ずっとずっと 51
「っん?ここにいるよ。」
僕は慌てて、つくしの元に駆け寄る。
「大丈夫。大丈夫。僕はどこにも行かないよ。いつも一緒だよ。」
「うん。」
羽根を捥がれた小鳥のように、君は僕の傍を離れない。
僕は君に囚われて、君だけしか見えないのだから何にも心配はいらないよ。
つくしを学校に送り、ジュエルに向う。
TSUTSUIセミナーのものは、学生以外は皆ジュエルのインターンとして働いている。
歴代のセミナー生達も同じように、インターンとして働いてきた。
学生も授業が無い時は、こちらに来る事になっている。
とは言っても、つくしはお爺様の秘蔵っ子なので、僕等と行動を共にするのは、セミナーの時だけになる。
彼女は、元来の頭の良さで色々な事を楽しみ吸収する力を持っている。
茶道、語学に然りで、2年足らずの歳月で習得したとは思えない程の上達ぶりだ。
柏木も驚く程、ジュエルの事も理解している。
彼女は知らないが彼女が携わってきた仕事はかなり中枢的な業務が多いのだ。
加えて、人を魅了する力だ。
つくしがつう爺ズと呼ぶ人達は、お爺様のお気に入りだからと言って、おいそれとは迎合しない人間達だ。その者達が皆一様に、祥子社長と同じ様に、いいやそれ以上につくしを可愛がり、将来を楽しみにしているのだ。
筒井由那‥僕の母の時の様に、将来を楽しみにしているのだ。
母もまた、筒井の娘という枠を取り除いた状態でこよなく周りから愛された女性だったと聞く。
本来、うるさ方の京社長、東雲会長‥…夫婦でつくしを可愛がり、ダメだと知りつつも、お爺様にパーティーの招待状を何通も何十通も送りつけて来ては、撃退されている。
そう言えば、東雲会長の末の息子さんの婚約が整いそうだと耳にした。
悠斗の婚約パーティーの時に初お披露目になるらしい。
つくしに是非会わせたいそうだと、お爺様が言っていたっけ。
カオちゃんが今回参加しているのも、お爺様達が可愛がっている祥子社長の推薦そして、勿論カオちゃん自身の力もあるが、一番はつくしという存在だ。
つくしが居なければ、今回のセミナーには間違いなく参加はしていなかっただろう。お爺様にしては珍しく私情を挟み人選したのが伺える。お爺様は、つくしを殊の外可愛がっているのだ。
道明寺がつくしを選んでいれば、僕には辛い結果になろうとも、お爺様達はきっと道明寺財閥を助けた事だろう‥…
だが、道明寺財閥は、道明寺司は、つくしを切り捨てた。
「別れてくれ」の一言でつくしを切り捨てたのだ。
つくしがあいつを許しても、僕は決してあいつを許しはしない。
だが、助けてやろう。
そして‥…僕のこの手で、道明寺をあいつを雁字搦めにする。
その為に、僕は決心をする。お爺様達の後を継いで行こうと。
ジュエルとLUCYこの二つの世界的企業一つにまとめ僕が動かしていこうと。
僕は彼女と出逢い、貪欲になる。
彼女と出逢い様々な感情が芽生えていく。
獲たいものなど何も無かった筈なのに。
手放さないと決めたから、僕は貪欲になる。
*****
「ハーイ!薫」
「ナダー 久しぶり」
「しぃちゃんの具合はどう?」
「心配かけたけど、もう随分と良くなったよ。セミナーも今日から参加するよ。。」
「それは良かったよ。実は、婚約が決まったんだ。」
「おぉーそれはおめでとう。お披露目はいつ?」
「正式なお披露目は3月になっちゃうかな。でも、悠斗の婚約パーティーに連れてくるつもりでいるよ。是非しぃちゃんと2人で会ってやってよ。」
「もちろん。ナダー楽しみにしてるよ。ところで、彼女のお名前は?」
「大河原滋さん。大河原財閥のお嬢さんだよ。」
以前聞いたつくしの交友関係。大河原滋の名前があった筈だ。だったら……
「ナダー おめでとう。じゃぁその日は、もし良ければ帰りにでも僕等の家に遊びに来ないか?」
「薫、ありがとう。彼女と是非伺わせて頂くよ」
「薫 ナダー 」
つくしが僕等に声をかける
「ハーイ しぃちゃん いま薫に婚約が決まった事を話していた所だよ。」
「うわぁー ナダー おめでとう」
「悠斗の婚約パーティーに連れて来るって言うから、その後僕等の家に招待したけど大丈夫だった?」
「勿論喜んで。うふっ楽しみ。」
セミナーの開始を告げるベルが鳴る‥…
慌てて席につく僕等。
セミナー中、僕が考えていたのは、これは多分お爺様の策略なんだろうという事。
もしかすると‥…東雲社長の末息子さんの婚約者もつくしの友人なのだろうか?
お爺様は一体いつから色々な事をご存知だったのだろう?
きっと、他にも蜘蛛の糸のように、張り巡らせているのだろう‥…
これが人を動かすという事なんだと思い知らされる。
彼女を手に入れるために、大切な事を僕は知る。
また夜が来る。
彼女は僕の傍から離れない‥
温もりの対価のように、僕に抱かれる彼女‥…
それを知りながら、僕は君を抱く。獣のように君を抱く
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