来たんだ。連絡出来なくてゴメンね」
「天橋立って?宝珠の別荘がある方じゃない?」
「うん。良く知ってるね?」
「宝珠家の中でも特別な別荘なんだって、ユト君に前に聞いた事があるんだ。」
「そうなんだ。とっても綺麗な別荘だったよ。露天風呂まであって、ビックリしちゃったよ」
「おっ、カオ! しぃ 」
「ユトくーん おはよう」 「悠斗、おはよう」
「ユト君、卒論出しにきたの?」
「おぉ。こんであとは後期の試験と卒業式だけだ。」
「そっかー 悠斗は卒業したらすぐにKAGURA?」
「ジュエルだよ。TSUTSUIの人間はジュエルのインターっていう決まりだよ。」
「そうなんだー」
「そうなんだーって、しぃは本当に何も知んねぇで、TSUTSUIに入ったんだな。」
「‥…社宅の家賃代なんだよ。」
「何だそりゃー」「えぇーーー 何ソレ」
悠斗とかおるちゃんが2人で大笑いをしてる。
「あぁー苦しいぃーー 後にも先にもしぃちゃんくらいだと思うよぉ。TSUTSUIに社宅代の変わりに出る人‥…ぷっぷホント、つぅ爺はしぃちゃんを手塩にかけて育ててるんだね~」
「あぁー そうだな。」
「あははっ‥…」
*****
「ユト君‥…」
「っん?」
「ユト君は、ルゥさんからしぃちゃんの事何か聞いてる?」
「カオが知ってる事までしか聞いてねぇ」
「そうなんだ‥… しぃちゃん天橋立にある宝珠の別荘に行ったって言ってたから‥…」
「そうかぁ‥…薫は本気なんだな。じゃぁ そろそろ周りも動き出すってワケか‥…」
「もう止めれないんだよね‥…」
「あぁ‥…止まんねぇだろうな」
*****
「つくしー」
「アレッ 薫どうしたの?」
「スマホ持ってないだろう?だから迎えに来たんだ。」
「ありがとう。スマホどこいちゃったのかなー」
「不便だから、取りあえずコレ使ってて‥…」
「うん。」
どこいっちゃったのかな?あたしのスマホ‥…
薫の車に乗り、つぅ爺の所へ向かう。
「しぃちゃん 久しぶりじゃの」
「ご無沙汰してます。お正月は、ご挨拶にも伺わず申し訳ございませんでした。」
「いいんじゃ。いいんじゃ」
「今日はなぁ‥…神楽の坊の婚約パーティのドレスの仮縫いが出来上がったので呼んだんじゃ」
つぅ爺が手をパンっと叩くと、部屋の中へドレスが用意された。
ネイビーのオフショルダードレスを試着する。細かいピンが打たれ、微調整が行われる。
薫のタキシードもあたしのドレスに合わせてネイビ−で作られている。
「素敵……」
「気に入ってくれたか。雪乃も亜矢さんも喜ぶじゃろう。なぁ薫」
「あっ、はい。」
ドレスを身に纏った彼女は、驚く程に妖艶で…… そのまま彼女を押し倒したくなる。
僕は、自分自身がそれほど性に対して興味がある人間だとは思っていなかった……
僕自身の容姿、僕が持つバックボーンに群がってくる女性はそれこそ山ほどいた。
女性に困る事はなかった。人並みに女性は抱いたし、教育も受けて育ってきた。
ただ無くてはならないものでは全くなかった。
つくしを抱くまでは‥…
つくしを抱き、僕の中のオスの部分が目覚めた。
君が僕を変えた。君の躯が俺の躯をオスにする。
彼女にとって、身代わりでしかないとしても‥…
僕は彼女を愛し、抱き続ける。
***
RRRRR
「あっ、あきら君?」
「おっ、滋 どうした?牧野の事か?」
「うん。つくしの誕生日の後、あきら君達つくしと連絡ついた?類くんはどうかな?」
「嫌。誕生日の日のメールの返信のみ。類も心配して連絡よこしたんだ。あいつのとこ、LUCYとの商談が進んでるらしくて、フランスを離れられないみたいでさぁ‥…連絡が出来ないって心配しててさ。優紀ちゃんは?」
「うーん。そうなんだ。こっちも同じ感じ」
「実はイタリア行きが早まって10日にはこっちを出発しなくちゃ行けなくなって、今バタバタなんだ。」
「総二郎も初釜でバタバタしてて、京都に行けるのが来月の始めのKAGURAの婚約パーティーらしくてさぁ。」
「そうなんだね。桜子は前に言ってた人と婚約が決まったみたいで準備で忙しくて……私が行ければ良いんだけど、実は私も、もう直ぐ婚約になりそうでバタバタしてるの。KAGURAのパーティーには私も桜子も招待されてはいるんだ‥…」
「そう言えば……KAGURAの相手って、牧野の友達とか言ってたよな?かおるちゃんだっけ?」
「あっ、そうそう。前に京都で会った子。」
「それに出るんじゃないか?」
「うん。そうだよね。そうじゃなかったとしても、その時、つくしの家に行ってみる事にするわ。」
「ああ宜しく頼む‥…何か解ったら連絡くれよな。」
「うん。‥…司はこのまま結婚なのかな?あきら君なにか聞いてる?」
「いや。ただ、婚約発表でやっと株価も安定してきたみたいだからな。ボズウェルの紹介でジュエルとの商談も来てるみたいだから断れねぇだろうな。」
「そっか‥…‥… つくし大丈夫かな‥…」
「あぁー」
***
「薫。あたしのスマホ知らないよね?」
「っん? 天橋立の別荘にでも置いて来た?」
「うーん。向こうには持って行ってないと思うんだ。部屋の中、もう一度探してみるね」
「無いと困るの?」
「電話番号とか色々入ってて‥…」
「でも、つくしあのスマホ持ってると待っちゃうんじゃない?」
「‥…‥‥」
「あっ、ごめん‥」
「ううん。そうだよね‥ただ、類や皆とも連絡とれなくなっちゃうから‥…」
「それって、今のつくしに必要なの?僕だけじゃダメなの?」
「‥…薫? 必要って? どうしてそんな事言うの?」
「‥…‥ごめん。どうかしてるね。ちょっとだけ一人にしてくれるかな‥」
彼女が道明寺と繋がる何かが許せなくて‥ つまらない嫉妬をしてしまって‥
気が付けば‥… 彼女を一人にしていた。
トントン
「つくし? 開けてもいいかな?」
部屋を開けると、隅にうずくまりながら声も出さずに泣く彼女がいた。
「つくし‥…どうした? さっきは、意地悪言ってゴメン‥」
「うううん。 スマホ‥…ベットの下に落ちてた。でももう要らない‥要らないの」
「‥…薫、あたしを一人にしないで‥ 薫がいなくなったらあたし‥…一人ぼっちになっちゃう。」
彼女は泣きながら僕に抱きついてきた。
僕は強く強く彼女を抱き返す‥…
その日、初めてあの香りを付けずに‥…僕達は結ばれた
もう後戻りは出来ない。もう後戻りはしない。
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