シーソーゲーム 58 類つく
「あらっ、柊君は?」
「明日の式典には出るって言ってたんだけど‥‥今日はごめんなさいって」
今日、お爺様達が来る事を前もって知らせていなかった。今朝、出張先の柊兄ぃに電話で告げたんだ。
どうせバレるから‥嘘は吐かない。ただ言わなかっただけ。
2人で食事をとる。
「つくしちゃんもいよいよね」
「あぁ‥そうだな。つくしの花嫁姿を見れるのは楽しみじゃな」
「綺麗でしょうね」
嬉しそうに、2人が頷く。
あたしは、両の手を握りしめる。
「お爺様‥お嫁に行く前にあたし働いてみたいんです」
「あははっ、突然何を言い出すんじゃ。それにつくし、柊君は知っているのかね?」
あたしは、首を横に振る。
「先ずは、お爺様に相談してからだと思って‥それに柊兄ぃに相談したら‥反対されるでしょうし」
あたしは、微笑む。
「柊君が反対する事を儂に認めて欲しいという事か?」
「はい‥」
「つくし‥お前は、それを本気で言ってるのかな?」
「はい。お爺様」
あたしは、お爺様の前にこの一年半で集めた様々な資料を出した。如月と一之宮の談合、政界への賄賂‥
お爺様の顔色が変わる。
「佳代、すまん‥茶を淹れてきてくれんか」
「えぇ」
お婆様が部屋から出て行かれたのを確認してから、お爺様があたしに向き直る。
「つくし‥」
「お爺様、あたし‥いいえ、私が働く事をお許し頂けますよね。それと‥柊兄ぃとの婚約を一旦白紙に戻して頂けませんか?」
「儂を、いいや儂等を強請ると言う事か?」
「いいえ‥お爺様達を敵にまわすのは、恐れ多くて出来ません。ただ、親族会議をせずに進めた婚約を白紙に戻して欲しいとお願いしているだけです」
お爺様が笑い出す。愉快そうに
「クククッ、お前は実に頼もしい‥‥一之宮に連絡を入れるからちょっと待ってくれ」
数分の会話のあとに電話を切ったお爺様があたしに向き直り。一つ頷く。
あたしは、微笑む。そして
「もう一つ、提案がございます。決してお爺様達に損は無い筈ですので、どうぞご一考頂きたいかと‥‥それと‥一之宮との事ですが、進の恋人が一之宮の遠縁にあたるものだとご存知ですか?」
お爺様は、ゆっくりと首をふる。そりゃそうか。あの女っけのない進に彼女なんて‥驚きだよね?
「えぇ、一之宮の直系ではありませんし、一般家庭のお嬢さんですが‥大変優秀な子かと思います。是非、一之宮のお爺様にご助言頂ければと思います」
お爺様が高笑いなさりながら
「つくしは、寝てばかりいる茨姫かと思っておったが、そこまでフォロー済みか。クククッ、なんとも面白く化けおったもんじゃ」
「お爺様、茨姫は居眠りしてたわけではないですよ。呪いにかかって眠らされていただけですよ。あたしは、自分の意志での寝坊助です。それに‥進の事は、あたしが画策したワケではないですよ」
「クククッ、そう言う事にしておこう。‥して、つくしは何所で働くのじゃ?」
お爺様とあたしは笑みを交わし合う。
「ゆみ叔母ちゃまの所で働きたいと思っております。ただ‥」
「ただ何じゃ」
「まだ試験に受かっておりません」
「クククッ、ゆみの所は縁故は取らんし、如月からは除名されておるからな。茨の道だな」
「はい。如月の名が邪魔をします」
「暫く、牧野つくしになるか?」
「いいえ、如月つくしとして勝負致します」
これは、あたしがあたしになるためのシーソーゲーム。
類つくは月火木金12時更新予定


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