バカ言ってるんじゃない 19 司つく
怒る牧野。笑う牧野。困る牧野。喜ぶ牧野。寝る牧野。食べてる牧野。怒る牧野。って、一番怒るのが身近なところがなんだが‥色んな牧野が、俺の周りを取り囲む。
殺風景だった、屋敷に色が付き、殺伐としていた俺の人生に花が咲く。
パーティーも、会食も接待も、道明寺司としての役割をバンバン受け入れる。
何故かって? 予定が入っていれば、牧野を拘束できるからだ。
時折、もしや俺、牧野とつきあってんじゃねぇの?というよりも、婚約したっけ?なんて言うぐらいに一緒にいる。
こんな時間を、〝幸せ〟って、呼ぶって事を初めて知った。
だがだが、俺の隣で無防備に眠る牧野を見ると胸がキュンッとなるのは、秘密だ。
もうじき25になる男が、女の寝顔でキュンッとなるのも問題だよな?
問題と言えば‥俺には重大な秘密が、もう一つある。
「ハァッーーー」
「っん?どうした?」
ウトウトと眠っていた牧野が、キョトンとしながら俺の顔を見る。
「あっ、いやどうもしねぇ」
「その溜め息、どうもしねぇじゃないでしょ」
こいつ、こういう所だけはやけに敏感だ。
「ホラッ、ホラッ、お姉さんに言ってみな。ねっ」
「俺には、年下の姉ちゃんはいねぇよ」
「そりゃぁ、そうか。あははっ」
ケタケタ笑ってから、真顔になって
「まぁ、同じ釜の飯を食べてるよしみだ。相談にはのるからいつでも言ってよ。あっ、お金は貸せないけどね。それ以外だったら努力するから」
「お前に、金借りる日が来たらお終いだよな‥」
「ぷっ、それもそうだね。まっ、あたしで出来る事があったらいつでも言ってね」
「あぁ‥」
俺の返事を聞いた後、うとうとと目を瞑り、カクカクカックンで眠りについた。
眠りに入る姿も中々面白い。カクーンカク、カックーン‥そぉっと、牧野の頭を抱き寄せて俺の肩を貸す。
ふわりっと、鼻腔を刺激する香りがする。その瞬間
「イテッ‥」
慌てて、牧野の頭を窓辺に凭れかけさす。
「ハァッーーーー」
‥‥こいつの、このなんだか爽やかでいて甘ったるい香りを嗅ぐと‥まぁその何だ‥俺の何が何だか、反応しちまうんだ。
成人男性当たり前のことだろう‥‥だが、俺にとっては、当たり前じゃない。
恥ずかしい話だが‥俺は、そのなんだ‥チェ、チェ、チェリーボーイって奴だ。
いや、別に女にモテなかったわけじゃない。そりゃそうだ。この見た目だ。それ以外にも女が放っておかないもの全てを兼ね備えてる。
だからだ‥だから‥気色悪かった。身の毛がよだった。
だったら、男が好きなのか? それでも無かった。
機能的な問題か?朝、すこぶる元気だ。ただ、女に反応しないだけだった。
沈黙を破ってってやつか?牧野を感じると、そのなんだ、今までの反動で、異常な程に感じちまうようだ。
「ハァッーーーー」
月、水、木、土 6時更新
↓ランキングのご協力よろしくお願い致します♥


♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
- 関連記事