月夜の人魚姫 21 総つく
「ったく‥」
舌打ちしながら、遊があたしを招き入れる。
「遊、頬が赤いよ」
「赤いよじゃないよ。ミュウのせいだろ」
「‥‥ごめん‥」
グイッと腰を抱かれ
「ドアに手つけろよ」
遊がわざと乱暴な言葉を使ってあたしを誘う。
スカートを捲り上げ、前戯も何もなしに、指を挿れてくる。
一気に挿れられた2本の指が肉襞に絡まって、ヌチャヌチャと音を鳴らしている。
「ミュウ‥すごいな。なんかあったんだあの後‥‥って、暖と2人で食事に言ったよね」
「お願い、少し黙って‥うぅっうぅーーっ、ねぇ、そのまま挿れて」
足を開きドアに手を付いた状態で、あたしは遊を招き入れる。
赤い赤い焔が、あたしの中で燃え広がっていく。
はぁっはぁっ と、2人の吐息だけが部屋の中に響き渡る。
2人同時に果てて、笑い合う。
セックスの後のこの空虚感が溜らなく好きだ。何も考えずにただそこに漂う空虚な時間。
身体の中の焔が消えて行く。
「いつもごめんね‥ありがとう」
「あぁ」
遊が優しくあたしを抱きしめながら
「先ず、部屋の中に入れば?」
「あっ、そうだね‥」
立ち上がった瞬間‥ドロリッと生暖かい体液が太腿を伝う。
「遊、先にシャワー借りるね」
熱いお湯があたしの身体を流れて行く。身体の焔は消えた筈なのに、あたしの瞳から再び涙が流れ出していた。
遊は、赤く泣き腫らしたあたしの目を見て
「バニーガールに変装でもするか?」
そう言いながら、コーヒーを手渡してくれる。
手渡されたコーヒーを啜りながら、遊の身体に凭れ掛かる。
遊は、何も聞かずにあたしをそっと抱きしめる。幼子を抱く様に。本当に辛い事は、必要以上に聞かない。それが暗黙のルールだから。
ゆっくりとゆっくりと気持ちが落ち着いてくる。
遊とあたしの関係は、傷口を舐め合う不毛な関係だ。遊もあたしも、お互いの中に違う人を求め合う。求めても求めても本当のものは得られない。飢餓感が、渇望を増し、貪欲にお互いを貪り尽くす。
西門さんと同じようにファンタジスタな遊は、特定な女を作らない。
あたしだけが特別だ。何故かって?決してお互いに惚れ合う事はないとわかっているから。
「この後どうする?」
「うん‥朝まで帰らないと暖が五月蝿いから、先に帰る」
「だな。‥その前にもう一発抜いとくか?」
遊の言葉に笑いながら
「もうガクガク」
「くくっ 激しかったもんな」
遊に枕を投げつける。
「おぉっと ったく凶暴だな」
少しだけ皺の寄った服を着て、手櫛で髪を整える。
後ろから
「気をつけて帰れよ」そう声がかかる。
「うん。ありがとう」
憑き物が落ちたように、あたしの身体と心は、落ち着きを取り戻していく。
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